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決戦 勇者VS今川軍

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

松井宗信…今川義元配下の武将で遠征軍の指揮官の一人

ステイメンがそう言った直後3秒もしない内に結界は消滅した


それと同時にメンバー全員に激しい雨が降り注ぎ頭や体


衣服が雨により濡れていく


激しく地面を叩く雨の音が耳に届きうるさい程だった


結界を囲んでいた松井宗信を含む兵達は


何をやっても結界を破れず途方に暮れていた所に


急に結界が消滅した為意表を突かれた


すかさずステイメンが叫ぶ


「女神の祝福ビーナスブレッシング‼」


メンバー全員が薄っすら緑色に光るのオーラに包まれた


直接攻撃に対する防護系魔法である


その魔法の発動を確認したステイメンは


すかさず次の行動に移る


目を閉じ両耳に手を当て魔法を発動させる


「オーバーイクスパンシヴ‼」


それは自身の聴力を数倍に引き上げる魔法であった


様々な人の会話がステイメンの耳に入ってくる


自分のいるこの周りは随分混乱している様子で


様々な人間が叫んでいる声が聞こえた


そして降り続く豪雨がノイズの様にステイメンの邪魔をする


探査を広範囲に広げじっくり探すステイメン


神経を集中し雨音に気を取られない様奥へ奥へと意識を向けた


するとあるところから


”用心の為です早くこちらへ避難してください殿!?”


