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混沌の迷宮3

 徹が連絡を受けた合唱部のパーティは、慎一郎達が向かっていた“午”のほこらとは反対方向の、コボルト村に近いところにいるという。


「あ、きたきた。おーい、栗山! こっちこっち!」

 通路の奥、〈光球〉の明かりに浮かび上がる何人かの人影のひとりがこちらに向けて手を振った。


「はぁ、はぁ……。悪い、遅くなった」

「わっ、走ってきてくれたの? ごめんね」

「かまわないって。な、みんな?」

 徹の呼びかけに慎一郎達はそれぞれ笑顔で応える。……息が上がっていて返事をする余裕がなかったのだ。


 そこは、比較的大きな空洞の端がしがみつくように通路が張り付いているような場所だ。通路の幅は四メートルほどと狭くはないが、もしここから足を滑らせれば崖下に滑り落ちてしまうことだろう。崖下がどうなっているかは不明だ。


「ここか……」

 慎一郎が通路の一部分を見る。

 その部分は大きく崩落しており、そこから崖下へと誰かが滑り落ちた跡が残っている。


『不注意だった……とは言えんの。運が悪かったということじゃな』

 メリュジーヌが見解を示した。確かに、こんなに大きな崩落があることを見越してここを進むことはできないだろう。合唱部員達に落ち度があったとすれば、それは風紀委員の警告を無視して地下迷宮に入ったことだ。


「まあ、そんなこと言っても仕方ないだろ」

 斉彬がこよりからロープを受け取った。迷宮探索に慣れている彼らはこんな時のためにロープなどは常に携帯している。


「下の状況は?」

「それが……わからないんです。声をかけても〈念話〉でも返事がなくて……」

 慎一郎の問いに合唱部の女子が心配顔で応えた。


『まずい状況かもしれんな。ことは一刻を争う。すぐにでも救出活動を始めよ』

「そうだな」

 慎一郎の指示のもと、救出の準備が始まった。




 以前、井戸の中に降りたように徹が下に降りる担当となり、慎一郎と斉彬がロープを持つ。こよりはいざというときのためのバックアップとなるゴーレムを召喚し、結希奈は落ちた生徒の治療のための準備に余念がない。


「栗山……気をつけてね。あと、先輩のこと、お願い」

「任せておけって」

 徹が親指を立てるが、その表情は緊張に包まれている。何も見えない崖下に一本のロープを頼りに降下するのだ。緊張するなというのが無茶な相談だ。


「よし、下ろすぞ」

「ああ、やってくれ」


 慎一郎と斉彬が少しずつロープを下ろすと徹の身体は少しずつ闇の中へと落ちていき、やがて見えなくなった。しかし、ある程度進んだところで「光よ!」の声とともに崖下に明かりがともったのが見えた。真っ暗になった徹が〈光球〉の魔法を唱えたのだ。


『いいぞ、もっと下ろしてくれ』

 〈念話〉越しに徹の指示が聞こえてくる。その指示に従ってゆっくりとロープを下ろしていく。


 しばらくするとロープが緩まった。徹が下についたのだ。


「どうだ、いたか?」

 慎一郎の問いに徹が答えたのは少ししてからだった。


『いや、ここからだと見当たらないな。向こうから明かりが見えてるといいんだが……』

「ロープを少し緩めた方がいいんじゃない?」

 と、結希奈が提案したのでそうした。


「徹、ロープを緩めたからそのあたりを少し歩いて探してみてくれないか?」

『…………。気が乗らないけど仕方がないな。わかったよ』

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