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図書室の海  作者: 主音ここあ
30/34

第30話 黒い物質

三人での少しの談笑の後芽衣はふと気づいた。

(あ!そういえば、琥珀さんがいたんだ・・・!)

急に恥ずかしくなってきた。

(さっきの黒曜との出来事を見られている・・・よね?)

離れて立っていた、といっても、それほどの距離ではない。

(ど、どうしよう・・・)

黒曜を見ると平然としている。

琥珀も何事もなかったかのようにしている。

見て見ぬふりでもしてくれているのだろうか。

「むう・・・」

なんだか私ばっかりドキドキしてちょっと釈然としない。



琥珀が難しい顔をしながら口を開く。

「さっき硝子の小瓶が落ちてきた少し前から、なにやら本の番人から黒い物質が出ているような気がするんだ」

「黒い物質?」

「銀の焔ではなくて?」

「ああ。まあ、出てくる場所は銀の焔と同じだが・・・」

なんだか不穏な空気が漂いはじめた気がして、三人は同時に頭上を見上げた。

黒い物質とは一体・・・。



「なっ・・・!」



三人は驚愕した。


琥珀の言うように、本当に黒い物質が―――――――銀の焔とは違う、黒い煙のようなものが本の番人から溢れてきていた。

芽衣はその物質を見て、とても不快な気分になった。

「なんだか嫌なかんじだ」

黒曜が隣で顔をゆがませて言った。

彼も感じているのだろうか、あの物質のおどろおどろしい気味の悪い様を。


芽衣は何かに当てられたかのように、気持ちが悪くなり、足元がふらついた。

「芽衣」

その芽衣を支えた黒曜も黒い物質に圧倒され冷や汗をかいていた。

琥珀も横で耐えていた。


あの物質はなんなのか。




天藍星葉が上から声をかけた。

「もうすぐ終わる!耐えてくれ!」



(おしえて、あの物質はなんなの、)

天藍星葉の声が遠のいていくのがわかった。

芽衣は意識が薄れていった。




「芽衣!」


更に巨大な黒い物質が芽衣たちの方へ向かってきた―――――!


黒曜が芽衣をかばおうと覆いかぶさる。



「黒曜!」


一瞬、琥珀の声が聞こえたが、それ以上二人には何も聞こえなくなった。










****



黒い、世界。


気味の悪い、おどろおどろしい世界。


(わたしは、いま、どこにいるの?)





『本を売りさばいてどこが悪い!』


誰かの、黒い心。


『黒魔術の本が無いんだ、せめてこれだけでも持っていかねえと割に合わねえ!』


嗚呼、過去に銀の焔で消された人の声ね。




憎しみ、悲しみ、妬み、怒り、

様々な負の感情が人々を支配している。


嫌だね、嫌な人間だね。


『おまえもそうなんだ!おまえも嫌な人間なんだ!』

(やめて・・・!)


『綺麗ごとばっかり言ったって、おまえも黒い心で溢れてるんだ!』


そう、そうね。

(私だって、そう)

負の感情が心を支配されるときがある。



私も、そんな嫌な人間なの・・・?




でも、


(もう、やめて・・・)


こんな黒い世界、


(こんな苦しいの、耐えられない・・・!)



「やめてぇーーーーーー!!」




芽衣の感情が爆発した。


その時。


真っ暗な心に支配されてはならない。


そう、声が聞こえた。

光の世界へ照らし導いてくれる声。




光が見えた。

否、光ではない。

それは金の粉だった。




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