力の証明
アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている
ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在
ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている
ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー
ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた
クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い
織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児
木下藤吉郎…ルキア達の戦場での活躍を診て織田軍にスカウトした人物後の豊臣秀吉
柴田勝家…織田軍の猛将、のちに家臣筆頭となる人物で”鬼柴田”言われている
ゾフィはスクッと立ち上がった後、我に返って少し後悔し始めた
なぜならステイメンやライオスがチヤホヤされているのを見て
自分も勢いで名乗りをあげ立ち上がって見たものの
何を召喚するか全く考えていなかったからだ
『どうしよう、名乗り出たはいいけど
ステイメンに”最大の力は見せるな”
と言われている以上ドラゴンとか呼び出せないし
戦いならその状況に応じて適切な魔獣を
召喚すればいいけど、こんな場合
どの子をよんだらいいのか・・・
でもあまり弱いのを呼び出すと
”なんだコイツは大した事ないじゃん”
とか思わたら凄く嫌だしなぁ・・・う~ん』
皆の注目が集まる中で立ち上がったまま固まっているゾフィ
そこには妙な静寂が漂い何がどうなっているのかわからない一同は
少しずつ戸惑い始めた
そんな空気を察してか思わず信長が問いかける
「どうした、お主はどのような術を
見せてくれるのじゃ!?」
そんな至極当然の問い掛けに益々焦るゾフィ
そんなゾフィを見かねてか木下藤吉郎が
フォローの様な形で口を挟んだ
「彼女は今川軍と戦った時
百頭近い黒い狼を使って敵を
蹴散らしていたでござる
拙者はそれをこの目で
見たでございまする」
周りから”おお~”という歓声が上がるも
ライオスやステイメンの時ほどの衝撃は無かったらしく
ゾフィにとってそれでは非常に不満であった
「ほう、黒い狼とな!?
ではそれを呼び出して見せよ」
そんな信長の要請に渋い顔を見せるゾフィ
『一度見せてるガストウルフじゃ
インパクト弱いじゃん
それにあの子たちは
今頃寝てるだろうし・・・』
そんな事を考えている時
ふと目線を別の方に向けると信長の後ろに
虎が描かれた屏風が置いてあったのが目についた
そして心配そうに振り向いたライオスと目が合った
その時一頭の魔獣が頭に浮かんだ
『そうだ、あの子にするか!?』
ゾフィは何かを思いついたように一度軽くうなづき微笑んだ
「お待たせしたわね、私は召喚魔術師
異界から様々な魔獣を呼び出し
使役する事ができるわ
今回はこの子に来てもらう事にする
”汝が主ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ
来なさいジャベリンタイガー”‼」
するとゾフィの目の前に大きな魔法陣が発生し
赤く光りを放つとそこから巨大な虎がゆっくりと出現した
それは体長5m程で通常の虎よりも二回りは大きく
上あごと下あごから二本づつ鋭く長い牙がむき出しになっていた
怪しく赤く光る目はまるで周りの者を威嚇している様でもあった
そして最大の特徴はユニコーンの様に頭に大きくて長い角が一本
生えている事である
ゾフィによって呼び出されたジャベリンタイガーは
低い唸り声を上げまるで観察するかのように
周りの人間をゆっくり見回していた
いきなり現れた巨大な虎に動揺する一同
しかし信長の手前逃げ出すわけにもいかず
息を飲んでず固まってしまっている
なぜかライオスだけは苦笑いを浮かべゾフィを見つめていた
そんな中で信長だけは興味深げにその虎をジッと見つめ
ゾフィに問いかけた
「この巨大な虎は先程サルが言うておった
黒い狼よりも強いのか!?」
「もちろんよ、ガストウルフの牙と爪じゃ
この子の皮膚を貫けないからね
それにこの子は凄く頭もいいのよ‼」
ジャベリンタイガーの頭を撫でながらその質問を待ってました
とばかりに得意げに答えるゾフィ、さらに説明を続けた
「この子と戦うなら数十人規模の
魔法使いが遠巻きに包囲して
遠距離攻撃を加えるしかないんじゃないかな!?
