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妖狐の話を聞いて

私は話を聞いて呆然とした。

話を要約してみると。


私はかつて魔王と呼ばれた森の主で数多の魔物を統べる存在だった。

しかし、人間に討伐された。

しかも、唯の討伐ではなく、呪いを受けた。

妖狐の推理によれば人間への転生という呪い。

成る程、もし当たりならば私の認識が人間なのも、私以外の者の認識が魔物なのも頷ける。


しかし、何故そのような呪いを討伐した人間はかけたのだろうか。

己の命を賭ける程の意味があったのだろうか。


大体そんな呪いをかけるから魔王と呼ばれた魔物が復活したともいえるではないか。


しかも、かけるならきちんとかけて欲しい。

きちんとかかっていれば人間としての生を全うできただろうに。

中途半端な呪いだから今、私は自分の立ち位置が人間なのか魔物なのかがわからない。

人間としての記憶が急速に失われていくのは呪いが解けている証なのか。


いや、そもそも私は本当にかつて魔王と呼ばれた魔物なのだろうか。

人間としての記憶は失われつつあるが、では千年前の記憶が蘇ったかといえば答えは否である。

「私は森の主だったの?何か証拠でも?」

私は妖狐に問う。

「私は千年前の大規模侵攻唯一の生き残りの魔物。

従って私が唯一主様のお顔を見たことのある魔物です。

断言しましょう、貴方様のお顔は千年前と全く同じでございます。」

「我らゴブリンは大規模侵攻後住み始めた新参者の魔物です。

故にかつて数々の伝説を残した魔王様のお顔はしりませんが、貴方様の内に秘めたる魔力は我らゴブリンにも分かるほど途方もなく大きいもの。

この森の統治者代理である妖狐様のそれより遥かに大きい。

さらには代理様が主様と呼ばれたのです。

ですから、我々にとっては貴方様はこの森の主様なのです。」

魔力?

魔法が使えないのに、そんなものがあるのだろうか。

というか、千年前魔王と呼ばれた魔物の見た目が人間の子供の姿なんて驚きだ。

「嗚呼、主様、お会いしとうございました。

人間に討たれた時はこの世の終わりと思いましたが、天に昇っていったあの様子はさながら魂が輪廻転生の輪に巻き込まれたかのようでした。

それを見て私はいずれ必ず主様が復活すると信じこの森で主様が戻るまで統治者代理を務めておりました。

嗚呼、私の考えは間違っておりませんでした。

この森はかつての面影はありませんが、主様が戻られた今、すぐに復活するでしょう。

あの忌々しい薔薇色の男の子孫が今やこの森を含む大陸を統べる帝国の統治者です。

この大陸を統べるの者としてあの男の子孫など相応しくありません。

玉座は主様の物。

完全復活を果たした暁にはまず、あの男の子孫を皆殺しにしましょう。」

「それこそ、今や迫害され住むべき場所を奪われ続ける魔物全ての悲願!

主様が消えてから、魔物を統べるに相応しい魔物は現れず人間共からは狩られ魔力の源たる魔石を奪われる日々。

噂では同胞達を魔石を摂る為だけに飼うための施設もあるとの事。

主様復活が魔物の世に伝われば喜んでその膝元へ集うでしょう。」


その帝国に住む人として暮らしていた私にとって彼らの言葉は恐怖でしかない。

彼らがなんと言おうが私は人間だ。

少なくても今はそう思っている。

なのに、私に帝国を潰せという。


建国千年祭が先日あった。

その際遠くから王宮のテラスに立つ皇帝陛下を見たが赤い髪と瞳が印象的な壮年の男性だった。

隣に立つ皇子様と皇女様も全員皇帝陛下譲りの赤い髪と瞳がとても美しかった。

妃殿下は確か別大陸からその身一つで嫁いできた人。

私が生まれる前に終わった戦争に勝利した我が国に差し出された人身御供だったはず。

一人物静かに佇む姿は印象的だった。


普通に平和なのだ。

その平和を壊せと?


私は人間だ。

魔物ではない。


復活などしたくない。

このまま人間でいさせてくれ。


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