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浅ましくても生きる

私は最低だ。

自分が生きる為に他人の命を差し出したのだから。

こんな行為人間の所業ではない。

かつて魔王などと言う寝物語に出てくる想像外の魔物だったと言うだけはある。

断じて認める訳にはいかないけれど。


私の迷いや恐れを無視してゴブリンと妖狐は話し合う。


妖狐曰く。

この森は昔は魔王のような魔物が住み瘴気を放つ人間にとって有害な場所だった。

しかし現在はゴブリンが時たま出るだけの普通の森に過ぎない。

ゴブリンより熊や猪の方が危険度合いが高いとされている。


そんな普通の森でこれから人間を殺すのだ。

他でもない私が生きる為に。

そこまでして生きるべきなのか。

それはわからないが、例え自分が無価値でも有害でも死にたくはなかった。


大丈夫。

私がこの手で殺す訳じゃない。

殺すのは、妖狐とゴブリンだ。

私は見ないでここにいよう。


無理矢理心のバランスを取るべく人間を殺す言い訳をする。


「主様、人間の店から貰った服ですが主様には大きいですよね。」

ふと思い出したかのように妖狐は言う。

そうだ、私は自分が大人だと思っていたから大人の服しか買ってない。

また人間の町に行くのか?

正直気がすすまない。

どうしてあの時この妖狐は指摘してくれなかったのか。

「申し訳ありません、主様が欲しいものを手に入れる事が優先でしたのでそれが欲しいと言われてしまえば手に入らざるを得ませんでした。」

妖狐が私の心を見透かして平伏する。

「…次回からは気づいたら教えて。」

「かしこまりました。

それで、服なのですが、かつての主様が着ていた服が未だに残っております。

よろしければそちらをお使いください。」

千年前の服が着れるのかという疑問があったがとりあえず寝巻きのままではいられないので頷いてみる。

すると妖狐は虚空を見つめ何もないところを手で掴む。

何もなかった筈なのに、手の中には服があった。

「収納魔法です。人間は使い手が少ないとききました。

この中では時間の経過はありませんので劣化はしていません。」

渡された服は仕立てのよい子供用のブラウスと吊りズボン、ジャケットに革靴だった。

典型的な貴族の男の子の服である。

私は自分の性別を女性と認識していたが、なにぶんこの短い髪だ。

男の子にしか見えないだろうし、まあ、いいだろう。


そして、妖狐とゴブリンは最初にやってくるのは数人の冒険者か自警団と予想を立て、ゴブリンを囮にして妖狐が隙をついて仕留めるという意外と普通な作戦を実行する事にしたようだった。


翌日。

予想より多めの20人ばかりの自警団と冒険者の混合集団が森に侵入してきたのだった。

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