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GunKnight Story Long Stance

 ――飛鳥弥生 著

(by Yayoi-Asuka)

※この物語はフィクションです(四〇〇字詰原稿換算枚数、***枚)

(This story is fiction)

※ { }はフリガナ

「出演」


・ランスロウ・ペンドラゴン~元、国営第七騎士団隊長、聖杯騎士

・キャセロール・ユイット~国営第三騎士団隊長、一級騎士、殄滅師

・カシュミール・ニードリヒ~国営第三騎士団、二級騎士、雷鳴

・ラプラッグ・ディーゼン~国営第三騎士団、二級騎士、疾風


・ディージェイ~本名不明。一級剣士の称号と卓越した腕を持つ。敵は貧乏

・ガデット・マーベリック~三級闘士、剣士見習い。

・ロブ・フォリオ~三級闘士、銃闘士見習い(三級)。

・ギム・グレス~二級銃闘士。自称勇者

・ランス・マーベリック~一級騎士、聖剣ドラゴンバスターの所有者

・リッシュ・ノーブル~ガデットの恋人

・八百屋のおやじ

・町の住民A女性

・町の住民B男性

・その他、住民多数


※読み辛くて覚えにくい名前で申し訳ありません。この物語は『機械仕掛けの神』という別の物語と繋がっているのです


「称号一覧」


剣士ナイト~地方自治体に所属、登録されるが行動範囲に制限はない。剣を主に使って戦い、聖剣、魔剣などの能力を自在に発揮できる

騎士パラディン~国営騎士団に所属、登録されるが行動範囲に制限はない、国家公認の剣士。戦闘時に剣士を統率することもある

闘士ファイター~地方自治体、宗教団体などに所属、登録されるが行動範囲制限は宗教団体所属の場合のみ。主に剣を使って戦うが槍なども含まれ、素手での格闘にも特化している。騎士の指揮下に入る場合もある

修道僧モンク~宗教団体などに所属、登録されるが行動範囲制限は宗教団体所属の場合のみ。肉体を鍛錬して鋼と化し、武器ともする格闘のエキスパート。凡庸な武器も、高い格闘技術で能力を最大限に引き出せる

魔術師グル~精霊と契約して、その力を授かって行使する者のこと。詳細は下記

銃闘士ガンファイター~地方自治体に所属、登録され、行動範囲が一部制限される。主に剣と銃を使って戦う。弾丸の使用は所属団体の許可が必要だが、事後報告で良い

銃騎士ガンナイト~国営の銃騎士団に登録されるが行動範囲に制限はない。非常召集を受けることもある。聖剣、魔剣を含む剣とあらゆる銃を自在に操り、無許可発砲が許されている。現代最強と呼ばれる称号だが、称号を取得するだけならば、それほど難しくはない

聖杯騎士ホーリーナイト~聖杯の祝福を受けた騎士。聖杯とは神と天使の加護を与えるとされるもので、伝説上の存在である。聖杯騎士も称号の一つだが、あらゆる制限を受けない特殊なものだが、一般的には国営騎士団を統率する


※報酬は基本的に所属団体から支払われるが、単独で狩りの依頼を受けたり、勇者のあかし大会に参加する、といったことも許可されている

※どれがもっとも強いのかは個人の技量により、称号はあくまで対外的な「肩書き」にすぎない。

※騎士と銃騎士以下の称号取得は、筆記試験と簡単な実技で取得可能なので、能力が伴わずに称号を名乗る者が大勢いる

※修道僧、銃騎士、聖杯騎士を除く称号には、三級~一級までの階級があり(サード、セカンドと呼称)、例えば剣士が騎士への昇格試験を受けるには、一級剣士で実戦が一年以上必要である


「魔法と魔法使いと結界」


白魔術士ライトグル~生属性の力を使う~森、海、大地の精霊と契約して、回復、加速、硬化、増強、蘇生などを行う

黒魔術士ダークグル~死属性の力を使う~火、水、死の精霊と契約して、攻撃、防御などを行い、結界を作る能力を有する

・赤魔術士~(レッドグル)生属性、死属性の両方を使う~白魔術士と黒魔術士の両方の能力を持ち、結界を作る能力も当然有する

・輝魔術師~(ライジングル)~全属性魔術を使い、かつ、何柱かの神々と守護天使とその下の天使達の加護と能力を授かったもの。創造系魔術も使う

・闇魔術師~(ラグナグル)~輝魔術師の対極で、何柱かの冥府の王と悪魔達の加護と能力を授かったもの。破壊系魔術も使う

・召喚術士~(サマナー)~精霊、神、天使、悪魔などを直接呼び出して支配下に置く。魔術師の上位で、最強とされる


※魔術師とは精霊との契約を行う能力がある者の称号で、基本的には国家に所属する。筆記と実技の認定試験あり

※剣士の中には魔術士と同じ能力を持つ者もいる。ディージェイは一級剣士の称号を持ち、風と大地の精霊と契約しているので、加速と増強能力が使えて、これによってレッドドラゴンを倒した。また、ディージェイが使用した国宝の龍斬剣・ドラゴンバスターには魔術的処理が施されおり、使用者の魔術と共鳴・同調する能力があるが、故に本来の能力で使いこなせる人間は極めて少ない

※銃騎士が赤魔術士の能力を有するとほぼ無敵だが、世界でも数人しか存在しない

※また、輝魔術師と闇魔術師は赤魔術士の上ではなく、全く別の存在で称号ではない。先天的に持つ能力で精霊とその上位から力を得てそれを使うが、どこにも属していない

※召喚術士が扱う能力は魔術師とは根本的に違い、かつ、絶大な力を持つ


「結界とドラゴン」


 ドラゴンを含む凶暴な生物を街などに侵入させない装置を「結界」と呼ぶ。

 黒魔術による障壁を機械技術で擬似的に作り出す装置だが、膨大な電力と莫大な資金が必要なので、大型都市の首都や宗教組織の総本山といった場所にしか設置されない。

 地方の小さな街には数名の黒魔術師が配備されており結界を作るが、レッドドラゴン級のモンスターの場合、擬似結界を抜ける能力があるので、これには黒魔術師か剣士が対応することが一般的である。街によっては駐留する闘士、銃闘士がこれに対応することもある。

 擬似結界のない街などにレッドドラゴン級のモンスターが出現した場合、剣士、闘士などが非常召集される。主要な都市部の場合は駐留する銃闘士、騎士、赤魔術士がこれに対応する。


