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一回戦結果発表

「フッフッフッ、どうやら一回戦を突破したようだな? シン君」

「まあな」


 俺とサクヤが休憩室に入ると、そこへクロードがやってきた。

 クロードは仲間の1人がやられたというのに余裕の笑みを浮かべている。


「……あんまり驚いてないんだな」

「? 何がかな?」

「いや、俺が一回戦を突破したことをだよ。ついさっきのお前たちは俺が勝ち上がるだなんて不可能だ、みたいなこと言ってただろ」

「そのことか……まあ、それはただ単にリサーチ不足だったがゆえの誤算さ。君の戦闘に関する情報はどういうわけかあまり集まらないんだよ」

「……ふーん」


 どうやらこいつらは、口ではああ言ったものの、俺が勝つこともそれなりに想定していたみたいだな。

 じゃないとこんなに落ち着いていられるものか。


 また、俺の戦闘情報は不足ぎみであるらしい。

 これについては、おそらく早川先生辺りが裏で手を回しているのだろう。


「それに、カンナ程度が敗れたところで事態が大きく変わったわけでもありませんしね」


 俺がクロードの発言を分析していると、奥に控えていたアキがそう言いながら前に出てきた。

 すると更に紅とナナシも俺の前に立ち、クロード同様余裕に満ちた表情で口を開く。


「カンナなど所詮私たち『フォーカード』の中では最弱です」

「ただ単に硬いってだけだし、『フォーカード』になれたのが不思議なくらい弱っちい奴だったからねえ」

「回復職ごときにやられるなんて【Noah's Ark】の面汚し……フフ」

「…………」


 ……なんかすごい言っちゃいけないことを言ってないかこいつら。


 半世紀くらい前に作られた伝説の台詞に似てるぞ。

 そんなこと言ってると負けフラグが立つぞ。


 というか最後のナナシは完璧に故意犯だろ。

 何笑ってんだよ。俺もちょっと笑いそうになっちゃったじゃねえか。


 しかも『フォーカード』ってなんだよ。

 いきなりそんな括りを出されても反応できねえよ。


 くそっ、いろいろ突っ込みどころが多すぎる。


「……ゴホン。あー、そういうわけだから、カンナに勝ったというだけで僕たちに勝った気にならないように。いいね?」

「ああ……わかった」


 とりあえず俺はこの場を閉めようとしてきたクロードと同調して話を終わらせた。

 そうしてクロードたちは休憩室の奥へと戻り、決闘大会一回戦第二試合に出るアキだけは闘技フィールドの方へと足を向ける。


「では次の試合を手早く終わらせましょう。先ほど得た≪ビルドエラー≫の新情報をもとにして戦術を練り直す必要が出てきましたので」


 最後にアキが言い残したその言葉は非常に傲慢なもののように感じられた。

 アキは俺同様、一回戦や二回戦などただの通過点程度にしか考えていないのだろう。


「なんか感じ悪いね」


 つい先ほどまで黙りこくっていたサクヤが口を開いた。

 俺の態度も傍から見ればあんな感じなのかもしれないけど、サクヤからしたら別物なんだろう。


「それだけ自信があるってことなんだろ」


 クロードたちの言動は、おそらくはよほど実力に自信があるがゆえのものなのだろう。

 だとしたら二回戦目は俺の方もより気合を入れて挑む必要がある。

 まあ、それはこれから行われる試合を見て判断しよう。


「のんびり休んでもいられないな。俺たちも観戦席の方に行こう」

「うん、わかった」


 そう思った俺は休憩室ではなく、サクヤと一緒に観客席の方へと行くことにしたのだった。






「やったじゃない、シン」

「一回戦突破おめでとっ!」

「流石は僕たちの頼れるタンクだね」


 観客席に行くとそこでミナ、マイ、ユミが俺に声をかけてきた。


「ありがとうな、みんな。……それでミナとマイはなんでこっちにいるんだ?」


 俺はお礼の言葉を軽く言った後にミナとマイの方へと目を向ける。


 元々休憩室に彼女たちの姿が見えなかったから多分こっちにいるんじゃないかとは思ってたけど、本当にいたとはな。

 一応俺は一回戦を終えた身だからいいとしても、彼女たちはこれから戦いを控えている選手なのだから休憩室に居なくてもいいのだろうか。


「いいんじゃない? どうせ休憩室に居ても落ち着かないんだし」

「ここでみんなの戦いを見ながら自分の番が来るのを待つ方が気楽だよねっ」


 そういう考えもアリか。

 俺も今の休憩室にはクロードたちがいるから観客席に来たっていうような面もあるし。

 本人が一番くつろげる場所で待機していた方が精神衛生上よろしい。


「一応カンナって人は私たちも知ってるんだけど、よくあの人に勝てたわね」

