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人間と邂逅

無数のアンデットが地面を或いは空をかける。

集落がアンデットに襲われている!?

私は最初そう思った。

しかし、すぐに違うと察した。

襲われているのは山賊のみだったからだ。

山賊がパニックに陥りながらも棍棒を或いは剣を振るう。

獣姿のアンデットは当たってしまえば即行動不能となり土に還る。

しかし、あまりに数が多い。

あっと言う間に山賊達はアンデットに制圧されてしまった。

アンデット達は仕留めた山賊の死体を何処かへ持っていく。

きっと行き先にアンデットの生みの親がいるに違いない!

これだけのアンデットを生んだ人だ、かなりの魔力を有しているに違いない。

ごくり。

私は喉をならす。

欲しい。

その魔力が欲しい。

ついぞ忘れていた欲が湧いてくる。

私はアンデットの後をつけていく。

これだけのアンデットだ、もし見つかれば即死亡。

逃げ切れるものではなかろう。

そう、追いかけてはいけないのだ。

何か切り札でもない限りは。

しかし、久しぶりに顔を出した欲が私を突き動かす。

この平和な集落で一生を終えるつもりだった。

もう二度と欲に突き動かされる事もないはずだった。

なのに、なのに!!

私はまた同じ事を繰り返そうとしている!

私は本当に馬鹿である。

私は頭を抱えたくなった。


アンデット達は私に気づかなかったようで、遂に彼らの主人の元へ私はたどり着いた。

「!!!」

集落の外。

大きな岩の上に座るそれは…

「ノーライフキング…」

アンデットの上位個体。

明らかに他のアンデットとは毛色が違う。

初めてみた…。

獣姿のアンデットがノーライフキングに傅く。

山賊の死体が一瞬でゾンビへと姿を変える。

早い!

人間には真似する事のできない速さだ。

瞬間、ノーライフキングと目が合った。

「!!」

私は動けなかった。

動いたら死ぬ。

ああ、でもそういう死に方もいいかもしれない。

しかし、ノーライフキングはすぐに私から視線を外すと、アンデットの集団を引き連れて何処かへと行こうとする。

私は、躊躇いなく彼らを追いかけた。



***

ノーライフキングは困惑していた。

人間が一人自分達をつけているからだ。

服装から察して撃ち漏らした山賊という訳ではなさそうだ。

集落の人間は手出し無用。

アンデットにしていいのは山賊のみ。

ノーライフキングはそう判断して動いていた。

だからこそ、後をつけてくる集落の人間という存在をどうすればいいのかがわからなかった。

これが妖狐ならばもう少し考えて対応しただろう。

或いは魔力が残っていればテレパシーで指示を仰いだだろう。

しかし、上位個体とはいえ所詮はアンデット。

知能は精々学童レベルだし、魔力も微々たるもの。

対応手段など思いつきもせず、結果放置の状態で己の主人の元へ帰ってきてしまった。


***

「主様、帰りました。」

私は帰ってきたノーライフキングが連れているアンデット軍団に恐れをなした。

数多の動物姿のスケルトン、ゾンビ。

数は少ないが人間のゾンビもいる。

空を見上げるとゴーストがケタケタ笑いながら自由に右へ左へと遊んでいた。

「どうでしょう、我がアンデット軍団は!

総数は数百程度でその殆どが兎と鼠ですが、中には熊や猪もおり人間の集団にも負けませぬ!

山賊どもも我が軍団に降りました。

いつでも出撃命令に従い人間を始末出来ます!」

意気揚々というけれど、出来ればこのまま何も起きず引きこもっていたい。

しかし、そうはいかないようだ。

「うわぁぁぁ!」

男の叫び声がする。

なんだ!?

「ノーライフキング、これは!?」

妖狐が人間の男の首根っこを掴んでいた。

「ああ、なんかついてきてました。」

「どうして放っておいた!?」

「どうすればいいのかわからなかった。」

「…」

ならテレパシーを送り指示を仰げと思ったが妖狐は気づいた。

ノーライフキングはテレパシーを自在には使えない。

集落発見の一報を入れて魔力を使い果してしまったのだろう。

指示がなければ何も出来ない。

知恵のない魔物の悲しき事実だ。

「主様、この人間は集落の住民のようです。

如何致しましょう。」

言われて私は男をみる。

年の頃は30代後半くらい。

短く切りそろえたオレンジ色の髪。

銀縁眼鏡。

中々背の高い、どことなく気品のある男だった。

「どうするって…」

「アンデットにしてしまいましょう。」

妖狐が提案するが、それはダメだ。

「お家にかえしてあげよう。」

「でも、この者勝手について来ましたからねぇ。」

「★☆☆★€%*」

何を言っているのかはわからない。

もう、驚かなくなった。

しかし、次の瞬間。

「★€%☆…あ、あー、言葉通じます?」

『!!?』

私は目を見張った。

妖狐は力任せに人間を床に叩きつけ、上に跨る。

首に己の爪を当ていつでも殺せる態勢だ。

「あ、あの!?あとつけてすみません!

悪気はないんです!

ただ、たくさんのアンデットがいたから大量の魔力があると思って!!

ノーライフキングもいたし!!

すみません!すみません!別に他意はないんですぅ!」

何か喋りだした。

私は嬉しかった。

もう二度と人間と話せないと思ったから。

「妖狐!離して!」

「しかし…!」

「大丈夫だよ!」

「畏まりました。」

妖狐は渋々ながら男から離れた。

「…!」

男は妖狐が私の言葉で離れた事に驚き立ち上がる。

そして私をまじまじと見つめるのだった。

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