「精霊」


 自然界に存在するあらゆる全ては精霊と呼ばれる者が司る。中でも四大精霊と呼ばれるものが代表的だが、他にもさまざまな精霊が存在し、また、同じ要素に複数の精霊がいる。


・風の精霊~ジンニー、シルフィード~天候と大気を司る。加速など

・大地の精霊~グノーム、ベヒモス~大地を司る。硬化など

・水の精霊~アンダイン、ウンディーネ、クラーケン~海と湖と河を司る。回復など、

・炎の精霊~ウルカヌス、サラマンダー、エフリート、 フェニックス~火を司る。増強、蘇生など


・光の精霊~ウィル・オー・ウィスプ

・闇の精霊~シェイド

・勇気の精霊~バルキリー

・怒りの上位精霊~ヒューリー

・悲しみの上位精霊~バンシー

・火と土の複合精霊~ラーヴァ

・炎と氷の複合精霊~フロストサラマンダー



『目次』

・第一章~パラディン

・第二章~ナイト

・第三章~

・第四章~

・第五章~

・第六章~

・第七章~

・第八章~


『第一章~パラディン』


 若いうちは旅をしろ、そう言ったのは酒場の白髭オヤジだっただろうか。


「――ね、ね、おじさん、これは? 見たところ、けっこう古そうだしさ」

 街外れの銃砲店で、店主の初老と若い女性が、なにやら話し込んでいた。狭い店内にはショウケースが一つで、中身はぴかぴかに磨かれた大小さまざまな銃が並んでいる。壁にはライフル、ショットガン、大砲などが並び、弾薬を詰め込んだ箱が床に置いてある。

「あのね、おねえちゃん。あんたが銃、欲しいってのはよーく解かってるんだけどなぁ……うちの店の中にはどこ探したって、百五十ぽっちで買える銃なんて一丁もないんだよ、すまねえけどな」

「んじゃさ、そっちの、そう、それは? グリップさびてんじゃん」

「一万! 一切まけられねえよ」

 それから小一時間ほど同じ事を繰り返し、とうとうしびれを切らせた店主に女性は店を追い出された。

「ちぇっ……けちんぼーー!!」


 女性の名はディージェイ、最近では特に珍しい女性剣士である。

 かなりの腕前だが、彼女がその技術を身につけた頃には、もう騎士{パラディン}と銃騎士{ガンナイト}が入れ替わりだしていたので、彼女の活躍の場は殆どなかった。それゆえ、かなりの腕前というのも「自称」である。「剣士{ナイト}」の称号をその若さで持つところを見ると、言うだけのことはあるのだろうが。

「ここなら安いって聞いて、はるばるやってきたあたしは一体……」


 ガン! 金属が衝突する音が王宮広間に響いた。ランスロウのレイピア、クラブジャックと、キャスの剣、ブロードソードがぶつかる音だ。

「殄滅師{てんめつし}キャス! 貴様の負けだ! 周りを見ろ! 貴様の部下は残り何人だ?」

 両刃で大型の剣の一撃を片手一本で弾いたランスロウは、キャセロール・ユイットをにらんでから、笑った。白髪に白眼のキャスに表情はない。白い髪は耳が隠れる程度で、唇だけがうっすらと赤いが、そこから言葉は出ない。両手持ちのブロードソードを低く構えたキャスは、尖った視線を周囲に向ける。死体がざっと二十で、それを作り出した甲冑が十、片手剣と盾を持ってキャスを遠巻きに包囲している。

「貴様はいつ見ても薄気味の悪い女だな? 色がない世界だと、仲間の血も白く見えるのだろうな。全く、不気味な奴だよ、貴様は」

 言葉尻に含み笑いで、ランスロウは朗々と語る。キャスの布地の普段着には小さく国旗の刺繍があり、それは金色なのだが、キャスには服も国旗も革ブーツも全て白く見えている。

「俺のクラブジャックをかわせる騎士{パラディン}がこの国に何人いる? 貴様くらいなものだ。しかしな、殄滅師。全てを滅ぼす騎士とまで呼ばれた貴様は、俺の剣をかわせても、仲間は救えないということだ。ただ剣を振り回してるだけの連中なぞ、容易いものだ。そうは思わんか?」

 ランスロウのレイピア、クラブジャックが特殊金属で出来ていることを、キャスは承知していた。キャスは重量のある両刃両手持ちのブロードソードを握っているが、腰にはもう一本、細身のロングソードもある。腕前は彼女の二つ名「殄滅師{てんめつし}」が示す通りで、死神だの疫病神だのと囁かれていることも承知していた。

 左背後からの気配にブロードソードを振ると、ブロンズアーマーの隙間、首をキャスの刃が捕らえて、真っ白い血が吹き出た。飛沫{しぶき}が少しキャスの頬についたが、無視してもう一振り。剣を握っていたブロンズアームを斬り落とした。

「聖杯騎士団を相手に、一歩も引かないか。さすがだが、賢いやり方ではないな。殄滅師は人を斬るだけしか脳のない女か。全く、気味の悪い奴だな、貴様は」

 ランスロウの高笑いに、周囲も同調する。

 相手が十人だろうが百人だろうが、キャスには関係なかった。向かってくる敵を斬り、守るべきものを守る。彼女の仕事はとても簡単だった。視界が真っ白だったり、髪や瞳が真っ白であることは、キャスにはどうでもいいことだった。血の色が薔薇のようだと聞いても、白い薔薇しか見たことがないキャスにはやはりどうでもいいことだった。

 自分が守るべきもの、国王と王妃と幼い姫君がランスロウの背後でぴくりとも動かないことも、今ではどうでも良かった。十と一つの刃が自分に向けられていることにも、感情は反応していない。首を落として腕を斬ったのは、キャスが騎士、パラディンだからで、体が勝手に動いただけだったし、仲間、部下が倒れて動かないことも、どうでも良かった。

 ただ、目の前で高笑いを続ける男、ランスロウ・ペンドラゴンを斬る、それしか頭に浮かばなかった。王宮広間は殺気と血の匂いが充満しているが、キャスには恐怖や焦りはなかった。

「蝋人形のようだな」と言われることにはとっくに慣れていたし、実際、自分の手足は蝋人形のように見えた。世界は白と黒の濃淡で、それが先天性の色弱{しきじゃく}だと説明を受けたのは五歳の頃だったと思うが、そもそも色という概念がキャスにはなかったので、だから? と首をかしげるだけだった。


 剣を振り回すようになったのは単なる遊戯で、十八歳で三級剣士、サードナイトの称号を獲得したのも、半ばお遊びのようなものだった。

 キャスの両親は先祖代々の農民で、一人娘の彼女が剣士の称号を得たことをとても喜んでいた。この大陸では、剣士{ナイト}の称号を獲得すると、自治体から報酬が貰える仕組みになっていて、その金額は農業収入の五倍ほどだったからだ。自治体所属の剣士から国営騎士団に入ろうと考えて、三級闘士、サードファイターの称号試験を受けてそれを得て、そのまま国営騎士団に入隊した。

 城塞守備隊に配属されてから幾つか小規模の争いがあって、キャスは二十四歳で一級騎士{パラディン}の称号と、隊長という肩書きを拝命して国営第三騎士団に転属となり、今、目の前には第七騎士団を率いていたランスロウ・ペンドラゴンが笑っている。


 キャセロール・ユイットの人生はとてもシンプルだったが、彼女の頭の中は見た目よりは複雑だった。

 父親のような国王と、母親のような王妃と、妹のようは姫君、そう考えるとキャスの感情が僅かに揺れた。視界には部下だった者もいて、違和感があった。重いブロードソードを構えているのは、相手がペンドラゴンの称号を持つ騎士だからで、クラブジャックという名前のそのレイピアがブロードソードを跳ね返すことも承知していたが、実際に剣を交えるのはこれが始めてだった。

