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そして戦国へ

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

松井宗信…今川義元配下の武将で遠征軍の指揮官の一人

ルキアは顔に当る何かによって目が覚めた


ゆっくりと目を開けると空は曇り霧雨の様な雨が顔を濡らしていた


それはある意味心地いい感触であり


もう少しこれに当っていてもいいかな・・・とぼんやり考えていた


「また曇りか・・・晴れの日なんて


 ほとんど見た事無いからな


 魔王を倒せばきっと・・・」


その時ルキアははっ!?と我に返り飛び起きて周りを見渡した


するとそこにはパーティーメンバーが倒れていた


全員気を失っている様である


「おいみんな起きろ、生きているよな!?」


ルキアの呼びかけに次々と目をさまし起き上るメンバー達


皆ムクリと体を起して辺りを見回すが木々と草が生えている以外


何の特徴も無いこの場所がどこなのか誰一人わからない


「何だ一体、ここはどこだ?」


「私達はどうしてこんな所にいるのよ!?」


「確かさっきまで”呪血城”で


 魔王と戦っていましたよね!?」


「おいおい夢ならもう少しロマンチックな


 ムードのあるところが良かったぜ」


「何が何だかさっぱりですね・・・


 どう思いますか、ルキア?」


ステイメンの問い掛けに真剣な表情で考えるルキア


そんな事を言っているうちにどんどん雨は激しさを増していく


「きゃあ、もう服がビショビショじゃない


 とりあえず雨宿りとかできる場所を探さない?」


「しかしここがどこでどちらに行ったらいいのかも


 わからないからな、雨で視界も悪いし気配も感じにくい


 そういう時はあまり無暗にうろつかない方がいいぜ


 突然モンスターに出くわす何て事もあるからな」


「このメンバーだと出くわしたモンスターの方が


 可愛そうに思えるけどな


 俺としては突然の出会いなら美女がいいよ」


「わかりました、ではとりあえず私の


 魔法で雨をしのぎましょう」


ステイメンがそう言って右手を天にかざすと


光の幕がメンバーを囲むように展開し


光によるドーム状のテントが出来上がった


「わお、これはいいな、さすがステイメン」


「でも服も靴もビショビショなのは気持ち悪いわね・・・」


「じゃあ私が魔法で乾かします、えい‼」


フリニオーラがそう言って杖を地面に落とすと


全員に一瞬だけ熱風が吹きつけた


それは時間にして1秒にも満たない間だったが


全員の衣服と靴はおろかドーム状のテントの中も


すっかり乾いていて地面に座っても


濡れる事は無い程になっていた


「さすが史上最年少で”クルム”の名を継いだ


 天才魔法少女だな」


ライオスの褒め言葉に顔を赤らめて


否定するフリニオーラ


「止めてくださいライオスさん


 さっきは私の命を助けてくれたのに


 こんな事で褒められるとかえって恐縮してしまいます」


その時ゾフィが真剣な顔つきで皆に話しかけた


「私達は本当に魔王を倒せたのかしら・・・


 みんなもそうだと思うけどあれ程消耗していた


 魔力も体力も全快してるし・・・


 ここがどこでなぜこんな所にいるのかも


 全くわからないしさ・・・」


「魔王が死んだかどうかなんて


 確かめようもないしな・・・」


ライオスの言葉にフッと笑うゼファー


そして静かに切り出した


「魔王の生死なら多分わかるぜ」


全員がゼファーの方を振り向く


そしてステイメンが何かに気が付いたように


「そうか、カードですね!?」


その言葉にコクリとうなづくゼファー


「俺達カードキャスターは敵と戦いそれを倒すと


 その倒した数に応じてカードが支給される


 そのカードはランダムだから何を倒せば


 どんなカードがもらえるのか?という事はわからないが


 その倒した敵のレベルに応じた強さのカードである事が多い


 もし魔王程の敵を倒していたのならそれに応じたカードが


 支給されているはずだからな」


いつもは引込み思案のフリニオーラが


食い気味にゼファーに近づき問いかける


「それ本当ですか!?早く、早く調べてください‼」


その迫力にやや気圧されたゼファーが


「お、おう少し待ってな・・・


 呪血城では数多くの魔族を倒したからな


 新しいカードもいっぱい来てるから


 その中から魔王の物と思えるカードは・・・


 おっ!?あった、これだな・・・


 何だよこれ!?」


「一体どんなカードなんだ?」


「どれ私にも見せてよ‼」


「ゼファーさん早く‼」


皆がそのカードを覗き込む、そして全員がその内容に絶句した 


そのカードの詳細はこうである




カード名【死への誘い】


 種類:範囲魔法 


効果:あなたを中心とした半径999m以内の生物は


あなたを除き全て死滅する 消費MP 230




「何よこれ、メチャクチャな事が書いてあるわよ!」


「”あなたを除き”って・・・


 ゼファー以外全てって事は


 近くにいたら俺達も死ぬって事だよな!?」


「効果も凄まじいですが・・・


 それよりこの消費魔力の数値を見てください


 消費MP230とは!?・・・


 フリニオーラあなたの最大呪文で


 どのくらいの消費魔力ですか?」


急なステイメンの問いに意表を突かれ驚くフリニオーラ


「えっ!?なんですか?あ、消費魔力ですか


 私の最大呪文でも消費MP95です


 確かお師匠様でも最大で120だったと思います」


ゾフィが呆れ顔で続く


「私がドラゴン二体を同時に呼び出しても


 消費MPは140ぐらいだもんね・・・


 頭おかしいんじゃないか?ってレベルの数値ね」


ゼファーが自虐気味に語り始める


「もしこのカードを二回使ったら


 魔力スッカラカンどころか


 俺がぶっ倒れて死ねぜ・・・


 でもよこんな馬鹿げたカードが


 手に入ったって事は・・・」


ルキアがうなづき、かみしめるように言った


「魔王”アドギラル・ロック”は死んだ


 俺達はやったんだ‼」


その一言にゾフィは両拳を握り閉め喜びを表し


ステイメンは目を閉じ言葉を発する事は無く


微笑みながら感慨深げに二度ほどうなづいた


フリニオーラは魔法の杖を握り締めながら力が抜けた様に


その場にへたり込み泣いていた


「やりました・・・お師匠様、魔王を


 魔王を倒しましたよ・・・見てくれましたか?」


ルキアもここまでの苦しかった旅を思い出しながら


自然と顔がほころぶ


そんなルキアにゼファーが右の拳を差出すと


ルキアが左の拳をそれに合わせて差出し


コツンと空中で合わせた、それぞれが喜びをかみしめながら


感傷に浸っていた時


一人だけ厳しい表情を崩さなかった人物がいたライオスである


ライオスはせわしなく目線を左右に動かしながら


周りを見回しボソリとつぶやいた


「みんな、喜ぶのは後にしないか?


