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ノーライフキングとアンデット

死せる者共の王(ノーライフキング)について語るには死せる者(アンデット)について語らなければならない。


アンデットとは主に三種の魔物の総称である。

骸骨(スケルトン)死体(ゾンビ)悪霊(ゴースト)だ。

要は一度死んだ者が魔物となった者を指し示している。

尚、アンデットは人間に限らず獣でも成り立つ。

従って兵団を作る為の数の確保という点においてアンデットは素材がどこにでもあるという点において大変適した存在といえる。


しかし、決して万能ではない。

まず、アンデットの作り方。

方法は古今東西探しても一つしかない。


死霊術(ネクロマンシー)


時間をかけて描いた魔法陣と儀式をもって完成する魔術だ。

専門の知識を持つ人間がやっても三日三晩は時間が必要となる。

それで作れるアンデットは大体平均20から30程度。

まあ、近所の墓場が一通りアンデットと化すくらいといった所か。

人間がやるという前提があるとかかる時間に対してできる作品(アンデット)の量が少ない為費用対効果があまりよくないのだ。


そして弱点。

とにかく、アンデットは脆いということだ。

冒険者のような武器を持って戦う人間は勿論、子供が投げた石があたっても動きが止まる。

雑貨屋で売ってる一山幾らの塩で浄化する事もできる。

脆いとかいうレベルではない。

魔物の中でも最弱と言えるであろう。


そんなアンデットの上位個体がノーライフキングだ。

彼はネクロマンシーを使用し、アンデットを作る事ができる。

しかし、人間ではないのでネクロマンシーの短縮が可能。

呪文を唱えるだけでよく、魔法陣も儀式も不要。

それでいて作れるアンデットの数はほぼ無限。

死体があればあるだけアンデットとする事ができる。

ノーライフキングならば兵団を作るのにそう時間はかからないだろう。

それこそ数だけならば万にも届くものを作れるはずだ。

しかし所詮はノーライフキングもアンデットの一種。

ノーライフキング自体の戦闘力はアンデットのそれと実は変わらない。

真っ向勝負で子供に負ける。


但し最弱の王たるノーライフキングだが、一度兵団を作れば話は別だ。

いくら脆くても万に届く兵団、しかも死体があればあっただけ時間をかけずに生み出されるアンデット兵団は人間にとって脅威。

しかも、人間のネクロマンシーで呼び出されたアンデットより知性が僅かながら上でありノーライフキングの命令を忠実に時に工夫してこなす。

故に、人間にとってノーライフキングとアンデット兵団の討伐ランクは最弱でありながら最低でもCランクで千を超えたらB、一万を超えたらAランクとなっていた。

最高ランクはSSS…これは千年前に現れた突然変異種の通称魔王のみ…から最低レートはGランク。

アンデット一体がGランクと考えれば異常ともいえる。

尚、かつてノーライフキングは魔王に仕えていた事があり、最盛期には10万に届くアンデットを従えていた。

最も、今いるノーライフキングとは別魔物ではあるが。


さて、そのノーライフキングだが、既に兵団と呼ぶに相応しいだけのアンデットを作りあげていた。

と、言っても全て獣であり、その大半が草食動物である兎や野鼠であるが。

とは言え、数は既に500を超えており、森全体をゴーストが飛び交っていた。


で、それを見た私は軽く目眩を起こしていた。

普通にお化けが怖いんです。

夜中に見るよりかはましかもしれないけど、普通に怖いんです。

お布団被っていいですか?


それに、私、何故かやたらとノーライフキングとアンデットに詳しい。

召喚したらその知識が呼び起こされたかのように頭に浮かぶ。

また一つ人間を辞めてしまったようだ。

そして、今、ノーライフキングがどこで何をしているかなんとなくだけどわかる。

どうやら召喚した魔物の行動把握が召喚者は可能らしい。

私はため息をついた。


そして、ノーライフキングが私に思念(テレパシー)を送ってくる。

『どうですか!我が主よ!

数だけならば人間の軍団にも劣りませぬ!』

『確かに凄いですね。』

本当はアンデットもノーライフキングも怖くて仕方ないのだが呼び出したのは自分なので口が裂けても言えない。

『しかし、まだ人間のアンデットがありませぬ故、作ってもよろしいでしょうか?』

『…どうやって?』

ここに人間の死体は無い。

『はい、ここより十数キロ先に行った所に人間の集落があるようです。

集落規模から察するに現在の獣兵団で制圧可能と見受けられます。

従って、これより集落を襲い人間の死体を作りアンデットとします。』

『…ダメだから!やめて!!』

私は思わず叫んだ。

『何故です?』

『何故って彼らは私を襲ってないのに殺すなんて出来ない!

私は自分を襲う者しか殺したくないの!』

私は全力で叫んだ。

『…そうでしたか…

では、我々が襲わなければ問題はないのでしょうか。』

『…どういう事?』

『現在、その集落が山賊に襲われて死体を量産しております。

さすがに全滅はしないでしょうが、終わった後に死体を頂く事は可能かと。』

『助けてあげて!』

『何故ですか?』

『困っている人は助けましょう!』

これ、人間なら当たり前の感覚なのだが、魔物には理解不能らしい。

ノーライフキングの困惑が感じられる。

しかし、主人の命令は絶対。

ノーライフキングは従う事にしたらしい。

『かしこまりました。

これより、山賊討伐いたします。』

ノーライフキングの指令に従い獣兵団が山賊に襲いかかった。



この時、この行動が自身の今後を左右するなんて思っても見なかった。



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