俺たちのレイド戦
俺たちとグレイルの戦いが始まった。
魔女、アースを滅ぼすための総力戦。
これは、この世界に安寧をもたらすための、俺たちのレイド戦だ!
「うらぁっ!」
手始めに、俺はグレイルの体目がけて『クロス』による突きを放った。
死霊族であるグレイルに対し、ダメージヒールは効かないだろう。
であれば、ここは『クロス』で攻めるのが定石だ。
幸い、ここにはダメージソースとなりうる仲間が沢山いる。
だから、俺はいつも通りタンク役として、グレイルに挑もう。
「フッハッハッハッハッ! そら、攻撃が飛んでくるぞ! 上手く捌くといい!」
グレイルの拳が飛んでくる。
なので、俺は大盾で防御の体勢を取り、それを受け止めた。
「ぐうっ!?」
拳が大盾に当たると、俺の体は10メートルほど後方に下がった。
衝撃が半端ない。
マトモにくらったら、下手すると即死しかねない。
こりゃあ、グレイルがアースを押さえつけられているうちに倒さないと、とんでもないことになりそうだ。
「大変そうだね! どれ、お姉さんたちが手助けしてあげよう!」
「俺たち3人でタンクをこなしたならば、どのような相手だろうと敵ではない!」
冷や汗をかく俺のところに、ノアとアギトがやってきて、タンク役を買って出た。
この2人が俺と肩を並べてタンクをしてくれるなら、この上なく頼もしい。
是非やってもらおう。
「フッフッフッ……ならば、僕たちは攻撃に徹しようじゃないか!」
「『フォーカード』の俺たちも戦いに参加するぜ!」
「私たちのレイドが勝利する確率は99パーセントです」
「アンデッドが相手なら、あたいの炎もよく効くだろうね」
「……飛んで火にいる夏の……骨?」
【Noah's Ark】に所属する2年生組であるクロード、カンナ、アキ、紅、ナナシの5人が、それぞれの得意とするやり方でグレイルに攻撃している。
クロードたちも、この場に来てくれたんだな。
出オチでやられないよう、前に出るのもほどほどにしてくれよ。
「攻撃役には、私たちも助力しますよ」
「燃えてきたぜええええええ! ほら! ねこにゃんもいくぞ!」
「下級生には負けていられない。というか……その名前はあまり大声で叫ばないでくれ……」
3年生組であるセツナ、カイト、ねこにゃんが、2年生組に加わって攻撃を開始した。
この3人も、アタッカーとして非常に優秀だ。
それに、上級生としてのプライドによるものか、クロードたち以上に張り切っている。
これは期待できるぞ。
「炎魔法なら、俺たちにも任せろ!」
「俺たちも、伊達にここまで生き残っちゃいない!」
1年生組であるカラジマとナバタが、遠距離から炎魔法を連射している。
アンデッドに特攻効果のある炎魔法を使える魔術師職は、多ければ多いほどいい。
あいつらもウルズ待機組で、一匹狼を気取っていた頃の俺とは疎遠気味だったが、これが終わったら打ち上げ会で一緒に盛り上がろう。
だから、2人とも頑張ってくれ。
「僕はダメージらしいダメージを与えることはできないけど、気を逸らさせることくらいはできるよ」
「いいねっ! 気が散ったその隙に私が敵の間合いに入るから、ちゃんと狙ってねっ! ユミ!」
同じく、1年生組であるユミとマイが、流石のコンビネーションでグレイルを翻弄している。
ユミの矢を目元付近に当てられて、グレイルが若干怯む。
そこをマイが狙って、強烈な足技で的確にダメージを与えるという、悪くない動きだ。
おそらく、グレイルの身体を動かしているアースにとって、目を攻撃されると反射的に守ってしまうんだろう。
グレイルに目玉はなく、赤い火の玉のようなものが骸骨の中で揺らめいているだけだ。
なので、実際は矢を受けても失明しないのだろうが、これはしょうがない反応か。
「いいぞ! みんな! この調子で攻め続けろ!」
みんなのそうした戦いを見ながら、俺はさらに気合を入れるため叫んだ。
(やめなさいやめなさいやめなさい! あなたたち! そんなに私を怒らせたいのですか!)
