旧校舎四階部室番号H-4 3
体育館での部室抽選会はひとつの部室毎にひとつの喜びと、それ以外の多数の悲しみを生み出しつつ、順調に続いていた。
そして――
「続いては旧校舎四階、H-4。これが最後の部室になります」
体育館に残っている生徒の数はかなり少なくなっている。すでに部室の決まった部の部員達は早々に体育館を後にしているために、ここに残っている生徒はまだ部室の決まっていない部の部員達だ。
そして、〈竜王部〉の部員達も当然のように残されていた。
『だ、大丈夫なんじゃろうな? わしの菓子――いや部室は?』
メリュジーヌはうろたえた様子で慎一郎に聞いた。
「いや……かなりまずいんじゃないのか?」
そういって辺りを見渡す。
体育館に残った生徒達はおよそ三十人。人数が少なくなるうちに自然と舞台前に集まってきているので、数の確認はしやすい。
「確か、当落線は部員三人だって言ってたよな?」
慎一郎が徹に確認する。
「ああ、去年はそうだって聞いた」
残っている人数から〈竜王部〉が部室をゲットできる確率は単純計算して十分の一。ガチャで最高レアリティをゲットできる確率よりは高いものの、お世辞にも高いとは言えない。
「ねえ、部室が割り当てられなかった部はどうなるの? 廃部ってわけじゃないんでしょ?」
結希奈が不安そうな表情で聞いた。
「どうなんだろうな? 部室なしで活動するんじゃないの? でもそうすると活動してもしなくてもいいやって事になっちゃうかもしれないな……」
徹の予想はほとんど当たっていた。例年、部室を確保できなかった部はその年度の終わりまでに九割以上が活動を停止している。拠点となる場所なしでは部活動はできないと言ってもいい。
「まあ、あたしは部室なくても家の仕事だからちゃんとやるけど、あんたたちはねぇ……」
結希奈が徹を冷たい目で見る。
「何だよ! 俺だってちゃんと〈竜王部〉の活動をだな……。あれ、慎一郎?〈竜王部〉の建前上の活動目的って何だっけ?」
「おれが知るかよ。徹が適当に書いたんじゃないか」
「そうだっけか? 取り敢えず部室がなくても活動は継続ということで」
『何を言っておる! そんな後ろ向きの考えでどうする! 今から外れたときのことなど考えるでない!』
「そうは言ってもなあ……」
『ええい、情けない! それでも世の依り代か!』
「おれって依り代だったのか……」
「あ、抽選が始まるわよ」
結希奈の一言に皆の注意が一斉に舞台の方を向く。気がつけば周囲のざわめきもいつしか収まり、体育館の生徒達は固唾をのんで魔族の副会長の手元に注視している。
『…………む?』
「どうした、メリュジーヌ?」
『いや、何か引っかかりを感じたのじゃが……。気のせいか。それよりも抽選じゃ!』
その場にいる全員の注目が集まる中、魔族の副会長が箱から取り出した紙を生徒会長の菊池の所へ持っていく。菊池はその内容を確認し、結果を発表する。
「H-4の使用権は――」




