父
「うふふふ……あなたがグレイル・カバリアですか……」
アースにおける年月にして、1000年以上昔の、とある墓地園にて。
神に反旗を翻した魔女は、争いの最中に1人のアンデッドのもとを訪れた。
「……まだ我を討伐しに来る者がいたとはな」
墓地の片隅に座り込んでいたアンデッド――グレイル・カバリアは、魔女を見てため息をつく。
通常であれば、アンデッドモンスターに自我はない。
これは、アースという世界に住む者にとって、共通の認識であった。
しかし、このグレイル・カバリアだけは違った。
彼はアンデッドであるにもかかわらず、自我を持っていた。
例外中の例外として、彼だけは己の意思を持っていたのである。
そのことに理由はない。
たまたま、若くして亡くなった1人の男の魂が躯に定着し続け、火葬も聖職者による祈祷もされず、そのままアンデッド化してしまったに過ぎなかった。
それは、1000年に一度あるかないかの偶然と言える事態だった。
が、そんな偶然のせいで、彼は周囲から迫害を受けることとなった。
「我を狩るつもりなら……その命を賭けるつもりで挑むがいい……」
意思疎通が行えるにもかかわらずモンスターと認定され、追われ続ける日々。
いつの間にか高額の懸賞金までかけられ、討伐しようと躍起になる世界中の猛者から襲撃を仕掛けられる日々。
自分の生前の記憶を名前以外ほとんど忘れてしまうほどの、長い長い迫害の日々。
そうした日々を過ごしたグレイルにとって、自分以外はすべて敵であった。
長い時間をそうして過ごしてきたグレイルは、もはや疲れ切っていた。
神経をすり減らせ、精神を摩耗させながらも、どうして自分はこんなことをして生きながらえるのか。
そもそも、自分は生きているのか、それすらもわからない。
悩む日々を送るなか、だからこそ、グレイルはいつも思っていた。
自分を終わらせる機会が来たならば、潔く朽ち果てよう、と。
来るべき時が来たならば、ただ、ありのままを受け入れよう、と思っていたのである。
だが、そんなグレイルのもとに魔女は現れた。
「興味深いですね……魂が一切損なわれることなく、アンデッドの体に定着しているなんて……研究のしがいがあります……うふふふふ……」
「貴様……なにがおかしい……」
魔女の笑いに、グレイルは殺気だった声をあげる。
「うふふ……そう怯えないで……私はあなたに危害を加えようとしにきたわけではありませんよ……」
「……? 貴様……我のことが恐ろしくないのか?」
「ええ……私は、あなた以上に恐ろしい者を知っていますからね……」
「…………ほう」
そんなグレイルを、魔女は怖がらなかった。
強力な力を持ったアンデッドであるグレイルを怖がらない人物が、この日初めて現れたのである。
これには、流石のグレイルも驚き、もう少し目の前にいる女性と話してみようという気になった。
「ならば……我になんの用だ……少しくらいなら、話を聞いてやらんこともない……」
わざわざ声をかけてきたのだから、なにかしらの用があるのだろう。
そう思ったグレイルは、警戒しながらもアースに訊ねた。
「私がここを訪れた理由は1つです……」
すると、魔女は薄ら笑みを浮かべながら、グレイルに手を差し伸べた。
「グレイル……あなた、私とお友達になってみませんか……?」
「フッハッハッハッハッ! アースよ! 貴様の心算も手の内も、我にはすべてお見通しであるぞ!」
俺たちの目の前に、グレイル・カバリアが現れた。
突然の出現に、俺は目を丸くしつつも、その死霊族を見上げた。
さっき、俺が聞いた声の主は、グレイルのものだったか。
一度聞いたっきりだったから、なかなか思い出せなかった。
でも、こうして実際に聞いてみると、この男の声だったとはっきりわかる。
以前は腕だけだったが、今はちゃんと体もある。
