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閉ざされた学園1

 手に持ったたいまつに仲間達の顔が照らされている。ゴンが頷くと明かりに照らされた仲間も頷く。直後、一斉に明かりが消えた。

 辺りは暗闇に包まれるが、ゴン達に不自由はない。彼らにはこの程度の闇など障害にも感じないほど夜目が利くのだ。通路の左右に分かれて、それぞれ岩陰に身を隠す。


 ひた、ひた。ターゲットの足音が近づいてくる。三メートル、二メートル。もう少し引きつける。一メートル半。


「今っす!」


 ゴンが岩陰から飛び出して、ターゲットに矢を放つ。矢はターゲットの額に狙い違わず飛んでいき――そしてターゲットの硬い皮膚にはじかれて地面に落ちた。ゴンの持つ弓矢ではターゲットに傷を負わせることはできない。今回の目的はそこにはないからだ。


 ――びひぃぃぃ!

 ターゲットが怒りの表情でゴンに突進してくる。


「逃げるっす!」

 脱兎の勢いで土で覆われたトンネルを駆けていくゴン。それを追いかけるターゲット。

 それに併せて仲間が岩陰から出てきてターゲットの後ろから槍でターゲットの尻を攻撃する。


 尻をつつかれたターゲットはますます速度を上げて走り出す。もはや何のために走っているのか彼の頭にはない。ゴンは途中の横道に身を投げ出すと、ターゲットはそのまままっすぐ走っていった。


「予定通りっす」

 ゴンはにやりと笑う。仲間達がターゲットを追い立てるのが見えた。


 この先にはゴンが仲間達と掘った落とし穴がある。そこめがけてターゲット――イノシシのモンスターを追い込むのが今のゴン達の狩りのやり方だ。


 すこしして響くような音とイノシシの断末魔の悲鳴が聞こえてきた。穴の底には竹で作った槍が何本も設置してある。ゴン達の非力で粗末な武器では傷つけられなくても、穴の底に用意したトゲがモンスターの重さを借りてとどめを刺してくれるという寸法だ。


「やったっす!」

 ゴンが小躍りする。あとは村の者総出で獲物を引き上げれば良い。これで三日は村の者達の胃袋を満たすことができるだろう。


「うまくいったっすねぇ。みんなもきっと大喜びっす」

 そう言って、ゴンはともに大物を仕留めた相棒にねぎらいの言葉を掛けようと彼へを目を向ける。


「う、うぅ……」

「ど、どうしたっすか……!?」

「さっき、そこで転んで、足を……」

 うずくまり、足を抱える相棒に慌てて駆け寄るゴン。


「これは酷いっす……」

 相棒が抱え込む手をどかし、足首を見た。赤く腫れているが、骨は折れてなさそうだ。その旨相棒に伝えると、安堵したような、申し訳なさそうな顔をした。


「大丈夫っす。おいらが村までちゃんと連れて行くっすよ。イノシシの肉をたらふく食って、早くよくなるっす」

「兄貴……ありがてぇ……ありがてぇ……」


 〈犬神様〉の所から村を移してから半月、多少のトラブルはあるが、ここでも何とかやって行けそうだと相棒の重さを背に感じながら思うのだった。

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