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外伝 遺志を継ぐ者

クルム・ハイドニール…世界最強と言われている魔法使い”クルム魔法学校”の総帥

ビル・フリニオーラ…後のクルム・フリニオーラ、義母に虐待を受けていた所をハイドニールに拾われる

バレルダイン…事務能力に長けていてよく気が付く男子生徒、ハイドニールの頃から補佐役を務めている

レイム…クルム魔法学校に入学してきた女子生徒、明るくて積極的な性格、フリニオーラに憧れている

ベルゲンバッハ…他校から編入してきた優秀な生徒、負けん気が強く現在の主席

フリニオーラは床からムクリと体を起した


外では小鳥のさえずる音が聞こえ


窓からはまぶしい朝日が飛び込んで来ていた


いつの間にか夜が明けていた事にも気が付かなかったが


特に気にする事も無くゆっくり立ち上がり部屋のドアを開けた


「おはようございますフリニオーラ様・・・


どうかなさったのですか?


顔色が良くないようですが・・・」


声をかけて来たのはバレルダインという男子生徒だった


彼は4つ年上の18歳で魔法の腕は中の上といった程度だが


非常に事務能力に長けていて気が利く為


先代のハイドニールの時から総帥付きの


補佐役的な役目をしていたのである


「バレルダインさん


 講堂に全校生徒を集めてください


 私から発表したい事がありますので」


暗く沈んだ口調で語りかけたフリニオーラ


実際寝ていないので体調もあまり様くなかったが


そんな事を気にしている場合ではないと思っていた


「わかりました


 すぐにそう手配いたします


 20分後には講堂に全員集めておきますので


 その時間になったらおこしください」


バレルダインはそう言って足早に出て行った


20分がたち全校生徒が集められていた


魔法学校総帥としてフリニオーラの就任後初の発言に


皆の注目が集まっていた


そして講堂に入って来たフリニオーラが全員の前で口を開いた


「昨晩私の師匠であるハイドニールが


 魔王アドギラルロックに敗れました


 よってこれから私は魔王打倒の為の


 研究に入ります


 よほどのことが無い限り


 私の研究の邪魔をしないでください


 もし邪魔をするものがいたら・・・


 以上です」


その重くて暗い口調で師の敗北を皆に告げたフリ二オーラ


そして邪魔をする者は殺す・・・とその目は言っていた


その報告に生徒たちはまだ信じられない様子だった


あの世界最強の魔法使いハイドニールが敗れた


それは魔法使いを目指す者にとってあまりに衝撃的な事であった


部屋に戻ると心痛な面持ちでバレルダインが話しかけてきた


「私には信じられません・・・


 あのハイドニール様が敗れたなんて・・・」


そんなバレルダインの心境を気にする余裕も無い


フリニオーラは事務的な言葉で告げた


「先ほども言った様に私はこれから


 アドギラルロックを倒すための研究に入ります


 今後事務的な事柄は全てあなたに任せます


 私の名前を使ってもかまいませんから


 あなたの良きように進めてください


 そしてあなたの判断で補佐を選出し


 部下として使ってもかまいません


 それは生徒の席次順位に関係なく


 あなたに全権を与えます


 いいですね!?


 それでは私が呼ぶまで部屋には誰も


 入って来ないでください、以上です」


無感情な口調でそう言うと部屋に入っていった


それからというものフリニオーラは


寝食も忘れて魔法の研究に没頭した


師の書庫には様々な魔道書があり研究には困らなかった


その中にはハイドニール自ら書き記した物が3割ほど


バーデンブルグを始め歴代のクルムが書き記した魔道書が4割


そしてその他の太古の昔から伝えられている物や


荒唐無稽とも思える斬新な発想で書き記されていた物が


3割ほどあり読む物に困る事は無かった


ある時フリニオーラが部屋を出るとバレルダインの横に


一人女の子が立っていた


目を輝かせて早足でフリニオーラに近づくとペコリとお辞儀をして


「初めましてフリニオーラ様


 私は今日からバレルダイン様の


 補佐をさせていただく事になった


 レイムと申しますよろしくお願いします


 私フリニオーラ様に憧れてここに入ったんです


 まさかこんなにもお近づきになれるなんて


 本当に夢の様です!?」


興奮気味に話しかけてくるレイム


背の高さはフリニオーラと同じくらいだが


どう見ても年下の様だった


「私に?あなたは私を知っているのですか!?」


その質問に対し食い気味に答えるレイム


「今、魔法使いを志す者に


 フリニオーラ様を知らない人なんていません


 史上最年少で”クルム”の名を継いだ


 天才魔法使いクルム・フリニオーラは


 みんなの憧れです‼」


興奮気味にグイグイ来られて思わずたじろぐフリニオーラ


そして自分を見るそのキラキラとした眼差しを見て


思わず考えてしまった


『あぁこの子は私だ・・・


 師匠に憧れて師匠の様になりたくて


 背中を見ていた私と同じだ


 嬉しくない訳じゃないけど


 正直今はウザったい・・・


 師匠もこんな気持ちだったのかな?