といっても、クレールとは違って骸骨の状態ではあるが。
「グレイル……どうしてここに……」
俺だけでなく、アースにとって、グレイルの登場は予想外の出来事だったようだ。
「いやなに、ちょっとミーミル大陸でアリアスめに会いに行ったら、そこで火焔とも会ってな、貴様の討伐に協力するよう頭を下げられたのだ!」
「なん……ですって……?」
アースの視線が、火焔のほうに向く。
「……だから……言っただろう……余は、ありとあらゆる強者を集結させた……と」
火焔は息も絶え絶えになりながら、ニヤリと口元を歪めた。
「私たちは……しょせん、あなたの気を引くための……陽動役だったってわけよ……」
さらに、全身から血を流している精霊王も、火焔に続いて弱々しくそう言い放った。
そんな2人を見ながら、アースの表情が険しくなっていく。
「……そもそもあなたは……私の祝福によって亡くなったのではなかったのですか……?」
アースが問いかける。
すると、グレイルは楽しそうに笑い声をあげながら、それに答えた。
「貴様と同じ方法で現世に留まらせてもらった! もっとも、今の我は貴様と違って、残りカスのような魂を寄せ集めたに過ぎんがな!」
「そうですか……どうやら私は、あなたという存在を少々侮っていたようです……」
「フッハッハッハッハッ! 元々は貴様のために創り出した魔物を操るための処置だったのだがな! まさか、このような形で役に立つとは思わなかったぞ!」
どうやら、グレイルはアースにとって想定外の行動を取っていたようだ。
さっきから表情が歪みっぱなしだ。
「く……放しなさい……あなたは神の味方をするつもりですか……?」
しかも、どういうわけかアースは、グレイルに捕まれてから動けずにいるように見える。
目や口は動かせるみたいだが、体のほうは指一本動いていない。
「我は神の味方などしない。だが、愛娘が不幸な目に遭っているのを見過ごす我ではないのだ!」
グレイルはアースに力強く答えた。
つまり……クレールを助けに来たってこと……なのか……?
だとしたら……こいつは俺たちの味方だ。
「愛娘……ですか……確かに、クレールはあなたの娘と言っていいと思います……ですが……それと同時に、クレールは私の娘でもあるのですよ……」
「それがどうした?」
「娘にとって、母である私の役に立てることは本望でしょう……」
「……貴様は相変わらず愚かだな」
グレイルがヤレヤレといった具合に首を振る。
アースとマトモに会話ができている。
どれほどの実力者なのかは不明だが……このグレイルという助っ人は、もしかしたら俺たちにとって起死回生の救世主となりえるのかもしれない。
「クレールの幸せは、クレール自身が決めることだ。親が決めることではない」
「娘から母親を引き離したあなたが……なにを父親ぶっているのですか……」
「フッハッハッハッ! 確かにそうであるな! 我は父親失格だ!」
と、そこでグレイルが一本取られたというように笑いだし――精霊王のほうを向いた。
「我らは揃って駄目な親であった! だが、クレールは我らのもとを離れ、立派に成長してくれたと聞く! それは、親として喜ばしいことだ!」
クレールの話は、精霊王から聞いたんだろう。
見た目は少女のままだった奴だが、グレイルにとっては成長したと言えるのか。
「だから、どうしたというのです……早くこの手を離しなさい……」
「ふむ。離してやってもいいが、それは貴様がクレールを自由にしてからだ…………というわけで、そこの小童に頼みがある」
アースと会話をしていたグレイルが、俺に声をかけてきた。
「こやつに回復魔法をかけろ」
グレイルの言葉を聞き……俺は自分の耳を疑った。
「……は?」
今……なんて言った?
回復魔法をかけろだって?
回復魔法をアースに?
