勇者信長連合?
アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている
ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在
ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている
ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー
ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた
クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い
織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児
木下藤吉郎…ルキア達の戦場での活躍を診て織田軍にスカウトした人物後の豊臣秀吉
柴田勝家…織田軍の猛将、のちに家臣筆頭となる人物で”鬼柴田”言われている
始めて対峙した織田信長と言う人物の挑みかかって来るような
鋭いまなざしにルキア達は少し戸惑っていた
そんな雰囲気を察してなのかは不明だがまず信長が口を開く
「猿、こやつらがたった六人で
今川軍を破ったという連中で
間違いないのだな!?」
「はい殿、間違いございません
この方たちが今川軍を蹴散らし
義元の首を討ち取った
六人組でございます」
猿と呼ばれた木下藤吉郎は平伏しながら信長の質問に答えた
その瞬間周りの一同がざわめく
「あの海道一の弓取りと言われる今川義元が
たった六人に打ち取られるとは!?
にわかには信じがたい」
「しかし大将が討ち取られ慌てて逃げ去る
今川軍をこの目で見ているしの・・・
あながち嘘とも思えないが」
「しかしどうやったらたった六人で
敵軍を打ち破れるというのだ?」
ざわつきながら各自が話を始めた
そんな周りのやり取りをしばらく黙って聞いていた信長だったが
「騒がしいぞ、静かにせい‼」
信長の一括により一同はピタリと静かになった
そして再びニヤリと笑いルキアに話しかけてきた
「お主達は何やら不思議な術を使うと聞いておる
どうだワシに力を貸さぬか!?
互いに力を合わせ天下を獲ろうではないか‼」
何の前置きも無く真っ直ぐに勧誘してきた信長
それに対しルキアは
「その誘いには応じかねます
申し訳ないですが」
即答に近い断りの言葉に周りの家臣がいきり立つ
腰の刀に手をかける者すらいた
そんな部下達の反応を意にも返さず話を続ける信長
「ほう、同盟を組む相手としてワシでは不足か?」
そんな信長の問い掛けに首を振るルキア
「そういう訳ではありません
しかし我々は人類存続の為に
魔族と戦う事を決意しここにいるのです
人間同士の争いに手を貸す気はありません」
するとルキアの横に座っていた強面でひげ面の武将が
立ち上がりルキアを指さし怒鳴りつけた
「おのれは何を世迷い事を言っておるのだ
それ以上殿を愚弄するとこのワシが許さぬぞ‼」
急に立ち上がり座っているルキアを上から見下ろす
その男の表情は明らかに怒っていた
信長の許可さえあれば即座に斬りかかって来ても
おかしく無い程の怒気を含んでいた
「よさんか権六
余計な真似をするでないわ‼」
その男の方に視線を移すことも無く
真っ直ぐルキアを見つめながら一括する信長
その声を聞きすぐさま席に座るひげ面の男
それが後の家臣筆頭柴田勝家である事を知るのは後の事である
信長は勝家を一括した後すぐさまルキアに問いかけた
「人類の為に魔族と戦う・・・と申したな
魔族というのが何を示すのかは知らぬが
人類の為に戦うというのは理解できる
つまり民草の平和の為に戦うという事であろう?
ならば我らの戦いと何が違うのじゃ?」
その問い掛けに思わずゾフィが反論した
「全然違うわよ、私達は魔族と戦っていたのよ!?
人間とは違う、アイツらは人類の敵なのよ‼」
それを聞き再び柴田勝家が立ち上がる
「お主はおなごの分際で殿に無礼を
分をわきまえんか!?」
「よせと言っておるであろうが権六
それ以上しゃべるならその首斬り落とすぞ‼」
再び一括された柴田勝家はすぐさま頭を下げ再び座った
「のうそこの女子一つ聞くが
人類の敵とは何をもってそう言うのか
聞かせてくれぬか?」
信長の態度は至って冷静であった
ゾフィはその信長の全てを見透かすかのような
鋭い視線にたじろぎながらも答えた
「そんなの簡単よ魔族は人を殺す
人類を絶滅させようとしてたの
だから人類の敵なのよ」
「ならばその魔族とやらが人を殺すのは許せないが
人が人を殺すのは許すというのか?