 ランスロウの腕前の噂は聞いていたが、キャスは自分が負ける姿を微塵も想像できなかった。

 殄滅師、全てを滅ぼすだけの者。死神、疫病神、蝋人形……キャセロール・ユイットには幾つも名前があったが、どう呼ばれるかなどに興味はなかった。任務を受けてそれを遂行する。キャスの人生はシンプルで、幾らか退屈でもあった。

 国王や王妃、姫君との会話を思い出すと、感情が僅かに揺れた。

 やるべきことは単純だった。ランスロウ・ペンドラゴン、この男を斬ればいい、それだけだ。だが、それだけでいいのか、とも考えた。例えば、まだ生き残っている仲間や、国境近くの小さな農場で働いているはずの家族。

「殄滅師! 貴様はここで名誉の戦死だ!」

 ランスロウが笑いつつ叫んだ。右手のレイピアを掲げている。

 自分が死ぬ姿は浮かばなかったが、誰かが自分を想ってくれるかもしれないと想像すると、揺れた感情が怒りだということに気付いた。

「……ランスロウ、お前は」

 キャスの声に抑揚はなかった。ただ、明確な意思はあった。

 ブロードソードでランスロウの首を跳ねれば、同時に自分の胸をレイピアで貫かれるだろう。だが、それでいい。自分は騎士で、ついでに死神で殄滅師だ。この男を始末すればそれで全てが片付く、ような気がした。後は生き残った部下や仲間に任せればいい、とも。


 ――世界を破滅させるだとか、ある国を滅ぼすだとか、そういったことを考える人間というのはいつの時代にもいるもので、それに至る経緯というのもたいていは似たような発想からだったりもする。

 ランスロウ・ペンドラゴンが大陸で一番大きな国家を滅ぼして、そこに自分の国家を作ろうと考えたのは、彼が聖杯騎士という称号を持っていたからだと、歴史の教科書には書かれてあった。聖杯騎士{ホーリーナイト}とペンドラゴンの称号を持つ者が本来、国家を守る騎士団を統率する役目だということは教科書にも書かれてあったし、誰でも知っていることでもあったが、ランスロウという男がその任務を放棄して、自らが二十年も守護してきた国家に牙を向いたことは、珍しい話でもなかった。

 聖杯の祝福を受けた騎士は本来、国家を守る盾であり、刃でもあった。

 神と天使の祝福と、卓越した剣の腕前と、騎士団を統率する頭脳。そこに小さな野心が加われば、そういったことは起こる。歴史の教科書にはそういった人物が山ほど並んでいたし、ランスロウだけが特別という訳でもない。それでも若い彼が長らく歴史に名を残したのは、ランスロウと彼の率いる聖杯騎士団が格段に強かったからだった。


 三十人の騎士、パラディンと聖杯騎士ランスロウ・ペンドラゴン。そしてランスロウの剣、クラブジャック。

 十万人規模の国家をたったの三十一人で壊滅させたランスロウと騎士団は、生き残った国民に対して新たな国家樹立を宣言して、自らが王だと主張した。

 第七騎士団は七つの騎士団のうち六つを三日間で壊滅させた。城塞騎士団、国境守備隊と王宮守備隊、総勢で百八十人の騎士のうち、生き残ったのは僅かに三人だけだった。

 剣士{ナイト}、闘士{ファイター}、魔術師{グル}に生き残りはなく、三百近い死体が街のあちこちに転がった。この国には銃を扱う者は少なく、ランスロウ・ペンドラゴンの謀反の際には別国に派遣されていて難を逃れたが、戻るべき街を失った彼らはそのまま別国所属となった。


 第七騎士団に次ぐ最強、国営第三騎士団を率いる女性騎士のキャセロール・ユイット。二十五歳にして騎士の称号と騎士団団長の任に就いていた、通称「殄滅師{てんめつし}キャス」。剣士と闘士の称号も持ち、剣の腕だけでその地位に至ったキャスは、先天性色弱からか、感情に欠落があり、騎士としては尊敬されていたが、女性として扱われることは殆どなかった。死神、疫病神、蝋人形、そして、白い悪魔とも呼ばれて隣国にも知れ渡っていた。

 彼女の直属の部下である二級騎士{セカンドパラディン}、カシュミール・ニードリヒとラプラッグ・ディーゼン。二人はキャスよりも年上で腕前もかなりのものだったが、ランスロウ率いる聖杯騎士団からキャスを連れて逃げるだけで精一杯だった。

 キャスは単独での王宮奪還を立案し突撃をかけようとしたが、カシュミールとラプラッグの二人に半ば無理矢理、国境守備隊の屍を越えた山中に引きずられ、説得された。


「隊長ぉ、気持ちは解りますがね、ランスロウ、相手が悪いですよ。ああいう手合いは逃げるに限る」

 カシュミールがおどけた調子で言う。

 左腕に切り傷があり、包帯は赤黒い。騎士、パラディンの称号を持つ彼だが、腕前はともかく性格は威厳とはかけ離れた位置にある。いつも軽い調子で女性にちょっかいばかりで、それでいて皆から慕われている。二枚目なのに三枚目を演じているようで、二級騎士{パラディン}という称号を持ち第三騎士団に所属しているが、堅苦しいことを嫌って、いつも街をふらふらしていた。剣の腕が確かなので騎士団でも慕われていたし、女性にも子供にも慕われていた。

 カシュミール・ニードリヒと難しい名前だが、親しい相手は「カッシュ」と呼んでいる。

 二つ名は「雷鳴{らいめい}」。力強い剣さばきからそう呼ばれていた。


「ランスロウごとき、俺一人でもどうにでもなるが、聖杯騎士団と真正面からやりあうのは、カッシュの言う通り、賢くない」

 ラプラッグが継ぐ。

 二級騎士{パラディン}のラプラッグ・ディーゼンは生粋の騎士で、騎士道なるものを貫き通している。カシュミールと同い年だがずっと年上に見える。年相応の言動で騎士としての誇りを持ち、また、負ける戦はしない。堅物で知られているが、カッシュにも劣らない剣さばきは華麗で、訓練指揮官も兼任している。街の剣術道場にも顔を出し、剣士、闘士に手ほどきをすることもあり、尊敬されている人格者である。言動が堅苦しいので年上と話し込むことが多く、剣術以外に学問にも精通している。

 ラプラッグ・ディーゼンの二つ名は「疾風{しっぷう}」。剣筋に無駄がなく、演舞のように敵を斬る。


 また、カッシュとラプラッグはキャセロール・ユイットの両翼と呼ばれていて、「殄滅師の翼」として隣国にも知られている。国営第三騎士団は鷲{わし}をシンボルマークにしていて「イーグルナイツ」で通っていた。


 カシュミールが商人のような軽装なのに対してラプラッグは軽金属装甲をあしらったライトメイルを着ている。二人の腰には剣があり、カシュミールは食料と水を詰め込んだ布袋を担いでいて、ラプラッグはマントの裏にナイフを三本装備しているだけで、ライトメイルだが国境越えにしては軽装だった。