ふざけるんじゃない。
ダメージヒールをかけたら、アースが癒えてしまう。
ケンゴたちが必死になってダメージを与えたのに、それがすべて無駄になる。
――そう思っていたのに。
「大丈夫だ。我を信じろ」
「っ」
グレイルの声が、俺の心を揺さぶる。
今までのことを考えたら、アースにダメージヒールをかけることは、世界を滅ぼすことに等しい。
でも、クレールを救いたいと願うグレイルは、大丈夫だと言う。
火焔たちが助力を求めたグレイル。
クレールの父親であるグレイル。
俺は――そんなグレイルを、少しだけ信じてみることにした。
「…………『ヒール』」
アースにダメージヒールをかける。
最も効果の低い回復魔法だが……それがかかったアースは……。
「…………ッ!? ぐ、グレイル……あなた……私になにを……」
「大したことはしていない。貴様の魂を、クレールの肉体から少しはがれやすくしているだけだ」
「ぐ……!」
アースは、焦ったように全身をゆさぶりだした。
しかし、それでグレイルの束縛が外れることもなく、ますます焦りだした。
「小童! クレールを救いたくば、その調子でドンドン回復魔法を唱えるのだ!」
「わ、わかった!」
なにが起こっているのか、よくわからない。
けれど、アースに身には、不測の事態が起きているということで、間違いないように見える。
であれば、ここで回復魔法を躊躇うことはない。
アースが俺に命令し直す前に、全ての回復魔法をぶち込んでやる!
「『ヒーリング』! 『ハイヒール』! 『ハイヒーリング』!」
俺は、立て続けに回復魔法を唱えていく。
そうするたびに、アースは苦しむような声を上げ、もがく勢いを増していく。
「フッハッハッハッハッ! そうだ! それでいい! 貴様の回復魔法でクレールの魂を目覚めさせるのだ!」
……なるほど。
俺の回復魔法は、クレールの体だけでなく、クレールの魂にも効果があったのか。
グレイル曰く、アースは今、クレールの体から剥がれやすくなっているという。
この言葉が正しいのならば、ここで回復魔法をかけてクレールの魂を活性化させることが、どのような結果を生むのか。
それは、俺にも想像がつく。
「……し、シン! 回復魔法を唱えるのをやめなさい! これは命令です!」
アースは俺に命令をしてきた。
すると、俺の体が回復魔法に抵抗感を抱き始め、発動させようとすると激痛が走るようになった。
――だが、俺は止まらない。
「……『エクスヒール』! 『エクスヒーリング』! 『エクスハイヒール』!」
俺の体がどうなろうが、知ったことじゃない。
クレールを救う。
クレールを取り戻す。
これこそが、今の俺を動かす原動力だ!
「ぐ……! く、クレール……! あなたは寝ていたままでいいのです……! この体は……私の物なのです……!」
「いいや、その体はクレールの物だ! さっさと返すがいい!」
「グレイルウゥゥ!!!」
アースが鬼の形相でグレイルの名を叫ぶ。
その叫びを聞きながら、俺は勝利を確信して最後の回復魔法を唱えた。
「戻ってこい! クレール! 『エクスハイヒーリングゥ』!!!!!」
俺はアースに、すべての回復魔法をかけた。
どのような結果になっても後悔しないよう、アースの呪いに耐えながら、全力で唱えた。
「!」
アースの身から黒い液体があふれ出し、弾けるように吹き飛んだ。
同時に、アースに操られていたクレールの体は元の少女体型へと変化し、膝をガクッと地面につけた。
「……ゲホッ……く……クレール!」
俺は、血混じりの咳を吐きながらも、クレールを抱きかかえた。
今のクレールからは、アースの陰気な気配は感じられない。
弱っているように見えるが……こいつは、間違いなくクレールだ。
「クレール……目が覚めたか……?」
「あ……」
クレールが薄らと目を開ける。
「……夢の中で……シン殿の声が……聞こえた」
「そうか……うん……この寝坊助さんめ……後で説教してやる……」