 ここはヤバい・・・何とは言えないが


 ヤバい雰囲気がプンプンする」


歓喜の雰囲気をぶち壊すかのようなその発言に


メンバー全員が驚きライオスに視線が集まる


しかしライオスのこの”野生の勘”ともいえる


発言を軽視する者はいなかった


これまでの幾多の困難にぶち当たった時


何度もこのライオスの直観に助けられてきた


経験があるからだ、メンバーの表情が緊急モードに変化し


ルキアが全員を見つめると改めて指示を出した


「まずはここがどこかを確認する


 ステイメンこの辺りの地形をみんなに


 わかる様に映し出してくれ


 ゾフィ―は使い魔を出してこの周りに


 村や町の様な集落がないか調べて欲しい


 フリニオーラはここに近づいて来る者が


 いないか魔法で探知してくれないか?」


「わかりました」


「OK」


「了解です」


三人がルキアの指示に従いそれぞれの役割を果たす


まずステイメンは落ちていた木の枝を拾い上げ


地面に魔法陣をかき始めた


そして懐から白い水晶を出すと魔法陣の中心に置き


両手をかざした


すると白い水晶からぼんやり光る白い玉が発生し


空に向かってゆっくりと上がっていった


それは上空30m程上昇した所で動きを止めると


急にはじけて四方に飛び散り辺り一帯にキラキラと降り注ぐ


それはまるで美しいアトラクションでも見ているような光景だった


思わず見とれるメンバー達


全ての光が地面に溶け込むように消えていったとき


ステイメンが口を開いた


「わかりました、皆さんこれを見てください」


ステイメンは両手を前にかざすとそこに


直径1m程の魔法陣が発生した

それを囲むようにメンバーが集まる


するとその魔法陣の上に青い光線で描かれた


立体映像が現れた、それは山と山の間にある谷の様な場所で


そこに赤い光が点滅していて今我々がここにいるという


事の様である、細部まで精巧に表現されている地形を


マジマジと見つめるメンバー達


「こんな地形見た事無いわね・・・」


「もしかしてボズランドの森を


 抜けた所じゃないのか?」


ゼファーの推測に首を振るライオス


「いやあそこには何度も言った事があるが違う


それにちょっと気になる事がある・・・


 今気が付いたんだがみんな周りの木々を見てみな!?」


ライオスの意見にメンバー全員が周りを見渡す


「特に変わったところは無いようですが・・・


 一体何が・・・」


ステイメンがそう言っている最中


フリニオーラが思わず”あっ!?”っと声をあげた


「気が付いたかフリニオーラ!?」


「はい、ここに生えている木々は


 私の知っている物とは違います


 似てはいますがこんな木は見た事がありません!?」


フリニオーラの意見にうなづき真剣な表情で話を続けるライオス


「俺も同意見だ、俺はよく森に入ったりするから


 草木の事には人一倍詳しいつもりだ


 そしてフリニオーラは職業柄植物の知識は豊富なはず


 そんな俺達が知らない木々が早々あるとは思えない


 そしてこの見慣れない風景・・・」


「一体何が言いたいのよ!?」


不安げな表情で問いかけるゾフィ


それに応えるようにライオスがボソリとつぶやく


「魔王が最後に言っていたことを覚えているか?」


「確か魔王の生まれ故郷の異世界に連れて行くとか


 なんとか・・・まさか!?」


ライオスが無言でうなづく


それに対し猛烈に反論するステイメン


「馬鹿な!?異世界などあるわけがありません


 教団の資料を全て読破した私でもそんな事を


 示している文章は見た事がありません!?」


「確かにいきなり異世界とか話が


 ぶっ飛び過ぎて現実感無さすぎだわな


 しょうがないじゃあ俺がカードを使って


 ここがどこか調べてやるよ」


ゼファーが懐から一枚カードを取り出すと


思わずルキアが心配そうに問いかけた


「ゼファー、カードでそんな事がわかるのか?


 それにこんな所でカードを使っても大丈夫なのか?」


「ああ問題ないぜ、このカードは戦闘用じゃないから


 魔力消費はほとんどないしな


 本来ならモンスターや武器の名前や特徴を


 調べる為のモノだけど


 まさか場所を調べるために使う羽目になるとは


 思わなかったぜ・・・」


ゼファーはそう言うとカードを空中に放り投げた


するとカードは一瞬空中で止まり青白い炎に包まれ


あっという間に燃え尽きた


その瞬間ゼファーが難しい表情を浮かべ首を傾げる


「何かわかりましたかゼファー?」


「ああわかったけど・・・ここはオワリの国の


 オケハザマという所らしい」


「オワリの国?オケハザマ?


 私はお師匠様について色々な国を周りましたし


 各国についても一通り学んできましたから


 全ての国を知っています


 でもそんな国と地名は聞いた事無いですね!?」


「まさか本当に異世界に?嘘でしょ!?