「西か南か、ともかく宿を探そうぜ。この三日間、まともに食事もしてないぜ? このままじゃあ熊かなにか襲われてお陀仏だ」

「騎士が熊にやられては話にならん。だが南は駄目だ。ランスロウの息がかかっている可能性がある。向かうなら西だ。隊長?」

 カシュミールとラプラッグがあれこれ相談しているが、隊長、キャセロール・ユイットは無言だった。

 三日前、いきなり背後から斬り付けられてから、キャスはずっとそんな調子だった。相談している二人にしてみれば珍しいことでもないのだが、キャスは女性にしても騎士にしても常に冷静だった。彼女は第三騎士団隊長でもあったが、命令はいつも二人からだった。


 国境を越えた山中で一夜を過ごしてから、三人は西にある小さな町に向かった。

 小さな町だが「騎士の都」として知られており、巨大で凶暴なアーマードラゴンを倒したとされる国宝の龍斬剣「ドラゴンバスター」が「聖剣」と呼ばれて飾られていて、剣から銃に武器を持ち替えつつある最近の風潮に逆行している、少し変わった町だった。

 五千人ほどが住む小さな町だが、三級騎士{サードパラディン}が守備駐留していて、年老いた剣士{ナイト}も多く、それでいてのんびりとしたのどかな町だった。

 夜通しで歩いてその町に到着した三人は宿を取り、四日ぶりに安堵した。

「噂は少し聞いてたが、変わった町だな。俺らを見ても驚きもしないし、子供も年寄りも剣をもってやがる。狩猟用の銃を持ってる奴もいたが、戦闘用の銃を下げてる奴が一人もいねーぜ?」

 大欠伸と屈伸で、水をガブ飲みしてパンをかじったカシュミールが独り言のようにつぶやく。三人は警戒を兼ねて同じ部屋にいた。応えたのは食事を終えたラプラッグだった。

「ここにいるのは、三級騎士{サードパラディン}と、伝説の騎士{パラディン}、ランス・マーベリック卿らしい。大陸でも名の通った有名な一級騎士で、龍斬剣の使い手だと聞いたことがある」

「龍斬剣? 国宝級のドラゴンバスターかよ。そりゃ凄い。しかし、あれは確か術式を施していて、並みの人間にゃ扱えないんだろう?」

 カシュミール・ニードリヒの腰にあるのは、国営騎士団の標準装備のロングソードで、第三騎士団のシンボルである鷲のレリーフが施されている以外は、ごく普通のロングソードだった。剣士が扱うもので、騎士ならもっと上質なものを使うのだが、カッシュは剣を使い捨てるので、比較的安いものを使っていた。

「この町にいた剣士が、アーマードラゴン、それも年齢のいった奴を倒した、そう聞いている。龍斬剣を使ってだ。だが、龍斬剣を握っていたのはマーベリック卿でなはく、卿のご子息でもなく、素性の解らない女性剣士だったらしい。噂が本当なら、魔術師{グル}能力を併せ持った剣士なのだろうが、どこにも所属していない剣士でそれほどの者というのは珍しいな」

 ラプラッグ・ディーゼンが愛用しているロングソードは騎士団のものではなく、鍛冶屋に作らせた一点モノで、粘りのある重金属の刀身は鏡のようで握りの部分に小さな宝石がはまっている。サヤにエングレーブがあり、チェーンメイルやブロンズアーマーを両断する切れ味で、ラプラッグはこれを自在に操る。

「ドラゴンバスターを扱えてアーマードラゴンを始末したってんなら、大した腕だな。そんな奴が騎士団にも所属せずに根無し草をやってるってのは、羨ましい話だ。規律だの理{ことわり}だの、堅苦しくてたまんねーからな」

「カッシュ。我々には任務があり、使命がある。安くはない報酬は国民の汗の結晶で、我々には彼らを守る義務もあってだな……」

 ラプラッグが毎度の演説を始めたので、カッシュは聞きたくない、と手をひらひらさせた。

「建前はいらねーよ。それよりも、これから先、どうするかを考えようぜ? 隊長?」

 ベッドに腰掛けて無言を続ける隊長、キャセロール・ユイットは、腕を組んで目を閉じていた。見ると、首がゆっくりと揺れていた。

「ひょっとして……寝てるのか? ははは! さすがは俺らの隊長だ。ランスロウが刺客を出すだろうに、この余裕、いいねぇ」

 カシュミールは笑いつつ、燻製ハムをかじった。ラプラッグはサラダを口に運んでいる。

「隊長の警護も我々の任務だ。カッシュ、貴様も少しは緊張しろ。宿の間取り、町の地形、人数を頭に入れておけ」

「ラプ、お前は大袈裟なんだよ。刺客だのが出てくりゃ斬るだけだ、それで充分だよ。お、このハム、なかなかいけるな。果物も美味いし水もだ。田舎ってのはいいよな」

 カシュミールは食事に集中して、その様子をラプラッグは呆れたという顔で眺めつつ、自分も食事を続けて、二人の上官であるキャスは、いつの間にかベッドに横になっていた。死神、疫病神、蝋人形、そして殄滅師と呼ばれるキャスだが、寝顔はどこにでもいる、華奢な女性だった。



『第二章~ナイト』


 ロックドラゴン(岩龍)の雄叫びで、剣士見習いの青年、一級闘士{ファイター}の称号を持つガデット・マーベリックは吹き飛んだ。

 全身を鎧のような皮膚で覆った、頭から短い尻尾までが十メートル以上ある百歳ほどの巨大なロックドラゴンは、町の外れにある荒地の岩並から突然現れた。

 父親が師範を勤める道場から町外れの荒地に警備を兼ねた散歩に出ていたガデットは、立ち上がって剣を抜いて構えたが、ロックドラゴンにそれが通用しないことは知っていた。

「常に冷静であれ」という父親の教えを反芻してみたが、ロックドラゴンの、肉斬り包丁を思わせる巨大で鋭い牙に、ガデットの両足は震えていた。ガデットの住む町は田舎だったが、町の周囲の荒地や森には年齢を重ねたドラゴンは殆どいなかった。数日前に「帰らずの森」という場所で、人生で初めてロックドラゴンに遭遇して度肝を抜かしたが、目の前にいるのは更に大型で凶暴そうなロックドラゴンだった。

「こ、ここ、こんな奴が町に来たら大変だ! でも、どうする? こいつに剣は通用しないし、銃を持ってる奴を呼ぶ暇もなさそうだし、んなことやってる間に俺が喰われちまう!」

 ロックドラゴンは肉食で凶暴で、鹿や熊などを主食にしているが、人間も喰らう。性能のいい銃があれば撃退することは難しくはないし、魔術師の一人でもいれば結界で動きを封じることも可能だが、闘士ガデットは一人で、手にしているのは安物のスチールソード。倒すどころか逃げるのも難しい。ロックドラゴンは見た目とは裏腹に俊敏でもあるからだ。しかも、どうやら空腹らしい。

