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VS迷宮地下100階層レイドボス

 キングレイスが鎌を振り上げた。

 それを見た俺は、いつ攻撃が来てもいいよう重心を下げ、大盾と小盾を持つ手に力を込める。

 異能アビリティも、長期使用に耐えられるだけのペース配分を意識しつつ発動中だ。


 来るなら来い!

 どんな攻撃でも受け流してやる!


「……オオオオォォォ」


 俺へ向けて、キングレイスは鎌を勢いよく横に振ってきた。


 鎌が大盾に当たる。

 すると、予想以上の衝撃が腕に伝わり、俺は背後に数メートル吹き飛んだ。


「ぐぅっ……!」


 ……なんだ、この威力は。

 まるで、ケンゴの攻撃を盾でガードしたときみたいな衝撃だったぞ。

 とんでもないパワーだ。


 これは……俺以外のメンバーが受けたら即死しかねない。

 もとより仲間を攻撃させるつもりなんてないが、より手堅く守っていこう。


 そう思った俺は、再びキングレイスの前へと飛び出して、鎌の脅威を一身に受けた。


「……ふっ……はっ……!」


 振り下ろされる鎌をかわし、あるいは盾で受け流していると、なんとなく攻撃のパターンがわかってきた。


 一発の威力は怖いが、そこまで対処しにくくはないな。

 動きは単調で、フェイントといった類いも、どうやらしかけてこないようだ。

 これなら、俺が集中力を切らさない限り、何時間だって耐えられる。


 とはいえ、油断はできない。

 相手は地下100階層のレイドボスなんだ。

 ここまま楽に終わらせてくれるとは思わないほうがいいだろう。


「っ!」


 キングレイスが俺に急接近してきた。


 さっきまでより間合いが狭い。

 これだと、鎌をかわすことができない。

 当てることを優先してきたか。


 仕方ないな。

 だったら俺は、盾で受け流すことを優先しよう。


「……オオオオォォォ」


 俺の頭頂部めがけて鎌が振り下ろされる。

 それに合わせるようにして、俺は大盾を頭上に上げ――。


 ――俺は背後にバックした。

 その瞬間、なにかが俺の腹と右足をかすめた。


「ッ!?」


 なにが起こったのかわからなかった。 

 ただ、本能的に、なにかが起こったのを察知して、とっさに背後に飛び退いていた。


 その結果がこれだ。

 腹部分の鎧には横一線の切り傷がつき、右足のほうは太ももがパックリと切り裂かれている。

 HPも1割ほど削れている。


 俺は右足の激痛に耐えながらも、回復魔法を自分にかけた。

 それにより、俺の右足とHPは瞬時に回復した。


 ……とりあえず、持ち直した。

 しかし、さっきのはいったいなんだったんだ。

 まるで、鎌が1本ではなく3本存在していたかのような――。


「……マジかよ」


 キングレイスは3本の鎌を持っていた。

 両手に1本ずつ、そして、左肩あたりの部分から生えている腕に1本だ。


 手数がざっと3倍に増えた。

 これは……かなり厄介だな。


「……いや、4倍か」


 キングレイスの右肩から、4本目の鎌を持った腕が生えた。


 ここからは守るのも4倍頑張らないといけないってか。

 1本の鎌を振り回していたときよりパワーは落ちているだろうが、果たしてこれを捌ききれるかどうか……。


 ……≪身体加速フィジカル・アクセル≫の加速倍率を上げるか?