この子を肉弾戦で倒せる奴なんて
ほとんどいないからね
私の知る限りまともに戦えるのは
ライオスぐらいなものよ」
その発言に再びライオスに皆の視線が集まる
それを補足するかのようにステイメンが説明を始めた
「ここにいるライオスは
伝説の魔獣を一人で倒したことで
”魔獣殺し”という異名があるのですが
その魔獣こそこれと同じ種類の
ジャベリンタイガーだったのです」
ライオスは目を閉じ当時を思い出すかのようにほほ笑むと
「あいつはもっとデカかったけどな・・・
少なくともこれより一回りは大きかった」
その言葉に再び場内がザワつく
そしてゾフィはジャベリンタイガーの首に抱きつき
不満そうに言い放った
「ライオス、アンタが倒したのは
齢300歳を超える化け物でしょ!?
この子はまだ72歳なのよ
まだまだこれから大きくなるし強くもなるのよ
その時はアンタを倒しちゃうかもしれないんだからね
この子の事を格下みたいに言わないでよ‼」
「そんなつもりはなかったが・・・
悪かった悪かった」
苦笑しながら謝るライオス
ゾフィは自分とジャベリンタイガーの凄さを伝えようとしていたのに
結果的にライオスの凄さをアピールしてしまった事が
不本意だったようでライオスの謝罪にも頬を膨らませ
口をとがらせて返事をしなかった
一同のざわつきがおさまらない中、ゆっくりとゼファーが立ち上がった
「じゃあ次は俺の番かな?
俺の職業はカードキャスタ―
カードを使って様々な術を使う」
ゼファーは手の中のカードを扇状に広げマジシャンの様に
鮮やかにカードを操るとそれを腰に付けている小さなケースに収めた
「デュエルスタート‼」
その掛け声と共にゼファーの目の前に5枚のカードが現れる
そしてそれはゼファーに見やすいように横並びに空中に
浮かんでいたのだ
しかしそのカードを見て少し顔をしかめるゼファー
『”最大の力は見せるな”言われたから
普段使っている最強カードを詰め込んだ
デッキじゃなくて適当にC級カードを詰め込んだ
即席デッキを作ったけど・・・
俺自身このデッキにどんなカードが入っているか
完全には把握していなかったからなぁ
う~んどれにしようか・・・
まあこれでいいか!?』
ゼファーは一枚のカードを手に取り無造作に投げ捨てた
するとゼファーの体がフワッと浮き部屋の天井スレスレを飛び回った
「人が空を飛ぶのか!?」
「一体何がどうなっているのだ!?」
驚く一同を尻目にゼファーは先程ライオスが模擬戦を行った
中庭に出ると空中でアクロバティックな旋回を数度披露し
上空高く舞い上がった
皆が上空を見上げてその行方を追うがゼファーの姿は
完全に見えなくなってしまう
その直後に猛スピードで急降下してくるゼファー
皆が”地面に激突する!?”と思った瞬間ピタリと止まり
フワッと地面に降り立った
そして丁寧にお辞儀をしてから優しい口調で
「以上でございます、お粗末様でした」
とにこやかにほほ笑んだ、すると所々からなぜか拍手が起きた
見守っていた一同はまるでサーカスかショーでも
見たかのような気分にさせられていたのだ
「何を拍手などしておるか
静かにせんか‼」
そんな雰囲気を壊すかのように部屋の中に怒鳴り声が響いた
それは柴田勝家が立ち上がり拍手をしていた者達を一括したのだ
「ここは見世物小屋ではないぞ
わきまえんか馬鹿者どもが‼」
興奮気味にまくしたてる柴田勝家
先ほどとは打って変わり静まり返る場内
そんな様子を見て信長が静かに一言言い放った
「よい権六、ワシから見ても中々面白い余興であった
浮かれる者がいても仕方なき事
だがこれ以上浮かれる者は出ないはずじゃからな」
その言葉を受けさらに緊張感が高まった
立ち上がり怒鳴りつけた柴田勝家よりも静かに言い放った
信長の方が遥かに恐ろしかった
”これ以上浮かれる者はわかっておるな!?”
