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決闘大会一般部門

 『アースガルズ』に来てから地球時間で一週間近くが経過した。

 アース時間に換算すると数か月単位になるわけだが、その間ずっと戦闘訓練を続けていた。


「カッカッカッ! そなたもなかなかやるな。前に戦ったときよりも確実に強くなっているぞ」

「そりゃどうも」


 そして最後に火焔との模擬戦をこなし、俺たちは始まりの町へ帰ろうということになった。

 町では今日、決闘大会の一般部門が行われるはずだからな。

 この日のために俺は訓練をしてきたんだ。


 また、最終調整の相手としてはハードだったが、火焔との戦いは俺にとっていい経験になった。

 俺は火焔に頭を下げる。


「短い間だったが世話になった。ありがとう」

「頭を下げずともよい。そなたらがいたおかげで若い衆にも良い刺激となっただろう」

「訓練にも張りが出ましたからな。またいつでも来てくだされ」


 すると火焔と銀丈さんは軽い声をかけてきた。


 どうやら俺たちが来たことはそこまで迷惑になっていなかったようだ。

 何か大きな問題を起こしたわけではないから多分大丈夫だと思っていたけど、むしろまた来いと言われるとはな。

 そんなことを言ってるとまた来るぞ。


「私たちまでついでに鍛えてくれてありがとうございました」

「よいよい。儂らは強くなろうとする者を歓迎している」

「特にミナ殿はなかなか鍛えがいがあった。今度お会いした際は龍剣流奥義を伝授しよう」

「はい、そのときはお手柔らかに」


 俺たちのなかでもミナは特に気に入られたようだ。


 彼女はメキメキ強くなるからな。

 伸びしろもあって鍛えがいがある

 しかもミナは龍人族の男たちから何度かナンパされていたらしく、結構モテモテだったみたいだ。


 彼女は俺たち5人のなかでも一番話しかけやすかったんだろう。

 サクヤは男の龍人族相手だと銀丈さんくらいしか喋らなかったし、物怖じするフィルは俺の後ろにずっと隠れていた。

 それにクレールは死霊王として畏怖されていたため(?)、俺が見た感じだと話しかけられる機会はゼロだった。

 なので必然的に話しかけるのは俺かミナかの二択になる。


 しかも、俺のほうには好戦的な奴ばっかり集まって模擬戦を行っていたのに対し、ミナは自分から積極的に話しかけて言葉による交流を深めていた。

 こうした理由から、ミナは俺たちのなかで一番龍人族から好かれていたっぽいんだよな。

 まあ、ミナは龍人族の男が好意を寄せてきてもやんわりと断っていたみたいだから、浮ついたことにはならなかったみたいだが。


「火焔、貴様には我からも礼を言っておくぞ」

「儂はそなたに礼を言われるようなことなどしていない。それより、どうやら貴様はこの小僧を本当に好いているようだな。そなたのせいで儂は少々つまらんかったぞ」

「それは前回の別れ際に変な言葉を残すからだ」


 クレールはここにいる間、火焔の動向をずっと警戒していた。

 その理由はクレールいわく、「火焔がシン殿を狙っているやもしれん」とのことだ。

 狙っているというのは命ではなく貞操的な意味でだろう。


 そして、クレールは俺に火焔が近づいてくるたびに威嚇して近づけさせなかった。

 サクヤやフィルはよくて火焔はダメなのな。

 基準がよくわからない。


「隙があるようなら儂が横からかっさらうゆえ、油断するなよ。クレール」

「わ、わかっている! 貴様などにシン殿を取られてたまるか!」


 そうして火焔とクレールが謎のいがみ合いをしているのを見て「なんだかんだでお前ら仲良いな」と思いつつも、俺たちはウルズの泉を経由して始まりの町に戻った。






 前回の決闘大会と同じ会場にやってきた俺たちは早川先生のもとを訪れた。


「やっときたか。なかなか姿を現さないから君たちを不戦敗にしようか悩んでいたところだぞ」

「すみません」