「親父のドラゴンバスターでも持ってくりゃ良かっ……」

 再びのロックドラゴンの咆哮、威嚇に、ガデットの体はびりびりと震えた。

「やばいやばい! 町を襲う前に俺を襲うつもりだ! こんなの相手に出来るかよっ!」


 闘士{ファイター}は地方自治体、宗教団体などに所属、登録されるが行動範囲制限は宗教団体所属の場合のみ。主に剣を使って戦うが槍なども含まれ、素手での格闘にも特化している。騎士の指揮下に入る場合もある。

 一級闘士のガデットは生まれ育った小さな田舎町の自治会に肩書きを置いていて、剣や素手での格闘訓練を父親、ランス・マーベリックの道場で行っているが、年齢を重ねた巨躯のロックドラゴンを相手にするだけの技量は、まだない。剣で抜けない鎧は、当然、素手で破壊することは不可能で、弱点である顎の下を狙うにしても、ロックドラゴンに白兵戦を仕掛ける人間はまずいない。

 熟練の修道僧{モンク}ならばそんなことも出来るだろうが、ガデットの町に修道僧はいないし、いたところで呼ぶ暇もない。


 三度目のロックドラゴンの雄叫びに、剣を構えたガデットの茶色の髪の毛がオールバックになった。

「ししし死ぬ! 喰われる! 俺の騎士{パラディン}への人生がいきなり終わっちまうー!」

「おーい、ガキンチョー。何やってんのー?」

 ガデットの絶叫に、のんびりとした女性の声が重なった。ガデットとロックドラゴンがそれに反応した。向かって左の岩場の一つに、誰かが腰掛けている。

 黒いショートヘアでカラフルなシャツを着て、黒革のパンツにくたびれたブーツで、革のハーフグローブの右手をガデットに向けてひらひらさせている。

「……ディージェイ! ディージェイなのか? アンタ、何でそんなところに?」

「何でって、ご挨拶ねー、ガキンチョ。やほー、久しぶり。三ヵ月ぶりくらいだっけ? 元気してた? もう剣士{ナイト}になったか?」

 ガデットより少し年上だがまだ若いその女性、名前はディージェイ。一級剣士{ナイト}の称号を持ち、三カ月前にガデットの町で行われたお祭り「勇者のあかし」大会にガデットと一緒に参加して、国営騎士団でも苦労する巨大なアーマードラゴンを一人で倒した、旅の剣士である。

「まだだけど……って! この状況、解ってねーのかよ! ロックドラゴンだ!」

「そんなの、見れば解るってば。ナントカってお祭りはもう終わったんでしょ? そんな奴、無視しとけばー?」

 頭上の晴天さながら、ディージェイは軽い調子で言い、ついでにケラケラと笑った。

「無視って、いやいや! こんなのが町に向かったら大変だし、ってか、俺がピンチなんだよ!」

「だったら、やっつけといたら? まだ剣士{ナイト}じゃないってことは、闘士{ファイター}? そんな石の塊みたいな奴、ぶん殴ったらいいのよ」

 その科白にロックドラゴンが反応した。ガデットを睨んでいた巨大な両目が、岩場に座るディージェイに向けられる。

「殴れって、俺は修道僧{モンク}じゃねーよ! こんなデカいの、倒せるわけねーだろ!」

「相変わらずガチャガチャとうるさいガキンチョね? 銃でも使えば?」

「俺は闘士で! まだ銃は扱えないんだよ! ってか、持ってねーし!」

 剣から銃に変わりつつある昨今だが、銃一挺はとても高額で、弾丸も同じくで、小さな田舎町にあるのは狩猟用のライフルくらいなもので、ロックドラゴンの硬い皮膚を破壊できるようなものはガデットの町にはない。それはともかく、ロックドラゴンが太い尻尾を地面に叩きつけて威嚇している。開きっぱなしの口には鋭い歯が並び、ひときわ大きな牙が一対。噛まれれば牙が体に喰いこんで、そのまま噛み砕かれるだろう。

 ロックドラゴンから見れば、獲物が増えた、そんなだろう。口と鼻から荒い呼吸音が聞こえて、全身を覆う鎧のような皮膚がギシギシと音を立ててもいる。

「あのねー、ガキンチョ。闘士でも剣士でも修道僧でもね、負けると解ってる奴は基本的に相手にしないのよ? 銃もないんなら、逃げればいいのに。背中見せるのが恥って相手でもないでしょうに」

 言いつつ、ディージェイは岩場からひょいと飛び降りた。くたびれたブーツと黒革のパンツで、カラフルなシャツ。黒いショートヘアで顔立ちは猫のようで愛嬌があるが、口は悪い。首からゴーグルを下げており、両腕は革のハーフグローブで、荷物は布地のリュックという軽装だった。

「逃げるって、こいつ、早いぜ? それよりディージェイ! アンタ、剣士だろ? 何で剣、持ってないんだよ! アンタだったらこんな奴、楽勝だろう?」

「人に頼るのは良くないなー。そんなじゃリッシュちゃんに嫌われるわよー? そんで、剣がないのは、えーと……」

 ディージェイは苦笑いで煙草を咥えた。

「旅ってのはね、結構お金かかるのよ。飲んだり食べたり寝たりね? 前の剣はこないだ折れたし、新しく買ったのは……質屋に入れた」

「ア、アホかアンタは! 剣士が自分の剣を質屋にって、どんだけアホなんだよ!」

 ロックドラゴンに対する恐怖よりも、ディージェイのいい加減さが勝ったようで、ガデットが叫んだ。

「アホアホって、失礼なガキンチョねー。あたしは銃騎士{ガンナイト}の称号をゲットするために旅してんのよ? 安い銃があるって聞いた町に行っては追い出されを繰り返してる、哀れで悲しい女なのよ、ヨヨヨ」

 涙を拭う真似をして、ディージェイは体をくねくねさせる。

「何がヨヨヨだ! 俺はアンタを尊敬してんだぜ? あのアーマードラゴンを倒したアンタを! だから俺は親父の道場で必死に特訓して、本なんかも読んで勉強して――」

 ゴアッ! ロックドラゴンが叫んだ。獲物二匹の漫談に飽きたのか、空腹が頂点に達したのか、ロックドラゴンは鎧の体を揺らしてガデットに突進した。

「わぁー! 話は後だ! ディージェイ!」

「何?」

「何じゃねー! 助けろ!」

 スチールソードを構えたまま、ガデットは絶叫した。ロックドラゴンは見た目よりも素早く、ガデットとの距離を一瞬で縮める。

 ゴン! 鈍い音がして、ロックドラゴンの動きが止まった。剣を構えたガデットは何が起きたのは解らず、両目をぱちくり。見ると、ロックドラゴンの脇腹を、ディージェイの拳が捕らえていた。

「あのねー、ガキンチョ。助けろ、は、ないでしょ? 助けて下さい、とか、他に言いようはあるでしょうに」

 口調は変わらず軽いが、ガデットは口を半開きにして固まった。革のハーフグローブの拳が、ロックドラゴンの脇腹を……殴りつけている。

「剣士{ナイト}なのに剣がないって言ってもねー、やっぱし剣士は剣士なのよ」

 それは違うだろう、そうガデットは無言でツッこんだ。鎧のように硬い皮膚を持つ、百歳以上の巨大で俊敏なロックドラゴンを、殴って止めている。それでは剣士{ナイト}ではなく修行僧{モンク}だろう、と。拳の一撃でロックドラゴンを止めたディージェイは、口元を緩めているが目付きは少しだけ鋭くなっている。

