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ノーライフキング

ボロボロになったゴブリンと妖狐が帰ってきた。

私にはこれといった変化はない。

「人間20名討ち取り、人間側全滅。

ゴブリン80名討死。当方戦力8割減。

次回の侵攻には耐えられないでしょう。」

妖狐が報告する。

「こちら、物資です。」

人間から奪った物資。

鎧に剣、弓矢に槍などの武器と食料と薬があった。

薬はゴブリンに渡して使って貰う。

生きて戻ってきたゴブリンは全員満身創痍。

ただの薬ではあまり役に立ちそうもない。

おそらく、そう遠くないうちにまた人間がやってくるだろう。

その時こそ、私は死ぬのか。

死ぬのが少し先に延びただけだったか。

「報告します。

森が息を吹き返しました。

討死した人間、小鬼を森は取り込み瘴気としておりました。

主様の力へと間も無く変化するかと思います。

そのお力を使い、どうか戦力になるような魔物を召喚してください。

さすれば、再び人間が攻めてきても射ち殺してみせましょう。」

妖狐が言う。

ただの森が瘴気を放つ魔の森へと変わってしまった。

これも私がいるからか。

自分の知らない所で変化が起こっていく。

私だけが置いてけぼりだ。

「何も怖がる必要はありません。

人間が死に魔物が死ぬ。

その全てが主様の力となる。

これ程の喜びはありませぬ。」

長老が平伏していうが、私はちっとも嬉しくない。

私は人として生きていたかった。

こんな非日常望んでなかった。

何故、私がこのような目にあわなくてはならないのだろうか。


私は唐突に眠くなりそのまま眠ってしまった。


目が覚めた。

「目が覚めましたか!」

妖狐が言う。

突然襲った眠気を思い出し戦慄する。

そして、眠る前と後で何かが変わってないか確認する。

特に記憶。

何か思い出したり忘れたりしていないか、注意して確認する。

うん、大丈夫、特に変化はない。

私はまだ自分を人間と思ってる。

ただ、何かに満たされた。

そんな感じがした。

「なんだろう、不思議な感じがする」

「魔力が満たされたのでしょう。」

「その魔力を使い、どうか我らに仲間をお与えください。」

妖狐と長老は平伏しながら言う。

魔力?

そんなもの、私は持っていなかった。

でも、眠る前、瘴気が力になると言われていた。

力とは魔力の事だったのだろう。

「使い方がわからない」

「この森は主様の森。

主様が願えばそのまま叶うのです。」

願えば叶う。

私の願い。

死にたくない。

人間でありたい。

でも、叶わない。

魔力が足りないから叶わないのだろうか。

もっと魔力があれば叶うのか。

でも魔力を得る為には人を殺さなくてはならない。

願いが叶う程の魔力を得る為にはどれだけ殺す必要があるのか。

その頃にはもう戻れない所にいるのではなかろうか。

私はぶるりと震える。

嫌な予想だった。

外れることを祈るしかない。

「主様?」

「あ、え…っと仲間?魔物を召喚すればいいの?」

「はい、お願いします。」

言われて私は立ち上がり、小屋から出る。

何が起こるかわからないので外に出たのだ。

人間でありたいという願いは今すぐ叶いそうもないが、死にたくないはやり方次第で叶えられるはず。

その方法が魔物召喚だ。

願えば叶うと言うから私は願う。

私を守る魔物よ来てください…と。


瞬間。

地面に魔法陣が広がりその中央に黒い霞が現れる。

黒い霞は段々と形になり、魔物となる。


細身の長身骸骨が黒いローブを纏った姿。

動くとガシャガシャ音がする。

ガシャガシャ音をたてながら、骸骨は立ち上がり優雅に一礼。

「主様、召喚ありがとうございます。

御命令を。」

声帯が無いと断言できる容貌なのに話してくる。

「…死せる者(アンデット)…?」

「いいえ、私は死せる者共の王(ノーライフキング)です。

この世のアンデットを統べるもの。」

「ノーライフキング!上位のアンデットですな!

この者がいればこの森で死んだ全ての生き物がアンデットとして兵隊に換える事ができます。」

「人間は森に喰われるから、アンデットにはできないんじゃない?」

「あ。」

私のツッコミに長老が惚ける。

あ、じゃない、あ、じゃ。

「だ、大丈夫です。

この森には獣が多数存在している様子。

これらは全てアンデットに換える事が可能です。」

慌てノーライフキングが言う。

「それに、この森の外で死んだ人間はアンデットにできるのでは?」

「できます」

妖狐の問いに是と頷く。

「では、ノーライフキングよ、まずはアンデットの兵団を築くのだ。

またすぐに人間がやってくる。

今回は20だった。

それが全滅とわかれば、次は100を超えるのは間違いない。

それを超える手勢を集めるのだ。」

「御意」

妖狐の命令にノーライフキングは一礼するとガシャガシャ音を立てて旅立っていった。

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