 すぐ使い魔を出して周りを調べてみるわ」


ゾフィはそう言うと両手を広げた


「”汝が主ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ


 来なさいレインボーパロット‼”」


ゾフィの召喚に応じて出現する四羽のオウム


薄い緑色の胴体に黄色い顔、頭の上にある七色のトサカが


特徴的だ四羽とも同じ特徴なのだが羽だけは


みな色違いであり赤、青、紫、オレンジ色と分かれていた

「さああなた達この辺り一帯を調べて来て頂戴頼むわね」


ゾフィの言葉に素早く反応した四羽のオウムは


一斉に飛び立つと空中で綺麗に四方向に分かれ


それぞれ飛び去って行った


「じゃあ次は私ですね」


フリニオーラは自分の背よりも高い杖を両手で握り締め


目を閉じると杖の下の部分を地面にコンと落とす


するとそこから青白い光の輪が放射線状に広がった


それは水面に広がる波紋の様に一瞬の出来事であったが


フリニオーラはそれで全てを把握したようである


「わかりました、この近くに


 魔族やモンスターはいませんが


 すぐ近くに人間がいます人数は14人


 こちらに近づいてきています」


フリニオーラの報告に緊張感が走るメンバー


「何よこれ、嘘でしょ!?」


「どうしましたゾフィ


 一体何があったんですか!?」


突然驚きの声をあげたゾフィに思わず問いかけるステイメン


心なしかゾフィの顔から血の気が引いている様である


「ここから北に約2㎞の所に人が大勢いるわ・・・


 おそらく軍隊だと思う、数にして二万・・・


 いや二万五千人ってところかしら


 それとここを目指して別の集団も向かってきているみたい


 そっちは数三千人ぐらいね・・・」


皆の表情が険しいモノに変る


ライオスが吐き捨てるようにつぶやいた


「ここは戦場になるっとことかよ


 冗談じゃねーぞ!?」


ライオスの言葉に皆の視線がルキアに集まる


ルキアは落ち着いた素振りで皆に説得するように語りかけた


「俺達は人々の為に戦ってきたんだ


 人間と戦うつもりはない・・・」


その時ガサガサという音と共に武装した男達が現れた


数にして14人、先程フリニオーラが探査した人であることは


間違いなかった


「貴様らは一体何者だ!?


