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お隣は魔王家  作者: kaji
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第8話「魔王マウンドに立つ」


 球技大会当日。曇り空とはなったが雨は降っていないので予定通りに球技大会をすることになった。今日のために俺は可憐に俺が持っている全ての野球技術を教えた。秘策も伝授しているので今年こそは優勝できるはずだ。


「あんたの言った通りに一日千回素振りしたから手のひらがぼろぼろよ」

「そ。そうか……それはご苦労だったな」


そう言って美咲は俺に豆だらけのぼろぼろの手を見せてきた。正直本当に千回も素振りしてくるとは思わなかった。そんなことを言ったらただですまないだろうから黙っておいた。


「私なんてバッティングセンター出入り禁止になったんですからね。危ないからって」

「そ。それは大変だった……ふふ。な。はっははは」

「な。何がそんなに可笑しいんですか? 礼音君が言ったんじゃないですか。バッティングセンターでセーフティバントの練習をするようにって」

「まさか。本当にやるなんて思わねって」

「ひどいですよ。命がけだったんですからね。どうしてもお隣りに入ってしまうのでボールを避けるために必死だったんですから」

「きっとその経験が今回の球技大会に活きる筈だ。期待してるぞ!」


俺は恵梨の肩を叩いて気合を入れてやった。思ったよりも面白いことになっていたらしい。失敗した。こっそり覗いて動画を取っておけばよかった。


「礼音君。只今退院してきました。ごふごふ」

「おお。一月ぶりだな。元気だったか」

「元気という程ではありませんが何か体がふわふわしますよ」

「それってやば……」

「きっと体の調子がいいんだよ。海渡。今日は期待しているからな」

「美咲。余計なことを言うなよ」

「余計って絶対やばいってあれ。何かゆらゆらしてるし」

「可憐。可憐も体調大丈夫か」

「うん。今日も学校に来る前に壁とキャッチボールしてきたしばっちりだよ」


どうやら一名を除いて体の調子は万全ようだった。念の為に海渡には栄養ドリンクとウコンを飲ませてバナナを食べさせた。


 球技大会の開会が宣言され種目ごとに散らばった。俺たちは野球なので第一グランドに集合した。主審の先生から簡単なルールの説明がされてすぐに試合が開始された。ルールは普通の野球のルールと同じだが試合時間を少なくするために6回で終了。3回コールド、5回コールド、盗塁は禁止、女子をメンバーに4人いれること、ピッチャーは女子にすることという特別ルールが存在している。

 今回は可憐のために優勝したいのだが俺には他にも理由がある。俺の視線は1人の男に注がれていた。色黒の大男。その名は野村憲(のむらけん)。野球部のエースで全国区の選手だ。俺は去年の球技大会の決勝。どうしても奴に負けたくなかったので彼の足をスライディングでへし折ってやったが彼は不屈の精神でプレーを続けた。右足一本でホームランを打たれた時にはさすがの俺も負けを覚悟した。結果は彼の活躍で負けてしまった。


 第1試合は1年3組。ここは海渡のために10点差以上をつけて3回コールドといきたい所だ。じゃんけんで俺たちが後攻めになった。ちなみにスターティングメンバーは1番美咲 センター、2番恵梨 ショート、3番礼音 キャッチャー、4番海渡 ファースト、5番高橋 サード、6番木村 ライト、7番中村 レフト、8番田村 セカンド、9番可憐 ピッチャーだ。外野を美咲に任せてショートには足の早い恵梨を入れた。海渡は体調を考慮してあまり動きの少ないファーストに入れた。


「プレイボール!」


主審の試合開始の合図がかかり試合が開始された。あまり表情に出ない可憐だが緊張しているように見える。


「可憐! 自信持って投げろ。俺が全部受け止める!」


可憐はゆっくり2、3回頷いてセットポジションに入る。そこから可憐はやまなりのボールを俺に向かって投げた。


「ストライク!」


素手で取れそうなくらいのスローボールだが何とか俺のキャッチャーミットまで届いてストライクが取れた。バッターもあまりの遅さに思わず見送ってしまったようだ。


「いいぞ! 可憐その調子だ」

「可憐さん。がんがん投げていきましょう」

「可憐君。僕のことは気にしないで投げてください」

「可憐っ! 外野! 外野! に打たせろ。私がばっちりキャッチしてやる!」


みんなから声援を受けて可憐は少し緊張が解けてきたようだ。顔に1球目を投げる前よりも余裕が出てきた。続けて可憐は2球目を投げる。やまなりのボールだがこれもストライクゾーンに収まりそうだ。バッターは狙いを絞って思い切り振り切った。バットがボールを捕らえたたがぼてぼてのピッチャーゴロ。


「可憐! 海渡に投げろ。大丈夫だ。ゆっくり投げろ」


可憐は慌てながらも海渡がいるファーストに投げる。1アウト。続いて2番もピッチャーゴロ。3番もピッチャーゴロで三者凡退で1回の表は終了した。どうやら俺が可憐に教えた秘策がうまくいっているようだ。


「すごいな。可憐。これって三者凡退ってやつだろ」

「えへへ。まあね」


外野から戻ってきた美咲に声をかけられてうれしそうにする可憐。


「練習の成果だよな。可憐」

「うん!」


元気よく胸をはる可憐。


「いったいどんな魔法を使ったんですか。僕にはただのやまなりのボールにしかみえませんでしたが」

「それは秘密だ……むふふ」

「秘密です」

「教えてくださいよ。可憐さん。礼音君」


みんな教えて欲しがっていたが俺は秘密にすることにした。種を明かすと俺は可憐にナックルを教えた。人差し指と小指で挟んで投げるナックルはバッターの手元で微妙に変化する。その微妙な変化がバッターに芯を食わせない。よっぽどボールを見極めないとぼてぼてのゴロになるという寸法だ。ただ恐らく2巡目か3巡目くらいしか通用しないだろうから早めに試合を決めてしまいたい。

 そんなことを考えているといつの間にか俺にまで打順が回ってきた。ノーアウト1,2塁。俺は無難に来たボールを叩きつけて高いバウンドのゴロを打った。うまくショートとサードの間にボールが行ったようでヒットになった。

 ノーアウト満塁。ここで4番の海渡が登場だ。海渡は左バッターボックスに入り低い体勢で構える。右手でバットを持ち左手はバットの上の方を支えるように持つ。海渡オリジナルの居合い抜き打法だ。

 ピッチャーは異質な構えに戸惑っていたが投げる。そのボールを海渡は右手一本で捕らえる。俺の目にはバットの軌道が全く見えなかった。ボールも外野を軽々と超えて外野の先にある校舎の壁にぶち当たった。主審が腕を回した。満塁ホームランだ。


「よっしゃ! さすが海渡だ。だてに病気にかかってないな」


海渡は苦しそうにベースを回ってホームベースを何とか踏んで4点獲得。このまま順調に得点を獲得して10点取った所で得点を取ることを止めて3回コールドで勝利した。ちなみに海渡は2ホーマーで可憐はノーヒットノーランを達成した。


「可憐。よかったぞ。この調子で次の頼む」

「指が大変なことになったよ」

「僕も体が大変なことに……ごふごふ」

「お前は次の試合まで寝ていろ。大丈夫か。可憐。マッサージしてやるからな」


さすがに可憐の小さな手では無理な投球なので無理がでてくるようだ。次の試合は美咲と恵梨とで投球リレーでなんとかごまかそう。俺は可憐の指をマッサージしながら考えていた。


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