 御免なさい師匠・・・』


困ったような表情を浮かべるフリニオーラに


バレルダインが口を挟んだ


「こらレイム


 フリニオーラ様はお疲れだし


 研究の邪魔をしてはいけないよ


 すみませんフリニオーラ様


 この子にはよく言って聞かせますので」


今のフリニオーラにとってこの配慮は有難かった


そしてバレルダインを重宝した師匠の気持ちもよくわかった


『師匠は人を見る目も確かだったんだな


 それに比べて私は・・・』


そんな事を考えながら再び研究に戻る事にした


本を探す為に書庫に寄ったフリニオーラは


部屋の端の焼け焦げている部分を見つめ感慨にふけっていた


『あれは以前私が


 バンデローダさんと争った跡だな・・・


 未熟だったよなぁ・・・


 本当に私は師匠に


 迷惑ばっかかけて来て・・・』


そんな事を思いながら本棚を物色していると


ポトリと一冊の本が床に落ちた


手に取ってみるとそれは小さな本で


”はじめての魔法入門”という題名の物であった


ページをパラパラとめくってみると


その内容は図解で説明付きの子供向け入門書であった


「こんなものまで置いてあるのか


 初心者の子供が入学して来た時用か


 師匠の子供時代に使っていた


 思い出の品なのかな・・・」


そんな事を考えながらその本を本棚に戻そうとした時


思わず手が止まった


「いやちょっと待って・・・


 ここは全国からエリートが集まる学校のはず


 私みたいなイレギュラーならともかく


 こんな本が必要な人間がここにいるとは


 思えないし、師匠は確か200歳近かったはず


 その子供時代に使っていたなら


 こんなにま新しい状態のはずがない・・・」


フリニオーラはその本を部屋に持って帰り


机の上に置いてジッと見つめていた


「もしかしてこれは!?」


そう言うとその本の上に右手をかざす


「エクスプロードスペル ディスエンチャント」


フリニオーラの右手の掌から小さな魔法陣が発生し


その本が白く光った


そして本の表面から薄皮が剥がれていくように変化していくと


中から手書きの魔道書が現れのだ


改めて手に取り中を見てみる


「これは師匠の字だ・・・これは!?」


その魔道書に書かれている内容を見て


思わず驚きの声をあげるフリニオーラ


その中にはハイドニールが独自で編み出した


オリジナル魔法”ダークフレアストーム”の詳細が書かれていたのだ


「暗黒オーラと竜巻との併用と互換性


 プラズマ発生における気圧と電力の相互関係


 真空状態における爆裂魔法の凝縮化とその効果・・・


 凄い、こんなすごい事をやっていたなんて!?」


フリニオーラはその魔道書を食い入るように見ていた


その凄まじい術式の内容に心が引き込まれていく


先ほどまで師匠を失った悲しみと自分への怒りで


どん底の気分だったのがその内容を見た瞬間


全ての集中力がその魔道書に注がれていた


ハイドニールに叩き込まれた魔法使いとしての本能が


なんとしてもこの魔法を解読したいという


心の欲求に支配されていく


そしてその感情が自分の心の中で


どんどん膨らんでいくのが抑えきれなくなっていた


そこからのフリニオーラの集中は凄まじかった


寝食を忘れ三日三晩その魔法の解読に没頭した


何度も何度も魔道書を読み返し


頭の中でシュミレーションを繰り返した


そして四日目の朝、いつもの様に窓から朝日が差し込み


小鳥のさえずりが聞こえてきたころ


フリニオーラはようやく魔道書を閉じ


ボンヤリと天井を見上げながらつぶやいた


「理論とシュミレーションはもう完璧です


 後は実際やってみて・・・ですね」


そう言ってゆっくりと椅子から立ち上がった


バレルダインは朝になりフリニオーラの部屋の前を訪れて


思わずため息をついた


昨夜用意しておいた食事が部屋のドアの前に


置きっぱなしになっていたのである


すでにスープは冷めパンは硬くなっていて


サラダの野菜もしなびていた


「あれほど”ちゃんと食べてくださいね”