 時間的にギリギリだったらしい。

 火焔との模擬戦が思いのほか白熱してしまったせいだな。


「では、一之瀬君も八重君も本戦に出場するということでいいな?」

「はい」

「大丈夫……です」

「よし、ならそう手続きしておく」


 しかし大会へ出場することは今でも特に問題ないようで、早川先生は机に置かれた用紙に何かをさらさらと書いて、それを近くにいた他の職員に手渡した。


「これで君たちは本戦出場決定だ。存分に戦ってくるといい」

「ありがとうございます」

「ありがとう……ございます」


 どうやら本戦出場の書類が受理されたようだ。

 なので俺とフィルは早川先生に向けて頭を下げた。


「……もしかして、もう予選の方は終わっていたりしますか?」


 その後、俺は少し気になった予選についてを早川先生に訊ねた。

 すると早川先生はコクリと頷き、俺の問いを肯定する。


「30分前にはすべての予選が滞りなく終了している。本戦出場者のなかで未だ会場に来ていなかったのは君たちだけだ」

「そうでしたか」


 ちょっと心配をかけさせてしまったな。

 本戦出場者が2人も会場入りしていないというのは、これからの進行スケジュールに差し障りがあるかもしれなかった。


 俺たちは再び早川先生に頭を下げ、遅れてきたことを詫びた。


「それはそうと、君たちのコンディションのほうはどうなんだ? ここしばらくは……その……龍王のもとで修業を行っていたらしいが」

「ああ、それはもう万全ですよ」


 早川先生は恐る恐るといった様子で龍王という言葉を口にした。

 実際の龍王は結構気さくだから、そんなビビらなくてもいいんだけどな。


 それに、俺たちのコンディションは聞かれるまでもなく絶好調だ。

 今なら最高のパフォーマンスを発揮できること請け合いだろう。


「そうか。なら今回も優勝する気か?」

「勿論ですよ。俺もフィルも誰かに負けるつもりで戦ったりしません」

「やるからには優勝を……目指します」


 俺とフィルはやる気満々だ。

 半端な奴には負けたりしない。


「優勝か。今回はそれも相当難しいだろうが、私は君たちを応援している。頑張りなさい」


 そして最後に激励の言葉をかけられ、俺たちは早川先生のもとから去った。


 にしても優勝は難しい、か。

 早川先生も言ってくれるな。


 確かに、今回の大会で優勝することの難易度は、前回とは比較にならないだろう。

 俺たちよりも長くアースで戦ってきた猛者がわんさか出場するのだから当然だ。


 それに……この大会にはおそらくアイツも――



「よう、シン、フィル。元気にしてたか」

「ご無沙汰ですわね、2人とも」



 選手控室に足を向けた俺たちは、そこでケンゴとセレスに出会った。


 ああそうだ。

 こいつらだ。


 強い奴を決めるというこういった大会にこいつらが出ないわけがないんだ。


「久しぶり、ケンゴ、セレス。俺たちのほうは元気だ」

「お久しぶり……です」


 俺とフィルはケンゴとセレスに軽く挨拶して微笑を浮かべる。


「『ヴァルハラ』付近から一時的にでもいなくなって平気なのか?」

「大丈夫だろ。前に龍王が出張った一件以来、魔族も完全に沈黙してるし、平和そのものだぜ」

「だからこそ私たちは安心してこの大会に出場できるのですわよ」


 魔族はあれから何のアクションも起こしてないのか。

 それならこいつらがこっちに戻ってきても問題ないだろう。

 いざとなったら現地の地球人≪プレイヤー≫から連絡が入るだろうし、『龍王の宝玉』をまだ持っているなら『ヴァルハラ』までひとっ跳びできるという保険もあるからな。


「というわけで、今回は盛大に暴れさせてもらうぜ」

「私たちの力を存分に見せつけて差し上げましょう」


 今まではアースで戦う機会もあんまりなかったが、この大会でこいつらの実力を余すとこなく見ることができるな。

 どれだけ成長しているのか見させてもらうとしよう。


