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同類?

 俺は今、フィルとデートをしていた。


「シンさん……」

「……なんだ?」

「呼んでみただけ……です」

「……そっか」

「はい……ふふっ」

「…………」


 フィルは俺の腕に自分の腕を絡ませて、非常に幸せそうな笑みを浮かべている。

 ただ町の中をこうして2人で歩いてるだけなのにな。






 午前にあった【黒龍団】への勧誘や、キス三連発などの出来事があった後、サクヤたちといくつかのルールを決めた。

 それは俺と彼女たちの接し方による内容だ。


 1つ目。俺はサクヤ、フィル、クレールと平等に接する。

 朝にあったフィルとの1件をサクヤとクレールにしたようなものがそうだな。

 要するに抜け駆けするなってことなのだろう。

 彼女たちが勝手に決めたルールだから真意は知らない。


 2つ目。俺と彼女たちの接触は手を繋いだりハグをする程度に抑え、キスなどは朝ので一旦止めにする。

 このルールは俺が独断で決めたようなものだが、一応彼女たちは受け入れてくれた。

 正直なところ、あのままチュッチュするのが普通になったら、俺はマジで彼女たち3人と同時に付き合うことになりそうだったからだ。 

 別にもうそれでいいんじゃないか、とも思うけれど、今はどうしてもその一歩を踏み出す勇気がない。

 俺もまだそこまで吹っ切れたわけではないのだ。


 3つ目。俺たちがイチャイチャするのはアースに限定する。

 これはクレールが地球に来れないことから、1つ目のルールに反するということでできた。

 サクヤとフィルが俺と地球でイチャイチャするのはずるいって理屈だな。


 こんな感じのルールが俺たちの間で敷かれて、その結果、俺とサクヤがデートをしたならフィルとクレールもデートをしないと不公平だということになり、今俺はフィルとデートをすることになったわけだ。

 ちなみに、明日はクレールとデートをすることになっている。


 違う女の子と日替わりでデートをするみたいでちょっと気が引けるが、まあこれくらいはいいだろう。

 友達と遊びにいくみたいな感覚でいればいいんだからな。


「……でも、俺なんかとデートをしてもあんまり楽しくないんじゃないか?」

「! そんなことないです! オレはシンさんとデートできてすっごく嬉しいです!」

「そ、そうか」


 今のは独り言だったんだが、フィルにすごい勢いで否定されてしまった。

 まあ、俺とデートをする相手が喜んでくれるというなら、俺もこれ以上は何も言うまい。


 しかし……視線がちょっと気になる。

 腕を組みながら歩く俺たちを周りの奴ら――特に地球人≪プレイヤー≫――がジロジロ見ている。

 そこまで年齢が離れてるわけじゃないけど、もしかしたらやっぱりそう思われてんのかな……


「? どうかしましたか?」

「ああ、いや、うーん……」


 俺が眉を顰めていると、フィルが首を傾げながら問いかけてきた。


 彼女はあまり気にしていないのか。

 もしかしたら気にならないだけかもしれないけど、一応言っておこう。


「フィル……今だからぶっちゃけることなんだけどさ……」

「なんですか?」


 俺が頬を掻きながらフィルの目を見ると、彼女はキョトンとした表情でこちらを見返してきた。


「……実のところを言うと、俺がフィルに今まで好きだって言わなかった理由は……周りからロリコン認定されたくなかったからなんだ」

「……え」


 フィルの顔が若干ひきつった。


 それもしょうがないだろう。

 俺は今までずっと彼女の気持ちより世間体を気にしてたんだから。


「軽蔑したか?」

「! いや、そんなことない! 確かにオレはちんちくりんで子どもだし……シンさんが気にするのも当然だと思う!」

「いや、フィルはそこまで子どもじゃないさ」


 俺は世間体を気にしていたが、実際のフィルはれっきとした女の子だ。

 未成熟であると言えばその通りではあるのだけれど、それで彼女とつき合ってはいけないというほど俺も大人ではない。


 フィルは中学生で俺は高校生。

 周りから見れば、どっちも子どもだ。

 かつてケンゴが言っていたように、気にすることではなかったんだ。


「それに……今はもう周りからどう思われても気にしない。フィルのことが好きなのかって聞かれたら俺は正直に好きだって答えるよ」

「シンさん……」


 フィルは俺の言葉を聞くと満面の笑みを浮かべ、腕に込める力をさらに強めた。


「オレも……シンさんのことが大好き……もうずっとドキドキしてるの……わかり……ますよね?」

「ああ……まあ……わかるな」


 さっきからフィルの胸が俺の腕に当たりっぱなしだからな。

 柔らかい感触のその先からトクントクンという心臓の鼓動がひっきりなしに伝わってくる。

 それに同調するかのように、俺の心臓も鼓動がかなり速い。

 サクヤと手をニギニギして感じるこそばゆさと似ているな。


「もうシンさんから離れたくない……傍からシンさんを見ていることしかできなかったあの頃には戻りたくない……」


 そしてフィルはそう言って俺に強い意思のこもった目を向けてきた。


「だから……もしオレたちのことを悪く言う人がいるなら……オレは戦うし、シンさんを守る」

「……そっか」


 なんとも頼もしいな。

 フィルが一緒に戦ってくれるなら百人力だ。

 俺はフィルの頭を軽く撫で、顔に微笑を浮かばせる。


 ……よし!

