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お隣は魔王家  作者: kaji
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第5話「麺道」

俺は今までに無いほど考えていた。可憐が泣いたその日決意してから俺はずっと考えている。可憐のイメージがどうすれば良くなるのか。俺は授業など関係なく考えていた。


「……」


気がつくと授業が終わっている。

気がつくと家にいる。

気がつくと寝ている。

俺はそれをずっと繰り返していた。


「最近。礼音おかしくない?」

「きっとあの日だよ」

「あの日か。じゃあ仕方がないね」


俺の悪口を言われようとも気にならない。それよりも考えなければいけないことがあるからだ。俺はいったいどうしたらいいんだ。

ある日、何を勘違いしたのか恵梨が俺を勇気づけようとして俺にラーメンをおごるという。俺にとっては罰ゲームでしか無いがあまりにもしつこいので行くことにした。


「新作ラーメンができたんですよ」

「……」


恵梨は恐ろしい単語を吐露した。それよりも何とかしなくてはあれから結構な時間が経った。俺は今日まで何をしていたのだろう。ラーメンなど食べている暇はない。


「はい。お待ちどうさまです。めしあがれです」

「……」


俺の前にはラーメンのどんぶりが置かれたのだがそのどんぶりの中にはスープが無いのだ。代わりにチクワくらいの太さのぶっとい乾麺が乗っていた。


「何の真似だ……」

「いいから食べて見てくださいよ。絶対損はさせません」


損というか人間として大事なものを失う恐れがあるが仕方が無いのでその乾麺を齧ってみた。齧ると麺から味が出てくる。これは味噌だ。紛れもない。るい~だの味噌味だ。


「驚きましたか? スープを麺に練りこんであるんです。名づけて齧るラーメンです」

「齧る……ラーメン」

「そうです。齧るラーメンです。これがるい~だの新メニュー。自信作ですよ。これが成功したら行く行くはコンビニで売ることにします。そうすれば朝の定番メニューになるはずです。これで家もウッハウハです」

「ほう……」


俺が可憐のことで頭を悩ませているときにこいつはこんなくだらないことを考えていたのか。ラーメンの神が許そうとも俺は許さねえ。俺は頭に来たので麺をへし折ってやった。


「そんな未来なんて来てほしくない!」

「ああ! 私の齧るラーメンが!?」

「貴様。俺の娘のラーメンに何しやがる!」


いつも温厚で口数が少ない恵梨の親父が切れた。のそのそと包丁を持って厨房から出てくる。いつも厨房の奥にいるので分からなかったが何てガタイのいい親父だ。MPは無さそうだが相当HPが高そうだ。元聖職者の癖になんという筋肉だ。さすがの俺もびびってしまった。


「表に出ろ! お前に麺道を叩き込んでやる」

「パパ。止めてください。とんこつ味にしなかった私が悪かったんです」

「ああ。その前に水をくれないか。喉が乾いた」

「待ってろ。すぐ持ってくる」

「すまん。恵梨」


俺は親父が水を持ってくるその隙をついて食い逃げすることにした。後ろから親父の怒鳴り声が聞こえたが俺は後ろを振り返らないように加速した。この時俺は鍛えて置いて良かったと思った。何とか逃げ切ったがもう自分が何をしたいのか分からなくなった。

 次の日の授業中。いつものように上の空で授業を受けているとふいにものすごいアイデアが降りてきた。アイデアが降りてくると言うのはこういうことをいうのかも知れない。俺は思わず立ち上がって叫んだ。


「思いついたぞ!!」

「礼音。授業中だぞ。座れ。それと目障りだ。消えろ。そして塵となれ」


俺は先生を無視して驚いて目を丸くしている可憐に言った。


「可憐。お前に話がある」

「礼音。嫌だ。こんな。みんながいる前で」

「そんなこと関係あるか。俺は今可憐に言いたいんだ」

「礼音君。抜け駆けはいけませんよ。ごほごほ」


何故か海渡が参戦してきた。まさか俺よりもいいアイデアを持っているというのか。海渡が参戦すると次々とクラスメイトが立ち上がった。


「礼音。俺が先に言う」

「いや。俺だ」

「私よ」

「いや。其れがしが」

「いや。拙者が」

「いや。吾輩が」


このままでは俺よりも先に言われてしまう。俺は先手を取って先に発言した。


「可憐! お前クラス委員長になれ」

「え。それ……なの」


クラスが沈黙した。それ以外何があると言うんだ。

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