二章 帰還
あの日の記録はもちろん決まっていた。結果は『最短記録』だった。三十分十八秒を大きく塗り替える、二十三分四十一秒だった。戦いが終わって、記録を見た時の霞の笑顔が目に浮かんだ。懐かしい記憶だと薄ら笑いを浮かべながら、奏を背負いながら帰る家路は、思いのほか短く感じられた。
自分の敷地を入ると、玄関の中が明かりがついていたのが分かった。玄関を開けると、入ってきたのか分かったのか、とたとたと音を立てながら千代が玄関まで走ってきた。
「満月様、お帰りなさいませ。大丈夫でしたか?」
千代は心配そうに尋ねながら、湯呑みに入ったお茶を差し出した。
「大丈夫だったよ。それより悪いけど、客間に布団、用意してくれないか?」
奏を玄関から廊下へ通じる場所へと寝転がす。
「その方は?」
「まあ、話せば長くなるから、こいつを運んでから、後で話すよ」
「承知いたしました。しばしお待ちください」
そういって千代はまた、とてとてと、走って行った。
満月は、湯呑みに手に取り、お茶を口に入れる。お茶は冷たくとても飲みやすかった。飲みながら奏の顔を見つめる。見れば見るほど美少女で、とても霞によく似ていた。
「大きくなったな」
なんて、ひとり言を呟きながら、また過去の記憶がよみがえる。