そして、微笑むクレールを見て……俺は涙を流しながら歓喜した。
クレールが元に戻った。
アースの魔の手から、クレールを取り戻せたんだ。
よかった……。
本当に……よかった……。
もう戻ってこないんじゃないかというこの状況から、クレールは無事に俺たちのもとへと帰ってきてくれたんだ……。
「シン!」
俺たちのところに、ミナたちが駆け寄ってきた。
「い、一之瀬くん……吐血してるけど、大丈夫?」
「あ、ああ……多分大丈夫だ……」
「そっか……よかったぁ……」
サクヤは俺の体を心配していたが、命に別状はないことがわかると、ホッと息をついた。
クレールが元に戻ってから、全身の痛みが引いてきたように感じる。
かなりのダメージを受けているみたいだが、これくらいなら回復魔法で治すこともできるだろう。
「し、シンさん……クレールさんのほうは……?」
「無事だ……今は寝ちゃってるみたいだけどな……」
続いて、フィルがクレールの容体を訊ねてくるが、寝ているのだろうということしか俺にはわからなかった。
今のクレールは、俺の腕の中でスヤスヤと眠っている。
その寝顔は、とても安心しているかのように健やかだった。
「ふぅ……どうやら、2人とも無事のようね……」
「まあな……流石に無傷とはいかなかったが……」
ミナが俺たちを見て、表情を緩めている。
さっきまで、彼女たちはケンゴの命令通り、その場から動かずにいた。
多分、俺たちの様子を見て、ハラハラしっぱなしだったことだろう。
「クレール……」
と、そこで俺たちのところに、精霊王もやって来た。
彼女は全身血だらけで、今にも倒れてしまいそうだ。
それでも、クレールのことが心配で、ここまで来たのか。
「ごめんなさいね……私……あなたに酷いことしちゃった……」
精霊王はクレールの寝顔を見ながら、謝罪の言葉を口にしていた。
酷いことというのは、アースと戦ったことを指しているんだろう。
自分自身は攻撃に参加してなかったっていうのに、責めずにはいられないようだ。
「クレールは、なんだかんだで心が広いですから、精霊王のことも許してくれると思いますよ」
「そう……かしら……?」
「きっとそうです」
クレールが精霊王を嫌うとは考えづらい。
きっと、今まで通りの関係でいられるはずだ。
「和んでいるところ悪いが、我の話にも耳を傾けてもらおう!」
俺が精霊王にクレールを預けていると、傍にいたグレイルが大声を上げた。
そうだ。
今回、クレールを救ってくれたこの功労者に、礼を言わなくっちゃだな――。
「貴様たちには、まだやってもらうことがある! それを行わぬ限り、魔女は再びこの世界を害することとなるだろう!」
「……なに?」
アースは、もういなくなったんじゃないのか?
もしかして、クレールの中から消えても、どこかにまだ潜んでいる……?
「貴様たちにやってもらうことって……いったいなんだ?」
「うむ、それはな……我を貴様達の手で完膚なきまでに滅ぼすことだ!」
「…………は? なんだよ……それは……」
俺はグレイルの言っていることが理解できなかった。
それは、ミナたちも同様であるようで、揃って首を傾げている。
「クレールの身から剥がした魔女の魂は今、我の中にあり、そして我の魂と繋がっている! だから……魔女を我ごと滅ぼせと言っているのだ!」
「なっ!?」
俺たちはグレイルの説明を聞き、揃って驚きの声を上げた。
(……なんてことを考えているのですか! 早く私をここから解放しなさい! グレイル!)
どこからともなく、怒りに満ちた女性の声が聞こえてきた。
これは……もしかして、アースの声なのか?
クレールの体を乗っ取っていたときと比べて、声のトーンが若干違うが、おそらくはこれがアース本来の声なのだろう。
聞こえるのも、耳からというより、心に響くような感じだ。
「そう暴れるな。冥府へは我もともに堕ちてやるから」
(ふざけるんじゃありません! こんなことをして、あなたになんの得があるというのですか!)