「確か【頑丈】っていう異能の持ち主だったよねっ? 私、あの先輩が素手でモンスターを倒してるとこ見てびっくりしたことがあるよっ」

「籠手とか使うより自分の手で殴った方が強いっていうようなことも前に言ったね」


 ……どうやら俺がさっき戦ったカンナはなかなかクレイジーなファイターだったようだ。

 モンスターを素手で倒すとか、地球だったら熊を素手で倒すくらいとんでもないことだぞ。

 俺ですらモンスターとはそんな条件で戦いたくないっていうのに。

 つくづく異能が常識外であることを痛感させられるな。

 まあカンナにはもう勝ったからどうでもいいんだけど。


「なんだ、君たちも観戦席にいたのかい?」

「氷室か」


 と、そこへ更に氷室もやってきた。


 そういえば氷室も休憩室にはいなかったな。

 こいつも観客席の方にいたのか。


「一之瀬、まずは一回戦を勝ち進んだことを褒めておこう……おめでとう」

「褒めておこうとか言わなくていいっつの……ありがとうよ」


 氷室がやや上から目線でおめでとうと言ってきたので俺も負けじと軽くそれに言い返した。


「それで? お前は俺たちに何の用で話しかけてきたんだ?」

「用がなければ話しかけないみたいな言い方をしなくてもいいだろう……強いて言うならさっきの言葉を君に言うことが俺の用だ」

「そっか」

「……前々から思っていたんだけど、君は俺に対してすごい態度悪いな」

「今更だろそんなのは」


 俺が氷室を毛嫌いしているのは今に始まったことじゃない。

 どうも俺は氷室だったりクロードだったりのようなキザッたらしい奴が苦手なんだよな。


「同じ寮部屋にもう2ヵ月暮らしてるんだし、そろそろ仲良くなってもいいと思うんだけどね」

「いや、それはない」

「俺も一之瀬と仲良くするだなんて願い下げだな」


 たとえ寮で一緒に暮らしていても、俺たちはこれまで通りの関係を貫いている。

 まあ、これは半分意地のようなものではあるけど。


「そんなことよりも一之瀬。君とはこのまま順当にいけば三回戦目で当たることができるな。その時は覚悟しておけよ」

「へえ。もう一回戦二回戦を突破したときのことを考えてるのか」


 トーナメントを俺と氷室が勝ち進めば三回戦で対決することになる。

 氷室はその時の話を持ち出して俺に宣戦布告を行ってきた。


「シンに当たる前に私と当たるから、氷室君はそこで敗退よ」


 と、そこへミナが氷室と同じく強気な姿勢を取った。


 2人ともかなり強気だな。

 優勝しますと言っている俺も人のことは言えないんだけど。


 ……しかしミナと氷室が当たるにしても、それにはまず2人とも一回戦を突破しなければならない。

 氷室と一回戦で当たるナツメという選手はギルドに加入していない3年生1組の選手らしく、強力な異能を持つことでそこそこ有名な生徒であるらしい。

 そしてミナと当たるクロードは【Noah's Ark】の副団長。こちらは2年1組で、中高生の中でもトップクラスの実力を持っているとのことだ。


 氷室とミナがこれから戦う相手はどちらも強敵だ。

 特にミナと当たるクロードの方は俺と当たるまで絶対に負けないという態度だった。

 ミナも十分強くなっているが、もしかしたらクロードに負けてしまうんじゃないかと不安になる。


 まあ、ミナがあいつに負けたら俺が仇をとってやるけど。


「……そろそろ試合が始まるみたいだよ」

「おっと……それじゃあまずそっちを見るか」


 ユミの声を聞いた俺たちは観客席へと座って、第二試合の観戦を行うことにした。


 【Noah's Ark】に所属する≪知将≫アキの実力、とくと拝見させてもらおうじゃないか。






 ……俺はその後行われた第二試合以降の決闘を全て観戦した。


 第一回戦の結果は波乱に満ちたものだった。

 トーナメント表の形で書かれた結果発表用紙が係員の人の手によって壁に張られる。


 俺はいまだに信じられない気持ちでいっぱいだ。

 試合の結果はすでに知っているのだが、ここで再びその事実を確認するべく目を用紙へと向けた。


 先ほど大言壮語を言い放っていたクロードたちは……






 決闘大会本戦第一回戦


 第一試合

 ○シンVS●カンナ


 第二試合

 ●アキVS○ダークネスカイザー


 第三試合

 ●ナツメVS○フローズ


 第四試合

 ●クロードVS○ミナ


 第五試合

 ●ガッツVS○ああああ


 第六試合

 ●ナナシVS○フィル


 第七試合

 ○ねこにゃんVS●ナイトウ


 第八試合

 ○マイVS●紅






 全員負けてた。

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