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混迷への序曲6

聖歴2026年8月30日(日)


 ぴろりろりん♪ ぴろりろりん♪ ぴろりろりん♪……。


「もしもし……」

 翌朝、慎一郎の目を覚ましたのは目覚ましのアラームではなく、結希奈からの〈念話〉だった。


『ちょっと、慎一郎! あんた何やってんのよ! もうとっくに集合時間過ぎてるわよ!』

 その剣幕に一瞬で目が覚める。視界の隅に表示されている時間を見ると、確かに大寝坊だ。


「ご、ごめん……。今起きた……」

『はぁ? 起きた? あんた今どこにいるのよ?』

 何を言ってるんだと思い、辺りを見回すと目の前には木が生い茂った森、そして背後にはコンクリート造りの四階建ての建物。


「どこだ、ここは?」

 思わず口に出してしまったものだから、結希奈の期限が更に悪くなる。


『あんたねぇ! 馬鹿なこと言ってるヒマがあったらすぐに部室に戻ってきなさい! みんな待ってるんだから!』

「みんな……?」


 徐々に思い出してきた。確か昨夜、徹が剣術部に行こうとしているのを止めようとして、それで……


「徹! 徹は帰っているのか?」

『栗山? え、ええ……。ここにいるけど。栗山がどうかしたの?』

「すぐに戻る!」

『え? ちょっと! 浅村!』


 そのまま〈念話〉を切り、目覚めた場所――部室棟の裏手、剣術部へ続く穴の近く――から部室に向かって走り出す。

 途中、メリュジーヌも起こして昨夜のことを聞いたが、彼女も慎一郎と同じタイミングで徹の魔法を食らって眠っていたという。




「徹!」

 ばん! と勢いよく開いた扉の音が他に通りがかる者もいない旧校舎四階に響く。


「よう、慎一郎!」

 帰ってきたのはいつも以上に陽気な徹だった。


「聞いたか? 今夜、生徒会主催の花火大会があるらしいぜ。いや~、俺が何度も生徒会室に駆け込んだ甲斐があったってもんだ」

 徹は昨夜のことなどおくびにも出さず、ただ楽しそうにどの女子を誘おうか悩んでいる。


「なあ、徹、昨夜ゆうべのことだけど……」

「昨夜? ああ、悪い。俺、風呂に行ったあと、そのまま寝ちゃってたんだよな。なんか眠くて。でもおかげでよく眠れて今日はバッチリ、魔法の威力もいつもより三割増しだぜ。通常の三倍ってか?」


「……どういうことだ?」

 慎一郎が小声でメリュジーヌに訊く。

『わしにもわからぬ。じゃが……』


 どうにも嫌な予感が拭いきれない。が、それをむやみに伝えて不安がらせることもないとメリュジーヌは言葉を飲み込んだ。


「よーし、それじゃ、全員揃ったことだし、迷宮探索行くか!」

 花火のせいか、いつも以上にハイテンションな徹を筆頭に、〈竜王部〉は今日もいつも通りに地下迷宮へと向かうのであった。

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