妹に夢中なはずの公爵様から求婚されました。助けてください
「アメリア・ダグラス嬢、私と結婚してくださいますか?」
この人は自分が何をしているのかわかっているの?
「貴女のことをお慕いしていました」
嘘だ。この人が愛しているのは私の妹だ。
仲良し姉妹と歪んだ青年の三角関係のお話です。
※続きは連載版に上げさせていただきます。せっかくブクマとポイントをいただいたのに、申し訳ありません!平にご容赦ください!
今日のパーティは規模の大きなもので、国王陛下夫妻や有力貴族の面々が出席していた。
私たち姉妹も当然いつもより気合の入った装いでパーティに臨んだ。
私はコバルトブルーのドレスにパールのアクセサリーを合わせ、髪は編み込みをいれてまとめて白いバラで飾り付けた。
シャーロットはレースとフリルをふんだんにあしらった可愛らしいコーラルピンクのドレスにダイヤモンドのアクセサリーを身に着けている。
髪は私とお揃いに、編み込みを入れたまとめ髪に白いミニバラを飾り付けている。その姿はまるで春の妖精の様。会場にいる皆が彼女の虜になるだろう。
「シャーロットとても綺麗だわ。まるで妖精みたい」
「ありがとう姉さん。でも、何回も言い過ぎじゃない?」
「何度言っても言い足りないわ!」
思わず前のめりになると「はしたないわよ」と冷静にたしなめられた。私の妹はいつも冷静だ。本来シャーロットはもっとシンプルなデザインが好んでいるのだけれど、今日は特別に私の趣味が満載のコーディネイトを着てくれているのだ。これが興奮せずにいられようか。屋敷で支度をしているときからずっとそばで綺麗!可愛い!天使!と言われ続けたせいでシャーロットは若干辟易気味だ。私がやかましくなるとわかっているのに、頼み込めば着てくれるのはきっと愛故だろう。そうに違いない。
一人勝手に確信を持っているとシャーロットがアクアマリンの瞳でじっと私を見つめてくる。いや、よくみると髪を見ている?シャーロットは自分の髪に触れ、俯きながら頬を染めポツリと呟く。
「お揃い……嬉しい」
はーーーああああああ!!??私の妹が可愛すぎる!!!!
シャーロットの可愛さに身もだえしながら思わず天を仰ぎ、両手で顔を覆うと後ろから声をかけられた。
「やあ、二人とも。楽しそうだね。僕も仲間に入れてもらえないかな?」
嫌です、仲間に入れてあげません。と、言うわけにもいかないので、妹ラブモードから令嬢モードに切り替え淑女の礼をとる。妹も私に倣う。
「ごきげんよう、セドリック様」
「ごきげんよう麗しゅうございます」
私たちがいちゃついているところに割って入って来たのはローディア公爵、セドリック様。輝く金の髪に深緑の瞳。整った容姿と類まれなる才覚を持ち、弱冠21歳にして家督を継ぎ、宰相補佐に任ぜられ陛下からの信も厚い将来有望なお方だ。だが、私たちにとってはただの面倒な人に過ぎない。何故かというと、彼は妹に夢中なのだ。
さかのぼること二年前。15歳になり社交界デビューした妹にセドリック様は一目ぼれしてしまったのだ。無理もない、極上の絹糸のような金髪に透明度の高いアクアマリンの瞳、白磁の肌、薔薇色のくちびる。天使のような美しさに社交界は騒然となった。妹の美しさはデビュー前から噂になっていたが、まさかこれほどとは思わなかったのだろう。
「どうだ、私の自慢の妹は!」と優越感に浸っていられたのもほんの束の間、毎日のように届くプレゼントの山。押し寄せて来る求婚者たち。野獣…失礼、令息たちの対応に追われ、地獄のような日々が続いたが、それもしばらくして収束していった。理由は妹の人となりを知ったからである。妹は幼いころから天才と呼ばれていた。何をやらせても完璧にこなし、性格は冷静沈着、迅速果断、まさに為政者の器だったのだ。お父様も「男に生まれていれば天下がとれただろうに」と何度も惜しんでいたほどだ(貴族としてはまずい発言だが)。自分よりも遥かに優れた能力を持った妹を妻に迎えるのが重荷になったのだろう。妹を美しい人形くらいに思っていた令息たちは尻尾を巻いて逃げていった。中には数名粘った者もいたが、妹のつれない態度に諦めて去っていった。セドリック様を除いて。
「今日の君たちは格別美しいね」
まずは私たち姉妹両方を褒める振りをして、妹を絶賛する。いつもの流れだ。いい加減諦めてくれないかしら。
「特に」
ほら来た!
「アメリア嬢、ドレス、とても似合っているよ」
「は?」
今私はハトが豆鉄砲を喰らったような顔をしているのだろう。驚愕で体が硬直する。
妹より先に私を褒めた?どうして?今までこんなこと無かった。
「今日の君は月の女神のように美しい」
私の手をとり、口づける。私の瞳を射抜くように見つめながら。思わず「ヒィッ……」と小さく悲鳴を上げてしまった。そんな私の様子を見たセドリック様はまるで嘲笑うかのように口の端を釣り上げた。怖くて、助けを求めて周囲に視線を彷徨わせると驚愕と怒りを表情に滲ませた妹と目が合う。こんな妹の顔は初めて見た。妹が一歩足を踏み出したのと同時にセドリック様が私の手を取ったまま跪いた。何事かとセドリック様に視線を戻す。
何?この人は何をしようとしているの?
「アメリア嬢」
これじゃあまるで
「私と結婚してくださいますか?」
セドリック様の瞳はまるで人を貶め歓喜する悪魔のように爛々と輝いていた。
お読みいただきありがとうございました。
すみません、続きます。
※続きは連載版にてご覧いただけます。よろしくお願いいたします。