実際お主達も今川義元を始め幾人かの人間を
殺してきたのであろう?」
その問い掛けにすぐさまライオスが立ち上がり反論した
「あれは攻撃されたから仕方なく反撃したまでだ
こちらにしてみれば正当防衛だ‼」
「それならワシとて同じことじゃ
今回は今川軍が我が尾張の国に攻めてきたから
反撃しようとした
その前にお主達が義元の首を獲ってしまったがな
そしてこのまま何もしなければこれからも
次々と別の戦国大名が我が国に攻めて来る事は
疑いなきこと、それでもお主達は
それを座して待てと言うのか!?」
「そ、それは・・・」
信長の意見と迫力にすぐさま反論できないライオス
代わりにステイメンが冷静に話始めた
「我々は人類を滅ぼそうとする
魔族を討つために立ち上がりました
いわば人々の安寧の為であります
しかし人と人が覇を争うのは
あくまで欲の為であります
そして人同士が戦えば結局死ぬのは人ですし
苦しむのもまた力なき民です
それは正義とは言えません」
信長はステイメンのその言葉に
含みを持った笑みを浮かべる
「ほう正義か、正義とは正しき義と書く
何が正しくて何が間違っているのか
それを決めるのは誰じゃ?
敵対する者同士があれば
双方それぞれに正義があるのではないのか!?
お互い自分達が正しいと思っているからこそ
戦うのであろう
お主達は魔族が悪で自分達こそ正義だと
主張するが魔族側から見たらどうじゃ?
あちらから見ればお主達が悪で
自分達が正義であろう」
その信長の言葉に声を震わせながら反論するフリニオーラ
「でも魔族は罪も無い人間をいっぱい殺したんです
私のお師匠様も殺されたんです‼」
「お主達とてその魔族を
いっぱい殺してきたんであろう!?
自分達だけ被害者という思想は
正義とかけ離れたモノと思えるがどうなのじゃ!?
それにこの乱世が続けば一番苦しむのは誰じゃ?
そうお主達の言う力なき民草じゃ
ならば一刻も早くこの乱世を終わらせ
天下を統一して人々が安心して暮らせる
世の中をつくる事こそお主達の言う
正義ではないのか⁉」
信長の自信に満ちた説得力と迫力に圧倒されるメンバー達
ルキアだけは信長から視線をそらさず一心にその目を見つめていた
それに呼応するかのように視線をぶつける信長
沈黙の空間に凄まじいまでの緊張感が走る
そして信長がニヤリと笑い口を開く
「戦いにおける正義の所在はひとまず終いにして
ここからは現実的な話をしようではないか
そなたらが討ち取った今川義元は
駿河及び遠江の大名じゃ
そして今川は甲斐の武田信玄
相模の北条氏政と同盟関係にあった
それがどういう事かわかるな?