 こっちにはフィルが付いている!

 もう何を言われてもへっちゃらだ!



「フッ……どうやら≪ビルドエラー≫がロリコンであるという噂は真実だったようだな」

「おい誰がロリコンだぶち殺すぞ」



 俺は突然ロリコンと言われてブチ切れていた。


 誰だ今俺のことをロリコンと言った奴は。

 氷室か? 氷室なのか?


「……なんだ、クロードか」

「なんだとはなんだ……先輩に対する態度じゃないぞ、君」


 俺たちの背後にはクロードといつもの取り巻き4人衆がいた。

 

 氷室ではなかったようだ。

 前に似たようなことがあったから、今回ももしかしてと思ったんだけど。


「……あと、武器をこちらに向けるのは止めてもらえるかな? リトルレディー」

「…………」


 フィルは敵意丸出しでクロードたちにクナイを向けていた。

 ロリコンと言ったことに腹を立てたのだろう。


 だがここは町中だ。

 無暗に武器を出すべきではない。


「フィル、とりあえず武器をしまえ。こいつらは敵じゃないから」

「…………ん」


 俺の言葉を受け、フィルはクナイをスカートの中にしまいこんだ。

 チラリと見えた太ももが艶めかしいな。


「…………」

「…………」


 ……フィルがスカートの先にある太ももを俺に向けてチラチラさせている。


 故意犯か。

 いや、俺が今反応したからそんなことをしているんだろう。

 もしかしてサクヤの影響を受けてないか?

 あとで注意しておこう。


「……それで、俺たちに何の用だよ。大会で当たらなかったから俺とヤりに来たのか?」

「そういうわけじゃあない。ただ君が、サクヤさんとは別の女の子と仲睦まじそうにしていたから声をかけてみたのさ」

「ほ、ほう……」


 それを言われてしまうとぐうの音も出ないな。

 この前までサクヤとつき合ってたのに、今日はフィルとデートしてるんだもんな。

 クロードからすれば「なんじゃそりゃ」って感じだよな。


「……でも、平然と複数の女性をはべらせてるお前にとやかく言われたくはないな」

「ん? なんだい? 嫉妬しているのかな?」

「ちげえよハーレムヤロウ」


 どうやら直接的な言葉で言わないとわからないらしい。

 なので俺はクロードに向かってはっきりと言った。


「サクヤが好きだと言いつつミナも口説いてんじゃねえよ。それにそこの4人がギルドメンバーだからといって、いつも一緒にいるのは変だろ」


 多分こいつは恋愛に恐ろしくルーズなのだろう。

 二股三股は平然とこなすタイプだ。


「べ、別にいいだろ……俺たちは好きでクロードにひっついてんだし……」

「それに……クロードさんは私たちとの時間をきちんと設けてくれますし……」

「1人や2人増えても、こっちに向けられるクロードの愛が減らなきゃ問題はないさ」

「…………ポ」


 お、おう……

 つまりこいつら4人は本当にクロードのハーレムだったということか……

 ハーレムヤロウってのはちょっと冗談交じりのものだったのに、それはあながち間違いではなかったんだな……


「む? なにかな? その眼は?」

「別に……」


 俺はこいつと同類なのだろうか。

 いつも女の子をはべらしているだなんて思ってないけど、周りから見れば俺とこいつのやっていることは大差ないのかもしれない。


 そう考えると無性に腹が立つが、それと同時にもっとこいつを知りたくもなってきた。

 もしかしたら、俺の抱えている悩みはこいつを見ていれば解消できるかもしれないからな。


「なあクロード、フレンド登録していいか?」

「え、ま、まあ……いいけど……君にそんなことを言われるとなんか気持ち悪いな……」


 なので俺はこいつをフレ登録した。

 気持ち悪いとかクソ失礼だが、クロードはオレの要請に応えてくれた。


 こうして俺に新たな友達ができた。


「……あいつを参考にしていいもんなのかねえ」


 クロードたちが去った後、オレはそんなつぶやき声を発した。


 取り巻き4人衆はクロードが女を口説くことを気にしていないようだった。

 それはクロードのつき合い方が上手いからに他ならないだろう。

 だったら俺はあの男を見習うと良いのかもしれない。

 でも、あいつを見習うのはやっぱりちょっと抵抗があるな。

 悩ましい。


「無理しなくてもいい……と思います。シンさんはシンさんだからいい……んですから」

「ありがとな、フィル」


 そんなことを思っていると、フィルが優しくフォローしてくれた。

 また、彼女は俺の腕を引っ張って町の中を再び歩き始める。


「さ、デート再開……しましょう。サクヤさんとは……どこ行ったんですか?」

「ああ……サクヤとは――」


 そして俺たちはデートに戻り、クロードたちと別れたその後を楽しく過ごしたのだった。

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