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決闘大会中高生部門開始

 地球人主催決闘大会中高生部門は、一回の予選と四回の本戦を勝ち残ることで優勝となる。


 本戦はトーナメント方式で16人が一対一の決闘を行う。

 また、予選は本戦出場者16人を決めるために、68人の参加者が4ブロックに分かれ、17人同時に戦うというものだ。


 俺は今、決闘大会の予選Aブロックの出場選手として、コロッセオ中心部にある四角い闘技フィールドに立っている。

 この予選で勝ち残った4人が本戦へ出場する資格を得るのだが、敗北条件は『敵攻撃の被弾×10』であるのでなかなか大変だと思っていた。

 集団戦であるゆえに目の前の敵以外にも注意して動かないと、10発被弾なんてあっという間だからな。


「…………」


 しかし、そんな俺の想像は外れ、ちょっと肩透かしを食らっていた。

 なぜなら、俺以外のAブロック参加者は俺と戦うことを避けているようだからだ。


 闘技フィールドの片隅にいる俺のところに誰も寄ってこない。

 これが戦いの場でなければ泣いてしまいそうなハブられっぷりだ。

 だが、これは周りの連中から俺が倒しにくい敵であると考えられているからこそであろうということはわかっているので、涙目になる必要もない。


 ≪ビルドエラー≫という名に畏怖を覚えたのかまではわからないが、俺がいくつかのオンラインゲームでそれなりに名の通ったタンクであることや、中高生の中で飛びぬけたレベルであることは、それなりに知られているはずだ。