お主らはその三国をも敵に回したという事じゃ
そして奴らは強い、いくらお主達が
不思議な術を使うとはいえ何の後ろ盾も無く
たった六人であ奴等を相手にできるのか?」
その言葉に思わずたじろぐメンバー達
話の流れは完全に信長ペースで進んで行く
そして皆が悟ったのだ、この信長と言う男は頭が切れる上に
決断力と行動力があり、とてつもないカリスマ性を持った人物だと
そして自分達がどんどん信長の話に引き込まれている事に
気づかされていた
思わず首を縦に振りたくなってしまう流れをルキアが止めた
「信長殿、私達はその提案を含め
一度皆で話し合いたいのですがよろしいですか?」
ルキアの問い掛けにしばらく無言で考えていた
信長が小さくうなづいた
「良かろう、奥の部屋を使うとよいわ
サル案内してやれ‼」
命を受けた木下藤吉郎は深くうなづき
そそくさと立ち上がって案内を始めた
皆がそれに続いて部屋を出て行く
その時信長は横の家臣に何やら耳打ちをしていた
奥の20畳ほどの部屋に案内されたルキア達は
部屋の中央に集まるとまずゾフィが口を開こうとした
「ねえみんな、今後・・・」
その時ルキアが自分の口に人差し指を当て”静かに”という
ポーズをとった、そして目線でステイメンに合図を送ると
ステイメンはそれに呼応して無言でうなづいた
「むん‼」
ステイメンが気合いを入れるとゾフィの頭の中に直接話しかけたのだ
”聞こえますかゾフィ!?今私は貴方の頭に直接話しかけています
この部屋は盗み聞きされている可能性があります
重要な事はまだ口にしないようにしてください”
その言葉に無言でうなづくゾフィ
そして次にフリニオーラに呼びかけた
”フリニオーラ、この部屋を盗み聞きしている者がいないかを
調べてください”
フリニオーラも無言でうなづくき目を閉じて
杖をコンっと床に叩きつけた
すると杖の先から小さな波紋が広がっていき
部屋の外まで広がって消えるとフリニオーラは無言のまま
天井を指さし二本指を立てる
そして今度は床下を指さし三本指を立てた
”天井裏に二人、床下に三人いるという事ですね?”
ステイメンがフリニオーラの頭にそう呼びかけると
フリニオーラは大きくうなづいた
その時ゾフィが天井を指さした後に親指で自分を指して
”私に任せろ”といったポーズを見せた
それに合わせてフリニオーラが床下を指さし
”床下は私に任せてください”というポーズで合わせる
ルキアが無言で大きくうなづくと
まずゾフィが大きな仕草で両手を合わせた後
その手を横に大きく広げた
するとゾフィの両手からキラキラ光る波の様な光が発生し
天井裏へと消えて行った
その頃天井裏では二人の男が下の部屋のルキア達の会話を
盗み聞きしようと聞き耳を立てていた
しかし何やら妙な気配を感じ横を振り向くと
そこに一匹のネズミがこちらを見ていたのだ
『なんだネズミか・・・』
男達がそう思った次の瞬間信じられない頃が起きた
「おいお前ら、何覗いてるんだよぶち殺すぞ‼」
天井裏の二人の男は目を丸くして驚いた
二人に向かってネズミが喋って来たのだ
まるで夢でも見ているのだろうか!?
と自分の目を疑い、二人はお互い顔を見合わせた
その時再び
「なに無視してるんだテメーら
ケンカ売ってるのかオラ‼」
ネズミはそう喋るとすかさず二人に噛みついた
「ギャー‼」
二人は隠密行動だという事も忘れて叫び声を上げながら逃げ去った
今度はフリニオーラが再び杖を床に落とす
すると床下にいた三人組の下の地面が波を打ってウネウネと動きだし
その男達を少しづつ飲み込んでいく
「な、なんだこれは!?」
「馬鹿な、こんな事有り得ないだろ!?」
「た、助けてくれ~‼」
もがくその男達をあざ笑うかのように
徐々に体を飲み込んでいった地面
そして土から男達の顔だけ出した状態で
ゆっくりと外に運ばれていった
それはまるでベルトコンベアーで運ばれる
製品の様でもあり傍から見ると滑稽な光景であった
「さてこれで邪魔ものはいなくなったな
みんな口を開いていいぞ」
ルキアの合図で皆安堵の声をあげた
「俺に黙ってろなんて軽い拷問だぜ
美女に口を塞いでもらうなら別なんだけどな」
「お前はいつもそればっかだなゼファー
たまには真面目な事言えないのか!?」
「まあいいじゃないですかライオス
ゼファーのおかげで場が和むことも多いのですから・・・」
優しげな表情でにこやかにほほ笑むステイメン
それに対しゼファーとステイメンをギロリと睨むゾフィ
「ステイメンっていつもゼファーに甘くない?
