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姿形も変わった私

森に戻り小屋の中。

手に入れたパンと水を飲む。

「主様、ご気分は?」

「…大丈夫…」

心はともかく、体は命を繋いだ。

しかし、妖狐は困り顔だ。

「やはり、ダメか。」

「…?何が…」

「ああ、主様はお気になさらず。

全ては憎き人間が悪いのです。」

妖狐は微笑み何も教えてはくれない。

「なんで教えてくれないの?」

「いえ、わざとではないのです。

しかし…」

妖狐は言いにくそうにしている。

「なんで?自分の事なのに何もわからないのは怖いよ。

なんでもいいの、教えて!」

「しかし…。

事はとても複雑で、主様はまだ幼く理解が追いつくかどうか…」

「幼いって、私、20歳だよ。

そりゃ、魔物からみたら20歳なんて子供かもしれないけど、人間だと成人にあたるよ。

頭はいい方じゃないけど、時間をかければ理解できるよ。」

「え!?」

「え!?」

妖狐と長老が同時に言う。

「まさか!」

「まさか!」

また、同時に言う。

そして、同時に平伏する。

「申し訳ありませんでした。

見た目で幼子と思い込んでおりました。

平にご容赦願います!」

「え、いや、確かにちょっと若くみられがちだし、気にしてないよ。」

「おお、寛大な御心ありがとうございます!」

長老が言う。

「ちょっと若く見えるという範疇を超えているような?」

妖狐が言う。

「そ、そうかな?」

「はい、私はてっきり10年生きていないと思いました。」

「はあ?」

私はあまりの言葉に声を荒げてしまう。

途端、妖狐は平伏する。

「申し訳ありません!」

「あ、いえ、大丈夫です。

さすがにそこまで子供に見られたのは初めてだったので…」

20歳をどうみたら10歳に間違うのだろうか。

背丈も体つきも全然違うだろうに…。

…?

「あれ…?」

ここで私は気づいた。

いや、気づきたくなかった。

気づいた事を即座に否定した。

しかし、否定しても現実は残酷だ。

「主様?」

妖狐が不安げに問う。

「…が、…さい。」

「主様?」

長老が声をかけてくる。

「手が小さい!」

私は叫んだ!

そして慌てて自分の体をじっくりと…現実逃避をせずに見る。

手だけではなかった。

胸が小さく…というより、なくなっていた。

着ていた寝巻きは半袖でズボンとブラウスに別れたタイプのものだったのに、ズボンは履いておらず、半袖は長袖状態でブラウスは膝丈のワンピース状態だった。

何故気付かない!

気づく余裕がなかったからか?

それにしたって間抜けすぎる。

大体、ゴブリンの話し声を聞いた時かき分けた草むら。

背丈程あったけど、あり得ないだろ!

そう、自分の背丈が縮まない限り!

足のサイズも小さくなっている。

もう、敢えて見る必要もないだろう。

妖狐は10歳くらいと言ったが、それより尚、小さい子供だ。

…大体…5歳くらい?

私は頭を抱える。

そして更に重ねて気づく。

髪が私が認識していた長さより短い事に。

肩までくらいの長さだった筈なのに、今は男の子のように短く切り揃えられていた。

もしや、髪の色や瞳の色も私の認識とは違うのではなかろうか?

「私の髪と瞳の色は何色!?」

「い色ですか?私の知らない色です。」

長老が言う。

森の奥に住む魔物は色などには頓着せず、従って私に伝える術がないようだ。

「そ、そうですね、髪は朝日と同じ色、瞳は小麦の稲穂色でしょうか。」

理解できるようなできないような。

まあ、いい。

とりあえず、私の予想通り認識外の色とわかったのだから。

ある日目が覚めたら、私の見た目が大きく変化した。

どう贔屓目に見ても魔物です。

少なくても私以外の人間は私を魔物と判断して当たり前だろう。

もしかしたら、両親や友達は私を私と認識せずに迫害したのではなかろうか。

彼らからしたら私は私を食べた魔物なのかもしれない。

でも、私は見た目が変わっただけで人間なのだ!

もう、人間の前に自称をつけた方がいいかもしれない。

泣きたくなってきた。

「私は見た目程は子供じゃないです。

教えてください。

私は一体なんなのでしょう。」

なんの前触れもなく、見た目が変わり、人の言葉を忘れ、代わりに魔物と話せるようになった。

一体私の身に何が起きたのだろうか。

「では、私が分かる事を話します。

それは今から千年前の事…」

滔々と妖狐は語りだした。

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