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13.【体験談】俺が安価スレ立ててみた結果wwwwwwww【ちょ、マジか】

全裸になって初めて服のありがたみを知った。

人は服を着ることによって外面だけでなく内面すらも装うことが出来ているのではと思う。

服は偉大だ。服になら抱かれても良い。

真っ暗な闇の中、コンビニの店内や看板から放たれる光が俺の体を照らしている。駐車スペースのコンクリートは粗く足の裏を刺激するが痛くは無い。重苦しい不安の中でスリルと興奮を味わっている自分が居る。普段の自分を装えてない。まるで変態だ。いや元からだったかも知れない。

理不尽に巻き込まれたことに対する憤りはもうなかった。

避けることは出来ないルール。命と羞恥心どちらを選ぶかと問われると、勿論命だ。

生きているからこその恥じらいだ。

そして俺は店の入口へと進む。


*****


[ウイルスセキュリティの期限が切れました]

昼寝から覚め、パソコンの前に座ると画面に警告と書かれそんな文字が表示されていた。

ついにこの日が来てしまったか。アイちゃんが無防備になってしまった。大学生になり独り暮らしを始めた時。同時に初めての自分用のパソコンを手に入れた俺は、嬉しさのあまり名前を付けた。

その名もアイちゃん。脳内では完全に擬人化までされている。とっても可愛い。すーぱーそ〇子など敵では無いほどに。そんな彼女が無防備な状態に晒されているとなるとただ事では無い。

心の底から可哀想に思う。そして興奮してくる。

電源を付けるたびに[ふぇぇ…期限が迫ってるよぉ…]と訴えてきた彼女を無視し続けていた俺が悪いのだ。早く救ってやらねばならない。


文系の学生にとって大学はないようなもので、暇な時間がとても多い。普段はパソコンの前に居て[Fラン大学生だけど質問ある?]とか[新垣〇衣と結婚する夢みた]などというくだらないスレッドを掲示板に立てては書き込みをしてくる奴らと不毛なやり取りをし、生産性の欠片も無い一日を過ごすのだ。


今日も例外ではなくそうやって過ごしていた。

時刻はすでに16時、窓の外からは夕暮れの気配が漂ってきている。

とりあえず電気屋にでも行くとしよう。なるべく早めに買ってきた方が良いだろう。

自室の壁に掛けてあるコートとマフラーを取り身につけ部屋の外に出るがふと、アイちゃんの電源を付けっぱなしだったことを思い出す。最近は節約志向だし、電源を落としてから出かけよう。

部屋に戻り、もう一度彼女の前に座りマウスを手に取る。画面いや表情がパッと明るくなった。

戻ってきたのが嬉しいのかな?少しの間待っていてくれすぐに俺がすぐにお前を守ってやる。そんな決めゼリフを頭の中でささやきながらマウスを動かす。


ポインタが動かない

………なぜだ。

マウスを左右に振ってみるがそれでも応答は無い。

ついに反抗期が来てしまったか。数秒待っても動く気配はしない

もうだめか。

諦めて電源ボタンに手をかざした。すると画面上でポインタが動き出す。

無理に動かした時のマウスの信号を追うようにしてポインタは迷走している。

そろそろ寿命なのかも知れない。3年も毎日酷使し続けていたからしょうがないとは思うが。

目で追っていたポインタがようやく止まる。まあ少し動作が停止していただけだろう。気にすることも無い。

すると急にブラウザが起動しいつも繋がっている掲示板サイトが開いた。

そしてポインタがもう一度動き出す。今度は何か目的があるように一点を目指し。

掲示板サイトの左上。

[新規スレッドを開く]

そしてタイトルの欄に人間ではあり得ない速度で文字が入力され表示される

[>>5をする]

俺はかざしていた指を押し込み

電源を切った。


*****


「Aさんのお宅ですね」

「はい」

「神〇川県警の者ですが。あなたのパソコンから安価スレを立てたことが確認されました。」

「いや、それは違うんです。パソコンが勝手に」

「あなたのパソコンからの送信は確認されています」

電話の向こうで警察を名乗る男の無機質な声が耳に入る。アイちゃんの電源を強制的に切ってから5分である。家にある電話の着信音であるエーデルワイスが鳴り出した。それを取るか取らないかはとても悩んだが法律の事は知っている。取らないと自分の命が危ない。ウイルスは特定できないのに俺のパソコンだということはしっかり把握している。無能か有能かわからない。