と、そんなとき、アースの怒鳴り声が聞こえてきた。
俺たちの攻撃が効いているってことだな。
だったら、なおさら攻撃の手を緩めるわけにはいかないだろう。
「子どもたちばかりに活躍させてはいられないな…………『ホーリーサンクチュアリ』」
(ああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ!?)
法王が、先ほどアースに対して行っていた聖魔法の結界を再び張り出した。
これは、死霊族であるグレイルにも効果があるはずだ。
継続的なダメージ効果のある聖魔法であるようだが、アースの苦しみようからして、これは有効打なのだろう。
さっきの戦いで、ケンゴの攻撃がアースの腕を斬り飛ばせたのも、この聖魔法があってこそだったみたいだしな。
「進藤! 私たちも聖魔法で攻撃に回るぞ!」
「えー、あたしらは回復要因だろー?」
「マーニャンさんは、ただサボりたいだけですわよね?」
「うぐ……わかったよ、やりゃーいいんだろー」
「魔女を討伐した暁には、特別報酬をいただくでござるよ! ニンニン!」
早川先生や、マーニャン、セレス、カタールといった大人組も、俺たちと肩を並べて戦ってくれるようだ。
約2名、自分の欲に忠実な奴がいるが、それはスルーしておこう。
「前衛! 疲れたらアタシらと交代しな!」
「後ろには俺らがいるんだからな! あんま無茶すんじゃねえぞ! コラ!」
俺たちの後方では、メリーやバンといったミーミル勢が控えている。
普段なら、レイド戦といえば30人なんだが、今回は数百人、数千人規模でのレイド戦だ。
後ろに多くの味方がスタンバイしてくれているというのは、とても頼もしい。
「初っ端から全力で攻めてええよ! 交代要員はわんさかいますさかい!」
「私らにも出番寄越しなさいよぉ!」
「ね……ねむ…………タケルさん……寝ていいですか」
「こんなとこで寝るなよ!? 駄目に決まってんだろうが!?」
「ソラ先輩! あなた、どんだけフリーダムなんスか!?」
……一部、本当にスタンバイしてくれているのか微妙な奴がいるが、それもスルーしよう。
ツッコんだら負けだ。
「あれは先代獣王様と先々代獣王様の仇だ! 身動きの取れないガルディア様に代わり、我らの手で天誅を下そうぞ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
獣族の群れがグレイルに攻撃を仕掛けた。
素早い動きによる徒手空拳で確実にダメージを与えている。
見た感じ、士気はかなり高いようだな。
自分たちの身内が殺されているのだから、それも当然か。
「うおー! 精霊王さまのかたきだー!」
「とむらいがっせんだー!」
上空からは、精霊族がグレイルに向けて魔法を連打している。
というか、精霊王は死んでないからな!?
ちょっと深手を負ってるけど、死んではいないからな!?
「植物さんたち! 私に力を貸して!」
と、俺が内心でツッコミを入れてしまっていたとき、エレナが植物を操ってグレイルの左腕を拘束した。
「むぅ!? やるな! エルフの者よ!」
(こんな拘束なんか……!)
しかし、それもおそらくは数秒しか持たなそうだ。
グレイルの体が植物をブチブチと引きちぎっている。
「その腕、某が貰った!」
(ぎいいいいぃぃ!?)
