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時空転移の秘密

登場人物

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

羽柴筑前守秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉



ゼファーと加藤段蔵が死闘を繰り広げていた頃、秀吉は


毎晩の様に大宴会を繰り広げていた、越後の地にて柴田勝家と


揉め事をおこし信長の許可も得ず勝手に兵を引き上げ帰って


きてしまったのである、当然信長は激怒し自宅謹慎を申し渡された


しかし自宅にておとなしくしている様な秀吉ではなかった


仲間と共に大量の酒を用意し多勢の芸者も呼んで毎晩


派手にどんちゃん騒ぎをしていたのだ、その日の朝も昨晩遅くまで


宴会をしていたせいで大広間にて大の字になってイビキをかいていた


多勢の男たちが雑魚寝に近い形で寝入っている、そんな時


夢見心地の秀吉の頭を蹴っ飛ばす者がいた


「痛っ!?・・・誰じゃ?人が気持ちよく寝ているところを!?」


安眠を邪魔された秀吉は不機嫌そうな顔で静かに目を開けた


するとそこに立っていたのは誰あろう信長であった


「起きんか、サル‼︎」


鋭い目つきで見下ろしながら秀吉に怒鳴りつけるが如く睨みつけていた


いっぺんに目が覚めた秀吉は跳ね起きる様に飛び起き、その場にひれ伏す


「こ、これはお館様、ワザワザ拙者の家にまでご足労いただけるとは


 見苦しいところをお見せしました‼︎」


信長はいぶかしげな表情で周りを見渡し静かな声で話しかけた


「なんじゃこれは?貴様は謹慎中だというのに宴会などしおって・・・」


しかし秀吉は悪びれることなく答えた


「しかし拙者、お館様の御言いつけの通り、一歩も自宅より


 出てはおりませぬ‼︎」


すると信長は目つきは鋭いまま口元だけ緩めた


「貴様は本当に口だけは達者よのう・・・まあ良い秀吉


 貴様に命令じゃ、播磨の別所長治に謀反の気配があるとの事


 貴様は至急、播磨に赴きその真意を確かめてまいれ


 別所長治の謀反が本当であればこれを討ち滅ぼして来い‼︎」


信長より新たな命令が下る、これは事実上、お咎め無しという事である


「ありがとうございます、この羽柴筑前守秀吉、身命を賭して


 お館様のご意向に添える様、働いて参ります‼︎」


その時、信長はニヤリと笑いボソリと呟いた


「別所長治の件がなければ、貴様の処分をどうしようかと


 思っていたところじゃ、運のいい奴め・・・」


そう言ってその場を後にする信長、その背中にいつまでもひれ伏す


秀吉、信長が居なくなるとその場で寝ていた者たちを叩き起こし


皆に呼びかける様に叫んだ


「皆の者、戦じゃ、戦になるぞ、起きろ、起きんかコラ‼︎」


秀吉陣営に活気が戻ってきた、にわかに忙しくなり、屋敷内を


バタバタと走り回る秀吉、そんな姿を見た妻のねねや部下たちが


嬉しそうに見つめていた。


秀吉に出陣の命令が下り、その準備で大忙しの中、その翌日に


ゼファーが帰ってきた、その姿を見たゾフィが少し驚いた様子で


声をかける


「あれ?ゼファーじゃない、意外と早く帰ってきたわね


 出ていく時の感じだともっと帰ってくるの遅いかと思って


 いたけど・・・」


「あんまり長く俺の姿がないとゾフィが寂しがると思ってね


 急いで帰ってきたというわけさ」


にこやかにそう答えるが、そんな言葉に逆に呆れ顔を浮かべるゾフィ


「ハイハイ、もうそういうのいいから、で?なんでこんなに早く


 帰ってきたのよ?上杉と北条を全て調べ終わったというんじゃ


 ないのでしょう?」


もはやいつもの事なので無感情のまま軽くあしらうゾフィ


少しがっかりというリアクションの後、珍しく真面目な顔で


話し始めたゼファー


「みんなはどうしている?全員に聞いて欲しい話があるんだが」


ゾフィは空を見上げて少し考える


「そうねえ、ライオスはまた一人で剣を振っていると思うわ


 ステイメンはけが人や病人の元を回っているはず


 フリニオーラは例の研究で部屋に篭りっきりよ


 ルキアは秀吉さんに呼ばれていたわ、何でも急な出発だとかで