という声をキャッチした


「ようやく捕まえましたよ」


ステイメンがボソリとつぶやき思わず口元が微笑む


「ルキア、敵の総司令官 今川義元は


 北東の方角約900mの位置にいるようです‼」


それを聞いたルキアはステイメンを一瞬横目で見て軽くうなづいた


「聞いたなみんな、目標は敵総司令官


 ”今川義元”俺に続け‼」


ルキアは剣を構えて前方にいる兵に向って行った


それに合わせフリニオーラが杖を高々と上げ叫ぶ


「ナアンナアス スパークバインド‼」


フリニオーラの杖の先から放射線状に青い小さな放電が


バチバチと言う音を立てて広がっていった


この魔法は周りにいた兵士達をすり抜ける様に広がっていく


それを浴びた兵達も一瞬何事も無かったようにしていたが


魔法が体を通り抜けて行ってから3秒後くらいに


全員がブルッっと身震いするような仕草を見せた


「あれ、なんか体が少ししびれて・・・」


そう感じた時にはすでにルキアが目の前に迫っていた


慌てて槍を突こうとする兵達


しかし体の反応が鈍く思った様に体が動かなかった


「あれ?おかしいな・・・」


そう感じた時には時すでに遅く


あっという間に数人の兵が打ち倒されていた


このフリニオーラの放った広範囲にわたる弱体化魔法を


当然ルキア達も浴びたのだが


ステイメンの防護魔法による緑色の光がそれを弾き飛ばしていた


フリニオーラがどのような魔法を使うのか言わずとも


把握していたステイメンはその呪文に耐性のある防護を


施していたのだ


まるで長年組んでいたかのような


息の合った連係に感心するゼファー


「さすがだねぇ二人とも


 俺も少しはカッコいいとこ見せなくちゃな」


そう言うと一枚のカードを目の前に投げ捨てるようにキャストする


その瞬間ゼファーの体が武道家の様な衣装に変り


敵の槍の中に突っ込んでいく


槍先をギリギリで見切り懐に入ると全ての兵を


一撃で倒していくゼファー


倒された兵の中には殴られた記憶すら無く


訳がわからない内に地面に転がっていた兵も少なく無かった


ゼファーはあえて兵の多い所に突撃していくと前にいる兵から


次々倒れていく、それはまるでドミノ倒しのように


規則正しく兵が倒されていった


そんな光景を前に思わずたじろぐ今川軍


「何をしておるか!?相手は高々数人だぞ


 隊列を整え数で抑えよ‼」


松井宗信が混乱する兵の立て直しを図る為、叫びながら指示を出す


それを見たゾフィの口元が緩みつぶやく様に言葉を発した


「立て直しなんかさせないわよ


 ”汝が主ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ


 来なさいガストウルフ‼」


ゾフィが叫ぶと前方の地面に直径5m程の真っ黒な円が発生した


そのどこまでも黒くて暗い円の中から黒い物体が数体現れた


それは全身真っ黒な狼なのだが体は黒いガス状で


ユラユラと揺らめいていた


目は真っ赤で鋭い眼光をしていて


すぐにでも襲い掛かって来そうなほど殺気に満ちていた


そんな黒い狼たちが次々と現れルキア達を囲むように展開する


総勢80体程の狼が現れた後にまるで役目を果たし終えたと


言わんばかりに地面の黒い円はすうっと消えた


「行きなさい私のかわいいガストウルフ達


 あんな奴ら蹴散らしちゃいなさい‼」


ゾフィの指示で今川軍に一斉に襲い掛かるガストウルフ


狼が得意とする集団での狩りを再現するかのように


統率のとれたその動きは立て直しを図っていた兵達にとって


壊滅的な打撃を与えた


「なんだこの黒い狼は!?」


「嫌だ死にたくない、死にたくない‼」


崩れかかる兵に対しまたもや松井宗信が叫ぶ


「相手は獣だそれに数も80匹程しかいない


 誇りある今川軍として規律ある行動を心掛けよ


 兵は横並びで槍を立て槍衾やりぶすまを作れ


 一匹に対して10人で当たってもまだあり余るほど


 我らの数は圧倒的なのだ


 最強の兵と言われた今川軍の意地を見せろ‼」


松井宗信の声にようやく立て直しを図る兵達は


指示通り横並びに槍による槍衾やりぶすまを展開する


何本もの槍の壁が待ち受ける所にかまわず突入していくガストウルフ


思わずほくそ笑む松井宗信


「所詮は獣か、自分から串刺しになりにいくとは」


槍の壁の手前で大きくジャンプしながら


次々と今川兵に飛び掛かるガストウルフ


兵達は槍を持つ手に力を込めた


しかし持っている槍に全く手応えが無いのだ


不思議に思い前を見てみると槍はガストウルフの体をすり抜け


兵達に襲い掛かっていた


今川兵に次々と襲い掛かるガストウルフ


誰一人その黒き狼を討ち取った者はいなかったのだ


「何だよこれ!?なんなんだよ‼」


「妖怪だ‼相手は妖怪を使うぞ‼」


「嫌だ死にたくない死にたくないよ‼」


今川兵は再び混乱する、あっという間に隊列は乱れ


ガストウルフは崩れかかる兵に容赦なく襲い掛かった


首元に噛みつかれ一瞬で絶命する者


顔を食いちぎられ首から大量の血を噴き出している者


内臓を食い破られ自分の目の前ではらわたを喰われている者


それはこの世の者とは思えないような地獄絵図であった


恐怖は伝染しそれを見た今川兵は一人また一人と


敵前逃亡をし始めた


「何をしておる、戦え、帰せ‼」


松井宗信の声がむなしく響く


今川軍が総崩れとなる寸前の時一騎の騎馬が


水しぶきを上げて近づいて来た


ガストウルフの群れの前に崩れかかった自軍に


立ちはだかると大きく叫びながら名乗りをあげる


「久野元宗推参‼妖怪変化共


 この私の前では無力と知れ‼」


騎乗したままガストウルフやルキア達を睨みつける久野元宗


その右手には槍を抱えいつでも戦える体勢をとっていた


その時一匹のガストウルフが久野元宗に飛び掛かった


しかし次の瞬間、右手に持った槍でガストウルフを一刀両断に


切り捨てたのだ


「ギャワゥゥ‼」


低い断末魔を残し空中に溶け込むように消え去るガストウルフ


その瞬間今川軍から大歓声が上がる


「いける、いけるぞ‼」


「さすがは久野様、あの化け物は無敵じゃない


 俺達だってやれるんだ!?」


「仲間の仇だ、覚悟しろよ妖怪ども‼」


敗色濃厚で怯えきっていた今川軍兵の目に生気が戻り士気が上がる


思わず舌打ちするステイメン


「まずいですねえ、相手の士気が戻ってしまうと・・・


 何せあの数ですし、このまま押し切れると思ったんですが

 

