15年目のはじまり
初投稿です。生暖かい目で見守ってください。
「あの日の約束を覚えておいでですか? 陛下。」
わたくしは陛下をまっすぐに見つめてきりだした。
陛下と公式の場以外で話をするのはどのくらいぶりだろうか? 昔はこうではなかったはずなのに_。
「わたくしが、あの子を、王太子を生んだあの日の約束です。」
もう個人的な場でわたくしを見てくださることはなくなってしまった陛下。愛し愛される関係ではなくとも温かな家族になることができるのではないかと信じていたあの頃___。
「いいだろう。あの日の約束のどうりお前の望みをひとつだけ、なんでも叶えてやろう。それで?いったい、今更何の願いを言うのだ? 私も暇ではないのだ。さっさと言え。」
昔はとても優しい人だった。いえ、今だってわたくし以外の人にはとても優しいのだと知っている。けれど、いつからかわたくしには冷たい視線と言葉しか向けては下さらなくなってしまった。
あの子がわたくしを必要としなくなるまで、あの子が立派に成人するまでは、と耐えてきた。けれどあの子は、わたくしの息子はもう立派に成人してくれた。わたくしもそろそろ自らの願いを叶えてもいいだろうか? 陛下としても願ったり叶ったりの提案のはずだ。
「離縁して欲しいのです。そして、わたくしを降嫁させては下さいませんか? これから先の人生を共に生きたいと昔から願う方がいるのです。
陛下は、あの時おっしゃいましたよね? 王太子を生めばそれでよいと、わたくしに望むのはそれだけなのだと。」
そう、陛下は言われたのだ。わたくしに求めるのはそれだけだと、だからこそわたくしは願いを叶えるための準備をしてきた。あとは、陛下とあの方々の許可をいただくだけ。
「陛下? お返事を聞かせていただいても?」
「返事?何の返事だ? すまないな、どうも疲れているようで理解ができなかった。もう一度言ってもらえるか。」
「はい、何度でも申し上げます。陛下、王太子も立派に育ち、先月 無事成人を迎えました。そのため、よい機会ですし、王妃であるわたくしと離縁をしていただきたくお願いに参りました。」
陛下の許可を戴き、すぐにでもあの方に会いに行きたい。王妃という責任ある立場のわたくしがその位をやすやすと返上することは本来してはいけないことだという自覚はある。しかし、わたくしはできる限りの根回しはした。今度こそ、わたくしの幼いころからの夢を叶えてみせる_____。