裏仕事
夜勤を終え職員控室で朝食を食べていたら、近くで新聞を読んでいた事務長が「馬鹿な奴等だ」と独り言を口にした。
「どうかしたのですか?」
問いかけに顔を上げた事務長は点けっぱなしだったテレビの画面を指さし「これだよ」と言う。
画面には都内の病院で職員全員がグルになりスラムの住人を拐い臓器売買に拘わっていた事を告げるニュースが流れていた。
「これですか、ホント馬鹿ですよね」
「スラムの住人と言っても、日本の国籍を有しそれなりの税金を納めている人たちを拐うから警察に目を付けられるのだ。
活動拠点も1つ2つ病院が潰れても代わりが沢山ある都会では無く、私達のように地方に造ればよいのに」
「この病院が出来るまでは、この辺の人たちが病院に行くと帰りは翌日になるほど遠方にしか無いですからね」
「そう無医村ばかりのこの地方に活動拠点の病院を建てたお陰で、臓器売買や違法な移植手術などの裏仕事を行っても必要悪として厚生労働省も見て見ぬふりする。
拐ってくる奴等も税金も払わずにのうのうと暮らしている不法入国者だから、警察に目溢ししてもらえるうえ時には不法入国者の情報も貰えるからな」
「裏で儲けた金を表に還元してくれるので私達職員の給料は同じクラスの病院の3倍頂けていますから、ありがたい事です」
「その金で巡回バスを運行して、地域の皆にもありがたがってもらえているからな」
「それにこの地方の人たちの健康管理を此処で全て管理しているから、高齢者を少しばかり間引いても家族や周りの人たちに疑われず済みますからね」
「高齢者を間引く毎に年金機構から謝礼金まで貰えるのだから笑が止まらないな」