あの武将の持っている武器には何らかの力があるようです


 ここはなんとかしないと・・・ルキア


 あの武将を斬ってください


 しかもなるべく早くです‼」


ルキアは無言でうなづくと敵将の馬の前に立つ


そんなルキアに冷徹な視線を向け馬の上から見下ろす久野元宗


「拙者は今川義元様が家臣久野元宗


 貴様の名を聞いておこう」


「俺はこのパーティーのリーダー


 アドリアン・ルキアだ‼」


目を細めいぶかしげな表情を浮かべる久野元宗


「ぱーてい?りーだー?


 何を言っておるのかわからぬが・・・


 要はお主が敵の首魁という訳だな


 面白い我が槍を受けてみよ、いざ‼」


馬と共に物凄い殺気を放ちながら向かって来る久野元宗


気合いの入った叫び声と甲冑が雨を弾く音


そして馬の息遣いと馬が水たまりを踏みしめる音とが


複雑に混ざり合いルキアにどんどん迫っていった


すぐ近くまで接近し槍を引き絞り狙いを定めた


『獲ったぞ‼この間合いならば確実に仕留めた‼』


久野元宗が勝利を確信しその右手に握られている槍が


唸りをあげてルキアに向って行く


そして胴体を貫くか!?というその瞬間


ルキアの持つ聖剣”ブレイヴハート”が光り輝く


それは豪雨で視界が悪くなった辺り一面をも照らす程


まばゆい光を放ったのだ


ようやく動き始めたルキアに久野元宗は


「遅いわ‼もうワシの勝ちだ・・・」


その時久野元宗の目からルキアの手と剣が消えた


そして元宗の槍がルキアに届く事は無かった


ルキアの剣が皆に目視できるようになった時


馬上の武将は脳天から真っ二つに斬られ


ルキアの目の前で馬と共に左右に分かれ倒れた


脳天から馬ごと真っ二つにされた今川軍の猛将の姿に


松井宗信を始め今川軍は言葉が無かった


さっきまでの士気の高さが嘘のように静まり返り


激しい雨音だけが場を支配していた


「今です一気に蹴散らしてしまいましょう‼」


この機に乗じてステイメンが指示を出す


それに合わせてゾフィとゼファーが動き出す


「さあ畳み掛けるわよ、行きなさいガストウルフ‼」


「俺も少々働かないと恰好つかないなヤレヤレ」


ルキアも前線に戻り再び進撃を始めた


先ほど起こった衝撃の事実にもはや戦意を


喪失していてしまっている今川軍


ルキア達はまるで無人の野を駆けるがごとく進んで行った


寧ろ大変だったのは殿しんがりを務めるライオスであったろう


ルキア達が向かう方向にいた兵達はすでに


戦意を失っていて自分から道を開けたりもしていたが


6人中5人が背中を向けている後ろからであれば


攻撃する気力が残っている兵もまだおり


矢を射かけたり後ろから斬りつけに突撃してくる兵もいた


それらを全て退けていたのがライオスなのだ


斬りつけてくる兵を難なく撃退し飛んで来る矢を


全て剣で弾き落としていく



「ふう、中々に骨の折れる仕事だな」


そんな言葉を思わず口に出してしまうが


その態度にはまだ余裕が感じられた


一方劣勢に立たされた今川軍において


松井宗信が再び指示を出した


「鉄砲隊を出せ、奴らに一斉射撃を放て‼」


その号令と共に十数名が前に出てきて片膝を付き鉄砲を構える


それに付き従う様に雨から鉄砲を守る人間も同人数いて


狙いを後方のライオスに向けた


「あれは何だステイメン?


 弓矢ではないようだが!?」


「さあ私も知らない物ですね


 魔法の武器か何かでしょうか?」


その時松井宗信の”撃て‼”の掛け声と共に


数十丁の鉄砲が一斉に火を噴き大きな発射音が響き渡った


激しく振り続ける雨の中で空気を切り裂く音がした


「うぐっ!?」


ライオスが低いうめき声をあげる


驚いたステイメンが思わず問いかけた


「大丈夫ですかライオス!?