今場を和ませる必要なんてないでしょ!?」
「で、でもゼファーさんのおかげで
チームの雰囲気が良くなることも多いと思います
少々女性に対しての問題発言が多いようには
見受けられますが!?」
「おいおいフリニオーラ、問題発言はないだろ!?
俺は常に女性の味方だぜ
フリニオーラも後2,3年もしたら
俺の恋人候補に入る予定だからな
楽しみにしててくれよ」
「それは遠慮しておきます」
「そうよ、こんな女たらしに
見込まれたらお終いよ
気を付けなさいフリニオーラ」
「はい大丈夫ですゾフィさん
そんな事にはなりませんから」
「そりゃあないだろ二人とも
色々仲良くやろうぜ!?」
盗み聞きをしていた間者のいなくなった部屋で
ゼファーを中心にそんな他愛のない会話をしていたが
そんな空気を一新するように真面目な顔をしたライオスが
話に割って入る
「冗談話はそのくらいにして
本題に入ろうじゃないか、なあルキア!?」
「そうだな、あまり時間をかけても
変に勘ぐられるだけだしな
さて本題だがあの織田信長という人物を
信用し同盟を組むか?
という事だが皆はどう思う?」
こんな時ルキアはあえて自分の意見を先にいう事は無い
皆の意見や考えが出揃ったところで
”俺としてはこう思う”と考えをのべ皆の意見をまとめつつ決定する
それがわかっているので皆先に自分の意見を発言し始める
最初に口を開いたのはライオスだった
「まずは俺からいいか?
あの信長と言う男を信用できるか
どうかはわからんが人物としては
中々の器だと見た
同盟を組むに値する人物だろう」
「それに関しては私も同意見です
いささか野心と覇気が強すぎる
きらいはありますが尾張という国を
治める立場の者として状況的に
しょうがないところはあるでしょう」
そうステイメンが続いた後ゾフィが発言した
「それに今私達が置かれている状況を
考えれば同盟はやむを得ないんじゃないかな?
こんな知らない世界で周りが敵しかいないんじゃ
オチオチ眠る事も出来ないしね・・・」
「まあ確かにあの信長という男は
”味方にならないのならば敵とみなす”
なんて考えそうなタイプだわな
できれば敵には回したくないね
同盟の条件に美女でも付けてもらおうか!?」
「私はあの織田信長という人物は
危険だと思います
根拠はありませんがそう感じます
目的の為なら手段を択ばない
タイプじゃないでしょうか?」
全員の意見が出た所で皆の顔を見回し軽くうなづくルキア
「人物的に危険と言うフリニオーラを除くと
皆概ね同盟に賛成の様だな
俺の意見としてはあの織田信長という人物は
頭が切れるし行動力とカリスマ性を兼ね備えた
中々の人物で同盟自体は組んでもいい
というのはみなと同じだ
しかしフリニオーラの言う通り
あの信長という男にはかなりの危険さを
感じるのも事実だ、だから俺としては
”条件付きの限定的な同盟”
といったモノにしたいと思っている」
皆が真剣な表情でルキアを見つめている
そしてステイメンが口を挟む
「その”条件付きの限定的な同盟”
というのは一体どのような
モノなのですかルキア?」
「うん、それは今後我々の手を借りたい
という事態になった時
それがどういった目的で
どのような結果をもたらすか
を考えその都度協力するか否かを
返答するといったモノだ」
「なるほどな、しかしルキア
それで相手が納得するか?
