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優しい嘘

間が空きました。

すいません。

どうぞ。



クレアの護衛をするようになって数日が立った頃、出かける直前にロンザが1人で迷宮に入ってくると言い出した。


「いつもダイン様と入っていた迷宮です。少々必要なものがありまして。そこはモンスターはほとんどでないエリアですから私一人で大丈夫ですわ。」

「何しに行くの?」

「内緒です。今日ルウィ様が帰宅した時に見せますわ。」


ロンザは家庭用のメイド・ドールなので強くはない。が、護身用の剣を使って戦うことも過去にあったし、あそこの低級モンスターなら確かに問題はないだろう。


「まあ、気をつけてな。」

「はい、行ってらっしゃいませ、ルウィ様。」


ロンザはいつもと同じ笑顔で手を振って見送ってくれた。よし、今日もクレアの護衛を頑張ろう。



・・・・・・・・・・



夕方、学園からの帰り際、クレアに話しがあるからよって行くように言われた。まあ、3日に1日くらい上がらせてもらっているので特別なことではない。だが、クレアの顔色がいつもと違っていた。


「ねえ、シャーリーン様のことどう思う?」

「どうって……。まあすごい髪型だとは思っているけど。」

「そんなうわべの話しじゃないわ、人物的によ。もっと端的にいうとね、雇用主としてよ。」

「まあ、真面目な話、悪い噂は聞かない。これはここ数日の護衛たちとの話しからの推察だから真価はどうかわからない。でも、護衛は金だけで護衛対象に尽くすんじゃないと思う。やっぱり心ある生き物だからさ。キレールのあの忠誠ぶりは人徳によるものじゃあないかなあ。その様子だと、何か接触があった?」

「うん。あなたに対する問い合わせは学園で結構あったわ。たった数日なのに凄いものよ。でも、私に声を掛けるなんて地位が同じか下の者ばかり。全然魅力のない者ばかりだったわ。まだまだ貴方を売り込むのは先だわ、と思っていたのよ。それが、夕べになってアイス家本家から正式に護衛の譲渡の打診があったわ。ルウィご指名のね。」

「ああ、確かにキレールは強かったしね。ここ数日、彼ほどの実力者はまだあたっていない。いいPRだったのかも。」

「前もいったけど、彼は指折りの実力者よ。気にしない方がおかしいわ。それより何より!大変なことは手回しのいいことに、この話しはフレイム家本家の許可をもらってなのよ。事実上フォックス・フレイム家は命令を受けたに近いわ。」

「ええと、強制?」

「うんそうなる。報酬は”精霊進化石”。」

「”精霊進化石”か!じゃあ精霊使いのクレアにとっては……断れないねえ。」

「ええ、私の精霊に使うことを条件にだけどね。」


下級の精霊に精霊進化石を使えば中級になる。確かにこれは破格の報酬だ。それだけ僕が期待されている?


「私もフレイム家での地位が上がるし、最高のかたちだとは思うのよ。別れるのはちょっとはやすぎるかなとは思うけど。まあ、弟の再出発先としては最高だとは思うわ!がんばってね。」


やっぱりなー。ダイン、君は弟扱いだったよ。


「ただ、そうなると一つ問題が。ロンザさんのことだけど……。」




・・・・・・・・・・・・



「ただいまー!ロンザ!ヤッパリいない!」


ロンザがまだ帰って来ていない。クレアから驚く話を聞いて胸騒ぎがした。心配になって走って帰ってきたけど、まさか。


迷宮に向かって飛び出す前に、テーブルの上にある手紙を見つけた。ロンザがが自分に宛てたものだった。


『信愛なるルウィ様へ

夕べ、クレア様のところにアイス家の使者が入って行くのを見ました。流石大貴族のアイス家。玉と石の違いをしっかり見分けられたようで何よりです。』


クレアが夕べ、ロンザを自分の家の近くでみかけたと言っていたが。やはり……


『ルウィ様、実は、貴方の魔力がダイン様のものとは波長が変わってきていたのです。もう、いくらルウィ様から魔力をもらってもお腹がいっぱいになりません。ですが、そのせいで貴方のことを主人だと認識できなくなってきました。人形としての枷が外れてしまったのです。


ダイン様は運はとてつもなく悪い方でしたが、素晴らしい”ご主人様”でした。ですが、ルウィ様は頼りなくて私のような者がそばにいないと何もできない”ダメなひと”です。


このような世界に来られて、泣いて泣いてそれでも時々笑う貴方に、私は恋をしてしまいました。人形の私が恋だなんて、笑われるかもしれません。ルウィ様は笑わないですよね。私にはわかります。


明日にも動かなくなるこの身体。


後のことをお願いしにクレア様のところへと向かったところでアイス家の使者をみたことによって、愁いが断たれ、決心がつきました。


ルウィ様、いえ、ルウィ。最後のお願いを聞いてください。探さないで。迷宮に向かったのは貴方に停止した私を見られたくなかったから。人形だと思われたくなかったの。だから、ゴメンね。



最後まで貴方を騙すことが大好きだったロンザより。』




僕は、彼女のために泣きつづけた。




ここで切ることにしました。


なんとなくですが、彼女以上にルウィの彼女らしい女性を登場させることができない気がしまたので。


お読みくださってありがとうございました、感謝・感謝です。

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