 怪我は?すぐに回復の魔法を・・・」


慌てて治癒魔法を施そうとするステイメンを


手を差出して制するライオス


「大丈夫だステイメン


 お前の防護魔法とこの鎧のおかげで


 ダメージはほとんどない


 ちょっと強めに殴られた程度の衝撃しかないぜ


 しかしなんだあれは、何かを飛ばしてきたぞ!?」


一瞬動きの止まったライオスを見て思わず顔がほころぶ松井宗信


「よし鉄砲は有効なようだ、第二射の用意を‼」


そこに駆け寄る兵がいた


「松井様、この豪雨で鉄砲に使う火種が


 半分消えてしまっています、少々お待ちを‼」


その報告に苦々しい顔を浮かべる松井宗信


「早くせよ‼こうしている内にも奴らは


 殿の元へ行ってしまうかもしれないのだぞ!?」


その会話を聞き逃すステイメンでは無かった


「フリニオーラ、あの後方にいる集団に


 水による攻撃魔法をお願いします‼」


「了解しました”ギガンティックウエーブ”‼︎」


ステイメンの要求にすぐさま答え杖を高々とかかげるフリニオーラ


すると足元の水溜りが集結していき目標に向かって移動して行く


それはまるで水そのものに意思があるかのように寄り添いながら


大きな塊として真っ直ぐ進んでいった


敵に近づくにつれ周りの水を取り込みながら巨大化していく波は


目標に到達するころには3mを越す大波となって全てを飲み込んだ


「うわぁ〜なんだ⁉︎」


轟音と共に一気に今川兵を飲みこむ大波


なすすべなく飲み込まれ流されて行く鉄砲隊


もちろん全ての火種は波によってかき消された


これにより後顧の憂いなく進軍できたルキア達が敵の総大将


今川義元の所までたどり着くまでさほど時間はかからなかった


今川義元を守るため次々とルキア達の前に現れる武将達


「皆の者殿を守れ、何としても守るのだ‼︎」


先程までの雑兵達とは違い命を張ってでも主君を守ろうとする家臣達


しかし力の違いから次々と倒されていく


今川義元とルキア達の周りはガストウルフが取り囲み


今川軍は誰も入ってこれなくなっていた


最後に義元の横付いていた武将が


腰の刀を抜き名乗りを上げる


「我こそは一宮宗是、いざ尋常に勝負・・・」


そう言い終わる前にゼファーが間合いを詰め


後頭部に一撃を加えていた


「ぐはっ⁉︎」


ゼファーの一撃でその場に崩れ落ちる一宮宗是


倒れた時には白眼をむいていて既に意識はなかった


「ゴメンなオッさん、俺たち急いでるんで」


そんなやり取りを尻目に孤立無援となった今川義元に


ゆっくりと近づくルキア


「総司令官の今川義元様とお見受けします


 貴方に恨みはありませんがこれも戦場のならい、いざ‼︎」


剣を構えジリジリと近づくルキアに対して


ようやく腰の刀を抜き構える義元


「この痴れ者共が、余は天下人になる男ぞ


 この左文字にかけてお主らを斬る‼︎」


奇声を発しながらルキアに斬りかかる義元


しかしその剣は鈍くルキアが軽く身をかわすと


バランスを崩して前のめりに倒れ込んでしまう始末であった


周りを警戒しながら横目で見ていたライオスが


思わず吹き出してしまう


倒れこみながら慌てて振り向くと


そこにはルキアが剣を構えて見下ろしていた


「今川義元様、お覚悟‼︎」


「ちょっ、待って嫌じゃ・・・」


それが駿河及び遠江を統べ“海道一の弓取り”と言われた


戦国大名 今川義元の最期の言葉であった


斬り落とした首が地面に転がり首の無くなった胴体が


力無く崩れ落ちる


豪雨に打たれてビショビショの首を拾い上げ


そっと目を閉じてやるルキア


「感傷に浸っている時間はありませんよ


 敵総司令官を討ち取った事を大々的に


 敵側に知らせて即時撤退しましょう‼︎」


ステイメンの言葉にうなづくルキア


