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二回戦結果発表

 ダークネスカイザーとの決闘を終えた俺は早川先生のもとを訪れていた。


「こちらの管理が行き届かず、すまなかった」

「いえ、それは別にいいですよ」


 俺がさっきまで戦っていた選手は、どうやら本戦から別人に入れ替わっていたらしい。

 早川先生はそのことで俺に頭を下げ、謝罪の言葉を口にしていた。


 とはいえ、俺はその件に関して早川先生たちを責めるようなこともしない。

 事情聴取を受けている本物のダークネスカイザーからしたらたまったものではなかっただろうけど、俺にとってはそこまで問題視するようなことでもないからな。

 俺は無事三回戦に進めたわけだし。


 相手が偽物であったとはいえ、ここで再び試合を行って観客を混乱させないよう、結局俺が勝ち進むことになった。


「で、その入れ替わっていた偽物は捕まったんですか?」

「いや、今はまだ捜索中だ。この場は現在お祭りのような賑わいを見せているからな。素性のしれない人間をその中から探し出すのは困難を極める」

「そうですか」


 まあ、顔も名前もわからない相手を人ごみの中からどう探せっていう話だよな。

 もう見つけるのはほぼ不可能だろう。


 しかし、あいつはどういう理由でダークネスカイザーに成り代わっていたんだろうか。

 試合開始前に少し話した限りでは俺と戦いたそうにしてたから、そのためだけにこんなことをしでかした?


 いや、でもそれはおかしいだろう。

 あいつはダークネスカイザーの偽物だったわけだが、実力は間違いなく本物だった。

 なら正規の手段を取ってこの決闘大会に出場すれば、いずれ俺と当たることだってできたはず。

 だが、あいつはそれをしなかった。


 素性を知られたくないから?

 もしかして、あいつは中高生ではないとかか?

