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第一夜 飼われた少女

えっと…はじめまして。夏樹周十です。こういう種族間のの恋って書いた事がないので変になるかも知れませんが、多めに見てください…頑張って書くので!!

『ヴァンパイア』。私がヴァンパイアを信じるようになったのは、いつからだろう?何で信じるようになったのだろうか?それすら覚えていない。それが9歳の時、私が思ったこと。ヴァンパイアは日の光を浴びると死ぬ。人の姿をした「バケモノ」…。いつの日か、私はヴァンパイアに噛まれてしまうのだろうか?そして、伝説通りにヴァンパイアと化してしまうのだろうか?それは、やられなければ分からないこと。そして…いつの日か…いつの日か私はヴァンパイアと恋に落ちてしまい、そのヴァンパイアのとりこになってしまうのだろうか…。


 「クラリス、聞いているのか?」

クラリス=シリル=オスロー。それは私の名。名門貴族、オスロー家の娘。私はそんな家に生まれてしまった。

「はい、父上。一ヶ月後の今日、私の誕生パーティーでこのタリシア王国の第一王子、『ギゼル』様とのご婚約を発表するのですよね?」

私はうつむきながら言った。だって、私は普通に生きたかったんだもの。殿下との婚約なんて、どうでもよかった。ただ、普通に恋をして、普通に人を愛したかったのに…全ては家のためにと、叶わなくなった。家のために、婚約なんてしたくないのに…(相手は私の事を気に入っているが)

 母上が他界してから、父上は私を早く嫁がせたいらしく、すぐに婚約の話を持ち込んできた。(父上にとって、婚約に反対していた母上は邪魔ものだったのだ)

「そうだ、クラリス。お前が殿下と結婚すれば、このオスロー家の名はさらに広まる。お前の為にもなれば、オスロー家の為にもなる。忘れるな、お前はここで『生かされて』いるのだ」

カタン。と、椅子がずれる音を辺りに響かせ、父上は自分の書斎へと戻って行った。私も立ち上がろうとした時、

「クラリス」

私と同じ麦色の青年が呼んだ。

「…兄上。もうお帰りで?」

「あぁ、思ったより早く終わってな。お前も婚約話に苦労しているな。私自身も、おまえの婚約には反対だった。けど、父上があそこまでとくると…」

「いいのです、兄上。私はこの家に飼われているのですから」

「お前…何を言っているのだ」

「失礼します」

私は兄上の横をすり抜けて、自室へと戻って行った。夜は嫌い。ただ無駄に暗いから、闇が濃すぎるから。一ヶ月で…あと一ヶ月で私は。


 チュンチュンと、鳥が朝を告げる。時間は止まってくれない、待ってくれない、戻ってくれない。こんなことを考えるようになったのは母上が他界してから。今思うと、母上が居てくれた時は、苦しいも、淋しいもなかった。私は、母上が居てくれるだけで幸せだったのに…。

 そして、今日もまた夜が来る。窓から差し込む月の光は、私を『夜の者』に変えるかのように照らし出す。そして歌う。悲しみに満ちたこの歌を。涙が頬を濡らす。

《あなたといた日々 私は忘れてしまう 悲しみに溢れたこの心 行く場所なんてない あぁ また会えるのだろうか》

《共に歌おう 我が悲しみを》

私は歌うのをやめた。月光に満ちた外から、同じ歌が聞こえてきた。私は窓を開けてみる。が、誰もいなかった。気のせいだろう、と思って窓を閉めようとすると…

「何でいつも泣いているんだい?」

んだ低い男の人の声がした。私はびっくりしてもう一度外を覗く。

「上だよ」

声は上からした。恐る恐る上を見ると、赤髪の18歳位の男の人が座っていた。黒いベストに、黒いズボン。そして、黒いマント。私は思わず言ってしまった。

「…ヴァンパイア……」

男は屋根からおりて、窓辺に座った。

「…ふーん。君、信じているんだ、ヴァンパイアを」

「目の前に居る貴方がそうでしょう?」

「まぁ、そうだけど…」

「初めて見たわ…」

麦色の私の髪が風で揺らぐ。はっとして窓を閉めた。

「あっちへ行って…一人にして…」

「何で」

「いいから!!」

強引な事を言っているのは分かっている。けど、初めてヴァンパイアを見て動揺しない人なんているかしら?