俺達としては悪くない条件だが
それを同盟と呼んでいいモノか
微妙ではあるな・・・」
そんなライオスの危惧にルキアがうなづく
「確かにそうかもしれない
でも考えや行動を全て相手に
ゆだねるのは危険だ
あの織田信長と言う男の
自信に満ち溢れた態度と
力強く説得力のある弁舌
そしてあの強烈な意志を感じる目を
見ているとつい引き込まれてしまう
だからこそこの条件は譲れない
俺達の目的は元の世界
”レスティアレ・ラドス”に帰る事だが
俺達の正義を曲げるつもりはない
俺達が戦うのはあくまで人々の平和の為だ」
ルキアの力強い言葉と意思にメンバー全員思わず笑みがこぼれた
青臭い正義感ではあるがこれがあるからこそ皆が認める
チームのリーダーであり勇者なのだ
ステイメンが目を閉じながら嬉しそうにウンウンとうなづく
そしてルキアを補足するように話始めた
「では皆その方針で異存ありませんね?
それで織田信長公と同盟が成った時の話
なんですが相手側から
”我々の力を見せてくれ”という
要望がある可能性があります
この世界は魔法や魔獣といった
類いのものはあまりない様子ですから
そしてその時は全ての力は見せないでください」
ステイメンの説明に思わずゼファーが問いかけた
「それはどういう事なんだステイメン
術の種類や最大の力を見せるなという事か?」
ゼファーの質問にステイメンはコクリとうなづく
「その通りです、いくら同盟が成ったとしても
また敵対する可能性はゼロじゃありません
その時最大の力を見せているのといないのでは
戦術、戦略上かなり違いますからね
念のため警戒しておくことに
越したことはありません」
その言葉に”ヒュ~”と口笛を鳴らすゼファー
「慎重だねぇ~お前が女ならいい奥さんに
なりそうだけどなステイメン」
「でもその時は貴方の嫁には
ならない事だけは確かですよゼファー」
笑いながら冗談を返すステイメン
全員の意見がまとまり信長の元へ再び返るルキア達
部屋の中では何とも言えない緊張感が漂っていた
正面には真剣な表情でこちらを見つめる信長がいた
「さて意見はまとまったようじゃな
しかして返答はいかに!?」
信長はルキア達の返事が待ちきれないと言った感じで
ジッとこちらを見つめていた
「先ほどの我等との同盟の話ですが
条件付きならばお受けいたします」
ルキアの返答に少しザワつく一同
逆に信長は全く動じることなくジッとルキアの方を見つめていた
「条件付きか・・・で一体どのような条件ならば
受けるというのじゃ?言ってみるがよい」
「はい、それは今後我々に
協力してほしいという事態になった時
それがどのような目的でどういった
結果をもたらすのかをこちらで検討し
納得した時のみそちらに協力する
といったモノであります」
その返答にさらにざわつく一同
再び柴田勝家が怒りの表情を見せながら立ち上がる
「なんじゃそれは!?
ではその都度納得しなければ
いつまでたっても協力しない
という事なのか!?」
「その通りでございます」
ルキアは躊躇することなくキッパリと言い切った
そのあまりに潔い姿勢に柴田勝家も立ち上がったまま
唖然としてしまっていた
そのやり取りを見て不敵な笑いを浮かべる信長
「もしここで同盟が不成立となれば
敵になるかもしれないお主達を今ここで殺せ・・・
とワシが命令を出す事は考えなかったのか!?」
ルキア達を試す様に問いかける信長
どこか楽しそうな表情を浮かべる信長以外
全員にピリピリとした緊張感が漂う
その時二人の会話にライオスが口を挟んだ
「さっき俺は木下藤吉郎さんにあるモノを渡した」
それを聞いた藤吉郎は急に気が付いたように
懐から5㎝程の金色の玉を取り出した
「先程これを預かってくれと渡されたのが
この玉なのですが・・・あれ?