 こんな所で何をしている!?」


降りしきる雨でびしょ濡れになりながらバシャバシャと


地面の水たまりを踏みつけながら近づいて来る男達


ライオスが思わず腰の剣に手をかける


「よせライオス、相手は魔族じゃない人間だ


 話せばわかってくれるはず」


14人の武装した男達はルキア達の目の前に来て槍を突き付けた


「お前らはどこの者だ?随分怪しい恰好をしおって・・・


 なぜここにいる答えろ!?」


警戒心からか敵意むき出しの武者たちに対し


落ち着いた素振りで話しかけるルキア


「我々はあなた方と争う意思はありません


 たまたまここに迷い込んで


 来てしまっただけの旅の者です」


ルキアの説明に顔を見合わせどうしようかと


お互いに目配せする武者たち


「ならば我々と一緒に来てもらおうか


 怪しい素振りをしたら即殺すからなわかったな‼」


「なによアンタ達偉そうに、私達は・・・」


ゾフィの反発も目で制し首を振るルキア


「落ち着けゾフィここは向こうの指示に従おう・・・」


ゾフィも渋々従いルキア達は武装武者達に連行される形で


本陣へと案内された


本陣に着くと大勢の兵の中連行されるルキア達を


珍しいモノを見るような目で見つめる武者達


「なんだあの恰好は?あんなので戦えるのか?」


「あいつら異人か?俺達とはちょっと違うな」


「へっへっへ、女がいるぜ一人はまだガキだが


 もう一人は結構いい女じゃねーか!?」


好奇な目で見つめる男達の中でルキア達六人は


座らされ待たされた、しばらくしてから


立派な甲冑に身を包み鋭い眼光をした男が現れ


ルキア達をジロリと見つめた


「拙者は今川義元様が家臣、松井宗信と申す 


 そなたたちは一体何者でどこから来たのだ?」


ルキアはその問い掛けに対し平静に答える


「私達はたまたまここに迷い込んでしまった者で


 ございますレスティアレ・ラドスという


 所から来まして魔王討伐の為に旅をしております」


ルキアの説明に対し明らかに不信感を募らせる松井宗信


「魔王討伐だと!?何を世迷言を


 それに”れすてぃあれらどす”とは


 何処の国の事じゃ?確かに見た目は異人の様だが


 抵当な事を言ってこのワシをごまかせるとでも思うたか!?」


「違います、我々は本当に魔王討伐の為に


 旅をしていたのです


 アドギラル・ロックを倒す為に我々は・・・」


熱心に説明するルキアだが必死に説明すればするほど


不信感を募らせる松井宗信


そこに部下であろう男が松井宗信に近づき耳元でささやいた


「たしか尾張の領主織田信長は異国の文化に


 大変な興味を持っていると聞いた事があります


 こやつらは織田方の密偵ではないでしょうか!?」


松井宗信は少し考えた後にその部下に指示を出した


「確かにそう考えるのが妥当であるな


 この者達を捕えて尋問せよ


 大事の前じゃ何も吐かない様なら殺せ


 女共は兵の慰み者にしてもかまわん」


そう言うと席を立ち立ち去ろうとする松井宗信


周りの兵が一斉に槍を突き付けルキア達を囲む


一部の兵は明らかにゾフィとフリニオーラに対し


下卑た目で見つめていた


「そなたたちは織田方の間者であろう


 そんな乱心者の様な説明で


 私を謀れるとでも思うたか


 所詮うつけの部下はうつけという訳か・・・


 無能な主君を持ったことを後悔しながら


 死んでいくがよいわ」


そう冷徹に言い放つとルキア達に背を向ける松井宗信