ステイメンは再び両手を広げルキアの方に向かって


何かの魔法をかけた


「いいですよ、準備は整いました」


するとルキアは大声で叫んだ


「司令官今川義元はここに死んだ


 勝敗は決した俺たちの勝ちだ


 これ以上の戦いは無意味だ


 だから逃げる者は追わない


 しかしまだ戦うというのなら容赦無く殺す


 これは警告である‼︎」


ステイメンのかけた魔法は声を大きくして皆に


届くようにするという地味な物だったが効果はてきめんだった


この豪雨では視界も悪く声も届きにくい為


敵総大将である今川義元を討ち取っても


それを全体に知らしめるのは困難だろうと考えたからだ


その知らせを聞いた今川軍は総崩れとなり我先にと敗走を始めた


当初の計画通りその混乱に乗じてルキア達も撤退を始めた


ルキア達は今川兵が逃げる反対方向に進んで行った


しばらく走った後、周りに敵兵のいない事を確認したルキアは


一旦止まり皆に声をかけた


「もう大丈夫だろ・・・みんなご苦労様


 我々にとっては不本意な戦いだったが


 みんなに怪我が無くて良かったよ」


その時、周りの茂みからガサガサという音がして


ヒョッコリと一人の男が顔をだした


ルキアを始めとするメンバー達は思わず


警戒しながら睨みつけた


「何者だ⁉︎敵か!?」


ルキアやライオスが思わず腰の刀に手を掛けた


他の者達も戦闘態勢に入る


「いやいや拙者は敵ではござらん


 寧ろ味方じゃ、戦う意思はない」


両手を大きく振りながら敵意を否定するし近づいて来た


その男は背は低く痩せていて少しも強そうじゃないが


やたらギラギラした目が気になった


その男は笑いながら歩いて来るとルキアに対して


やけに馴れ馴れしく話しかけて来た


「いや〜本当にお強い兄さん方


 まさかたった六人であの今川義元を


 討ち取るとは本当に大したもんだ」


ウンウンと一人で感心している男に


何やら胡散臭い雰囲気を感じたルキア達は


不信感から無視して立ち去ろうとした


するとその男はそんなルキア達の進む方向に


素早く回り込み深々と頭を下げたのだ


「待ってくだされ‼︎拙者の話を聞いてくだされ


 どうかお願い申す、このとおりでござる‼︎」


その男の妙に熱心な態度に顔を見合わせるルキア達


「話ぐらいは聞いてやろうと思うんだが


 みんなどうだ!?」


少し警戒している者も少なからずいたが


最初にステイメンが口を開いた


「話を聞くぐらいであれば


 いいのではないでしょうか?」


「まぁ俺達にとって有益な話になるかもしれないからな


 この男がそこまで危険とは思えないし」


「いいんじゃない


 さっきの今川軍とは違うみたいだしね」


「私はリーダーの判断に任せます」


「美女の誘いなら二つ返事で付いて行ったけどな・・・別に話を聞くくら


いいいんじゃないの!?」


結局全員賛成で話を聞く事とした、その男は再び頭を下げると


「かたじけないでござる


 拙者は先ほどまで貴殿らが戦っていた


 今川軍の敵、織田軍の者なのでござるよ」


笑いながらさらりと言ったその言葉に怒り心頭のゾフィ


「私達はアンタ達の仲間に間違われて


 大変だったんだから、どうしてくれるのよ‼︎」


ルキアが思わずゾフィを制しなだめながら話を続けた


「そんな事この人に怒っても仕方がないだろゾフィ


 しかし巻き込まれて大変だったのは事実だ


 正直これ以上アンタ達と関わり合いたくない


 ってのが本音なんだけどな」


その男はルキアの言葉に少し困った顔を見せるが


なんとか引き止めようと必死に説得にかかる


「その事についても話がしたいのです


 もしあなた方がどこかの大名に仕えている


 家臣ならば諦めますが


 そうでないのなら我が殿に会っては


 くれませんでしょうか?