「鎧トカゲの一匹二匹なんて、朝飯前だっつーの。もうお昼だけどさ……」

 突き出した右腕を引いて、顎の下で構えたディージェイは、腰を少し落としてから、つぶやいた。

「……気候の支配の中に潜り込む汝は、可憐で無感情な暴君なり。住まう大気と深く結ばれし原初よりの定めゆえ、汝は万事を長い目で見つめる。軽やかな生き物たちの緩慢さなど、汝には悪戯の対象でしかない。我は求める、幾百の鋭い短剣を背に隠し持つ汝の、不意の一撃を……ジンニー!」

 ディージェイが言い、風が舞い、更に続ける。

「岩のごとき永遠の強さと、山のごときの忍耐たれ。住まう大地と深く結ばれし原初よりの定めゆえ、汝は万事を長い目で見つめる。短命なる死すべき定めの生き物たちの性急さなど、汝には軽侮の対象でしかない。我は求める、堅牢なる意志と鋼の如き鎧を持つ汝の、強靭な一撃を……グノーム!」

 ドン! 二度目のディージェイの拳で、ロックドラゴンの巨体が吹き飛んだ。突き出した右腕と、宙を舞うロックドラゴンに、ガデットは口をぱかりと開けて目を見開いた。五メートルほど飛ばされたロックドラゴンは岩に体をぶつけて、ズン、と倒れた。

「……ロ、ロックドラゴンが……吹っ飛んだ!」

 三十秒ほど放心していたガデットが、ようやく口を開いた。背中部分を岩に衝突させたロックドラゴンは気絶したらしく、脇腹の鎧部分は拳の大きさの穴を中心に砕けている。右腕を突き出したまま、ディージェイが、ふふ、と笑った。

「あたしをただの剣士{ナイト}だと思ってもらちゃあ、いかんねー、ガキンチョ。剣がなけりゃ、それなりに戦えばいいのだよん」

「ディージェイ! ア、アンタ、やっぱしスゲー! アーマードラゴンのときも驚いたけどよ、今のはもっとだ! アンタ、素手でロックドラゴンを吹っ飛ばしたのか!」

「そりゃ、剣がなけりゃ殴るか蹴るかしかないじゃん?」

 突き出した右腕を戻し、軽くストレッチをしてから、ディージェイが当然という風に言った。

 革のハーフグローブをつけてはいるが、そこに装甲板も何もない、ごく普通のグローブに見えるが、ロックドラゴンの脇腹、岩に見えて岩よりも頑丈なそこは砕けていて、ロックドラゴンは吹き飛ばされて気絶している。

「ロックドラゴンの皮膚を砕くって、どんだけの馬鹿力なんだ?」

「はぁ? 筋力でロックドラゴンの鎧を壊せるわけないじゃないの、修道僧{モンク}じゃあるまいし。あたしは風の精霊・ジンニーと大地の精霊・グノームと契約してっから、加速{アクセラレーション}と硬化{ハーディング}が使えるのよ。二つ合わせて、重殻加速拳{ヘヴィアクセルハードフィスト}ってね。ロックドラゴンなんて一撃よ」

 どうだ、と、ディージェイは拳をガデットに向けて、くすくすと笑った。

「ジンニーと、グ、グノーム? ディージェイは剣士{ナイト}だろ? 何で魔道士{グル}みたいなこと出来るんだ?」

「何でって、そりゃ、契約してるからに決まってるじゃん。別に魔道士じゃなくったって、きちんと手順を踏めば、誰だって精霊と契約できるけど?」

 誰だって、ではない。

 魔道士{グル}が四大精霊と契約するには、まず、下位精霊と意思疎通しなければならず、それにはそれぞれの精霊が属する世界にコンタクトしなければならない。だが、それをするには教会で洗礼を受けて、精神を鍛えて、五感以外の部分を強化し、それから術式にのっとった道具を用意して、ややこしい儀式をする必要があって、最低でも十年はかかるし、そもそも先天的な能力が必要でもある。

 ディージェイは見た目、二十五歳かそこらで、そもそも一級剣士{ナイト}で、普通、三級剣士{サードナイト}になるだけでその年齢に達する。秀でた才能があって、その年齢で一級騎士{パラディン}になる者もいるが、称号がいくら形式的で事務的なものであると言っても、それに伴う腕前は最低源必要である。

 つまり、剣士や騎士が、魔道士でもあるということは、そもそも有り得ないのだ。父親であるランス・マーベリック一級騎士から剣術以外にも色々と学んでいたガデットは、三カ月前にディージェイと出会ってから猛勉強をしてそういったことを知ったのだが、その知識とディージェイの言っていることが合わないので混乱していた。

 しかし、実際にロックドラゴンは気絶しており、ディージェイは素手で、ロックドラゴンの岩のような鎧皮膚は砕けている。

「ヘ……ヘヴィアクセルハードフィスト? ジンニーとグノームって、四大精霊だよな?」

「正確には四大精霊の男性陣、ね? 実際は八種類だし、下位を合わせたらもっと沢山で、あたしはその中でジンニーとグノームと契約してるって、そんだけ。加速{アクセラレーション}と硬化{ハーディング}って便利だからねー。防御にも使えるし、さっきみたく、攻撃にも使えるからね。アンタも一人くらい、契約しといたら? 剣士から騎士目指すんでしょ? あの、お父様みたいに。ランスさんもきっと、誰かと契約してんじゃない? ドラゴンバスター使ってたんだったらさ」

 マーベリック家の家宝で国宝でもある龍斬剣・ドラゴンバスターは、術式が施されており、その能力を使わない場合はただ巨大で重くて扱い辛い剣でしかない。白魔術術式が施されているので、加速、硬化、増強などにより、本来の性能が発揮されるが、白魔術師{ライトグル}と騎士{パラディン}の両方の能力がなければそもそも扱えない。

「親父が、精霊と契約? してんのかな? 聞いたことないけど?」

「してるに決まってんじゃん。でなきゃ、国宝級の剣は文字通りでお国のどっかに飾られてるわよ。んなことはどーでもよくってさ、さっきのお礼に、宿貸してくんない? 銃探しでうろうろしてたら有り金が底ついちゃって、実は今朝、最後のパンとコーヒーで一文無しになっちゃったのよ」

 ディージェイが剣士で、銃を求めて旅をしていることは以前に聞いた。剣士の肩書きを持ち、実際の能力は騎士に匹敵するであろう彼女は、銃騎士{ガンナイト}の称号を獲得しようと、あちこちをさ迷っているとも。

「そりゃ、ディージェイには山ほど借りがあるし、宿とか食事くらいはいいけどさ、なあ、ディージェイ?」

「何?」

「俺、アンタ見て感動して、それで剣士になろうって決めたのに、剣も持ってない剣士ってのは、ちょっとなー。素手でロックドラゴン吹っ飛ばす剣士なんて、見たことねーぜ?」