入れ替わる様に距離をつめて槍を突き付ける兵達


「ここからは地獄の時間だ


 少しでも苦しみたくないなら


 さっさとしゃべった方が身のためだぜ!?」


「女共はたっぷり可愛がってやるからな


 へっへっへ、楽しみだぜ」


松井宗信と兵達の言葉にいち早く反応し叫ぶステイメン


「みんな私にくっついてください早く‼」


その言葉を合図にメンバー全員が


ステイメンに密着するように集まる


全員の集結を確認してステイメンが両手を広げた


すると光の球体がメンバーを覆い包むように展開した


あまりの事に驚く松井宗信と兵達


しかしすぐに我に返り指示を出す


「何をしているその球から


 奴らをさっさと引きずり出せ‼」


指示を受けた兵が一斉に取りつく


しかし刀で斬りつけようが槍で突こうが


光の球体はビクともしない、呆気に取られる松井宗信


「何だこれは、面妖な!?」


一方球体の中ではメンバーがぎゅうぎゅう詰めで


ひしめき合っていた


中では音すらも遮断されていて外の兵が騒いでいる様子が


見えるものの全く音は聞こえない状態である


そんな球の中ではまるでおしくら饅頭でも


しているかのような光景があった


「おいステイメン


 もうこれ少し広くできないもんなのか!?


 俺は体が大きいからずっと屈んでいなきゃ


 いけないのは結構きついぞ!?」


「ちょっとライオスどこ触ってるのよ‼」


「しゃあないだろ


 別にワザとやっている訳じゃねーよ!?」


「こんな時に喧嘩してる場合じゃない


 と思います、痛っ⁉︎」


「大丈夫かフリニオーラ?すまん」


「うぐっ、男と密着なんて俺の主義に反するぜ


 おいライオス場所代わってくれ」


「そんな事できるわけないだろゼファー⁉︎


 おいステイメン、何とかならないのか?」


「我慢してください、この局所結界は


 防護対象範囲が狭ければ狭いほど強固ですし


 持続時間も長くなりますから


 とはいえあと五分程しかもちませんけどね


 でこれからどうしましょうか?」


「今からお手々繋いで仲良くしましょう


 って展開はなさそうだわな」


「向こうは俺たちの事を敵の一味だと


 思っているみたいだし戦闘は


 避けられないかもな」


「いいじゃない、やっちゃいましょうよ‼︎


 アイツら私の事イヤラシイ目で見てたし


 殺そうとしたのよ⁉︎」


「でも相手は魔族じゃない人間なんですよ⁉︎


 人と戦うなんて・・・」


「もし逃げるにしても執拗に追って来ることは


 間違いないでしょうからね


 お互い無傷という訳にはいかないと思います


 どうしますかルキア?


 あなたがリーダーですあなたが決めてください」


ルキアは皆の話を目を閉じジッと聞いているだけだったが


ステイメンに促され決断する


「戦おう、皆の言う通り戦いは避けられない


 展開になってしまったようだ


 無理に戦いを避けようとして


 誰かが傷つくのは絶対にダメだ‼︎」


フリニオーラを除き皆納得の表情だった


そしてルキアは話を続ける


「それで今からの方針というか戦い方を説明する


 いくら俺達でも二万五千人を相手に戦ったら


 厳しい事はわかるよな?


 だから基本的に相手に強烈な一撃を食らわし


 混乱させその隙に速やかに撤退する」


すかさずステイメンが問いかける


「強烈な一撃とは具体的にどういうものを考えていますか?


 フリニオーラの巨大魔法ですか?