 決して悪いようにはしません


 寧ろあなた方にとっては良き話になる事


 間違いござらん、もし話をしてそれでもダメ


 というのであれば拙者も諦め申す


 どうでしょうか?


 一度我が殿に会うだけ会ってくださらぬか⁉︎」


その男の言葉に対し皆の方に向き直り“どうするみんな?”


と言わんばかりに目で問いかけるルキア


その態度を察しまずはステイメンが口を開いた


「話を聞くというのは悪い事だとは思いません


 実際我々も戸惑っているのは事実ですからね」


「いいんじゃない⁉︎話聞いてダメなら引き上げればいいんだし」


「俺は少し引っかかる、話次第で


 さっきみたいに戦闘になったら・・・


 と思うと素直について行く気にはなれないな」


「私はリーダーの判断に任せます」


「戦闘になったらその時はその時で考えればいいんじゃね⁉︎」


ライオス以外は概ね賛成の意見のようだが


ライオスの意見にも一理あり、ルキアがどうするべきか


思案中にふとそのライオスがルキアの肩に手を置いて話しかけてきた


「俺に考えがある、みんな話を聞くべきと


 思っているみたいだし、なんとか戦いに


 ならないように策を仕掛けてみるさ」


その時はどんな手段かは教えてくれなかったが


ライオスのやる事にぬかりはないだろうと判断して


話し合いに応じる決断をくだす


「わかった話を聞こう


 君の殿とやらに会わせて欲しい


 ただし我々に危害を加えないという事が条件だ」


そのルキアの返事に表情が明るくなり何度も大きくうなづく男


「もちろんでござる、是非我が主君 


 織田信長様にお会いしてくだされ


 話してくだされば殿が素晴らしいお方


 というのがわかっていただける


 はずでござるよ‼」


そう言うと満面の笑みでうなづく、それに対してルキアが


「そう言えば自己紹介がまだだったな


 俺はルキア、そして右から順にステイメン、ライオス、


 ゼファー、ゾフィ、フリニオーラだ」


「わかりました拙者は人の顔と名前を覚えるのは得意なので


 もう完璧に覚えたでござるよ


 申し遅れましたが拙者木下藤吉郎と申します


 以後お見知りおきを」


その後ルキア達は木下藤吉郎に案内され小さな城に入った


ルキア達は広い部屋に案内され中央に座る様に促がされ


周りを織田軍の武将が囲むように座っていた


ルキア達の服装と日本人とは違う顔立ちが余程珍しいようで


周りの武将たちは不思議そうな目で見ていたり


いぶかしげな表情でヒソヒソ話していた


そこにドタドタと廊下を歩く音が聞こえ入口から


一人の男が入って来た


周りの武将たちに緊張感が走るのが伝わって来る


その男は周りの男達に比べれば背が高く鋭いまなざしに


ひげを蓄えていた


部屋に入って来るなりルキア達に近づき


睨みつけるようにジッと見つめると


「お主達が怪しげな術を使うという連中か!?」


突然の質問に呆気に取られ言葉が出ないルキア達


その様子を見て代わりに木下藤吉郎が答える


「そうでございます殿、この方々がたった6人で


 今川義元を討ち取った者達でございます」


その言葉に周りの男達かがザワつく


信長は木下藤吉郎の方をチラリと見てフッと笑うと


上座に移動しドカッと座った


そして一呼吸空けてから再び口を開いた


「ワシが尾張の大名 織田信長じゃ」


観察するような目つきで瞬きもせずルキア達を


ジッと見つめる織田信長


「私はアドリアン・ルキアと申します」


ルキアは信長の挑んでくるような視線に対して


少しも臆することなく見つめ返しながら名乗った


これが”戦国の風雲児”と呼ばれた織田信長と


勇者ルキアの最初の出会いであった。





ようやく信長様の登場です、色々な人が織田信長という人物を描いて来ましたが自分は自分なりの信長像を書いて行きたいと思っています、お付き合いいただけると嬉しいです、では。

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