手から離れぬ、一体どうなっておるのじゃ!?」
その金色の玉は藤吉郎の手に張り付き離れなくなってしまった
ようで藤吉郎は必死に引きはがそうとしていた
「その玉は俺が合図を出すと大爆発を起こす
ここにいる全員跡形も無く消し飛ぶほどの威力だ
もし俺達に何かしようとするならば
そいつを爆発させるぜ!?」
ライオスの言葉に血の気を失い顔面蒼白になる藤吉郎
場の緊張感はさらに高まる、そんな中
藤吉郎の必死の表情を見て大笑いを始めた信長
「はっはっは、中々面白い余興じゃ気に入った
しかしお主達の出したその条件じゃが
明確な判断基準が無い為
本当に一度も協力しないという
可能性すらあるわけだが
お主達はそれで同盟が成立すると
本気で考えているのか?」
なぜか上機嫌で話す信長の質問に
ルキアは一呼吸置いて再び話始める
「俺達は自分達の信じる正義を
他人の判断でおこないたくないのです
そのかわり我々が協力する事で
織田軍を勝利に導いたとしても
報酬は一切いりません」
ルキアの意見に再び一同がザワつく
「手柄を立てても
褒美はいらぬというのか!?」
「作戦への参加は不定期だが
成功への見返りは不必要という訳か」
「なんとも不思議な事を言いだす連中だな・・・」
信長はその提案を聞き目を閉じて少し考えていたが
考えがまとまったのか急に目を見開き自分の膝をポンとたたいた
「あい判った、そなたらがそれでいいと言うのであれば
その条件でこちらはかまわん
本当に金銭や領土といった褒美は
不要と申すのだな!?」
「はい、我々が元の世界へ帰れるまで
衣食住を保証していただければそれで結構です」
ニヤリと笑う信長、そして再び問いかける
「それでそち達の生まれ故郷と言うのは
どのような名前の国なのであるか?」
「はい”レスティアレ・ラドス”という所です」
信長は顎に手をやりひげを触りながら
遠い目をして少し考えていた
「”れすてぃあれらどす”とな・・・
聞いたことが無いのう、政秀知っておるか?」
信長の横に控えていた家臣平手政秀に問いかける
「いえわたくしも存じません
南蛮の国の一つかもしれませんが・・・」
「ふん、まあよい、これにて一応同盟は
成ったとしてもよいな
それでじゃが同盟を組む相手の事を知りたい
お主達が使う不思議な術と言うのを
見てみたいのじゃがどうだ!?」
ルキア達全員が”来た”という表情を見せる
ステイメンとルキアが顔を見合わせて軽くうなづく
そしてまずライオスが立ち上がった
「じゃあまず俺から見てもらおうか
俺はみんなと違って特別な力は無い単なる戦士だ
しかし中々強いぜ!?」
自信満々にニヤけるライオス、2m以上ある身長は
立ち上がると恐ろしくデカく見えた、信長はライオスを見て
「ほう、ではお主は剛の者という訳だな・・・
良し、では力を見る為仕合ってもらおうか
成正、正成、秀勝、弥三郎、相手せい‼」
信長に呼ばれ四人の屈強そうな者が現れた
中庭の様な場所で棒を渡され模擬戦の様な形で仕合うことになった
「こやつらは我が軍の黒母衣衆
赤母衣衆という精鋭部隊の者じゃ
あくまで試しだがそれぞれと戦ってもらいたい」
その意見に少し不服そうなライオス
「一人一人何て面倒だ
四人いっぺんにかかってきな」
右手で棒を持ち肩にトントンと軽く打ちつけながら
左手で手招きするライオス
四人を見下ろすその表情は完全に相手を見下していた
四人の顔が一気に強張り明らかに怒りの表情に変わる
逆にそれが面白く感じていた信長の口元が緩む
「お主がそれで良いと言うのであればそうしよう
四人で一斉にかかれ遠慮も手加減もいらぬ」
「かしこまりました}
四人は信長に頭を下げライオスを睨む
そして別の男が”始め‼”の号令で試合開始の合図を出した
殺気を全面に出しもはや殺し合いも辞さない覚悟の四人
彼等は今まで信長軍の精鋭としてこれほど舐められたことは
無かったからである
しかしライオスはまだ右手で棒を持ち肩に担いでいる状態で
余裕を見せつけていた
「ふざけおって、死んだとしても後悔するなよ
我等を侮った事をあの世で後悔するがいいわ‼」
四人は一斉に攻撃を開始した、さすがに信長軍の精鋭だけあって
その攻撃は速く鋭い、棒の先がライオスに当ったか!?