 半兵衛さんや官兵衛さんと軽い打ち合わせをするって


 言ってたわ、急ぎなら魔獣使ってみんなを呼び出すけど」


「ああ、頼む」


ゼファーの真剣な表情に何かを感じたゾフィは氷のウサギ


アイシーラビットを5体呼び出し、メンバー達の元に


メッセンジャーとして使いに出した


「意外だねえ、アイシーラビットをメッセンジャーに使うなんて


 まああのウサギは魔力消費も少ないし足もそこそこ速いから


 メッセンジャーとして使えないこともないだろうけど


 もっと向いている魔獣がいそうなものだが・・・」


ゼファーの疑問に意地の悪い笑いを浮かべるゾフィ


「まあね、あの子達は私以外とは喋れないから結局書いた


 メモを持たせて行かせなきゃいけない分、二度手間だし


 メモを落としたりしたら、メッセージ自体伝わらないという


 リスクがある、でもねあの子を使うだけの十分な


 メリットがあるとしたら?」


「へえ、そんなメリットがあるんだ?俺には思いつかないけど


 さすが魔獣のエキスパート、参考までにそのメリットとやらを


 教えてくれよ!?」


ゾフィは得意げに話し始めた


「いいわ、アンタには特別に教えてあげる、これはある特定の


 人物に対する心象操作、まあぶっちゃければフリニオーラに対する


 嫌がらせよ」


「はあ?」


何を言っているのかわからないゼファーは素っ頓狂な声を上げる


しかしゾフィはニマニマとほくそ笑みながら説明し始める


「フリニオーラは最近、研究が進んでいないせいか、何かと


 私に突っかかって来るのよ、頭が悪いだとか考えが足りないだとか


 言いたい放題、ここは姉としての威厳を取り戻すために


 ビシッとわからせる必要があるの、フリニオーラはアンタとの


 模擬戦でアイシーラビットにトラウマがある、だから他のメンバー


 にはメモをくわえさせてメッセージを届けさせたけど


 フリニオーラ宛には何も持たせていない・・・」


そこでゼファーはようやく気がついた


「ま、まさかゾフィ・・・」


すると満面の笑みを浮かべ嬉しそうに語り始める


「そうよ、研究で集中しているフリニオーラの背後から


 後頭部に目掛けて氷礫をぶつけてやるのよ、そして


 一目散に逃げるの、文字通り脱兎の如くね、怒り狂った


 フリニオーラはあの子達を追いかけてここに来るって寸法よ


 どういい作戦でしょ!?」


ゼファーには言葉がなかった、その問いには何も答えず


ただゆっくりと首を振った、しばらくして真っ先に姿を見せたのは


血相を変えたフリニオーラだった、バタバタと音を立て


髪を振り乱しながら廊下を走って来たのである


「待ちなさい、この下等動物‼︎いつまで私をバカにすれば


 気が済むのですか!?私の魔法から逃げられるとでも・・・」


ヤレヤレといった態度で両手を広げるゼファー、しばらくすると


他のメンバー達も徐々に集まって来る


「おう、思ったより早かったなゼファー」


「何か収穫があったという事ですね?」


「越後では大変だったらしいな、後でその話も聞かせてくれ」


「あの忌々しい氷ウサギはあなたの仕業ですか!?」


ゼファーは辺りを見回し、小声で語り始める


「ここでは話しにくい、誰もいない室内で話そう」


いつもおちゃらけているゼファーのその態度で何か重大な事だと


察するメンバー達、メンバー六人以外誰も混えず屋敷内の部屋に


集まると、懐から一枚の札を取り出した


「それは?」


ルキアの問いかけに、答えるゼファー


「これは越後で戦った加藤段蔵という忍びの持っていた札だ


 撤退の際に使用しようとしていたから、かっぱらって持ってきた


 レスティアレ・ラドスへと繋がる重要な手がかりだと判断して


 他の調査をほっぽり出して戻ってきたという訳さ


 特に魔術の専門家であるステイメンとフリニオーラには


 じっくりと見て欲しいんだ・・・」


ゼファーからまず札を受け取ったルキアがステイメンと


フリニオーラに札を手渡した、まずステイメンの表情が硬くなる


「これは・・・なんとも難解な呪符ですね、暗黒魔術と


 神聖魔術が入り混じっています、かなり複雑な術式で・・・」


ステイメンがそう言っている時、その札を奪い取る様に