 って言ったのに・・・


 体は大丈夫なんだろうか?」


そんな事を言っている時ゆっくりとドアが空いた


それは三日ぶりの事である


中からユラ~っとフリニオーラが出てきて


バレルダインに力なく話しかけてきた


「あっバレルダインさん、ちょうどよかった


 明日の昼グランドで魔法の実験をしたいと


 思っているので”魔道計測装置”の用意を


 お願い・・・しま・・・す・・」


フリニオーラはそう言いながら倒れ込んだのだ


「うわっ!?大丈夫ですか!?」


思わず手を伸ばし受け止めるバレルダイン


間一髪床に倒れ込む直前で受け止める事ができた


心配になってふとフリニオーラを覗き込むと


すでに寝息を立てて熟睡していたのだ


その様子を確認し少し安心したバレルダインは寝ている


フリニオーラをベッドに運ぶために体を持ち上げた時


思わず驚いたような表情を浮かべ声をあげてしまった


「うわっ軽っ!?」


思わずそんな言葉が出てしまうほどフリニオーラは軽かったのだ


その時14歳の彼女は身長や体重は平均的な14歳に比べずっと低かった


それを姿を見てバレルダインは


「こんな小さな体で”クルム”の名を継いで


 魔王と戦う為に頑張っているんだよな・・・


 本当に凄い女の子だよ」


そう言いながらそっとベッドに寝かし静かに部屋を出た


次の日フリニオーラが目を覚ますと時刻はすでに昼前になっていた


久々の睡眠で少し頭がぼーっとしていたが


ベッドの横を見てみるとすでに朝食が置いてあり


メモにメッセージも添えてあった


”必ず食べてくださいね”という言葉に


思わずクスリと笑うフリニオーラ


「あの人は本当にいい人ですね・・・」


そんな事をいいながら用意してあったパンとチーズ


そしてサラダを貪る様に頬張るフリニオーラ


これもまた三日ぶりの食事であった


急いで食事を詰め込みグランドへ向かうと


そこには”魔道計測装置”がすでに用意されていた


それは薄緑色の石柱でできていて


”魔鉱石”という特殊な鉱物でできている


この鉱石は魔法では絶対壊れないという


特殊な物で加工も非常に難しい石なのだが


誰がどうやって作った物なのかは


未だに不明と言うほど昔から伝わっている機械なのだ


これに攻撃魔法を当てると


その攻撃力が数値化されるという計測器なのである


ここの生徒は年に10回程これを使って試験をしている


そしてこの学校ではその数値の大きい順に


席次の順位を決めるという至ってシンプルな内容だ


そんな”魔道計測装置”を使って魔法実験をするために


フリニオーラがグランドに現れると


一斉に”ワッ”という歓声が沸いた


「な、何事ですか!?」


その歓声に驚いて周りを見てみると


魔法学校のほぼ全校生徒がグランドに見学に来ていたのだ


フリニオーラの魔法を一目見たいと皆集まって来たのである


フリニオーラはこの学校に来た時もまだ魔法の基礎を学んでいたので


この装置を使った試験は一度も受けていない


そしてそのままハイドニールと旅に出てしまい


帰ってきたら”クルム”になってしまったので


誰もフリニオーラの魔法を見た事が無いのである


この学校で見た事のあるのは亡くなった彼女の師匠ハイドニールと


二年前自主退学してしまったバンデローダだけなのだ


そんな全生徒の注目が集まる中


冷ややかに見ている生徒が一人いた


それはベルゲンバッハという男子生徒だ


この男子生徒は別地方の魔法育成機関にいたのだが


飛び抜けた才能を認められ


この魔法学校に編入してきた生徒である


そして入学早々5位になって周囲を驚かせる


しかし当時上位4人の上級生の目に触れ散々イジメられた


しかし彼はそれにも負けず徐々に順位を上げていくと


自分をいじめていた生徒を徹底的にいじめ返した


そして彼が主席になった時


彼をいじめていた連中全員を


自主退学に追い込んでしまうという


離れ業をやってしまったのだ


そんなベルゲンバッハが小さな声でつぶやいた


「さあ史上最年少で”クルム”の名を継いだ

 

 というその実力見せてもらおうか!?


 もし大したことが無いのであれば


 俺が”クルム”の名前も奪って


 最強になってやるぜ」


そんな思惑と期待が入り交じる視線の中


そんな事はお構いなしに準備を始めるフリニオーラ


『まずは比較対象として


 別の呪文の数値も計らないといけませんね・・・


 面倒ですが仕方がありません


 まずは基本から・・・』


「サンダー‼」


フリニオーラはおもむろに杖を突きあげ叫ぶと


上空から一筋の稲妻が魔道計測装置に降り注いだ


次の瞬間、計測係の女性生徒が叫んだ


「数値は3000です‼」


その瞬間全生徒から”おおぉぉ~”という歓声が上がる


そしてベルゲンバッハが思わず立ち上がった


「3000!?ただのサンダーが3000だと!?