と言われているようなものだったからである
華やかな雰囲気は一気に重苦しい緊張感に変り
ゼファーは肩をすぼめ目を閉じて微笑みながら軽く首を振った
そんな中フリニオーラが立ち上がった
「私は魔法使いです、攻撃魔法を得意としています
私も何か技を披露したいのですが・・・
何か目標の様なモノは無いでしょうか?」
その質問に信長は外の中庭に視線を向けある方向を指さした
「あそこに一本桜の木がある
あれでよいのであれば試してみるがよい」
その言葉に無言でうなづき5秒ほどその桜の木を見つめたフリニオーラ、
そして手に持っている杖を床に軽く叩きつけ
「それでは行きます、サンダー‼」
フリニオーラの声と同時に空から一筋の稲妻が発生し
轟音を立てて桜の木に落雷した
大きく太い桜の木は落雷の衝撃で真っ二つに割れ
あっという間に燃え上がった
「何だ今のは!?」
「雷が落ちたぞ、あの子がやったのか!?」
「あんな幼き女子が・・・
信じられん」
一同みな信じられないと言った表情で驚きを隠せなかった
そんな一同とは対照的に信長はやや冷ややかで
冷静な口調で話しかけた
「この落雷が今のお主の使える
最大の術なのか?」
その質問に一瞬ギクリとするメンバー達
フリニオーラはチラリとステイメンを見ると
ステイメンは軽くうなづいた
フリニオーラは改めて信長に向き直ると
「いえ、このサンダーは雷系の基礎呪文ですから
私の使える最大の雷系呪文は
”トゥルーメガサンダー”と言いまして
今お見せしたサンダーの72倍の威力があります」
その言葉にさらに驚きの声が上がる
「何と!?あれの72倍だと‼」
「あのような女子が
雷神の化身だとでもいうのか!?」
「これはもう人間の使う技とは思えん
天の御業としか・・・
毘沙門天のご加護でも受けているのか!?」
皆のフリニオーラを見る目が不思議なモノを見るような
奇異の眼差しを向けていた
「ど、どうもははは・・・」
数々の賛辞にややたじろぎながら苦笑いを浮かべるフリニオーラ
『私の使える最大の稲妻系呪文
”アークギガサンダー”は
サンダーの289倍の威力が
あるんだけど・・・
最大の力は隠せって言われていたし
まぁいいか』
次々と見せられる摩訶不思議な力とその凄さに驚きを隠せない
信長の家臣たち、信長だけは冷静さを装っていたが
メンバーの力を見た事により色々な思いが
頭を駆け巡っていた様だった
ギラギラとしたその眼差しはずっと先の未来をを見据えて
喜びを隠せないでいる様であった
そんな時信長はある事に気づいて口を開いた
「さてそれぞれの力は見せてもらったが
頭目であるお主の力を
まだ見せてもらっていないが
どうなのだ?」
信長はルキアに向かって語りかける、それを受けルキアは
「私の力はお見せできるような
モノではありません」
そう言って首を振った、先ほどまでの上機嫌だった
信長の顔が険しく変わった
「ワシには見せられないと申すのか!?」
そんな信長の問い掛けに対し無言のルキア
再び場は緊張感に包まれ一同は思わず息を飲む
その時ステイメンがルキアをフォローするように口を挟んだ
「我らのリーダーの説明が言葉足らずだった
ようなので私が補足いたします
彼は今まで見せた我々の力を全て使えます」
この時今日一番のざわつきが起こった
しかし信長の表情は険しいままでルキアを睨みつけていた
「ならばどうしてその術を見せないのじゃ
何か理由があって見せたくないと思っているのか?