「そんな事言われても困る俺はやってない」

焦りと困惑で頭が回らない。体中から汗が噴き出てくる。

なんとしてでも無かったことにしないとまだ安価先の内容すら確認してないのだから。

もし実現が難しいような内容だったらどうする。

「もし安価による行動が完遂されなかった場合こちらは強制措置をとらねばなりません。」

「まだ内容すら見てないんだ。勝手に動くのを止める為に電源を切って」

「ならば今すぐ確認した方が良いでしょう」

男の声が被せ気味に聞こえてくる。そして俺の次の発言を防ぐように続きを喋り出す。

「安価の内容はこちらではすでに確認を終えています。内容の査定も終わり期日は明日の昼、12時までと決まりました。それでは頑張って下さい。」

電話を切られる。男の最後の言葉には最初とは違い嘲笑が含まれていたように感じた。

俺はすぐに受話器を置き、三度アイちゃんの前に座り電源を付けた。

見るしかない。どうせあの掲示板だ、アホらしいレスが返ってきているだろう。

うまい棒を10本買ってくる。きっとそんな感じだ。

期限が明日の昼までになったんだ、簡単な内容だろう。落ち着けるように言い聞かせる。

彼女はさっきまでのウイルスがまるでなかったかのように起動した。

ブラウザを立ち上げ掲示板を開く。

汗が止まらない。逃げ出したい。逃げると死ぬ。

前例は何件があるが、この法律が制定されてから完全に逃げ出せた物は居ない。

もうどうにでもなれ。

俺は自分のパソコンから数分前に立てられたスレッドを開いき安価先を確認する。


【全裸でうまい棒を買いに行って証拠うp】


とんでもないオプションを付けられてしまった。


*****


夕闇はどんどん夜の暗さへと変わっていった

安価を確認してから時間が経つのが驚くほど早い、部屋の中を夕飯も食べずにグルグルと歩き回ったり、ベッドに横になりすぐに起きたりしているだけだったのに気付くと11時になっていた。

やっと冷静になると時間のなさを実感する

。明日の昼までとなるとうまい棒を買いに行くのは今夜しかなく、早急に行動を開始しなければならない。


近所にあり、うまい棒を確実に売っているコンビニは1軒。3分もあれば着く距離にある。道を選べば人通りの少ないルートを通れるだろう。

最大の関門はコンビニに入ってからだ。買うときだけは店員と顔を会わせなければならない。間違いなく通報される。警察は嫌いだ。悪名高き神〇川県警、奴ら俺が普通の格好をして道を歩いているだけで引き留めてくる。この県警特有の人を舐めきった薄笑いとタメ口で「ちょっといいかな」と話しかけてくるのである。まるで友達だ。さらに「最近この辺り犯罪が多くてね、見回りしてるんだけど身分証とかある?」と無理矢理に考えたであろう理由を付けて不審者扱いまでしてくる始末。まあ大人しく身分証をみせれば解放されるのだが。今回はそうはいかないだろう。その場で逮捕、連行になるに決まっている。連行されるわけには行かない。安価の内容は証拠を見せるまでだ。家に無事に戻り全裸でうまい棒を咥え写真を撮らなきゃならない。とても変態で大変だ。

コンビニの中に入ってからの事はその場で上手く切り抜けるしかないだろう。


行動開始だ。

とりあえず全裸になる。男子たるものいつでも脱げるように自分の肉体の美は日々追求すべきである。

有名な言葉だ。

高校生の時に俺が考えた。

帰宅部だったけれど日々筋トレは欠かさず行っており、プールの授業になると周りの友人たちに驚かれる。

着やせするタイプなんです。

卒業してからは生憎その肉体美を披露する場は一度も訪れていない、今日が初めてだ。

大学生で初めての肉体披露デビューだ。大学デビューだ。

パンツ一枚で鏡の前でポーズを取る。

うむ、素晴らしい。

しばらく自分に酔いしれてから残されたパンツを脱ぎ、財布を手にもち準備を完了させた。


家からコンビニまでのルートは順調で人に遭遇することもなく、後1つ角を曲がればコンビニが見えるはずの所まで到着した。

ここからが勝負だ。

慎重にコーナーを曲がる。すると予想にしていなかった光景、いや予想は出来たはずだが焦りで頭が回らなかったのせいで考えなかった光景に完全に動きを止めてしまった。コンビニの横の駐車スペースに、中学生から高校生で分あろう少年達地面に座りなにやら語り合っているのである。