手に取り、マジマジと見つめるフリニオーラ、両眼を見開き


札を持つ手は震えていた、その明かに尋常でない態度に


戸惑うメンバー達


「おいフリニオーラ、その札に何かあるのか?」


「何か思うところがあるなら言ってみなさいよ、お姉ちゃんが


 聞いてあげるから」


「何かわかったのかフリニオーラ?」


ルキア達の質問が聞こえていないかの様に黙ったまま札を


見つめ続けるフリニオーラ、しかし急にゼファーの方を向くと


物凄い形相で睨みつけゼファーに近づいていくと胸ぐらを掴んで


責め立てる様に問いかけたのだ


「何で、何で貴方がこれを持っているのですか‼︎」


ゼファーに対し鬼気迫る勢いで問い詰めるフリニオーラ


メンバー達が唖然とする中で、問われたゼファー本人も


何が何だかわからないでいた


「いやいや、だから加藤段蔵とかいう忍者の爺さんがそれを


 持っていたんだって、レスティアレ・ラドスに逃げようとしたから


 その札を奪い取った、それだけだよ、俺に迫るのならもう少し


 ロマンチックに頼むぜ、まあ乱暴に迫られるのも


 嫌いじゃないけどね・・・」


ゼファーの軽口にも反応する事なく、ジッと札を見つめ続けている


フリニオーラ、明かに常軌を逸しているその態度に対し


ルキアが静かに優しく語りかけた


「なあフリニオーラ、君はその札のことを何か知っている様だね


 研究を続けていた君が、その札を見て分かった事を


 俺達にわかる様に説明してくれないだろうか?」


その言葉に深呼吸して落ち着きを取り戻そうとするフリニオーラ


しばらく目をとじ何かを考えていたが、思い立ったかの様に


皆の方を向いて口を開いた


「少々お待ちいただけますでしょうか?今から私が行っていた


 研究材料を持ってきます、それから説明いたしますから・・・」


異論がある者などいるはずもなく、皆はしばらく待つこととする


しばらくして山の様な書類を両手に持って現れたフリニオーラは


“ふう”っとため息をついてその書類群を床に下ろす、そして


その中から一冊の帳面を取り出し、あるページを開くと


先程の札も同時に持って、皆に見える様にその両者を並べた


それを見比べるメンバー達が驚愕の表情を浮かべた


「おい、これって!?」


「ほとんど同じ物じゃないの!?」


「各所、細かい所に差異はありますがほぼ同じ物と


 言ってもいい代物ですね」


「どういう事なんだフリニオーラ?説明してくれないか?」


問われたフリニオーラは大きくため息をつき説明を始めた


「皆さんが見ての通り、この札に使われている術式と


 私が進めていた研究の術式はほぼ同じ物だと言えます


 ただ一点、この札でわからないのがこの三つの印です」


フリニオーラは札に描かれている三つの印を指差した


それは魔術の専門家であるフリニオーラでも解読できない印だったのだ


「この印の謎が解ければおそらくこの札の完全解明ができる


 はずなのですが・・・」


険しい表情を見せるフリニオーラに言葉をかける者がいた


ステイメンである


「その印なら分かりますよ、それは私の専門分野ですから」


「本当ですか!?教えてください、この印は一体何なのですか!?」


フリニオーラは食い気味に問いかけた、優しく微笑み


軽く頷くステイメン、そして淡々と説明を始めたのだ


「その三つの印は私が所属していた聖教神師団のモノです


 それぞれが慈愛の神ミューぜ、真理の神ファルム


 規律の神ドラーヒムを示していて、その三女神の力を


 使い何らかの術を解呪する為のものと思われます、ただ気になるのは


 その刻印は時限型とでもいいますか、別の術が発動し


 それからタイムラグを経て発動する様になっていますね


 一体何の為にそんな事をしているのか皆目見当がつきませんが・・・」


ステイメンの説明を聞いても厳しい表情を崩さないフリニオーラ


「そういう事でしたか・・・謎は全て解けました、ただそれにより


 さらに大きな問題が浮上したのですが・・・」


解決したというのに浮かない顔をしているフリニオーラに対し


気になってしょうがないとばかりに問いかけるゾフィ


「解決したならどうしてそんな顔しているのよ?