 きっと、気まぐれで私の所に来ていたんだわ。そうにきまっている。明日、また来るはずがないわ。私なんかの所に…。


 朝、目が覚めると、一枚の紙切れが落ちていた。拾い上げて読んでみる。

『夜は、驚かせてごめん。俺は『リッド』。何か、君と話をしてみたかったんだ。今日の夜、また来るよ』

私は読み終えると、紙切れをビリビリに破いて、窓から捨てた。ヴァンパイアは信じている。けど、それは『存在』だけ。言葉は人間以上に信用できない。ヴァンパイアは『人間の姿をしたバケモノ』…。人間よりけがれたものよ。誰かがドアをノックする。

「クラリス様、旦那様がお呼びです」

「はい、すぐに行きます」

そして、また一日が始まる。


 父上の書斎へと向かった。ノックをしようとした時、声がした。父上と、兄上の声だ。

「父上!!何度言ったらわかるのですか!!婚約などをして…政略結婚でクラリスが幸せになれるとお思いなんですか?!」

「黙れ、クラウド。政略結婚だろうとなんだろうと、この家の名誉のためだ。その為には、幸せなんぞどうでもいいものなのだ。クラリスはこの家に飼われているのだ。もちろん、おまえもだ。それに、殿下はクラリスの事を気に入っている。いいではないか」

「しかし…!!」

「下がれ、クラリスが来る」

「……失礼します」

私は急いで隠れた。兄上のあの悔しそうな顔、初めて見た。私の為に、凄い悩んでくれているんだ。私は、なんとかして、婚約を打ち切りにしないと…

ドアをノックする。

「父上、入ります」

「遅かったな、クラリス。お前を呼んだのは他の何でもない。今日、国王と殿下がお見えになられる。一ヵ月後の事について話し合いをする」

「旦那様、国王様たちがお見えです」

「そうか、下がれ。案内を。クラリス、座って待っていなさい」

「…はい」



 「お久しゅう御座います。ギゼル殿下」

「こちらこそ、クラリス嬢。逢わない内に美しくなられた」

ギゼル殿下がお見えになった。彼と会うのは2年ぶりだろうか?殿下はニヤッと笑うと、私の髪をなでて、軽く髪にキスをした。私は突然のことで顔を赤らめた。

「…父上、オスロ―伯爵。少々クラリス嬢とお話があるのですがよろしいですか?」

「あぁ、行ってきなさい」

殿下は私の腕を握って、テラスへと移動した。握られた手を強引に放す。

「そんなに僕がお嫌いで?クラリス嬢」

「その呼び方、お止めください」

「いいではないか、もうすぐ君は私の花嫁となる。そのようなものに呼び方も何もない。なんなら、『クラリス』と呼びましょうか?」

「…結構です」

くすっと、殿下が笑った。まるで、私を見下しているかのように。

「まぁ、結婚さえしてしまえば君は僕のものになる。その時を楽しみにしていてよ、『クラリス』」

「卑怯者。あなたの狙いはこのオスロー家、私を利用して手にいれようなんて考え、お見通しよ。この家には兄上が居るわ。誰のものにもならない」

殿下は不気味な笑みを浮かべて私の所へ寄ってくる。

「君への愛は本当だよ、クラリス。信用できないのなら、ここで証明してあげるよ」

殿下が私を押し倒して、跨いだ。そして、私の首に舌が這う。まるで、ヴァンパイアのごとくに…。いきなり私は怖くなって、殿下を突き飛ばした。

「…今日はここまでにしてあげる。次は覚悟してね」

殿下は先に父上たちの所へ戻って行った。


 また、今日も夜が来た。国王様は帰って行き、また明日来ると言っていた。あんな人が婚約者だなんて…いやよ。何で…部屋に明かりを付けずに座りこんだ。今日もまた、涙で頬を濡らしてしまうのだろうか。

「俺の質問に答えてよ」

ふと、顔をあげる。昨日の声と同じだ。窓に人がいる。

「あなたは…」

「俺の質問に答えてよ。何で君はいつも泣いているんだい?」

これが生涯、私が一生愛することになる『人』、リッドとの出会いだった。


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