が、そんな数秒の拘束が効いたのか、銀丈さんがグレイルの左腕を刀でスパッと斬り落とした。
これは凄いな……。
他のみんなが攻撃しても、グレイルの身体の骨に僅かなヒビが入るくらいなのに、腕を一撃で切り落とすとは。
「さすがは銀丈様!」
「鮮やかなお手前です!」
「龍王様もお喜びになられるでしょう!」
龍人族の三馬鹿連中が、銀丈さんをもてはやし始めた。
おい、お前たちもちゃんと戦闘に参加しろよ。
後で火焔に言いつけちゃうぞ。
……なんか俺、さっきからツッコミばっかだな。
レイドバトルっていうのは、もうちょっとこう、真剣なもののはずなんだが。
「シンにぃ! 俺らも戦闘に参加するぜ!」
「! キィスか!」
俺が内心で苦笑いをしていると、キィスたちが声をかけてきた。
「炎魔法なら、私も得意です!」
「聖魔法でしたら、私もイケますわよ!」
「……っ……」
こいつらも参加するのか。
少し前までは保護しなきゃいけないようなチビッ子だったのに、こうして肩を並べて戦えるだなんて。
こんなときに思うのもなんだが……ちょっと嬉しいな。
「キィス! これを受け取れ!」
と思っていた、そのとき。
身動きが取れずにいたケンゴが、手首のスナップだけでキィスに剣を投げてよこした。
あれは……『ラグナロク』か。
自分に代わって、これで敵を討てってことだな。
「サンキュー! ケンゴさん! 俺、この剣大事にするぜ!」
「お、終わったらちゃんと返せよ!? 絶対だかんな!?」
ケンゴが若干焦っている。
珍しいこともあるもんだ。
にしても、キィスは無事にケンゴと再会できてたみたいだな。
今さらではあるが、良かったな、キィス。
「脱出成功! 私も戦線に復帰するよ!」
「!? が、ガルディア!?」
そう思っていたら、今度はガルディアが前衛に立った。
しかも、なぜか今は人の姿になっている。
「お前、拘束されてたんじゃなかったのかよ!?」
「人形態に戻ったら抜けれた!」
なんだそりゃ!?
魔女の拘束ガバガバじゃねえか!?
……いやまあ、確かにガルディアは獣形態と人形態とで大きさが全然違うから、こういうことになってもおかしくはなかったわけだが。
多少冷静になった今だからこそ気づけた抜け道だな。
さっきは怒り狂っていた様子だったけど、今はみんなと足並みをそろえて戦えそうだ。
「あー……なんだこの状況はよぉ……誰か俺様に教えろっつぅの」
俺が苦笑いを浮かべていると、そこへさらにニーズまでもがやってきた。
ニドルクに殴られてから今まで、気絶でもしてたんだろう。
であれば、さっきまでと大きく違うこの状況に戸惑うのも無理はない。
「ニーズ! お前も魔族の兵とともに、あの者を斃すのだ!」
「はぁ? なに言ってんだよ、親父ぃ。つぅか、調子悪そうだが、大丈夫なのかぁ?」
「つべこべ言うな! 儂のことも後回しでいい! とにかく今は、魔王の命に従え!」
「はぁ……もう魔王ヅラかよぉ。しょうがねぇ………………やるからには全力でいくぞぉ! てめぇらぁ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ニーズは魔王であるニドルクの命を受け、魔族を率いて戦闘に参加した。
人族、獣族、龍人族、精霊族、魔族という5つの種族が共闘するなんてな。
多分、これはこの世界の歴史上、初めてのことなんじゃないか?
「一之瀬! ぼうっとしているのなら、俺にそのポジションを渡せ!」
「おっと……」
俺が口元を緩ませていたら、氷室に叱責されてしまった。
タンクのポジションを譲るわけにはいかないな。
というか、こいつが来たならば、アレを渡してやろう。
「これを貸してやるから、お前はタンクよりアタッカーをやれ!」
「え? ……こ、これは!」
俺はアイテムボックスから槍の神器『グングニル』を取り出し、氷室に投げた。
すると、氷室はそれを手に取り、驚いたというように目を丸くした。
「一之瀬、君はこの槍をどこで――」
「話は後だ! 今は戦え!」
「わ、わかった!」
氷室は、その槍を持ち直し、グレイルのほうへと走っていった。
あの槍は、トウマがやられたときに拾ったものだ。
まさか、氷室に渡す気になるだなんて思ってもみなかったが、まあ、騎士職のあいつなら、使いこなしてくれるだろう。
「電磁砲、発射!」
背後から突然、強力な光線がグレイルの右肩目がけて飛んできた。
すると、グレイルのマントが焼け焦げ、骨にも大きな亀裂が走った。
これは……白崎の攻撃か。
すぐ近くから飛んできたもんだから、ちょっとビックリした。
なんで遠距離攻撃担当の奴が前衛にいるんだ?
