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竜王と108の眷属6

 もしこの場に魔力の流れを目で見ることのできるものがいたならば、メリュジーヌの周囲に浮かぶ一〇八の剣の全てに彼女から魔力でできた腕が伸びているのが見えただろう。

 その強大な魔力と並外れた頭脳による制御力によって一〇八の剣を自在に操るドラゴン。それこそが〈剣聖〉の真の姿である。


 ――こけおどしが! 見た目が変わろうと所詮ドラゴン。何をしようと無駄だ。全てたたき斬ってくれるわ!

『なら試してみるがよい』


 上空に浮かんだ一〇八の剣のうち、一本がネメシスに向けて飛んでいく。それは細長い剣身を持つ青色の剣。それはかつて『ダインスレイヴ』とも呼ばれたことのある、真正なる魔剣である。


 ――こんなもの!

 ネメシスがハルバードを振ると硬い音とともに剣ははじかれた。しかしネメシスが期待したようにそれを斬ることはできなかった。


 その一本に遅れて、ほかの一〇七本が次々ネメシスに襲いかかってくる。ネメシスはハルバードを振り回して防戦するが、メリュジーヌの手による巧みな剣捌きから逃れられるものではない。ネメシス自身気づかぬうちにその意識は一方向に誘導されていた。


 一〇八の剣のうちの数本がネメシスの下半身を構成する牛の脇腹を貫いた。

 ――ぐふっ!


 体勢を崩したネメシスに剣が殺到する。

 四本の足の腱はたちまち斬られ、その巨体がどうと地面に崩れ落ちる。


 牛の胴にその巨体を大地に縫い付けんばかりに十本以上の剣が突き刺さる。

 さらにネメシスの腹には百八本の剣の中でもっとも太くて巨大な一本が深々と突き刺さり、その先端は反対側から突き出した。


 ――がはっ……!

 ネメシスの口からどす黒い体液が吐き出された。それは異星の黒い大地にこぼれ落ちるとじゅうという音を立てて地面を溶かしたが、ただそれだけだった。


 力なく膝をつき、すでに顔からは血の気が引いたかのように青白くなってネメシス。それを上空から冷酷に見下ろすメリュジーヌ。

『神が聞いて呆れる。わしの知る神はもっと偉大で、強力で、狡猾で、そして、慈悲深かった』


 メリュジーヌはネメシスの正面に降り立った。彼女の背後には今まだ残る何十本もの名剣の数々が浮かんでいるが、ネメシスにはもはやそれを見上げる力すらない。

 背後に侍る剣のうちの一本がメリュジーヌの前にやってきた。濃紺のその剣はほかの剣と比べて一見、装飾も少なくこれと言った特徴も見られないように思われたが、そうではなかった。


 これはこの戦いにおいて最も貢献した――この先貢献する予定であるドラゴンが姿を変えた剣であった。彼らは六百年の過去から呼び出されたドラゴンたちだったからだ。


 濃紺の剣を不可視の腕で振りかぶり、目の前でうなだれるネメシスに向けて斬り払った。

 剣は何の問題もなくその役割を果たし、ネメシスの首はごろりと彼の支配する大地に転がってそこから流れ出す体液によってその地面を少しだけ溶かした。


 惑星〈ネメシス〉の東の空が淡く輝いていた。長いこの星の夜が終わろうとしていた。

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