 馬鹿な、俺のトゥルーメガサンダーでも4200だぞ!?」


そんな周りの反応をよそに


当のフリニオーラは口に手を当て首をひねっていた


『何か変ですね、イマイチ調子が出ません


 寝起きだからでしょうか?・・・』


そんな事を考えていたのだ


フリニオーラと言う魔法使いは感情によって


魔法の威力が変化する


平たく言えばムラがあるのである


怒っている時や興奮している時


師匠の前で高揚している時などは大きな力を発揮するのだが


こういった装置を対象とした試験的な相手だと


気持ちが乗らずに威力が下がるのである


ハイドニールもその事はあえて伝えなかった為


自分でも気が付いていないのだ


しかしいくら威力が下がるといっても


元々のポテンシャルが違う為


他の人間から見れば圧倒的な力に見えるのだ


「まあいいでしょう、では次


 トゥルーメガサンダー‼」


その声と共に爆音を立てて物凄い稲妻が


魔道計測装置に避雷した


先ほどのサンダーより大きな威力なのは


誰の目にも明らかだった


「数値は216000です‼」


全生徒からさらに大きな歓声が上がった


その数字を聞いて信じられないといいった


表情を見せるベルゲンバッハ


「216000!?なんだよそれ・・・


 俺のトゥルーメガサンダーは4200だぞ!?


 それでもこの学校の主席なんだ


 同じ魔法で何でそんなに差が出るんだよ!?」


そんな周囲の反応を無視して次の魔法に入るフリニオーラ


杖を高々とかかげ再び叫んだ


「アークギガサンダー‼」


凄まじい轟音が辺りを切り裂きまぶしい光と共に


轟雷が魔道記録装置を直撃した


周りの生徒はその光と音で数秒の間


目と耳がおかしくなってしまう程だった


「数値867000‼」


その数値が発表されると観戦していた生徒からは


悲鳴のような大歓声が沸き上がった


「凄いフリニオーラ様


 アークギガサンダーって


 雷系最上位呪文で伝説の魔法だろ!?


 この目で見る事ができるなん


 てスゲーラッキーだぜ‼」


「まだ耳がキンキンするぜ


 ハイドニール様も使えるって


 話は聞いてはいたが見た事は無かったからな


 本当は使えないんじゃないのか?


 って意見も多かったよな」


「私はまだ目がチカチカするわ


 だって今の学校の主席が4200でしょ?


 六年前に卒業した先輩が出した6700って数値が


 今までの記録って聞いてたけど桁が違うじゃない


 凄すぎるわよフリニオーラ様」


そんな中ベルゲンバッハは大きく口を空け茫然としていた


「アークギガサンダー?


 867000?なんだよそれ・・・


 何なんだよあの女!?」


皆凄いモノを見せてもらったという感想で盛り上がっていた


いいモノを見せてもらったというムードから


測定係の女生徒が装置の片付けを始めようとした


そのときフリニオーラが思わず呼びかけた


「何をしているんですあなたは!?」


「えっ!?片付けですけど・・・


 何か問題が?」


「何を言っているんです


 本番はこれからなんですよ


 今までのはその魔法の為の比較として


 出したにすぎません


 早く準備してください」


「あっ、はい申し訳ありません・・・」


そのフリニオーラの言葉に誰もが耳を疑った


”伝説の魔法アークギガサンダーを


見せておいて次が本番って・・・


何を言っているのだろう?”と


そんな中一人だけ興奮冷めやらない


人物がいたレイムである


「凄い凄い凄いフリニオーラ様‼


 さすがです本当にカッコいい

 

 次はどんな魔法を見せてくれるのかな!?」


皆が息を飲んで小さな大魔法使いを見つめている


皆はすでに怖いもの見たさに近い感覚でフリニオーラを見つめていた


当の本人は目を閉じ大きく深呼吸しながら


次の魔法へ集中力を高めている


そのただならぬ雰囲気から何をするんだろう?


