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図書室の海  作者: 主音ここあ
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第6話 図書室へ

「僕が送り届けてやるよ、黒曜。君は疲弊している。少し休め」

琥珀がはじめて真顔で言った。

「だいじょぶだって・・・」

黒曜がうるさそうに言う。

「だいじょうぶじゃなーい」

琥珀は睨む。

「わかったわかった休むよ」

黒曜は席から立ち上がる。

琥珀の性格を知っているからなのか、これ以上言うとおりにしないと、めんどくさくなりそうなので、黒曜はおとなしく言うとおりにすることにした。

「え!?」

二人のやりとりを聞いていた芽衣は驚く。

わかっていない芽衣に琥珀は説明する。

「軌道修正したりする作業は、結構疲れるんだ。お嬢さんも、少し休んでなさい」

そして黒曜に代わり琥珀は操縦席に座った。

「おい、ほんとに持ち場に戻らなくて大丈夫なのか?」

芽衣も琥珀を心配そうに見る。そうだ、この海の護り人が少しの間でも不在になるのだ。大丈夫なのだろうか。

「しばらくは大丈夫さ。もともとそのつもりで、この船に乗ったんだ」

そういってまたウインクした。





「疲れてたんだね、黒曜。ごめんね、気づかなくて」

体育座りをして芽衣が言った。

琥珀が軌道修正している後ろで、二人は床に座っていた。

「大丈夫だって。あいつの言う事を真に受けるな」

おせっかいなんだよあいつは、と黒曜は苦笑する。

「仲がいいね。よく会うの?」

「そうか?会うっていっても、そんなに頻繁に会えるもんでもないな。持ち場を離れるわけにはいかないし。何かあるときしか会わないよ」

「琥珀さんも、ずっと海の中にいるの?」

「ああ、それが仕事だからな」

そう言って、ふと考える黒曜。

「仕事というか、俺らにとっては、人が息をするのと一緒だ。当たり前のことだよ」

そうしてまた、目を伏せて穏やかに言った。

・・・いつだったか、そんな風に言ってたっけ。

私たちの世界と黒曜たちの異空間。

私たちの世界の中に存在してるのに普通の人間には見える事なく存在している。

彼らは毎日、私たちの世界をどんな風に見続けているのだろう。





◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆◇◆◆◆


「さあ、着いた」

琥珀は操縦席で一度のび(・・)をする。

やっぱり疲れる作業なのだろうか。

芽衣と黒曜は立ち上がる。

「学校入口だな」

黒曜はモニターを見ながら確認する。

「ああ。さすがに一回飛ばされているからね、同じ目に遭うかもしれない。念の為少し離れた場所に降りた方がいいだろう」

「ありがとな、琥珀」

黒曜が笑う。

琥珀も笑い返す。

「なんてことない。危なくなったらすぐ戻ってくるんだぞ、僕はここで待機してるから」

「ああ、頼むよ」

そして、黒曜と芽衣は移動図書館を離れる事になった。





二人は学校の門の前へ降り立った。

移動図書館も門の横に停まっている。

勿論誰からも見られるわけでもないのに、こんなに豪華絢爛な車がこんな夜中に停まっているのも異様で、芽衣は見つからないか要らぬ心配をしてしまう。


夜の学校なので誰もいない。

普段は夜の学校なんて入れない。勿論門も閉まっている。


芽衣はどうやって入るのか黒曜にきこうと口を開こうとしたが、黒曜は少し門を見やると動き出した。

「こんな力使いたくなかったんだがっ・・・しょうがない」

「え?」

そう言うと、芽衣の体を両腕で抱き上げ――――――いわゆるお姫様抱っこ―――――をして門を飛び越える。

「わっ!?」

芽衣が驚いている暇もなく、瞬間移動したようにあっという間に図書室のある二階へ着いた。

「え!?もう着いたの?」

黒曜を羨望のまなざしで見上げる。

「瞬間移動?」

黒曜は苦笑しながら芽衣を降ろした。

「そんな能力は無いって。高次跳躍を何度もすればできることさ」

うーん、もの凄い速いジャンプして移動したってこと?




学校の中は暗い。いつも通っている廊下も、今はとても一人で歩けない。

芽衣は怖くなって黒曜の洋服の袖をつかむ。

「大丈夫、すぐ終わるさ」

芽衣の頭をぽんぽんとたたく。

そして黒曜は芽衣の手をとり、そのまま手を握り進んだ。

大きくてあたたかい手。

それだけで安心してしまう。

男性と手などつないだ事の無い芽衣は、顔が赤くなる。男のひとの手ってやっぱりゴツゴツしてるんだなあと、不謹慎にもドキドキ、あたたかいに気持ちになってしまった。

そして自分の気持ちに気づく。

―――――そうか、私、やっぱりこのひとのこと・・・、

「あった、図書室だ」

黒曜は手を握りながら図書室の扉を開けた。






第5話最後少し修正。

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