「これは娘の未来を案じた選択だ。損得の問題ではない」
(なんですって……)
……グレイルは、クレールのことを思って、アースをこの世から消し去ろうとしているのか。
確かに、このままアースが生き残ったならば、またクレールの体を狙いかねない。
だから、アースをここで消し去ることは、クレールのためになると言える。
でも……。
「お前は……それでいいのか? クレールとも、まだマトモに話してないんだろ……?」
クレールとグレイルは、数百年前に別れて以来、会っていない。
なのに、ここで今度こそ死んでしまったら、親子の再会は果たされなくなる。
「よいのだ。我も魔女も、所詮は過去の亡霊に過ぎんのだからな」
「グレイル……」
「それよりも、早く我を滅ぼせ。こうして魔女を押さえつけるのにも限界があるのだからな!」
「!」
グレイルがそう言うと、突然俺に向かって拳を振るってきた。
「……魔女が我の身体を乗っ取ろうとしている。我が抵抗できているうちに、我を早く滅ぼすのだ!」
「な!?」
おいおい……。
アースがグレイルを乗っ取ったら、いったいどうなってしまうんだ。
今はまだ、グレイルがアースを押さえつけている。
が、それもいつまで持つかわからない以上、ここで悠長に悩んでいる場合じゃない。
「魔女を斃せるこの好機……無駄にはしない」
法王がそう言いながら、俺に神器『アリア』を持たせてきた。
すると、俺の中に残っていた違和感のようなものが取り除かれていき、つらさや苦しさが完全に消え去った。
「遅くなってすまなかった。機会を見て、こうするつもりだったのだが……これで魔女の呪いは消えたはずだ」
……『アリア』には、こんな力もあったんだな。
昔、法王が自分の二日酔いをこれで治したところを見たことがあったけど、同じ要領で呪いまで消し去るとは……。
「ありがとうございます、法王」
「礼はいい……それより、我々とともに、あの者と戦ってくれるな?」
法王が俺に問いかけてきた。
「……シン、やりましょう」
「クレールさんのお父さんの気持ちを無駄にしないためにも」
「……オレたちが決着をつける……んです」
「みんな……」
ミナたちが戦闘態勢に入った。
「シン! やれ! これが俺らに残された、最後のチャンスだ!」
さらに、いまだアースの触手によって身動きが取れずにいるケンゴが、俺たちにチャンスを託してきた。
「そうだ! その意気だぞ、貴様たち! さあ、その勢いで、最強の存在である我を滅ぼしてみせるがいい!」
そして、グレイルが誘い文句を高らかに叫んだ。
……最強、か。
まあ、アースの動きを封じて、今も魂を道ずれにしようとまでしている奴だからな。
実際、グレイルは本当にとんでもない力を秘めた奴なのだろう。
そんな奴が、自分を滅ぼせと叫んでいる。
最愛の娘のためだけに、そう叫んでいるんだ。
だったら…………俺は…………。
「アース……お前は…………俺たちが倒す!!!」
アースの魂ごとグレイルを滅ぼす。
これが、娘のことを思ったグレイルの意思であり、俺たちに残された最後の希望であるのならば…………俺はやってやる!!!!!
「よく言った! さあ、かかってこい、今を生きる者どもよ! その脆弱な力を束ね、我を華々しく散らせてみせるがいい! フッハッハッハッハッ!」
グレイルは俺の答えが満足のいくものだったようで、大きな笑い声を上げている。
お前が俺たちにくれた、最後にして最大のチャンス。
使わせてもらうぞ……グレイル!
「シンたちが戦うのであれば、俺たちも参加させてもらおう!」
「こうなりゃ総力戦だ! いくぜ! 野郎ども!」
地球人組の纏め役であるアギトや藤堂さんも戦意を示した。
「武士よ! 某に続けい!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
龍人族の銀丈さんも、アース人を率いてこちらに走ってくる。
八大王者が暴れていたときは、それ以外の地球人とアース人は、ただ見守るばかりだった。
おそらく、ケンゴたちの戦いの邪魔になると判断しての待機だったのだろう。
だが、今は法王以外のすべての八大王者が戦闘不能状態に陥っている。
であれば、ここで戦力を惜しむことも、戦いの邪魔になるかもしれないなどとも、考えている場合ではない。
この場に集まった全勢力をもって、グレイルを討伐する。
それこそが、今の俺たちに与えられたクエストだ。
「クレールのこと、頼みましたよ、精霊王」
「ええ……いってらっしゃい、シンちゃん……」
俺は精霊王にクレールを託し、グレイルを見ながら構えを取った。
「……さあ、いくぞ! みんな! これは俺たちのレイド戦だ!!」
こうして俺たちは、グレイルとの戦闘を開始した。