「一之瀬っち! 俺にはなんかないのかよ!」
……こいつ、もしかして、さっきの氷室とのやりとりを見てたな?
なんかないのかと訊かれても、なんもないとしか答えられないぞ。
「お前にはない!」
「なんで!?」
「いや、俺のほうが『なんで』だよ!?」
俺になにを期待してるんだよ!?
ああもう!
みんな、俺を戦いに集中させろ!
真面目に戦ってる奴もいるけど、ツッコミどころが多すぎるぞ!
「フッハッハッハッハッ! 貴様たち、我を相手にしているにも関わらず、なかなか楽しそうではないか!」
俺たちの戦いっぷりを見ていたグレイルが笑い声を上げた。
地球人とアース人の攻撃を一身に受けているのに笑えるとは。
こいつはこいつで、とんでもない奴だな。
(まずい……まずいまずいまずいまずい…………早く…………早く早く早く反撃を……)
「だいぶ参っているようだな、アースよ。これが、貴様が蔑ろにした『民』の力だ」
(グレイル! 私に説教をするつもりですか! 人から外れた異形の存在のクセに!)
「そうであるな。我は貴様などの甘言に惑わされることなく、常に孤高であるべきだった」
いくつもの強烈な攻撃を受けながらも、アースとグレイルが会話をしている。
みんなにその2人の声が聞こえているかわからないが、俺の耳には確かに聞こえた。
「……いや、しかし貴様と出会わなければ、クレールも生まれてこなかったわけか。であれば、我がキサマと巡り合ったのも、悪くないことであったと言えよう! フッハッハッハッハッ!」
(なにを笑っているのですか! そんなことより、早く体の主導権を私に寄越しなさい!)
「それは無理な相談だ。第一、もし仮に貴様が我の身体を乗っ取っても、それを維持するので手一杯であろう?」
(ぐぅ……!)
アースの乗っ取りにも弱点はあったのか。
だからこそ、自分の力を十二分に発揮できるクレールの体を欲したのかもしれない。
「さあ! この場に集まったすべての者よ! 我はもう虫の息だ! あと一息で倒せるぞ!」
そんな戦いがしばらく続くと、グレイルが俺たちに大声でそう伝えてきた。
自分の死期を、こうも明るく言えるとは、やっぱりとんでもない奴だ。
「そろそろ頃合いだ! 我に最後の攻撃を放つがいい!!!」
(やめなさい! あなたたち! 私にこんなことをして、タダで済むと――)
「よし! いくぞ、みんな! 総攻撃だ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺たちはアースの声を無視し、最後の攻撃をグレイルに打ち込んだ。
剣が、槍が、矢が、魔法が、ありとあらゆる攻撃が、グレイルの身体を粉砕していく。
(あああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!)