 それに更に大きな問題って何?私にもわかる様に


 説明しなさいよ」


しばらく考え込んでいたフリニオーラは意を決した様にコクリと頷く


「わかりました、今から説明いたしますが・・・さて


 どこから説明すれば良いのやら、そうですね、まずは


 この札の説明からいたしましょう」


そう言うとスッと立ち上がり部屋のフスマをそっと開けた


すると皆の視界に隣の部屋が目に入る、隣の部屋も


同じような間取りであったが誰もいない為ガランとしている


「まずは我々がいるこちらの部屋を今私達がいる日本だとしましょう


 そしてこの敷居の向こうの部屋をレスティアレ・ラドスだと仮定します


 私は当初、この二つの世界は平行世界だと考えていました


 つまり世界は違えども時間軸は同じ、今我々のいる日本が


 3月14日の十時ならば向こうの世界レスティアレ・ラドスも


 3月14日の十時であると考えていたのです、こんな感じですかね?」


フリニオーラはこちらの部屋と隣の部屋の敷居をヒョイっと


飛び越えるように跨いだ


「同じ時間軸の世界、コッチとアッチを単に行き来するだけの事


 そう考えていたのです、しかしそれは違うことが


 判明しました、向こうからこちらの世界に転移する時


 時間すらも飛び越えて来るのです、文字通りそれは時空を越えると


 言っても過言ではありません」


そのあまりの内容に唖然とするメンバー達


「時間を越える?何じゃそりゃ、そんな事が可能なのか!?」


「嘘でしょ、そんな事が可能ならなんでもアリじゃない!?」


「にわかには信じられませんが、これまでの事を考えますと


 単なる仮説だとも思えません」


「しかし敵が時間すらも超越するってなら勝ち目なんか無いじゃん


 でも俺達は今まで勝ってきたぜ、どう言う事なんだい


 フリニオーラ?」


そんなゼファーの問いに真剣な眼差しで答える


「時空を越えるといってもそこまで万能ではないという事です


 ゾフィさんの言う通り、自分の思うがままに時間を越え


 歴史を塗り変えられるのであればそれこそ無敵です、しかし


 現実的にはそうはなりません、それはなぜか?過度な過去改変には


 歴史の修正力というモノが働くのです、わかりやすくいいますと


 自分の都合よく歴史を変えようとすれば、その修正力によって


 必ず元と同じ結果に導かれる、というモノです、それこそ


 神のような見えない絶対的な力が働くと思ってくれれば


 理解できると思います、だから例え時空を越えても大幅な


 過去改変などは不可能であり、それを強制的に行おうとすれば


 それこそ、歴史の修正力という神が如き存在に自分自身が抹殺


 されかねません」


その話を聞いたメンバー達はわかったようなわからないような複雑な


表情を浮かべていた、特にゾフィやライオスは感覚的に理解した


というだけであり、完全に納得したわけではなかった


「じゃあさ、敵が時空を超えてきているといっても


そんなに恐れる必要はないって事?」


「まぁ、ありていに言えばそうですね、完全に無警戒では


 ダメでしょうがその都度冷静に対処すれば我々であれば


 問題ないという事です、それにこうして札の謎が解けた以上


 我々の方から敵の所に乗り込むことも可能となります、ただ・・・」


饒舌に語っていたフリニオーラが急に暗い表情を見せた


「どうしたんだフリニオーラ、何か気になる事でもあるのか?」


「そういえば謎が解決しても大きな問題が浮上したって


 言っていたわね、どういうことなの?」


フリニオーラはどう説明すべきか考えていた


「その説明の前にこの札の秘密と時空転移についてお話いたします


 まず時空転移についてですが、そうですねぇ・・・」


フリニオーラはふとライオスに向かって視線を向けた


