豆知識を披露してみた。
読んでいただきありがとうございます。
諸事情により、投稿が遅れるかも知れません(><)
不定期になるかと思いますm(__)m
村長さんの部屋を出た俺は、盛大に道に迷っていた。
よくよく考えたら、気絶している間にガウネルさんの部屋に連れていかれたから、どうやって入口に戻ればいいのかわからなくなったのだ。
俺が道で右往左往していると、俺を囲った男性の一人が俺に近づいてきた。
俺が、また連れていかれる!と身構えていると、その男性に思いがけない言葉をかけられた。
「先程は失礼しました。お客様ということも知らず…。何かお困りのことがありましたら聞いてください」
俺は突然のことにとっさには反応できなかった。
しかし、マシェリさんとの会話で少しだけ余裕ができたおかげで、詰まりながらも言葉を返すことが出来た。
「は、はい、えっと、葛西、稀織です」
「カサイ様ですね。私は村長の息子のワイザと言います」
「も、もしかして、マシェリさんのお父さんですか?」
「はい、マシェリをご存知なのですか?」
「は、はい、さっきも、一緒に話していました」
「ほお、あの子がねぇ」
なにやら感心したような表情を浮かべるワイザさん。
俺はそれを少し疑問に思いながらも、折角だし、と道を聞いてみることにした。
「そ、その、この村の入口は、どこですか?」
「ん?ああ、この先を左に曲がってまっすぐ行けばすぐに見つかりますよ。元々そんなに広い村じゃないですしね」
「あ、ありがとうございます。その、急いでいるので、もう行きますね」
「分かりました、あの辺りには井戸しかありませんが、水でも汲みに行くんですか?」
「は、はい、まあ、そんなところです」
流石に元の世界に戻るとは言えないので言葉を濁す。
だが、それを働き者だというふうに勘違いしてくれたおかげで、俺は特にそれ以上は追求されずに元の世界に戻ることができた。
▲▽▲
俺は自分の部屋に戻った時、まず違和感を感じた。
それが何かわからないまま、無意識に時計を見て、俺はその違和感に気づいた。
「時間が……進んでない?」
そう、向こうで気絶した時間も合わせて、少なくとも数時間は経っているはずなのだが、時計は向こうに行く前と変わっていなかったのだ。
一瞬、時計が壊れたかと思ったが、正常に動いているのでその案は取り消す。
片方の世界にいるあいだはもう片方の世界では時間が進まないのかも、とも思ったが、こっちにいる間に向こうでは時間が経っていたようなので、その案も打ち消す。
「向こうにいる間だけ、こっちの世界では時間が止まるっていう感じかな」
俺は思案してその答えに辿りついたが、今はそんなことをしている場合じゃないと急いであるものを探す。
豆知識大好き人間の俺なら常に持っている代物だった。
俺はそれを持って、急いで村長さんの家へと戻った。
今度は一度通ったおかげか、迷わずにつくことができた。
そして待たせているであろう、マシェリさんのいるガウネルの部屋に入る。
案の定、マシェリさんはその場から動かずに俺を待っていた。
「はあ、はあ、お待たせ、しました」
急いだせいで息も切れ切れだ。
「いえ、大丈夫ですよ。
ところで、その手に持っている物はなんですか?」
マシェリさんが聞いてくるが、俺は答えを返す前に一旦息を整える。
ある程度息が落ち着いたところで答えを返すことにした。
「これは、水を綺麗にする装置、です」
「水を綺麗に?」
マシェリさんが困惑した表情を浮かべる。
この村では、水は汚いのが当たり前なのだろう。
「見ていてくださいね」
俺が部屋から取ってきたのは、底を切り取ったペットボトルに、小石、炭、砂、ガーゼだ。
おそらく縄文時代の文化と同レベルと考えると、あの調理方法くらいは発達しているだろう。
「マシェリさん、『煮る』って分かります?」
「え?は、はい、それくらいは」
よし、ならば大丈夫だろう。
俺は順番に説明していく。
「まず、これはペットボトルという物です。
プラスチックというものから出来ていて、こんなふうに丈夫なのに柔らかいという性質を持っています」
そう言ってペットボトルをへこへこと凹ませてみる。
「ペットボトル、ですか。初めて聞きました」
まあそうだろうな。
何せ発達したのは昭和時代かその変だったはずだし。
今はそれを説明するのは難しいので、次の説明に入る。
「このペットボトルのキャップの部分に穴を開けて、その部分が下になるように向けます」
ちなみに今は喋ることに集中しているおかげで、緊張とかは完全に忘れてしまっている。
「そこに、小石、炭、砂、ガーゼの順番に入れていけば装置は完成です」
「そ、そんな簡単にですか?」
「はい」
ガーゼで突っ込まないところをみると、同じようなものが既に存在しているのだろうか。
それとも単に聞いていないだけかもしれないが。
「マシェリさん、もう一つコップと、あと煮ることの出来るものを持ってきてくれませんか?」
「は、はい、わかりました」
そう言って走っていったかと思うと、すぐに戻ってくる。
「じゃあ、よく見ていてくださいね」
「は、はい」
今はマシェリさんも完全に何が起こるのかを楽しみにしている状態だ。
このあとの反応を思い浮かべ、ニヤニヤしながら俺はコップの上にペットボトルを用意する。
「では、このペットボトルにさっきの水を注いでみてください」
「え、はい、わかりました」
マシェリさんがもう一つの泥水の入ったコップを傾け、ペットボトルの中に入れる。
装置の中を通った泥水は、綺麗な水になってキャップから出てきた。
「え……」
「これで終わりではないですよ。この水を10分ほど煮て、ようやく綺麗な水になります」
俺が説明するが、マシェリさんは唖然としていて話を聞いていないようすだ。
「マシェリさん?」
「え、は、はい!すいません!煮るんですね?」
「はい」
そう言って、10分煮た後に、試しにその水を飲んでみることにした。
「ごくん。
うん、ちゃんと飲料水になってますね。マシェリさんも飲んでみますか?」
そう言ってコップを差し出すが、マシェリさんは何故か顔を赤くして受け取ろうとしない。
「マシェリさん?」
「え!?えっと、は、はい、いただきますね」
マシェリさんはそう言ってコップを受け取り、一気に飲み干した。
「そんなに一気に飲まなくても……」
これは俺の独り言である。
ちなみに、この時点ではまだこれが間接キスだと気づいていない稀織である。
「これは……美味しいです!」
飲み終わったマシェリさんが興奮したように大声を上げる。
それによって周りの人達が「なんだ?どうした?」と寄ってくる。
しかし、豆知識を披露することを楽しんでいる俺は、その人達を見ても固まることもなく、同じ説明をほかの人にもして周りを騒がせるのだった。
豆知識が作者の勘違いの可能性もあります。
その時はこの話は消す予定ですのでよろしくお願いします。
感想お待ちしています|ω・)