アースの断末魔が聞こえる。
きっと、これはグレイルの負った痛みによるものなのだろう。
(わ……わたしは……このせかいのおうに……なるの……わたしは……)
「そろそろ黙れ。ここが貴様の引き際だ」
(ああぁぁぁ……)
グレイルの一声の後、アースの声が小さくなっていく。
それと同時に、グレイルの体を構成していた骨が、下から徐々に砕け始めた。
「……そして……ここが私の引き際でもある」
ボロボロになったグレイルが、俺たちのほうを向く。
骸骨であるその顔に表情などあるはずもないが、どこか満足したような笑みを浮かべているような気がした。
「いろいろとすまなかったな、小童どもよ。1000年も昔に終わった争いを、このようなところまで引っ張ってしまって」
グレイルは俺たちに謝罪してきた。
俺たちはそれを、静かに聞き入れる。
「アースの魂は、我がきちんと冥府へと送り届ける。それが、かつてこの者の軍門に下った我にできる、責任の取り方だ」
「…………」
クレールのことだけじゃなく、アースの仲間だったこともあるから、グレイルはこんな役目を自ら率先してやったのか……。
でも……腑に落ちないな。
こんなことを考える奴が、昔はアースの仲間だったなんて。
「グレイルよ……前々から不思議に思っていたのだが、そなたほどの男が、どうしてアースの仲間などになっていた?」
俺がそう思っていたら、同じ疑問を抱いていたらしい火焔がやってきて、滅びゆくグレイルに訊ねた。
「それは……我が孤独だったとき、唯一あの者だけが我に手を差し伸べてくれたからだ」
すると、グレイルは若干恥ずかしそうに顔を俯かせながら、そんな答えを返してきた。
……うん。
やっぱり、こいつは……いや、この人は、間違いなくクレールの親父さんだ。
クレールと考えてることが一緒じゃないか。
そう思うと、ちょっと笑えてくるな。
「わ、笑うな! ……く……やはり、言うべきではなかったか」
俺が笑うと、グレイルは途端に怒り出した。
こういうところも、ちょっとクレールに似ているな。
「ああ、悪い…………それと、俺から1つだけ、言っておきたいことがあるんだが」
「? なんだ? 我の身体も、そう長くは持たない。早く言ってみろ」
グレイルに残された時間はもう僅かだ。
体の崩壊が、すでに胸のあたりまできている。
だから、早く言わなければ。
グレイルがクレールの親父さんだと確信できた今こそ……。
「――お父さん。娘さんを俺にください」
俺はグレイルに頭を下げ、そんな言葉を告げた。
「……ふ……ふ、フッハッハッハッハッ! 最期の時を迎える我に向かって、そのようなことを言ってくるか! 貴様もなかなか見どころのある馬鹿であるな!」
「ひ、人に笑うなと言っておいて、自分は笑うのか!」
「おっと、それもそうであるな。反省しよう」
最期だっていうのに反省するのか……。
って、そんなことにツッコミを入れてる場合じゃない。
クレールと俺のことを、グレイルはどう思うか――。
「――よいぞ。貴様は火焔らが戦うなかで、唯一クレールの身を案じてくれていたな……あれは嬉しかったぞ」
俺が内心でビクビクしていると……グレイルはそう言って、俺の頭に右手をポンと乗せてきた。
「クレールは、我以上の寂しがり屋だ……あまり寂しい思いはさせてやるなよ?」
「………………はい!!!」
骨の右手に温もりなどないはずなのに、俺には、それがとても温かく感じられた。
「まあ、クレールが貴様にとって何番目の嫁かは知らぬがな」
「ちょっ!? それ、精霊王から聞いてたの――」
俺が驚いたその瞬間――グレイルの体は完全に崩壊し、すべてチリと化した。
白い砂のようになった骨の破片が、空に舞い上がっていく。
……最後の最後で、ちょっとイジワルされちゃったな。
これについては、全面的に俺のだらしなさが悪いわけだが。
「天に召されたか……魔女討伐任務に参加し、自らの身を犠牲にしてまで我々の希望となったグレイル・カバリアに感謝を……」
法王が全員を代表してそう言い、目を瞑って黙祷を捧げた。
さっきまでの俺とグレイルの会話を聞いて、苦笑いを浮かべていたであろう周りの人々も、そんな法王を見て、同じように目を瞑った。
最後はちょっと締まらなかったが、グレイルが俺たちを救ったのは間違いない。
グレイルは、俺たちの救世主だったんだ。
「……クレールは、俺がちゃんと幸せにします」
俺も、みんなと一緒に、グレイルへ黙祷を捧げだした。
地球人も、アース人も、関係ない。
そのときの俺たちは、ただ1人の例外もなく、グレイルというちょっと寂しがり屋な男に、感謝の念を抱いていた。
――――かに思えた。
「……きゃっ!?」
突然、近くにいたミナが悲鳴を上げた。
それを聞き、俺は驚きながら振り返る。
すると、そこには――。
「どいつもこいつも使えねえ……みんな、俺を残して……なに負けてんだよ……ふざけんなよ……」
「…………カルア」
――泣きそうな顔で愚痴をこぼすカルアが、ミナの首元に短剣を当てている姿があった。