「ライオスさんにお聞きします、貴方は昨日何をしていましたか?」


突然質問されたライオスはやや戸惑っていたが少し考え答え始めた


「昨日か・・・昨日は朝はいつもの様に一人で剣を振っていたな


 午前中は官兵衛さんに頼まれて数人の若い男に稽古をつけていた


 午後はルキアに相手してもらって模擬戦を含めた剣の稽古して


 それから・・・」


すると続けざまに質問するフリニオーラ


「一昨日はどうでしたか?」


「一昨日も似たようなものだな、午後からルキアが


 半兵衛さんに呼ばれて居なかったから秀吉さんの宴会に


 顔を出したってくらいだな・・・」


それを聞いていたゼファーが顔をしかめる


「うげ~そんな毎日のどこに面白みがあるのさ?デートとか


 女性との食事とか面白そうなプランは無いのかい?」


「うっせ~よ、お前と一緒にするな、で、それを聞いて


 どうだというんだフリニオーラ?」


そんなライオスの素朴な疑問に皆が頷く、一体何を聞きたいのか


何が言いたいのかさっぱりわからないからである


「スミマセン、これから説明いたします、今ライオスさんが


 言ったように毎日似たような生活を繰り返していても


 その内容は少しずつ違っていたりするものです


 寝る時間や起きる時間、食べた食事内容などを含めれば


 全く同じ日常などというモノは存在しないでしょう


 それが経験であり記憶の蓄積というモノです、では生身で時空を


 超えた場合、それはどうなると思いますか?」


その瞬間、何かに気が付いたようにゼファーとステイメンが


”あっ”という声を上げた、その反応を見て大きく頷くフリニオーラ


「そうです、例えば札を使って今から三年後に時空移動をした場合


 移動自体は一瞬かもしれません、しかし本人は三年の月日が


 経っているのです、その三年間分の記憶や経験の蓄積がその一瞬で


 頭に流れ込んでくるのです、肉体的にもそうです、一瞬で三年分の


 代謝をおこなうのです、それがどういう事を招くのか?私にも


 想像できません、しかし膨大な記憶と経験の流入は脳と精神に


 凄まじい負担を強いるでしょう、人間がそれに耐えられるとは


 思えないのです、そして三年分の代謝を一瞬で行った場合


 どの様な反動が来るのか、考えるだけでも恐ろしい、過去へと


 移動した場合はこれとは逆の現象が起こるでしょう、一瞬で


 消えていく記憶と経験、急激に若返る体、人間がそれに


 耐えられるとは思えないですのです・・・」


思わずゴクリと息をのむメンバー達


「じゃあどうやって時空を移動しているんだ?現にそれを


 可能としているからこそ、その札が存在するんだろ?」


「はい、それを今から説明いたします、時空を超える為の数々の問題


 それを解決するために私が考えたのが暗黒魔法による”呪い”を


 利用することなんです」


ぞれを聞いたゾフィがいぶかしげな表情を見せる


「呪い!?随分と物騒なワードが出てきたわね、そもそも


 呪いなんて相手に嫌がらせする以外どう使うっていうのよ?」


「はい、呪いとは本来、対象に向けて厄災や不幸をもたらす為の


 儀式であり、魔術なのですが、その効果だけを利用したのが


 この札の術式なのです、皆さんはコールドスリープという


 言葉を知っていますか?」


その質問に答えたのはルキアであった


「コールドスリープ!?氷結魔法で対象を冷凍漬けにして


仮死状態にしてしまうというアレだろ?封印として使われる


 事もあるっていう・・・」


その答えにコクリと頷くフリニオーラ


「原理は同じです、今回は氷結魔法によるコールドスリープではなく


 暗黒魔法の呪いによって体を仮死状態にし人体の代謝や


 脳の活動を遮断します、その状態で時空を超え目的の場所と


