一章 上司
放課後、千代といつも帰宅するのだが、今日は先に帰らせた。先約があるからだ。ある人に『話しがある』と言うメールを送信したら、『放課後に屋上で会おう』といったメールが返ってきたので、現在、屋上に向かう。もう寒くなったからだろう、三階までの掃除が綺麗になされていたが、屋上に向かう階段はホコリが目に付いてしまう。
屋上の扉を開けると、寒風が露出している肌に触れ、体温が下げさす。そして、夕焼けに染まる光がまぶしく見えるさきに、一つの人影が見えた。
「お早いお着きですね。浩美先輩」
『その人』こと、室谷 浩美が相変わらずの凛々しい顔つきをし、綺麗な黒の長髪を秋風になびいて、屋上に立っていた。この浩美先輩は名前の察しの通り、この室谷町を昔から支配しているのがこの室谷家だ。そして父親が病死し、若き当主になったのがこの、浩美先輩だ。表の室谷家、裏の芦屋家がこの室谷町を共存して守ってきた。
「愛の告白だと思って早く来ちゃった♡」
「冗談はやめてください」
「冗談じゃないわよ。あなたとセックスしたいのに」
「はああ~~~~!!」
つい、驚いて言葉が出てしまう。
「メスが優秀なオスの遺伝子が欲しいのは当然のことでしょ」
この人に会ってものの五分もしないうちに爆弾発言が飛びまくっている。ぶっちゃけこんな美人にそんなことを言われてうれしいのだが、浩美先輩はこの高校のマドンナ的存在だから、こんなことをばれたら、男子に何をされるかわかったものじゃない。
「先輩、本題に入りましょう」
いつまでたっても話しにならなそうだったので、自分から話題を変えた。
「まあいいわ、この話しはまた今度ってことで。で、この町は、今どうなっているの?」
「柱が一本無くなりました」
「柱が?」
その言葉に先程、冗談?を言っていた浩美さんの顔が険しくなる。浩美さんは柱の事は見えていないが、柱の重要性は知っていた。
「今夜から調査いたしますので、『援護』をお願いします。」
「分かりました。では警察などの機関には私から話しをつけておきましょう」
「ありがとうございます。では自分は用意がございますので失礼します」
この場を立ち去ろうとすると、浩美さんに呼び止められた。
「くれぐれも気をつけてね」
浩美さんは、心配そうにしてくれている。
「大丈夫ですって」
笑顔を見せ、この場をあとにする。