 それともゾフィにドラゴンでも呼び出してもらいますか?」


ステイメンの質問に首を振るルキア


「それだと必要以上に被害者を出してしまう


 戦うとはいったがなるべく被害を最小限に抑えたい


 だから俺が考えているのは・・・」


その時ルキアの、目が鋭く変わった


「一点突破で敵の総司令官を討ち取る


 そして相手の混乱に乗じて即時撤退


 それが基本方針だ」


ルキアの作戦に“ヒュ〜”と口笛を鳴らすゼファー


ニヤリと笑うライオス、大きくうなづくゾフィ


複雑な表情を浮かべていたフリニオーラに


ルキアは優しく話しかけた


「俺にはこんな作戦しか思いつかなかった・・・


 すまない、どうしても嫌なら君だけは


 作戦に加わらず付いて来るだけでも


 いいがどうする?」


ルキアの提案に首を振るフリニオーラ


「ルキアさんの判断は正しいと思います


 私だってチームのメンバーです


 いっしょに戦わせてください‼︎」


ルキアはもう一度”本当にいいのか?”と確認しようとしたが


フリニオーラの目には強い意志を感じた


ルキアは軽くうなづくとステイメンに語りかけた


「ステイメンこの作戦の具体的な戦術指示を頼む」


ステイメンは大きくうなづき


「ゼファー貴方の手持ちカードを教えてください」


「OK、デュエルスタート‼︎」


掛け声に呼応しゼファーの目の前に5枚のカードが現れた


しかしそれを見たゼファーの表情が少し曇る


「あまりいい手札じゃないな・・・


 武闘家系の直接戦闘用カードが1枚


 回復系範囲魔法が1枚


 能力上昇系強化魔法が1枚


 転移系魔法が1枚


 魔獣召喚系が1枚だがコイツは闇属性で


 昼だと力が落ちる上に対人特化型だから


 多人数相手にはあまり向かないな」


それを聞いたステイメンは少し考えていたが


各自に指示を出し始めた


「ゼファーは武闘家系カードを使って


 ルキアと共に前衛で敵陣突破の先陣をお願いします


 二例目にゾフィ、相手は人間です数はいますが


 さほど高い戦闘力はないはずです


 ですから単体の強力な魔獣ではなく


 なるべく数多く召喚できるものでお願いします


 そして三列目にフリニオーラ


 敵に対して弱体化の範囲魔法を


 動きを鈍らせる程度で構いません


 ルキアとゼファーならそれで十分だと思います


 そして魔力はなるべく温存してください


 いざという時あなたの巨大魔法に頼る事に


 なるかもしれませんから


 そして私が四列目を担当します


 この結界が解けたらすぐに


 全員に防護系魔法を施して


 その後敵の総司令官を探します


 各所各所で回復や防御魔法で


 皆のフォローしますから何かあったら


 一言かけてください


 そしてしんがりはライオス


 私を始め全てのメンバーは


 前面に集中しますから


 後方からの攻撃や追撃は


 全てあなたに任せます、


 作戦は以上です、何か御質問は?」


「いいんじゃない⁉︎」


「俺もそれでいいぜ」


「いつもながら見事な作戦だねぇ


 俺が女なら惚れてるかもよ」


「ステイメンさんの指示に従います」


皆の反応を見てからルキアが口を開いた


「この作戦はスピードが勝負だ


 何と言っても相手側は圧倒的なまでの数だからな


 我々の体力と魔力が尽きる前に


 相手の総司令官を討ち取らなければならない


 それとなるべく相手を殺さないように


 と言ったがそれで誰かが傷ついてしまったら


 本末転倒だ、少しでもヤバいと思ったら


 容赦なく全力で戦ってくれ


 その辺りの判断は各自に任せる 


 以上だ、みんな気を引き締めて戦ってくれ


 そして必ず全員無事でここを脱出するぞ‼」


ルキアの言葉に全員が力強くうなづいた


そしてステイメンが静かに言い放つ


「そろそろこの結界が解けます


 皆さん心の準備を‼」


異世界である戦国の中でルキア達の戦いが


今始まろうとしていた。


一週間ぶりです、いよいよ戦国時代に突入しました(2回目なのに突入とか大袈裟な・・・という無粋なツッコミは無しで(笑))最近の調べですと桶狭間の合戦の際、今川軍の本陣にはは5000人程しかいなかったらしいですが、そこは昔ながらの大軍相手に少数で勝つ‼というコンセプトに基づき25,000人とさせていただきました、広い心でご覧いただきたいと思っているしだいです、このシリーズは基本毎週土曜日中には更新する予定ですので、しばらくおつきあいいただけると嬉しいです、では。

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