こんな夜中に何をやっているんだ。最近の若者はこれだから困る。変質者に出たらどうするんだ危ないぞ。

少年達の心配をしながら居なくなるのを待つか迂回して逆側から入口を目指すか考える。まあ迂回だな、だが迂回するにも少年達の側は通らないとならない。注意をはらい彼らの意識がこちらに向かない隙を狙う。

メタルギアで散々訓練された俺の行動は完璧に彼らの意識が仲間同士の会話に向いている瞬間を見つけ走り出した。

が、現実は非情である。

ゲームの兵士より現実の子ども達の方が優秀だった。


「おい、あれ何だ」


一人が気付き声をだし、その声に反応して全員がこちらを向く。

目と目が合い動きを止めてしまった。

向こうから見たら自分たちを見つけ立ち止まった全裸の男である。


「うわああああああ変態だあああああああ」


少年達は顔を真っ青に変え悲鳴を上げながら逆方向へ逃げていった。

どうやら変態が出たらしい。


こうして俺はコンビニへとたどり着いた。


*****


ここからは予想出来ない領域だ。覚悟を決め一歩踏み出すと自動ドアが開く。

入店音と共に「いらっしゃいませー」と店員の声が店内に響く。綺麗な高い声だった若い女性だろう。

緊張が増し、膝が震える。

その声は左に並んでいるレジからではなく、入口から対角の位置にあるおにぎりコーナーから聞こえてくる。どうやら商品を並べている作業中のようだった。好都合だ、レジの近くには電話があり発見されるとすぐに通報されるが、これなら説得の有余が数秒できる。とりあえず監視カメラに顔だけは映らないように常に下を向く。このコンビニの配置だとお菓子コーナーは中央、両側を棚に挟まれたところにあるはずだ。まずはうまい棒の確保を優先しよう。腰をまげ音をなるべく立てないようにお菓子の棚がある場所へ移動する。簡単に見つける事が出来た。

一番下の段にうまい棒が並んでいる。めんたい、コンポタ、チーズ。さてどれにするか。

しゃがんで考える。画像の見栄えを考えるとめんたいがいいか。だが味を考慮に入れるとコンポタ派である。ここは2本買っておこう。あとはお金を払うだけだ。普通に「すいません」と声をかけよう。若い店員ならバイトだろう面倒事には巻き込まれたくないはずだし、案外簡単に通して貰えるかも知れない。棚の上から顔を出し先ほど声がしたおにぎりコーナーの方を見る。あれ。