 回復職であるとはいえ、タンクとしてのプレイヤースキルに秀でた奴に攻撃をヒットさせることは、なかなか難しい。

 それに、レベルが高いということで、俺を「何か得体のしれないモノ」とでも見ているのだろう。


 敵に回すには不確定要素が多すぎる。

 なら、他の連中を潰して回った方が安全だ、という結論に達したということか。


 まあそれならそれで俺は本戦出場が決定するわけだし、体力も温存できるので悪くない。

 でもちょっと物足りないな。


「……おっと」


 と、そう思っていた俺のところに火の玉が飛んできた。

 流れ弾か何かまではわからないけど、俺はそれを左手に持った死霊の大盾で軽く防ごうとする。


 が、火の玉は大盾に当たる前に完全消滅した。

 魔法を無効化する『精霊王の祝福』が効いたんだろう。


「ひっ……」

「…………」


 どうやら今俺の方に火の玉がやってきたのは故意であったようだ。

 中学生らしき魔術師風男子生徒がこちらを見て肩を震わせている。


 多分、俺が火の魔法を完全に無効化したのを見て、「マズイ」と判断したのだろう。

 だったら攻撃してこなければよかったのに。


 俺がそんなことを思いながらため息をついていると、その中学生男子生徒は走ってその場から離脱を開始した。


 ……しかしその生徒は途中で戦士風男子生徒にハンマーで殴られ、その場に倒れこんだ。

 それを見た審判役の教師が近づいていき、倒れた生徒に対して回復魔法をかけた後に背負ってフィールド外に運んでいく。


 どうやら今の攻撃で気絶して戦闘続行不可能になったみたいだな。

 俺にばかり気を取られているからこうなるんだ。


 というか、ふと思い直してみると、これって何気にかなり野蛮な大会だな。

 学校も何考えてんだろう。


「はぁ……暇だな」


 そして俺は再びため息をつき、近くで行われているバトルをぼーっと眺め続ける。

 こんな具合で決闘大会予選は大した問題もなく終わり、俺は本戦へと駒を進めた。


「フッ、どうやらお互い無事に本戦へ上がれたようだね」

「……まあな」


 本戦への出場が決定した俺たちに向けて、観戦していた数百人規模の地球人とアース人が喝采を浴びせてくる。

 そんな中で一人の男、クロードが俺に話しかけてきた。


 予選では最後の4人になるまで戦うわけだが、俺が戦っていた(あるいは眺めていた)ブロックの中にはクロードもいた。

 こいつは剣士職のアタッカーで、一本の片手剣を用いた鮮やかな戦いをしていた。

 人に喧嘩を売ってくるだけあって、それなりに強いらしい。


 俺が見ていた中では、こいつが一番多くの参加者を負かしていた。

 こいつは片手剣で素早くかつ正確に相手の手や腕、足を軽く切りつけて、ヒットを稼いでいたのだ。


 手数で勝つってタイプのプレイヤーなんだろう。

 動きの速さから見て、多分かなりのステータスポイントをAGIに振っている。

 もしかしたらDEXもか。


 今回、俺に強いられたハンデのことを考えると、ちょっと不利だな。

 パワータイプなら封殺できただろうけど、スピードタイプなら数発は攻撃が当たることを覚悟して挑んだほうがよさそうだ。


「しかし……君はさっきまで全然戦わなかったな。予選ではそれでいいのかもしれないが、本戦ではちゃんと戦ってくれよ? じゃないと張り合いがない」

「ああ、わかってる」


 本戦では俺もちゃんと戦うさ。

 予選はみんな俺を避けてたから、手を出しにくかったってだけだし。


「本戦では俺の戦い方を見せてやる」

「そうかい。それじゃあ僕も精々楽しませてもらうとしよう」


 クロードはキザッたらしい笑みを浮かべ、クルッと後ろを向いて休憩エリアの方へと歩いていった。






 そうして俺たちが戦ったAブロックの後に、Bブロック、Cブロック、Dブロックの予選もつつがなく終了し、これで16人の本戦へ出場する選手が決まった。


 元々こうなる可能性はそれなりにあったものの、俺は自分以外の15人を見て少し驚いた。

 なぜならその15人の選手の中には知り合いが結構含まれていたからだ。


「どう? 私たちも強くなったもんでしょ?」

「伊達に毎日モンスターと戦ってるわけじゃないよっ!」

「僕は負けちゃったけどね」


 ユミは負けてしまったが、ミナとマイは本戦に残ることができていた。

 あとついでに氷室もだ。


 それに中学生もそれなりに参加していたのだが、その中で唯一……フィルも本戦への出場が決まった。

 彼女も何気に参加してたんだな。


 つまり、俺の知り合いで本戦出場者が4人もいることになる。

 これはなかなかすごいと言えるのではないだろうか。


 まあ、それ以外にはクロードたち5人も全員本戦へ出場することが決まっていたりする。

 あいつらも高校生3大ギルドのうちの1つ、【Noah's Ark】の主要メンバーなだけあって、なかなかやるようだな。


「【黒龍団】のメンバーが全員出場しないっていうから本戦にも残りやすいかなって思ったんだけど、なかなか上手くいかないね……」

「ドンマイ、ユミ」


 しかし、そんななかで負けてしまったユミは結構落ち込んでいる様子だ。

 俺たちのなかでは、元々大会に出場していないサクヤ以外は全員予選を勝ち抜いたってことだからな。

 へこむ気持ちはわからなくもない。


 まあユミは援護役だし、負けてしまっても仕方がないという面もある。

 そして勝ち残ったミナは剣士職でマイは武道家職、氷室も騎士職で3人ともこういう大会では有利な職だ。


 ちなみに3年生ギルドの【黒龍団】はこの決闘大会には出場していないらしい。

 一応3年生も何人か出場しているみたいだけど、それは全員ギルドに参加していない連中なのだとか。

 どうして【黒龍団】が参加しないのかについてまでは俺も知らない。


「本戦に出場したみんなは僕の分も頑張ってね」

「ああ、任せろ」


 なんにせよ、この大会で誰が敵になろうと俺は優勝してみせる。

 俺はそう言った意思を込めてユミに頷き声をあげた。


「……お、トーナメント表が張られたみたいだぞ」


 そんなタイミングで、職員の人が壁に張り紙をして立ち去る姿を目撃した。

 どうやらこれから始まる本戦の組み合わせが決定したみたいだ。


 なので俺たちはその張り紙に近づいて、書かれた内容を読んでいく。






 決闘大会本戦第一回戦



 第一試合

 シンVSカンナ


 第二試合

 アキVSダークネスカイザー


 第三試合

 ナツメVSフローズ


 第四試合

 クロードVSミナ


 第五試合

 ガッツVSああああ


 第六試合

 ナナシVSフィル


 第七試合

 ねこにゃんVSナイトウ


 第八試合

 マイVS紅






 俺は第一試合か。

 しかも相手はクロードの取り巻きにいた≪鉄腕≫とか呼ばれてる俺女だ。

 まあ、女相手だとちょっとやりづらいところではあるけど、今回は容赦なんてしないって決めてるからな。

 油断せずに戦おう。


 第四試合はミナとクロードが当たるのか。

 ミナには勝ってほしいから、そっちを応援しよう。

 クロードが負けても俺は一向に構わん。


 マイやフィルも、クロードの取り巻き連中と対戦するみたいだ。

 フィルの方は俺同様に厳しいハンデを背負っているだろうから、もしかしたら厳しい戦いになるかもしれないな。


 あと一部ふざけたキャラネームの奴がいるが、それは放っておこう。

 多分そいつらはクロクロゲーム配信初日にキャラネームを決定して変更不可能になってしまった可哀想な奴らなのだろうからな。

 軽くスルーしてやるのが人情というものだ。


 「中二病乙」とか「お前キャラネームつけるのめんどくさがっただろ」とか「男なのにねこにゃん(笑)」とか思ってはいけない。



 こうして俺は本戦出場者のトーナメント表を確認した後に再び闘技フィールドの方へと向かった。


 俺は第一試合の選手だからな。

 ここでクロードたちに目に物を見せてやる。

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