「ガキンチョ、何か前よりもっともなこと言うようになったなー。まあ、確かに。あたしにだって剣士のプライドってのはあっから、ま、スコップかつるはしか、何か腰にぶら下げとくわよ。文無しだからね」

 ははは、とディージェイは笑っているが、ガデットは難しい表情だった。スコップを腰にした剣士など見たこともない。無論、素手でロックドラゴンを吹っ飛ばす剣士なんてのも見たことはないのだが。

「親父がさ、稽古付けられるくらいの腕のある奴がもう一人くらい欲しいとか言ってたから、それで剣を買えばいいさ。ま、俺の町の武器屋とか鍛冶屋でディージェイが満足するくらいの剣はないだろうけど、スコップよりはマシだろうしさ。どおだ?」

「うーん。人に教えるような上等なモンでもないんだけど、背に腹は変えられないってね。またしばらくお世話になろうかな? リッシュちゃんが来たときはどっかに出てるから、安心して」

「だーかーらー! リッシュとはまだそういうんじゃねーよ!」

 リッシュ・ノーブルとはガデットの恋人で、同じ町に住む、穏やかな少女のこと。ディージェイとも面識があり、ガデットの父親、ランス・マーベリックとも親しい。二人は幼馴染でもあり、ディージェイが最初に会ったときには、まあいい雰囲気だった。


 ガデットの町はロックドラゴンに遭遇した荒地から歩いて十五分ほどで、森に囲まれた人口五千人ほどの小さな、そしてのどかな町である。「勇者のあかし」大会という、ドラゴン狩りのお祭りがあるが、それ以外で争いごとは殆どない。

 若いガデットには退屈な町だったが、のんびり暮らすにはうってつけの町である。

 ガデットが、ロックドラゴンは後で町内会で回収して金に買えると提案し、ディージェイは「ご自由に」とだけ返し、二人は町に戻った。


 その荒地から更に北にある森から、疲弊した三人の騎士が町を目指していたのだが、ガデットはそのことには気付いていなかった。

 風の精霊・ジンニーと契約しているディージェイはそれを察知していたのだが、話題にもせず気にもせず、ガデットと雑談しつつ、二度目になる町に向かってのんびりと歩いていた。



『第三章~ダークグル』


「そこの三人! 止まれ!」

 一級闘士{ファイター}の称号を持ち、一級剣士{ナイト}のディージェイと親しいガデット・マーベリックの住む小さな町の入り口で、町の自警団のリーダーを勤めるギム・グレス二級銃闘士{セカンド・ガンファイター}が、ツーバレルのライフルを構えて叫んだ。

「俺たちはだだの旅人だよ。盗賊にでも見えるってか? 銃を降ろしてくれ」

 カシュミール・ニードリヒが柔らかい口調で返すが、ギム・グレスはライフルを構えたままで、狙いは三人組の一人、白髪の女性に向けられている。

「その鎧……お前たち、帝国の人間か? この町は中立だ。厄介ごとを持ち込んでもらっては困る」

 ギム・グレスが言う鎧は、三人の一人、ラプラッグ・ディーゼンが身に付けている、軽金属装甲をあしらったライトメイルのことだった。ラプラッグが不服そうに応える。

「我々はそう、旧帝国の人間だが、中立のこの町に入るのに不都合があるのか?」

「旧帝国? 隣国と揉めているとは聞いていたが、戦争に負けたのか?」

 ギムのライフルは、無言で無表情の、白い肌の女性に向けられたままだった。応えたのは計装で商人のように見えるカシュミールだった。

「もっと事情はややこしいが、アンタにゃ関係ないだろう? 俺たちは宿と食事が欲しいだけだ。ちょいと治療もしたいしな。金ならあるよ。ここは中立だろう? だったら入れてくれてもいいだろうに」

 なあ、と付け加えようとしたカシュミールにライフルが向けられる。

「男! 迂闊に動くな! 俺はこれでも銃闘士{ガンファイター}だ! この距離ならは狙いは外さないぞ?」

「銃闘士だと? そんな安っぽいライフルでか? まるで狩人だな」

 相変わらず不満そうに、ラプラッグが言う。

「見た目よりも威力はあるが、試してみるか?」

 町の地主家系の一人であるギム・グレスは経済的にはかなり裕福で、持っているライフルも町では高価なものだったが、ライトメイルと黒いマント姿のラプラッグは、安っぽいと評した。

「お前が本物の銃闘士ならば、俺に当てることも出来るだろうが、俺の名を聞いても引き金を引けるか? 我が名は――」

 言いかけたラプラッグが止まった。

「我が名は、何だ? ペンドラゴンとでも名乗るつもりか? この俺、ギム・グレス様にハッタリやこけおどしが通用すると思うなよ?」

「ギム・グレス? ……聞いたことねーな。アンタ、本当に銃闘士か? 騎士団連盟の登録票には、そんな名前、なかったぜ?」

 ラプラッグはマントをぐいぐいと引っ張られて言葉を止めており、カシュミールがそれを継いだ。ラプラッグのマントを引いているのは、未だに無言の白い女性だった。カシュミールがからかい口調だったので、ギム・グレスの語気が荒くなる。

「二級銃騎士{セカンド・ガンファイター}のギム・グレス様だ!」

「ああ、二級{セカンド}か、なるほどな。連盟に登録されるのは一級称号者だけだから、アンタの名前はなかったって、そーいうことか。しかしよぅ、二級の旦那。ちょいと怪我をして腹減ってる旅人を迎え入れるくらいの優しさは、この町やらアンタにはねーのかい?」

 騎士道と規律を実直に守るラプラッグ・ディーゼンに対して、カシュミール・ニードリヒは見た目同様、人との交渉事に長けている。ギム・グレスにはまだ明かしていないが、二人とも二級騎士{セカンド・パラディン}で、真正面から戦えばギム・グレスに勝ち目などない。騎士に銃弾など通用しないからである。


 剣士と騎士の違いはここにある。

 二つとも剣術を主とした称号なのだが、例えば、剣士はライフルの弾丸を避けるが、騎士はライフルの弾丸を切り落す。

 使う剣も、剣士がどこにでもありそうなものを使うのに対して、騎士は専用に精錬された金属を用いた特殊な剣を使うので、ライフルの弾丸で傷を付けることは出来ない。そして、カシュミールとラプラッグの腰には、騎士専用の剣があり、二人が本気ならば、ギム・グレスと自慢のライフルは、喋るより早く両断されている。

 疾風{しっぷう}の二つ名を持つラプラッグならば、瞬きよりも早くギムの首をはねることなど造作もなく、実際、そうしようと剣に手を伸ばしていたのだが、漆黒の、イーグルナイツの刺繍の入ったマントをぐいぐいと引かれているので、ギムはまだべらべらと喋っていた。


