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強敵と書いてライバルと読む

どうぞ♪

「どう?ロンザ。おかしくない?」

「大変お似合いです、御主人様。ケチがつけられないのが残念なほどお似合いです。」

「お前、一回分解して直してもらった方がいいよ。」


クレアの護衛の件は正式に冒険者の依頼として受けることになった。料金は月50万ゼニー。其れなりに大金だ。おかげで借家も追い出されずにすんだ。

先日採寸して自分用に仕立ててもらった臙脂色の制服がようやく出来上がり、今着てみたところだ。今日からクレアの護衛として学園に同行することになっている。

フレイム家の護衛の制服は臙脂色に統一されており、この上に白いプロテクターを装備する。武装としては刃を尖らせていない剣を1本だけ許されている。


ロンザに留守番を頼んで家を出た。クレアの屋敷に着くと、既にクレアとルークが支度を済ませて待っていた。


「おはようございますクレア様、ルーク様。」

「おはよう!ルウィ兄!」

「おはようございますルウィ。ルーク、”兄”はダメよ。」

「へーい。」

「もう!」

「まあまあ。」


3人だけならとやかく言わないクレアだが、今日は学園に行くのでうっかり言わないように釘をさしたのだろう。僕がダインだとわかると色々面倒だからだ。ルークは全然気にしていないようだが。

そんなくだけた雰囲気の中、3人で学園に向かって出発する。レンガで舗装された街並みを歩きながら、のんびりと。


「ルウィ。確認しますね。まず、新しい護衛は確実に声をかけられます。粗相のないように。」

「はい。心しておきますクレア様。」

「楽しみだぜ。”腕試し”で上級貴族の護衛をコテンパンな!」

「ルーク!もう!……ルウィもやりすぎないようにしてね。」

「はい、かしこまりました。」


さてさて、学園は若い貴族の社交場を兼ねている。王家、公家、護国7家と呼ばれる7大貴族を筆頭に数多くの貴族が通っている。学生の年齢も決められていない。だいたい10歳くらいから20歳くらいまでのものが多い。


ここでクレア・フォックス・フレイムの立ち位置だが、フレイム家の分家ではあるがフォックス家は格が低く家臣団の中では下の上といったところだ。いや、”だった”という方が正しい。なぜなら、クレアが精霊使いになったからだ。そのため急に中の中くらいに格が上がった。ここ最近精霊使いを排出していなかったフォックス家としてはクレアは期待の星となったのだ。つい2年ほど前のことだそうだ。ダインはその頃既にフレイム家と縁を切られており知る術がなかった。


ただやっかみが多い。クレアは苦しい修行をして精霊使いになったのではなく精霊に気に入られてなったのだ。このパターンはレアケースである。そのせいで、フレイム家の中でも、学園の中でも微妙な立ち位置になっている。


優秀な護衛をフレイム家の縁者から集められなかったことからもクレアが苦しい立場なのは明白だった。それでも健気に頑張るクレアを僕は助けたいと思った。ダインではなく僕として、ルウィとして彼女に協力したくなったんだ。


ほどなく学園に到着した。石造りの大きな門、とても豪華な建物、とても学校とは思えないその雰囲気に結構興奮した。中に入ると他の学生さん達が多くいた。綺麗な中世の洋服、ドレスを着ている人を数人の護衛と思われる者達が付き従っているのが見える。お付きが2人と少ないのは……うちら以外見当たらない。クレアの事前説明で護衛や召使が多いほど上級貴族であるが、たまに1人で護衛なしで通う変わり者の上級貴族もいるので注意が必要だと。


「あらっ?貴方、見かけない顔ね。」

「えっ?ぼ、いや私ですか?」

「これはこれは!シャーリーン様!おひさしゅうございます。」


み、見事な金髪ドリル!メチャクチャお姫様っぽい。その声をかけてきた女性にクレアが急いで首を垂れる。貴族であるクレアがこうするからにはかなり上級な貴族のようだ。


僕も慌てて片膝をつき軽く頭を下げる。大きく頭を下げなかったのは護衛はその職務上の権限による。主人を守ることが最優先なのだ。たとえ相手が格上の大貴族でも敵になりえるものから視線を外さないために。