「きゃああああああああ」


突然左の方向から可愛い悲鳴が聞こえる。さっきの声と同じで人物であろう綺麗な声だった。

とっさの出来事に俺は全身が硬直する。どうする。レジの方へ逃げられる前にどうにか止めなければ。

聞こえた方向に振り向くとそこにはウエストからバストまで体のラインが一直線のドラム缶の様なババアがいた。どうやら綺麗な声を出すババアだったらしい。

綺麗な声を出すドラム缶かもしれない。

しかも通報するという選択肢はないのか、すでに臨戦態勢に入っていた。

「あんた! なにやってんの」

ドラム缶は近くに立て掛けてあったモップをかかげて威嚇するように近寄ってくる。

段々と近寄ってくるそれから逃れるようにして俺はレジの方に下がっていく。

「落ち着いておばさん。これには理由があって」

「あんたあれだ…露出狂でしょ。か弱い女子が一人で居るからって狙ったのね..許さないわよ」

ドラム缶は殺気立った顔でそんなことを言う。恐ろしい。

なによりその年齢で自分を女子という根性が恐ろしい。

「服を買うお金がなかったんです」

とりあえずこの場をしのがなければいけないので嘘をつく。

「服を買うお金すら無い割に立派な体してるじゃないの」

ごもっともな意見だった。ここで俺の美に対する追求があだとなる。こいつ俺の体をよく見てやがる。

「最近親の仕事が失敗してそれまでは裕福だったんですよ」

嘘に嘘を重ねるがさすがに自分でも胡散臭いと思うが仕方が無い。

まあ通報さえ免れればそれでいい。

しかしドラム缶の表情は変化した。急にしょんぼりとした顔になる。

なぜか効いたようだった。

ちょろい、きっと昼ドラの見過ぎか年齢による涙もろさだろう。

「………とりあえず何か着なさい。バイトの予備の服かしてあげるから」

なんて優しいドラム缶なんだ。ドラム缶と天使のハーフなのかも知れない。豚と天使のハーフが存在する世界だし居てもおかしくないな。

だがその優しい言葉に従う訳にはいかない。安価の内容は全裸で買ってくるだ。

家に着くまで服を着るわけにはいかない。

「いえ服なんて平気ですから。とりあえず会計を、会計をお願いします」

「だめよ。そんな格好、他のお客さんが通報されちゃうわよ。ちょっと着いてきなさい」

そういって大天使ドラム缶レジのは奥へと行こうとする。

「平気ですって。俺だけ服を着たら親父に殴られる。ほんと有り難いですけど気持ちだけで十分ですから」

嘘に嘘を重ねその上に新しい嘘を乗せる。物語を作り出してしまった。

なんて健気なストーリーなんだろう、しかも親子揃って裸である。

これはばれるな、もうお金を多めにおいて逃げるか。

そんな事を考えていると鼻をすする音が聞こえた。


見ると大天使ドラム缶の目に涙を流しながらこちらを見ている。

「あんたなんで、なんでそんな辛い大変な生活を…ごめんなさい。私の配慮が足りなかったわね」

「ああ…まあ」

良く分からないが上手く行ったようだ。

「分かったわ。ちょっと待ちなさい」

そういって店の奥に行き、すぐに何かを抱えて戻ってくる。

「これ賞味期限今日まででどうせ捨てられちゃうから全部持って行きなさい。」大量のお菓子や弁当が入ったダンボール箱だった。うまい棒も中に入ってる。

「いや………いいですよこんなに」

「いいのよ。父親には隠れて食べなさい。」

ドラム缶は目を真っ赤に腫らし俺の肩に太い手を置いてくる。

完璧に俺の話を信じてしまっているようだ。将来詐欺に遭うぞババア。


遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。どうやらさっきの少年達が警察に通報したようだ。サイレンの音は段々大きくなっている。どうやらこのコンビニに来るようだった。

「まずいわね、ここは私にまかせて。裏口からすぐに逃げなさい」

そういってレジの中に引き入れてくれる。

「あの、ありがとうございます。」

なぜこんな雑なお礼しか言えない人間なんだろうかと。自分がとても小さく見えてくる。

よく見るとドラム缶の胸元にはネームプレートがありそこには[タチバナ アイ]と書かれていた。

アイちゃんだったか。

ババアは格好良く「いいのよ」と一言だけ残すと。警察がくるであろう正面入口の方へ歩いて行った。

そして俺はうまい棒2本分のお金をレジに置き裏口からコンビニを後にした。



*****


あの後、コンビニから全力で家まで走り、1時頃には全裸で、うまい棒を口に咥えた画像をアップロードすることが出来た。しかし、せっかく画像をのせたというのに反応はとても薄かった。どうやら俺が書き込む少し前に他に新しく安価スレッドが立ったようだった。そして静かに俺の安価スレは終わりを迎えた。


翌日、ゆったりとした時間が流れる休日の午後。

普段通りの生活を取り戻した俺は午前中に新たらしく買ってきたウイルスセキュリティソフトをアイちゃんに入れたあと、コーヒーを飲みながら考える。

今日はどんなクソスレを立てようかと。


よし決めた。

新しいスレッドを立てるボタンを押し文字をゆっくりと打ち込む。


[知らないババアに全裸を見せたら泣かれたけど質問ある?]


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