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自問自答

 僕の目の前で言い争う人がいる。

 僕の目の前で親族が争っている。


 くだらない金銭の事で争っている。

 僕の父が残した遺産で争っている。



 非常識な光景に聖職者は見てみぬふりを続けている。もしかしたらこの状況を何度も経験したことがあるのだろうか。


 そんなことをして、楽しいかい?


 呟いた言の葉に反応する者は一人としていない。


 霧散する桐の箱に腰掛けた僕の言の葉。


 今になって初めて抱く感情があった。

 今になって、ようやく抱いた感情だ。


『憎い』


 何故、僕は虐げられたのか。何故、僕は誰にも愛されなかったのか。何故、僕は報われないのか。何故、努力すらも裏切るのだろうか。何故、何故。


 言い争う彼らは僕の不幸を喜んでいる、欲望の赴くままに。


 信じた者には裏切られ、信じなければ迫害され。

 愛した者には嫌悪され、愛さなければ忘却され。


 僕の17年は何の意味があったのだろうか。いや、最初から意味のある人生を送る人など誰もいない。

 歩みの中で意味を見つけるのだろう。意味を見付けられない僕はただ、努力をしなかっただけだろう。



「死ぬために生きた」


 そんな僕が最期に見付けた意味。輪廻の輪へと戻る前に見出した意味。


『それで満足かい?』


 それをボク自身が否定する。愉快そうに否定した。


「今回はね」


 僕は皮肉を言う。まるで次回があるかのように。


『それなら次回の意味は?』


 ボクは次回の意味を問う。否定をしない。


「復讐する為に生きよう。彼らへ悪夢を届けるために」


 僕は答える。『憎い』その感情を抱きながら。


『最高。ならば今回の人生の意味、間違ってない?』


 ボクは今回の人生の意味を否定する。とても楽しそうに。


「そう、だね。確かにそうだ。間違っている」


 僕は嗤う。答えが愉快で。


 そして僕は答える。


「           」







 結局遺産は親族の誰の手にも渡らなかった。正確に言えば手にした人から死んでった。

 予定通りの次回。意味を達成した僕は満足そうに目を閉じた。


「ボクが愛したじゃないか。それなのに、馬鹿なやつ」


 呟いたボクの言の葉は霧散した。

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