「戦ばかり続ける帝国の人間を、それも武器を持った者を、易々と町に入れることはできない。俺はこの町の自警団のリーダーでもある。しかしだ……」

 カシュミールが物腰低くで交渉したのが功を奏したのか、町の自警団を率いるギム・グレスは態度を少し柔らかくした。ライフルは構えたままではあるが。

「お前たちが事情を話して、かつ、武器を預けると言うのなら、町を案内してもいい。俺は分からず屋の堅物ではないからな」

 カシュミールとラプラッグ、そして、背後にいる無言の女性に向けて、ギムはゆっくりと言った。応えたのはカシュミールだった。

「おお、何だ、話の解る旦那じゃねーか。銃闘士だったか? ついでに、自警団のリーダーか。まあ、何でもいいんだが、俺はカシュミール・ニードリヒだ。察しの通り帝国の人間だよ。武器を預けるのは構わんが、町で強盗でも出たら、俺は素手で戦えってか?」

 大袈裟なゼスチャーを交えつつ、カシュミールは冗談半分といった調子で答えた。

「カシュミール? どこかで聞いた名前だな? 町には強盗なんていないし、武器は一旦預かるだけで、町を出るときには必ず返すと約束しよう。この、ギム・グレス様の名に誓って」

 ラプラッグが、大袈裟な奴だ、と言いたそうな顔をしていたが、ずっとマントを握られているので無言で通した。交渉事はカシュミールに任せろと、そういう意味らしい。

 カシュミールがサヤに収まったままの剣を腰から外して、ライフルを構えるギムに差し出した。

「銃闘士の旦那。これは俺の宝物だからよ、大事に扱ってくれよ?」

「ああ、解っている。しかし、見事な作りの……待て!」

 カシュミールから剣を受け取り、ライフルをようやく下げたギム・グレスが声色を変えた。

「鷲{わし}の模様に、黒塗りのサヤで、ルビーの飾り? ……カシュミール? お前、騎士{パラディン}か?」

「え? ああ、まぁ、いちおうな。問題あるかい?」

 カシュミールの剣、黒いサヤに収まったロングソードは騎士専用のもので、所有者以外の人間はサヤから抜くことが出来ないように術式が施されている。埋め込まれた二つのルビーに黒魔術式の結界を応用した能力があり、サヤと刃を固定している。真っ赤なルビーは鷲の瞳部分にあって、それはラプラッグのマントに小さくある刺繍と同じ模様だった。

「鷲の紋様の剣を持つ騎士で、名はカシュミール……? お前、ひょっとして……「殄滅師{てんめつし}の翼」か! ということは、後ろの女が――」

「その通りさね、銃闘士の男!」

 別の声が割り込んだ。

 カシュミールではなく、ラプラッグでもなく、ギム・グレスでもない。無言を続ける白髪の女性でもない。

「イーグルナイツは全滅させとけって、ランスロウの野郎に言われてるんだが、アンタも一緒に死ぬかい? ははは!」

 女性の声だが、姿が見えない。ラプラッグは剣を握って周囲を見渡し、カシュミールは半笑いのまま目だけで辺りを伺い、ギムはライフルをあちこちに向けるが、どこにも姿はなかった。

 場所は町の入り口の開けた野原で、木製の低い柵と、太い樹木が数本と、自警団の休憩所を兼ねた小さな建物だけで、頭上は晴れ渡っていて小さな雲が幾つかあるだけ。いつもと同じ町の入り口に、余所者、帝国の人間と言われた三人と、町の自警団のリーダー、ギム・グレスと、同じく自警団の若者が二人、それだけだった。ラプラッグが鋭い視線を周囲に飛ばしつつ、剣を握っているが、まだ抜いていない。

「殄滅師の翼、なんて、大袈裟な名前だな? 貴様らの第三騎士団、イーグルナイツは何とも歯ごたえのない連中だったさ。一人殺るのに三秒で、それが二十七人さ! ははは! 残ったのは貴様ら三人! 合わせて十秒以内だな?」

 弾むような若い女の声は、頭上から聞こえているようでも、耳元で聞こえるようでもあった。

「誰だ! 出て来い!」

 ギムがライフルを構えて叫ぶと、妙なものが見えた。

 ギム・グレスとカシュミールたちの間に目が現れた。二つの目で、まばたきをしていて、まつげがあって、瞳は青い。しかし顔ではなく、目だけだった。それが歩く速度で移動していた。女の声が続ける。

「逃げ足が自慢の騎士どもの後始末なんて下らない仕事はさっさと終わらせて、あたしは城に戻ってランチの続きさね。しかしなぁ、ランスロウの野郎に隠密行動を、とも言われているからな。もう三人ほど始末しなきゃあならないらしいな。全く、ガキの使いじゃああるまいし。まあいいさ、とりあえず……」

 宙に浮かぶようだった二つの目が消えて、ギム・グレスの左にいた若者が、弾け飛んだ。

「……死ね」

 バン! と派手な音がして、ギム・グレスの部下である自警団の若者は、上半身の肉片と血液を撒き散らして、爆発した。左半身とライフルを真っ赤に染めたギム・グレスは、状況が全く解らず、硬直していた。

 バン! 二度目の爆音で、ギムの右にいた若者も爆発した。二人は腰から上を失い、膝を突いてから、倒れた。左右から真っ赤な爆発を浴びたギムは全身を赤く染めて、目を点にして、緩慢な動きで辺りを見渡していたが、腰から下だけになった若者二人と、帝国の人間であろう三人以外に人影はなく、ライフルを向ける対象もなかった。

「ははは! 毎回思うんだがね、人間ってのは、何とももろいもんだね? お前らは剣だの銃だのを振り回すのが好きらしいが、そんなものが何の役に立つんだい? 例えば――」

「抜刀!」

 ガン! 三度目の音は、ラプラッグが抜いた剣が「何か」を弾いた音だった。

「無事か? 自警団の男!」

 真っ赤なルビーを二つ埋め込んだ剣は、ギム・グレスの頭の真横に振りかぶられていた。ラプラッグが抜いた片手持ちのロングソードは、特殊金属を精錬して術式を施してある騎士専用の剣で、両刃が鏡のように光っている。顔の横にその刃があるギムだったが、何が起こっているのかは把握していない。

「ギムと言ったか? 無事ならば返事をしろ!」

 ラプラッグが剣を構えたまま、強く言うと、ギムが「はい!」と応えたが、二人の若者の血を全身に浴びているので、重症のように見えた。

「”破裂{ラプター}”を、斬るか。ははは! 殄滅師の翼、疾風{しっぷう}は伊達じゃあないと、そういうことかい?」

「俺を知る者ならば、姿を見せろ。鷲の翼、ラプラッグ・ディーゼンに”透明{トランスペアレンス}”など、無意味だぞ?」

 くくく、と笑い声がして、再び二つの青い目が現れて、それを中心に顔が浮かんで、数秒で全身が見えた。

 華奢な、痩躯の若い女だった。

 青みのある黒い長髪は腰まであり、青い目は釣りあがっていて、真っ赤な口元はにやにやしている。長髪と同じく黒い服装は胸元や腹、太ももが露出していて、足元も黒い革靴だった。左手に小さなナイフを持っている以外に、武器らしいものはない。挑発するように常に笑っているが、瞳は冷たい。

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