 このレイドボスを倒すのにどれだけ時間がかかるかわからないが、一応、今のペースなら5時間は戦える。


 4本の鎌による攻撃に目が慣れるまでの間だけでいい。

 ペース配分に若干の修正を加えよう。


 そう判断していると、早速キングレイスの攻撃が俺のほうへ――。


「なかなか面白いことしてんじゃねえか! 俺も混ぜろ!」


 ――ケンゴが俺の隣に立ち、キングレイスの振る鎌2本を剣で押し戻した。

 俺はそれを見つつ、逆サイドから迫るもう2本の鎌を盾で受け流す。


「ザコ処理は終わった! あとはこいつを叩くだけだぜ! シン!」


 なるほど。

 それはよかった。

 俺も、レイドボスの気を引き続けた甲斐があったってものだ。


「右側は俺が食い止めるから、シンは左側を頼むぜ!」

「これはタンクの役目なんだが……まあいいか」


 どうやら、ケンゴはキングレイスの手数を見て、俺の負担を半分に減らそうとしてくれているみたいだ。

 それはそれでありがたいが、アタッカーにこういう仕事をさせるのは気が引けるな。


「でも、俺の目が慣れるまでだぞ! ケンゴ!」

「おうよ!」


 まあ、手を貸してくれるっていうんだから、ここはひとまず貸してもらおう。

 そのほうが、俺もペース配分を崩さなくてよくなるからな。


「うらぁ! ……チッ、かってえな。どんな素材使ってんだ?」


 ケンゴがキングレイスの振る鎌に合わせるようにして剣を叩き込んでいる。

 積極的に敵の武器を破壊していこうとするバトルスタイルなのは、今も健在か。


 しかし、鎌は刃こぼれ1つしていない。

 ここで1本でも鎌が駄目になってくれれば、俺たちも楽ができたんだが。


「『ドラゴフレイム』! 一之瀬くん! 加勢するよ!」

「全員で攻撃を叩き込みましょ!」

「シッ!」


 サクヤたちも俺たちと合流して、キングレイスに攻撃を開始した。


 怒涛の攻撃で、敵の反撃する機会を減らそうって魂胆か。

 ヘイト管理が難しくなるが、悪くない判断だ。


「フィル! ミナ! あんまり前に出過ぎるなよ!」

「了解!」

「わかってるわよ! 『クロススラッシュ』!」


 前衛のポジションにいるフィルとミナは危険な立ち位置だ。

 だから、できるだけ彼女たちのことは俺も気にかけている。


「シン! 拙者にはなにか言葉をかけないのでござるか!」

「かけてほしいのか!」

「ほしくないでござる!」

「だったら黙って攻撃しろ!」

「ニンニン!」


 同じく前衛であるケンゴとカタールにも声をかけようかと思った。

 が、あいつらは俺たちより経験が豊富だから、言うだけ野暮ってものだろう。


「うおあっ!?」


 そんなことを思っていたそのとき、背後から白い光線が飛んできた。

 光線はレイドボスに命中したが、俺がもう少し右に移動していたら当たっているところだった。


「お前は黙って攻撃するな! 危ないから!」

「え!?」


 俺は後方にいる白崎に注意を飛ばした。

 カタールとのやり取りを見て勘違いをさせてしまったか。


 後衛の攻撃は前衛からじゃ見えないことが多いから、声かけをするのが基本中の基本だ。

 特に、白崎の攻撃は背中に直撃するとシャレにならない。

 あいつには一番声を出してもらわないといけないだろう。


「いい感じに削れてるぜ! このまま押し続けろ!」


 俺たちの攻撃は、キングレイスには有効だったようだ。

 キングレイスの動きが鈍くなっている。


 ケンゴもフォローを入れてくれているし、これなら前線維持も十分に可能だ。

 ……キングレイスが新たな一手をくりださなければ、と言う話ではあるが。



 そうした心配を抱きつつも、俺たちはそれから1時間、キングレイスとの戦闘を続けた。



「っ! なにか来るぞ! 気をつけろ!」


 今まで物理攻撃オンリーだったキングレイスの様子が変化した。

 それをいち早く察知した俺は、仲間に向け警戒するよう呼びかけた。


「!?」


 キングレイスから黒い煙があふれ出た。

 その煙はボス部屋全体を包み込んでいく。


 この部屋に逃げ場などない以上、俺たちがその煙から逃れる術などなかった。


「……! 全員ステータスを確認して!」


 後衛にいたサクヤがそう叫んだ。


 ダメージもある。

 が、さっきの煙のメインは、なにかしらのステータス異常を引き起こすことだろうとは思っていた。

 見た感じからして、あきらかに状態異常を発生させそうな煙だし、実際に俺も毒状態になってしまったようだ。

 俺はあらかたの状態異常に対して強力な耐性スキルを備えているが、それでも絶対に状態異常にならないわけではない。


 また、仲間が今どのような状態になっているのかも確認しておく必要もあるだろう。

 俺自身が毒状態になったのは感覚でわかるが、それ以外にもなにかしらの状態異常を引き起こしている可能性があるから、それの確認もしておいたほうがいい。


 そう思った俺は、サクヤの言う通り、視界の左上に表示された自分とレイドメンバー全員のステータスに意識を向けた。



 全員に複数のバッドステータスと…………『アンデッド属性』が付与されていた。

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