と皆が注目していた時、大きく目を見開き


杖を持った左手と何も持たない右手の掌を広げて前に突出し叫んだ


「ダークフレアストーム‼」


その瞬間晴天の空が急に暗くなり闇に包まれると


その闇が渦となって高速回転を始め巨大竜巻へと変わっていく


その周りには大量のプラズマが発生しバチバチと音を立てながら


青白く光り輝いていた


魔道計測装置を巨大竜巻が包み込むと


その中心で赤々と燃え盛る爆炎が今度は辺りを赤く染めていく


それは周りで見ていた者達すら暖かく感じる程の高熱が


巨大な竜巻の中で燃え盛っている証拠であった


見ている者達はあまりの魔法に唖然としてしまい誰も声が出ない


その時一人我に返ったバレルダインが叫ぶ


「計測係 数値はどうなっている!?」


ハッと気が付いた計測係の女生徒が叫ぶように伝えた


「100万・・・110万・・・120万・・・


 信じられません、まだ上がっています!?」


その時魔道計測装置に異変が起きた


”ピシッ”という音と共に亀裂が走ったのだ


「馬鹿な、あれは”魔鉱石”でできているんだぞ!?


 魔法で壊れるはずがない」


バレルダインがそう叫ぶ、横のレイムは興奮しっぱなしである


「凄い凄い凄すぎますフリニオーラ様‼


 神ですもう神決定です‼」


皆がその凄まじい魔法に驚愕している頃


フリニオーラの顔は苦痛にゆがんでいた


『なんですかこの魔法は!?


 体から力が抜けて行きます


 まるで体中の魔力を吸い取られていくような


 この感覚は!?』


「150万・・・160万・・・


 170万・・・あっ!?」


計測係の女生徒がそう叫んだ時


黒く巨大な竜巻は急に搔き消え辺りはそれまでの晴天へと戻った


バレルダインが思わず振り返るとフリニオーラがその場で倒れていた


慌てて駆け寄って抱き起し問いかけた


「大丈夫ですか、フリニオーラ様!?」


「だ、大丈夫です・・・


 ちょっと魔力を使いすぎました・・・」


「今の魔法は何ですか!?


 見た事も聞いた事も無い魔法でしたが?」


「あれは師匠が開発したオリジナル魔法です


 あの魔王をあと一歩まで追い詰めた魔法なんです」


その言葉を聞き皆が沈黙した


あれだけ盛り上がったアークギガサンダーの時とは


真逆である、なぜなら皆全員わかってしまったからだ


この”ダークフレアストーム”という凄まじい魔法のせいで


嫌でも気付かされたと言ってもよかった


こんな恐るべき魔法を作ってしまうハイドニール


そんな魔法をいともたやすく体現してしまうフリニオーラ


そして”あと一歩まで追い詰めた・・・”という事は


この恐ろしい魔法を受けても死ななかった


魔王アドギラルロック・・・


レベルが違う桁が違う次元が違う


もう何もかも違い過ぎて皆自分の存在価値を見失ってしまっていた


そんな時フリニオーラがつぶやいた


「今から3時間後にここに全校生徒を集めてください


 よろしくお願いします」


そう言うと力尽きぐったりしているフリニオーラを抱えて


バレルダインは部屋に戻って行った


そんな後姿を見ていたベルゲンバッハは膝から崩れ落ち嘆いていた


「なんだよアレ、なんなんだよ・・・


 追いかけるとか目標にするとかいう


 対象じゃない・・・化け物じゃねーか!?」


そんなベルゲンバッハの独り言を横で聞いていたレイムが


両手を合わせフリニオーラの背中を見ながら祈る様につぶやいた


「いいえ化け物なんかじゃありません


 神です、フリニオーラ様は女神なんです


 ああ素晴らしい、もう言葉では言い表せません


 貴方も祈りなさい、そうすれば救われます」


レイムにそんな神認定されたフリニオーラは


部屋に着くとバレルダインに説教されていた


「いいですかフリニオーラ様


 貴方はあまりに御自分の健康に無頓着すぎます


 何日も寝なかったり、食事も取らなかったり


 魔力切れを起して倒れたり


 もう少しご自分の体をいたわってください


 いいですね!?」


「はい、スミマセンでした・・・」


正座しながら反省するフリニオーラ


そういえば旅先で師匠がこのバレルダインについて


言っていたことがあり、それを思い出していた


「あの子は非常に優秀で気が利くんだけど


 ちょっと小姑みたいに小うるさいところがあってね


 あれさえなければ最高の補佐官なんだけどねぇ・・・」


『あの師匠にさえズケズケと意見を言える人に


 私なんかが太刀打ちできるはずが


 ないじゃないですか・・・』


「いいですかフリニオーラ様


 前から思っていたんですけど


 貴方はですね・・・」


そうしてバレルダインの説教は続き


フリニオーラの小さな体はより小さくなっていった。




このフリニオーラの話は3部で収めるつもりが4部になってしまいました、懲りずにおつきあいくださるとありがたいです、外伝は次で終了し本編に戻りますのでよろしくお願いします、では。

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