と思った瞬間であるライオスは四人すべての全ての攻撃を薙ぎ払い
一瞬の内に四人の腕と肩に一撃を喰らわせた
「ぐあっ!?」
「うぐっ!?」
信長軍の精鋭四人は皆持っていた棒を地面に落とし膝をつく
見ていた人間は何が起こったかすらわからないほどであったが
信長は信じられないという驚きよりも嬉しさで
思わず口元が笑っていた
「見事だ、わが軍の母衣衆の精鋭四人を
圧倒するとは、おい医者はおるか?
奴らを診てやれ」
信長に呼ばれ医者と思しき男がライオスにやられた四人に近づき
打撃箇所を診て首を横に振る
「信長様、全員骨を折られております
中でも一人は肩を砕かれておりまして
回復には少々時間がかかるかと・・・」
その医者の見立てに軽くうなづく信長
「そうか、ご苦労であった
四人とも養生せい」
腕や肩を押えながら退場しようとする四人をライオスが引き留めた
「ちょっと待ってくれ
おいステイメン彼らを治してやってくれ」
呼ばれたステイメンは首をすぼめ
ヤレヤレといわんばかりの態度で立ち上がる
皆が注目する中で怪我をしている四人に近づくステイメン
四人に付き添っていた医者が後ずさりして思わず問いかけた
「君は医者なのか?」
「いえ違いますが治療に関しては
エキスパートですよ」
その答えに首を傾げる医者と信長たち
そんな周りの反応を無視するかのように
患者に近づいて行くステイメン
骨折による痛みで表情が苦痛にゆがんでいた者達に
両手をかざすと緑色の光が骨折箇所を包んでいった
その光景に周りから”おお~”という感嘆の声が上がる
そんなステイメンの所作を目を細めて真剣に見つめる信長
「あの面妖な緑の光は何じゃ!?
それに”えきすぱーと”とはどんな意味じゃ?
・・・なに!?」
今まで務めて冷静に振る舞っていた信長だったが
思わず驚きの声をあげ思わず立ち上がった
先ほどまで骨折による痛みで苦しんでいた四人が
ケロリとして腕や肩を回し始めたのだ
慌てて駆け寄った医者が骨折の患部を診て撫でまわす
そして振り向き驚愕の表情で信長に報告した
「治っております・・・
信じられない事ですが
骨折の形跡すらありません」
そこにいた全員が言葉を失った
一瞬で骨折が治るなど常識で考えたらあり得ない事だからだ
その驚くべき事実に思わず信長が問いかけた
「ステイメンとやら
お主は骨折などのけがを
一瞬で治す事ができるのか!?」
「はい簡単な怪我や病気など
余程重度の怪我や死んでさえいなければ
治す事が可能です」
その時周りから”おお~‼”という先ほどよりさらに大きな感嘆の声が
上がる、その反応にクスリと笑うステイメン
『本当は高レベルの呪いさえかかっていなければ
どんな重度の怪我でも治せますし
対象者が死亡していても条件次第では
復活させることもできるんですけどね・・・』
周りの興奮が冷めやらぬまま次にゾフィが立ち上がった
「じゃあ次は私の番ね」
にこやかにほほ笑みながら自信ありげに立ち上がるゾフィ
注目を浴びる彼女の術に再び周りは驚愕することになるのである。
ようやく信長様と対談となりました、私の中の信長像を思いっきり書いてみました、色々ご意見はあるでしょうが寛容な心で見ていただけると嬉しいです(笑)、あと史実ではこの時期柴田勝家は桶狭間に合戦に参加していなかったようですが、どうしても出したくて登場させてしまいました、歴史を捻じ曲げた事も平にご容赦を、では。