シャーリーンというこの少女の護衛は水色の制服であるので氷の精霊使い、アイス家の者だろう。


「ご機嫌様、クレアさん。貴方の新しい護衛かしら?」

「そうでございます。」

「……強そうね。クレアさん、そうなんでしょう?」

「はい。」

「フフッ、失敬。即答だなんて、余程自信がおありなのね。なら、”腕試し”をさせてもらえるかしら?」

「お心のままに。」


えーと、まあ、そうなるんだよねぇ……。



・・・・・・・・




「ルウィ、用意はいい?」

「はい、クレア様。」

「ええとね、あちらの護衛はキレールさんていう名前なんだけど、ここでは実力者として名が通っているわ。で、彼は「ストップ!」え?」


向こうも僕の情報知らないしね。僕も知らないでいたい。


「……聞かないのね。でも気をつけてね。」

「お心のままに。」

「もう!」


相手の護衛と5m程離れて対峙する。身長はこちらとたいして変わらないが、身体付きはややこちらより細身。しかし、これだけ離れていてもビリビリと感じる気迫!強敵だ!


もちろんダインすいっちオン♪


合図もないまま、お互いに間合いを詰める。挨拶がわりの拳の連打をお互いに放つ、放つ、ここで足首を刈る回し蹴り!


だがキレールはひらりと宙に身を踊らせかかと落としを放ってきた!


こっちは腕をクロスして受け、弾き返す!


体操選手のような大きな後方宙返りを決めて着地するキレール。着地する瞬間にショルダーチャージ!

キレールは避けない!彼も肩をぶつけて来た!


ガツン!


お互いにその場で肩と肩を合わせて動きを止める。助走がついていた分こちらの方が有利だったはず。見事な<身体強化>と<魔装>だ。


「驚いたな、弾き飛ばすつもりだったが。」

「その言葉、そっくりそのままお返しするよ。」


すぐ近くにあるキレールの顔がニヤリと笑みを浮かべた。動物園でみたライオンやトラの顔とそっくりだと思った。


「いくぞ。」


そういうとキレールはサッと身を引いた。同時に魔力の高まりを感じる、ヤバイくらい魔力が集まっていく!そして両手を突き出してきた。


「氷霧の抱擁!」


両手のひらからキラキラと光る霧状のモノが大量に吹き付けられる。身体が氷漬けにされて行く!


「オーッホッホッホッ!いかがかしら?ウチのキレールは”氷の彫刻師”の異名を持つ強者よ!クレアさんの護衛もなかなかでしたけ「バリン!」え?」

「それは!魔装強化か!」


なんかドリルさんが言ってたけどそれどころじゃない。危なかった!

魔装強化で強引に氷を砕き脱出できたけど、寒痛い!!


「風拳!」


ダイヤモンドダストのような美しい氷霧の吹雪に風穴を開けて突っ込む!僕は魔装の右手を大きくして巨拳を創り上げ、キレールに突き出した!


「巨人の鉄槌!」

「むぅ!氷の盾!」


キレールは一瞬で魔術を切り替え氷の盾を創り出し、さらに<魔装>を上掛けして強度をあげた!弾き、返される!


着地を決めるも、地面を削るようにして大きく後退させられた!


くっ!硬い……ん?


ビキッビキッという音と同時に氷の盾にヒビが入り砕け散った。さっきは盾で見えなかったキレールの顔が現れた、マジさっきより怖え顔!

やる気満々だね、ならコッチもトコトンやっ


「シャーリーン様!ここまででどうでしょう?」

「……。」


ととっ!お互いに走り出そうとしたところでのクレアの掛け声に足を止める。


「ウチの護衛はそろそろ限界です。”力試し”はもう充分ではありませんか。初日から”氷の彫刻”にされるのはこちらとしては避けたいと思っておりますし。」

「……ふう、よろしいでしょう。キレール!ここまでにします。クレアさん、貴方の護衛の方、お名前を教えて頂けるかしら。」

「ルウィと申します。」


その声に合わせて魔装強化を解き、膝を付く。


「……覚えておきましょう。行きますわよ。」


そう言って去って行くシャーリーン・アイス様一行。その前にキレールは僕のところに走り寄り、一言告げてシャーリーンさんのところへ戻っていった。


「さすが!ルウィに「痛ってえーー

!」」


馬鹿ルーク!叩くな!凍傷であちこち痛いんだから!


「ルウィ、ご苦労様。保健室に行きましょう。」

「そうしてくれると助かる。」

「それはそうと彼、なんて言ったの?」

「”次に俺と戦うまで負けるな”ってさ。」

「それは……お友達になりたいっててことかしら?」

「「ないない!」」


小首をかしげてそうのたまうクレアに、ルークと2人全力で否定した。


”氷の彫刻師”キレールか。なんか長い付き合いになりそうだな、あいつ。





LOVEがなかなかかけませんね。


お読み頂き感謝感謝です。

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