6.破滅への道
頭がどうにかなりそうだった。
頭はフル回転。全ての行動は脳で1歩手前までシュミレーション。弓は避けれるか分からなかったが、初心者用の弓みたいで速さが無くて助かった。
兎に角、1人目を倒した時の剣のヒットストップ。たまらない。それだけが脳裏と腕に快感をもたらした。流石に理性が無抵抗の者をPKするのを止めたが、危なかった。1歩間違ったらそれもあった。
ヤバい、この感覚をまた味わいたいと思っている自分がいる。頭がどうにかなりそうだ。
野原を抜けた先は森だった。森の中は薄暗く、獣道しかなかった。たまに気に生えている木の実を取りながら2時間突き進んだ。
「助けてくれー!」
急にそう叫ぶのが聞こえた俺は道を急ぐのだった。
そこには、兵士らしき人だかりと馬車に乗った野人の集団が居た。
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この世界は残酷。
8才ともなると、こんな事なら誰でもわかる。私は今日奴隷になった。遊牧民族がまばらに訪れる私の集落はしょっちゅう襲撃がある。
幼い私には、母に抱きつき震える以外しか対処法はなく、いつも襲撃が起こると、血の匂いと怒号に悩まされるのだ。
今日は相手が強かった。集落は壊滅。男は歯向かう者は殺され、それ以外は遊牧民族の下につき、また違う集落を襲いに行く。女子供は奴隷とされ、街に売るために馬車に乗せられた。
乗り心地の悪い馬車で2日、食事はなく、土の匂いのした水を少々飲んだ。
「おい、止まれ」
早いな、もう街に着いたのかな。そこには兵士の人だかり。もしかしたら助けに来てくれたのかも、そんな考えは直ぐに消えた。目がアイツらと一緒。腐ってて、私達を道具としか見ていない。
「お前ら、俺らはこの【イースタンシティ】の正規兵だ。水と食べ物20人分でいい、あと奴隷も使い捨てのを頼む」
「はぁ?正規兵だからとそう易々と飲むわけ無いでしょう、オマエら出てこい!」
そう言うと後ろの馬車、確か護衛用の馬車だったか。から30人程度のゴロツキが出てきた。明らかに筋肉量が違う。正規兵とやらが怯む。
「良いだろう、正規兵の力、死んで味わって貰おう」
すると正規兵達は陣形を整え、長槍で3段に分かれ、ゴロツキを襲う。
「オマエら!遠距離だ!つき崩せ!!」
その時だった。そこにいるには似つかわしくないTシャツとズボンという格好で、1人の男が立っていた。そいつの目は...腐ってもなく、私達を道具としても見ていない。
ーただ、狂っていた。
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血の匂い。先に戦闘は始まっていたが序盤で助かる。
俺は馬車の横、兵士と野人の間に立ち、まず野人を襲う。
ヨコセ。快感を。
「何だコイツ!?」
「ははっ!【イースタンシティ】に歯向かうからだ!」
兵士は味方だと思い、野人を嘲笑う。
俺は斧を持つ野人が振りかぶる前に心臓に一撃。心無しかさっきの戦いより動きが速くなっている。
「ぐあっ!!」
「オマエら!射撃!よーい、始め!」
弓矢、そして魔法が俺に降りかかる。しかし、NPCは粒子になって消えない。死んだ野人を盾に受けきる。骸となった野人は相手の火魔法で焼かれ焦げてしまったが持っていた斧を奪い、そのまま投擲。火魔法の1番ウザイ奴は顔面に斧を受け気絶。俺はそのままハンドガンで確実に遠距離武器の奴らの胴体を、撃ち抜く。ヒットストップが無くて快感はほぼ半減だが致し方ない。そのまま突っ込んできたアホを胴に蹴りを入れてから顔面に剣を刺した。
「クソっ!なんだアイツ!?いいか、一斉に集団でやれ!集団ならまだ勝てる」
指示が的確だな。確かに軽装の遠距離組はともかく重装備のアイツらを複数撃ち抜くのは面倒だ。
ここは1つ。心を落ち着け、直剣を仕舞う。そして懐に隠してあった少し短めの刀を出す。
「ビビってやがる!今だ」
まだだ。
まだ早い。
「オラァ
まだ。
ァァァァァァァ
あと少し。
アアアアアアア...」
今。
居合の体勢。体全体を低く。
一太刀で沈める。必ずだ。
一閃。
凡そ綺麗に半円弧に斬ったその太刀筋は3つに割れた。
『三禅剣』
野人は6人。頭と胴、脛の辺りに横凪の刀傷を負って倒れた。
「な、なんだs」
俺は倒れていく野人の手から武器を奪い、残りの散りじりになっていく野人共の背中に投擲し、倒す。
その後は蹂躙。唖然とする兵士には目もくれず残当を1人ずつ狩った。そして、一通り倒し終えた後で、兵士の1人が
「協力感謝する、流石のお手並み...【イースタンシティ】代表としてお礼を言おう」
「いえいえ、これくらい兵士の皆様にお手を煩わせる程でもありません」
ゆっくり近ずき、会話する距離へ入る。
「まあ後のことは兵士私達がやっておきますので」
「ありがとう、助かる」
俺は、そう言ってにこやかに笑い、刀を話しかけてきた兵士の心臓に突き刺した。
悪の道へ踏み入れる。
ちなみにPKのドロップはちゃんとアイテムボックスに入っています。
なお、大体が紅の笑顔石だったよう。