「今回はお互いライバルっつーことでよろしく頼むぜ。とはいっても俺と戦いたければ決勝まで残らねえとなんだけどよ」

「そうなのか?」

「ええ、ケンゴさんは前大会の優勝者なので決勝シードなんですよ」

「へえ」


 決勝シードか。

 ケンゴが前回優勝者であるということは、以前から俺も知っていた。

 というか、それを知っていたからこそ一般部門のほうには出ようかと考えていた。


 でも、前回優勝者にそんな特典がついていたなんてな。

 俺たちも中高生部門を優勝、準優勝したから、一般部門の本戦シードに入ったわけだけど。


「ちなみに私も本戦へのシード選手に選ばれていますわ」

「そっか。それじゃあトーナメントで当たったらよろしく頼む」


 それにセレスもちゃんと本戦に出場するらしい。

 後衛職とはいえ、セレスの実力は折り紙つきだから、一対一の決闘方式でも強敵であることには違いないだろう。


「てめえらが参戦してくれてて嬉しいぜ。今回の大会は前回の上位入賞者があんまいなくて俺も寂しいと思ってたところだったからよ」

「上位入賞者があまりいない?」

「まあみなさん色々やることがある身でしょうからね。私たちも魔族との一件が落ち着かなければ、大会は辞退しようと思ってましたし」


 なるほどな。

 この大会は俺たちにとってお祭りみたいなものだ。

 だから都合が悪ければ参加しないというのも仕方がない。

 とはいえ、前回優勝者のケンゴと本戦シードが与えられるほどの好成績を残したセレスの二人がいる以上、決して油断はできないだろう。


「……というか、ケンゴ。もしかしてお前も異能制限をくらってるのか?」

「ん? ああ、これか。まあ、そういうことになるな」

「ふぅん」


 この大会で勝ち残る難易度を再確認していた俺は、ケンゴの腕にアビリティジャマーらしきものが巻かれているのを見つけた。


 ケンゴは異能制限アリか。

 まあ未来が見えるなんてものに対抗するのは並大抵の異能じゃ不可能だからな。

 多分大会で異能制限が俺たちに課せられた原因の大半は前大会で優勝したこいつのせいだろう。


「もうかれこれ三日は装着しっぱなしだぜ。だから俺にもこの大会で誰が優勝するか全然わかんねえ」

「それが普通なんだけどな」


 ケンゴにとって未来が見えることはもう日常みたいなものなんだろう。

 異能を使うことにすっかり慣れてしまっているみたいだな。

 俺のほうも抵抗感はだいぶ薄れているから人のことは言えないが。


「とはいっても、最後に勝つのは俺だけどな。たとえてめえらが決勝まで勝ち上がっても、俺がいる限りは準優勝止まりだぜ」

「言ってくれるな、ケンゴ」


 ケンゴの宣戦布告を受けて俺たちの戦意は燃え上がった。


 これだけでかい口を叩いたんだ。

 前に決闘したときよりもさらに強くなっているんだろう。

 しかし、どれほど強かろうと、俺はこいつに勝ってやる。


 俺はケンゴに向けて不敵な笑みを浮かべた。


「決勝で待ってろ、ケンゴ。すぐに俺が勝ち上がってやるからな」

「おう、その意気だ」


 また、俺の態度を見たケンゴもまた口元二ヤリとさせる。

 こうして俺たちは決勝で戦うことを誓いあった。


「……お、どうやら組み合わせが決まったみたいだな」


 そのタイミングで決闘大会本戦のトーナメント表が壁に張り出された。


「ちょっと見に行こうぜ」

「ああ、そうだな」


 そして俺たちはケンゴの誘いを受けて、トーナメント表を見ることにした。






 決闘大会一般部門本戦第一回戦



 第一試合

 セレスVS殺助


 第二試合

 シンVSカタール


 第三試合

 ジンVSヒロ


 第四試合

 フィルVSセツナ


 第五試合

 アギトVSフォックス


 第六試合

 クルミVSKURAUDO


 第七試合

 金ちゃんVSカイト


 第八試合

 ヴォルスVSピー太

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