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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

さまざまな短編集

時代錯誤<ヴァルハラ>の狙撃手

作者: にゃのです☆

「お前、まだボルトアクションライフル使っているのか!?」


 戦友のユリックが声をかけてくる。

 塹壕で銃弾が飛ぶ中、ユリックの手には二つのコップが握られ右手のコップを俺に差し出す。

 俺もその差し出されたコップを受け取って中身の匂いを嗅ぐ。


「これ、酒じゃん」

「そうだよ。酒じゃなきゃこんなところまで持ってこないし!」

「照準がブレる」

「お前には任務はないじゃんか」

「そうだけど」


 塹壕に籠って戦うなんて一体いつの戦術を参考にしているんだか……。

 マシンガン、迫撃砲、重砲が再び主役の座になった今、塹壕戦が一番防御しやすいというのはわかる。

 だが、今さら大昔の戦術にすがるとは……。

 

「で、戦況はどうなってる?」

「偵察員だろ。自分で確認しろよ。ほれ」


 すまんすまんと言いつつ差し出した双眼鏡を手にユリックは塹壕に設けた偵察用の場所から覗き始める。


「膠着状態か」

「塹壕戦なんだし当り前だろ」

「だな」

 

 塹壕戦はつまるところ膠着状態戦だ。

 敵と味方が腹を探り合ってどこから突き破るか毎日が議論している状態。

 敵には弱体化しているように見せないために、俺らが百メートル単位で塹壕に配置されている。

 任務は簡単。

 偵察員と共同して敵偵察員の射殺と敵狙撃兵の排除。

 

「お、ハッケーン! 準備準備!」

「はいはい」


 ユリックは双眼鏡をそのままに言ってくる。

 愛銃の狙撃銃は最初に言われた通りボルトアクションライフルを使っている。

 五発一クリップ装填。

 現代の半自動小銃、アサルトライフルには負ける。

 手動排莢装填の時代遅れには荷が重い。

 銃自体も重く長くて取り回しが悪い。

 ユリックからも代えろよとずっと言われているが、こいつでしか仕事ができないのでな。


「情報」

「風速は二、右から左へ真横を突っ切る形。距離は七七二~七八〇メートル。標的の隙間は約一〇センチかける三〇センチくらいだな。大丈夫か?」

「ハイよ~、まぁ、大丈夫。木材で囲っていて貫通は難しいけど隙間があればいい。弾丸は八ミリだかんな」


 持っている銃は第一次世界大戦からの骨董品。ゲヴェアー九八を特殊改良した狙撃型小銃。

 専用の狙撃スコープ、改良した銃身たったそれだけで見違えるように命中率が向上。

 ただし手作りの為、数はそんなにできないのが難点。この銃も確か数百丁目だったと聞いた。

 整備については部品があることから今でも現役である。


「照準よし」

「いつでもどうぞ」


 引き金をじわっと引いてキープ。コンマ一秒でコトッと引き切る。

 瞬間、銃口から弾丸が飛び出て衝撃が銃床を伝って肩に響いてくる。

 覗き込んでいたスコープが揺れて照準をつけていた先の人物がどうなったのかは全く分からない。

 結果はいつも偵察員頼みだ。


「命中~。いつもながらに見事な腕だな」

「もう慣れた」


 そう言ってジャキッとボルトを操作し排莢。

 次弾を装填する。


「やっぱり、アサルトライフル持って来てやろうか? 接近戦はきついだろ?」

「大丈夫。そんなことは近い所ではないから」

「まぁ、一応護身用に持ってきてやるよ」

「はいはい」


 次元の狭間の戦い。

 ボルトアクションでのみ戦う。

 核や戦車、飛行機なんかは一切干渉しないずっと戦うヴァルハラのような戦場。

 そんな環境で今日も狙撃手はぼるとアクションライフル片手に狙撃を繰り返していく。


 最終射殺数は二千を超えた。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  企画参加ありがとうございます。 [一言]  特にどこの国とか、どこの戦場なのかもわからないヴァルハラのような戦場と言うファンタジーチックな塹壕で使われるボルトアクション銃。  短い作品…
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