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ゴブリンと出会う

森の中は暗かった。

寒かった。

今更だが、寝起きでこのような事態に陥ったのだ。


着てる服は寝巻き。

実は靴も履いてない。


足に小石や小枝が刺さる。

砂が痛い。


どうか、神様。


魔物に出会いませんように。


土地勘も無い状態でただ闇雲に森の中を歩く。

自警団に会ったら殺される。

そう、絶対の自信があった。


魔物だって言ってた…

でも、私は人間だ。

人間、人間、人間…魔物?

いや、人間だ!


時折挟まれる魔物ではという疑いの心を振りはらいながら前に進む。

いや、前に進んでいると言えるのか?

方向感覚がないのだ。

何処に私は向かっているのか。


そもそも、戻れるのか。


はっとその事に気付き後ろを向くが時既に遅し。


もう、帰り道がわからなかった。


私は蹲る。

目から涙が溢れてきた。

怖い。

怖い。

助けて。


誰か…!


どれくらい蹲り、泣いていたのだろうか。

遠くから話し声が聞こえた。

はっとしてその方向を見る。


まだ、少し距離があるようだ。

そして、気付く。

何を言っているのか、わかる事に!


私は一縷の希望を胸に立ち上がる。

助けてくれるかもしれない!


私は走った。

足が痛い事など忘れて。


近づけば近づくほど何を言っているかが鮮明になる。


『…の…が…』

『腹が…だろ?』


どうやら二人はいるみたいだ。

声は低い。

男性だろうか。


私は足を早める。


この時、私はもう少し慎重になるべきだった。

少なくても、森の奥に人間がいるわけないと気付くべきだった。


走れば走るほど声が鮮明になる。


『…肉は…のだ。』

『いや、俺…』

『捕まえた…』


私は背丈程に高い草むらを掻き分け前に進む。

ガサガサと音が煩い。

この煩い音に声の主達が、音に気付く。


途端、肌に突き刺さる冷たい棘のようなものを感じる。


『何かいる』

『なんだ?嗅いだ事のない匂いだ!』


ガサガサと草むらを掻き分け続けていたら、突然視界がひらけた。


『…』

『…』

「…」


浅黒い肌。

痩せこけた体。

下半身を獣の皮で申し訳程度に隠した姿。

一人は右手に棒を持っていた。

もう一人は左手に潰れた兎を持っていた。


彼らは…彼らは…

小鬼(ゴブリン)

私は呟いた。

人間の言葉を呟いたつもりだった。

しかし、発せられた言葉は人間の言葉ではなかった。

なんの言葉かと言われたらわからない。

しかし、人間の言葉ではなかった。


目の前のゴブリンは私の呟きにはっとする。

『うわっ!な、なんだ!?』

『何処から来た!?ここは俺達の縄張りだぞ!』

『わ、私は町から…』

私の言葉に顔を見合わせるゴブリン。

『人間に捕まっていたのか?』

「え、いや…私は」

調教師(テイマー)がいるのか。

俺達には縁がないと思っていたが、そんな事も言ってられないかもしれないな。』

ゴブリン達が相談する。

『お前、話を聞きたい。一緒に来てくれ。』

「え?」

ゴブリンは私を襲う事なくついて来いという。


なんでゴブリンの言葉がわかるのだろうか。

ゴブリンから見ても私は人間に見えないのだろうか。


ただ、私に選択肢はないとわかった。

私は大人しくゴブリンについて行った。



『おーい、帰ったぞ。』

少し歩いたらゴブリンの集落に着いた。

森の中にゴブリンの集落があるなんて!

討伐対象だ。

自警団か冒険者にお願いしなくてはならない。


集落には子供、老人、女と15人程度が思い思いに過ごしていた。

『その子は?』

痩せこけた女性のゴブリンが私を見る。

『なんていう種族?』

『わからん、だが、町から来たらしい。』

『え!?』

私をまじまじと見る。

『長老を呼んでこよう!』

女性は走り長老なるゴブリンを呼んでくる。

暫くすると私の前に今にも死にそうな程に老いたゴブリンが現れる。

『これは…長く生きてるが初めてみたわい』

私をまじまじと見つめながら長老は言う。

『長老。これが何かわかるのかい?』

そう言った私を連れて来たゴブリンの一人を老人は流れる動作で頭を叩く。

『いってぇ!』

『お前は!口の聞き方に注意じゃ!

…うちの若い者が失礼しました。』

長老が頭を下げる。

驚くその他のゴブリン。

「あ、あの…」

『まさか、この森に貴方様のような方がいらっしゃるとは!』

「え、あ、あの…」

『どうぞ、むさ苦しいところですが、ごゆっくりお休みください。』

何故かはわからないが、比較的綺麗な小屋の中に誘われる。

そして、水と木の実が渡される。

『どうぞ、お召し上がりください』

言われるが…食べれるの?

この実は随分硬い。

茹でるとかしないと無理そうだ。

『それで、この森は如何でしょう?』

「え?」

『ああ、まだいらしたばかりなのですね。

では、ごゆっくりご覧ください。

そして、どうぞこのまま、この森にお住まいください。』

長老が、平伏する。

一体何がなんだかわからない。


私はどうすればいいのだろうか。


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