それともワシには見せる価値すらないと思うたか!?」
真っ直ぐに目を見つめ挑みかかるようなその問い掛けに
ルキアは静かに答えた
「そうではありません、確かに私は
それぞれの術や技を使う事はできます
しかし剣による戦いはライオスの方が強いです
回復魔法や攻撃魔法もステイメンやフリニオーラに
及びません、ゾフィの様な強力な魔獣を呼び出す事も
できません、ゼファーの力は特殊なので省きますが
俺は何でもできますがどれ一つメンバーの技には
及びません、だからお見せできるような物では
無いと申したのです」
ルキアの回答に信長は納得の表情を見せた
「なるほどな、それならば合点がいったわ
しかしお主はその一団の頭目であろう
何か秀でている技は無いのか!?」
その問い掛けに今度はライオスがかすかに笑いながら
首を振って答えた
「そうじゃない・・・
ルキアはそういうのじゃないんだよ
俺達の中で誰よりも強い意志と
人びとの為に戦いたい
という正義感を持っている
だから俺達のリーダーであり勇者なんだ
こう言っちゃなんだが俺達はそれぞれ
名の知れた戦士や魔法使いだ
だからそん所そこらの奴とは組まないし
リーダーとして認める事なんか絶対にない
ルキアだからこうしてチームとして
成り立っているし付いていっている
俺達のリーダーを馬鹿にするならいくら
アンタでも許さないぜ信長さんよ」
ライオスの声が急に低くなりそう言い放つと
殺気混じりの鋭い視線を信長に向けた
「おのれは殿に向かって何という無礼な‼」
ライオスの言葉にすかさず立ち上がり腰の剣に手をかける柴田勝家
そんな柴田勝家を視線で制するライオス
「うぐっ!?」
腰の剣に手をかけたまま固まる柴田勝家
そのライオスの凄まじい殺気に身動きが取れない
少しでも動けば殺される!?そう思える程の殺気に
冷や汗がダラダラと流れて止まらなかった
「ライオスといったな
そのくらいにしてやれ」
信長がそう言うとライオスが柴田勝家から視線を外し目を閉じる
その瞬間柴田勝家は膝から崩れ落ちた
顔には大量の汗をかき大きく息を切らせていた
そんな様子を見た信長は
「”魔獣殺し”か・・・なるほどな
この勝家とて”鬼柴田”と呼ばれる猛将なのだが
それを目だけでここまで追い詰めるとは・・・」
そんな事を言いながらどことなく嬉しそうな信長
「あいわかった、これにて我ら尾張の織田軍と
お主達の同盟が成立したとするが相違ないな
それでお主達から我々に聞きたい事や要望が
あるのであれば言うてみるがよい遠慮はいらぬ」
上機嫌で話す信長に対しステイメンが手をあげた
「一つ聞きたい事があります
今川軍と戦った時の事なのですが
相手が我々の知らない武器を使っていたのです
鉄の筒から爆発を使って玉を打ち出す物でした
アレは何でしょうか?」
「うむ、鉄砲の事じゃな!?
そうか、そち達の世界には鉄砲は無いのか
わかったならば実物を見た方が早いであろう
政長用意せい‼」
「はっ、かしこまりました
スグに用意させまする」
それからしばらくして十人程の鉄砲を持った足軽が現れ
信長の前に整列し膝まずいた
その鉄砲隊に向かって平手政秀が声をかける
「よし鉄砲隊は試し打ちをせよ
尾張織田軍の実力を見せてやれ、よいな」
鉄砲隊が”はっ‼”っと返事をすると横並びになり
片膝をついて急遽設置した的に向かって狙いを定めた
「打て‼」
その掛け声に合わせて全ての鉄砲が火を噴いた
それと同時にほとんどの的の中心に穴が空き
鉄砲の威力と信長軍鉄砲隊のレベルの高さを見せつけた
今度はそれを見たメンバーがその音と威力に驚く
「なるほど、これが鉄砲ですか
よくわかりました、今後気をつけます」
そう言ってステイメンが丁寧に答えた
そして信長はルキアに向かって右手を差出す
それに応えるかのようにルキアも手を差出し二人はがっちり握手をした、
ここから”戦国時代の風雲児”織田信長と
勇者ルキア達の新たな物語が始まろうとしていた。
これから織田軍とルキア達の話がスタートです、しかし次話はメンバーの過去を描いた人物紹介の様なモノを書きたいと思っています、”始まったばかりでいきなり外伝かよ!?”というツッコミはごもっともですがどうかお気を静めておつきあいください、まずは小さな大魔法使いフリニオーラの話を書きたいと思っています、それが終わりましたら又本編に戻りますが区切り区切りでそれぞれの人物紹介的な外伝を入れたいと思っております、では。