 あるいは、俺たちとは違う別口の――


「それはそうと一之瀬君。君は先ほどの決闘でアビリティジャマーを壊したな?」

「う……」


 俺がダークネスカイザーの偽物の正体について思考をめぐらせていると、早川先生が痛いところをついてきた。


「事情を鑑みるに、あれは仕方がなかったのだろうと私も理解している。だからそう畏まらなくてもいい」

「……そうですか」


 けれど早川先生は、別にアビリティジャマーを壊したことに関してで怒っているわけでもないようだった。

 一応あれは借り物だから、もしかしたら怒られるのかもしれないと思ってたんだけど。


「……しかし、あれはちょっとやそっとで壊れるような代物ではないのだがな。君は一体どれだけの力を込めたんだ?」

「それは……わかりませんね。あの時は俺も必死でしたから」


 アビリティジャマーが壊れるほど異能の力を引き出したというわけなのだろうけど、俺自身はどれだけの力を出したのか、自覚がなかったりする。

 俺の異能は、ほぼオートで発動してしまう危機察知型の面も強くあるからしょうがない。


「とりあえず、予備のアビリティジャマーを君に渡しておく。もう壊さないよう気をつけるように」

「はい」


 俺は早川先生の注意にコクリと頭を頷かせてその場を去った。


 ようは俺が危ないと思わなければいい話なのだろう。

 それが残り二回の決闘で可能かどうかは、まあやってみないとわからない。

 ベスト4に残った奴らはどいつも危なげなく勝てるという相手ではないからな。

 危機察知が発動した時点で俺の負けは濃厚なわけだし、あまり気にし過ぎてもしょうがない。

 俺にできるのは油断せずに戦うことだけだ。






 決闘大会本戦第二回戦


 第一試合

 ○シンVS●ダークネスカイザー


 第二試合

 ●フローズVS○ミナ


 第三試合

 ●ああああVS○フィル


 第四試合

 ○ねこにゃんVS●マイ





 決闘大会二回戦は第一試合以外、特に目立った問題もなく終了した。

 その結果、三回戦に進むことが決定したのは俺、ミナ、フィル、ねこにゃんの四人ということになった。


 ミナと氷室は良い勝負だった。

 異能制限をかけられたミナは若干動きが悪いように見えたものの、それでも氷室と互角の戦いをしていた。


 別に氷室が弱いわけではなかったのだが、今回はミナの大剣が氷室を吹き飛ばして場外負けにしたという形だ。

 だが、あのまま戦っていたらどちらが勝っていたかわからなかっただろう。


 そして、フィルはああああに対して圧勝した。

 フィルは3歳年上のああああから一切ダメージを受けずに完封したのだ。


 元々、回避重視の戦闘スタイルであるわけだから、こうなることも可能性として十分あったわけだが、この結果に観客は大きな歓声を上げた。

 その盛り上がり方から考えて、中高生で六強とか呼ばれている中にフィルも入るかも知れないな。


 また、マイはねこにゃんと対決して負けてしまった。

 ねこにゃんは可愛らしいキャラネームをしているわりにホント強いな。

 マイのプレイヤースキルも一流と言って良いはずなのに。


「あーっ! くやしいいいいっ! なんであそこでスキル振っちゃったんだろう私いいいっ!」

「ドンマイ」

「僕の見た感じではあれは向こうが一枚上手だったね。あの人ホント強いよ」


 ねこにゃんに負けて悔しがっているマイに俺たちは慰めの言葉をかける。


 実際のところ、マイの戦いはねこにゃんの読み勝ちなところがあった。

 マイが隙を見計らって大技のスキルを発動し、ねこにゃんはそれを読んでのカウンターを決めたという決着だった。

 つまり、ねこにゃんはあえて隙を見せたのだろう。

 でないとあれだけ綺麗なカウンターは無理だ。


 なので、結果的にねこにゃんがマイより強かったということになる。

 まあ、次戦ったらマイもより警戒心を強めるだろうから、今回と同じ結果にはならないだろうけど。


「よしっ! 大会終わったら特訓だっ! 今日は寝るまでPvPの練習だよっ! ユミ!」

「えっ、僕もそれに付き合うの?」

「当たり前でしょっ! ユミは予選落ちなんだから、もっと強くならないとっ!」

「僕は援護役なんだから負けても別にいいんだけどなぁ……」


 マイは負けた悔しさをバネにして、今よりもっと強くなるだろう。

 彼女に付き合わされるユミはご愁傷様だ。


「それで……だ。遂に俺たちが戦うことになったようだな、ミナ」

「どうやらそのようね」


 マイとユミから視線を横に移し、俺はミナの方を向く。

 彼女は澄ました顔で俺を見ており、その表情からは静かな闘争心のみが伝わってくるようだった。


「あなたはサクヤと……その……優勝するって約束をしてるわけだけど、それで私が手を抜くだなんてことはないから、覚悟しなさい」

「ああ、それでいい」


 手を抜かれたら俺は怒っていたところだ。

 俺はミナが全力を出そうが出すまいが勝つつもりでいる。

 けれど、ここで手を抜かれたらスッキリと優勝をすることもできない。


「俺に戦いを挑むからには全力でこい。真っ向からぶっ倒してやるから」

「ぶっ倒すって……まあいいんだけど。でもそれって女の子に言っていい台詞じゃないからね?」

「わ、わかってるっつの。ただし決闘をするときに限る、って話だ」

「わかってるならいいわ」


 失礼な奴だな。

 戦闘になったら容赦なんてしないが、普段の俺は女の子に暴力を振るうようなDV男じゃないぞ。

 一回戦におけるカンナとの戦い方がミナにこんな疑念を持たしてしまったのだろうか。

 だったらちゃんとこの場で宣言しないといけないな。


「俺は戦闘以外で女の子に手を上げることはしないからな。だからサクヤにもそんなことしたりしないからな」

「あ、でも私、シンくんにだったら殴られても結構平気かも」

「サクヤ……そういうことは言わなくていいから……」


 せっかく俺が非暴力宣言をしているというのに、サクヤの方がこれでは話にならない。

 サクヤがアブノーマルな性癖に目覚めないよう気をつけないといけないな。


 ある日突然「私を殴って! シンくん!」とか言うようになったら流石の俺でも引く。

 SかMかで言うなら自分はS寄りだと思うけど、女を殴って喜ぶようなどSではないのだ。


「なんだったら私がシンくんを殴る側でも構わないよ?」

「いやいやいやいや……そういうことでもないからな……俺がどMってわけでもないからな……」


 サクヤの発言はいつものことながら酷いな。

 俺でなかったらドン引きされているところだ。


「あなたたちはまたそんなアホなこと言って……」

「そんなストレートにアホ言うなよ、ミナ」


 俺たちの様子を見てミナが呆れたというような声を漏らしていた。


 今のやり取りはミナたちにとって頭の痛い内容だっただろう。

 二人っきりの時はいいが、こういう人目のあるところでは自重するように心がけよう。

 できないかもだけど。


「……とにかくだ。戦うときは正々堂々、全力でこい、ミナ」

「ええ、そうさせてもらうわ」


 そうして俺たちは不敵な笑みを交わしあったのだった。


 ミナとの決闘か。

 あいつと戦う機会がくるなんて夢にも思わなかったけど、やるからには成長のほどを全力で確かめさせてもらおう。


「2人とも頑張ってね!」

「素直にシンの方を応援しときなさい、サクヤ。じゃないとあなたの応援で私が勝っちゃうかもしれないわよ?」


 サクヤが俺たち2人を応援するスタンスを取ろうとしていたところをミナが止めた。


 ミナも言うようになったじゃないか。

 ついこの前までこういった戦いに関しては素人同然だったはずなのに、今ではこんな挑発すら様になるだけの実力を持ち合わせるまでに成長している。


 案外ミナには戦闘の才能があったんだろうな。

 そんな才能があってもミナは嬉しくないと思うかもしれないけど。


「よし、いくか」


 そんなことを思いながら、俺はミナと一緒に闘技フィールドの方へと歩きだしたのだった。

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