 時間へと転移するという原理で術式を組みました、しかしこれには


 大きな欠点がありまして、その問題の解決に時間がかかっていたのです」


ふむふむと話を聞いていたゾフィが素朴な疑問を投げかけた


「その大きな欠点って何よ?聞いたところ問題無さそうじゃない」


「暗黒魔法による呪いで仮死状態にするのはいいのですが


 それでは目的地についても呪いがかかったままであり


 いわば死体が届けられるような状態になってしまうのです


 出発時に呪いをかけ到着時に呪いを解く、それでなくては


 時空転移など不可能なのです、生身では時空は越えられませんから」


フリニオーラの説明の後、ステイメンが”なるほど”とばかりに


手を叩いた


「だから三女神による時限式の解呪の刻印が施してあったという


 事なのですね!?、呪いで人体を仮死状態にし時空を超える


 そして目的地に到着したら三女神の刻印によって呪いを解呪すると」


”その通り”と大きく頷くフリニオーラ、ようやく皆もその札の原理を


理解した、謎解きが終わり皆が感心していたが、以前浮かない顔を


しているフリニオーラ


「どうしたんだいフリニオーラ?札の謎は解けたんだから


 もう問題は無いはずじゃん」


「そういえば札の謎が解決してもさらに大きな問題が


 浮上したと言っていたな、一体何がそんなに問題なんだ?」


ゼファーとライオスが何気なく問いかける、しかしフリニオーラが


言っていた大きな問題とは、メンバー全員想像もしていなかった


恐るべきものであった、フリニオーラはその説明を始めた


「はい、浮上してきた大きな問題とは、この札を作ったのが誰か?


 という事なのです・・・」


ルキアとステイメンが思わず顔を見合わせる


「誰って・・・例の敵の魔法使いじゃないのか?」


「銀の仮面を付け、黒マントを羽織っているという暗黒魔法を


 得意としている魔法使いですね?札の術式にも暗黒魔法が


 使用されていますし、間違いないのでは?」


その二人の推測に目を閉じ、静かに語り始めるフリニオーラ


「いえ、それは違います、先程私の研究していたノートを見せましたよね?」


「ああ、あの札に施されている術式とほぼ同じだったヤツだな


 偶然同じアプローチで術式を組んでいたなんて奇遇というか


 不思議ではあるが、目的は同じなんだから有り得る話だろ!?」


ライオスの言葉に大きく首を振るフリニオーラ


「偶然同じアプローチで全く同じ術式を組む何てことはあり得ません


 魔術による術式を組む時、術者の癖というか個性や特徴が出るのです


 今まで魔術において時空を超えるなんて発想自体、聞いたことも


 ありませんから過去に参考にするものもなく、完全に一から


 作らなければなりません、それにもかかわらず別の術者が


 全く同じアプローチで全く同じ術式を組む・・・絶対にあり得ません


 それこそ天文学的な確率です、しかも三女神の刻印は私を始め


 魔法使いでは絶対に思いつかない発想なのです、ここから


 導き出される答えは一つしかありません・・・」


メンバー全員に何やら不穏な空気が漂う、息を飲みその答えを静かに待った


「この札を作ったのは、未来の私という事になります・・・」


あまりに予想だにしていなかった答えにメンバー全員言葉を失った。




 




 



 

今回は異世界転移とタイムトラベルのお話が中心となりました、かなり中二病全開で相対性理論など

ガン無視の独自こじらせ設定で突き進みましたがいかがでしたでしょうか?物語もクライマックスに向け

徐々に伏線回収していきたいと思っていますのでよろしくお付き合いください、では。

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