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お隣は魔王家  作者: kaji
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第10話「嫌な予感」


 望まなくても次の日の朝はやってくる。俺は昔、朝の鍛錬があるので朝が来るのが嫌だった。寝てしまうとすぐに次の日の朝がやってくるので、寝ないでおこうとしたこともある。結局は寝てしまうので意味はなかったのだけれど……。

いつものように可憐を迎えて行って一緒に登校した。

「おし。昼飯だ!」

 なんとか午前中の授業を右から左へとやりすごして、お昼になった。俺はこのために学校に来ていると言っても過言ではないだろう。おそらくほとんどの学校の生徒が昼飯のために学校に来ているはずだ。まず間違いない。

 俺と可憐と恵梨と美咲と海渡で近くの机を繋げて、昼飯の席を作る。だいたい俺たちは弁当派だ。購買や食堂ももちろんあるが、騒がしいので、昼飯は自分の教室で落ち着いて食べることにしている。

 恵梨はラーメン弁当。土木作業員がよく使っているような保温ができるポットのような弁当に、自分の家のスープを入れて来ている。弁当にラーメンなんてどうかと思うが、本人がいいのだから別にいいのだろう。

「食べます?」

「食べませんよ!!」

 美咲の弁当もこれまた恵梨の弁当と形は同じポット型の弁当だ。しかし、女の子としてそんな弁当を持ってきていいのだろうか。

「聞いてよ。礼音。この弁当箱はね。ただの弁当箱じゃないのよ。何とお米と水を入れておくだけでお米を炊いてくれる画期的な商品なのよ」

「先に言っておくが俺は買わんぞ」

「まあまあ。最後まで聞いてよ。一万の所、今なら六千九百八十円。どう? 欲しくなったでしょ!」

「全然欲しくなんね」

「何でよ。タッパーが二個ついて来るんだよ」

「海渡は欲しいよね? いいから予約した方がいいよ」

「僕は、お米あまり好きじゃないですからいいですよ」

「これだから不健康人間は困るのよね。日本人なら米を食べなさい。このままだとあんたいつまでもそのままよ。悪いことは言わないから、この弁当箱を買いなさい」

 美咲は海渡に無理やり、弁当箱を買わせようとしていた。海渡の不健康ぶりは米がどうとかいう問題では無い気がする。

 美咲は放っておいて可憐の弁当は野菜が百パーセントのベジタブル弁当。殆どが可憐の畑から作られたもので、俺の大嫌いなトマトもいっぱい入っていた。その野菜を可憐はドレッシングも何も使わずに食べていた。可憐によると本当においしい野菜は、野菜そのものに味がついているので、ドレッシングなど必要無いらしい。

「……」

「野菜うまいか。可憐」

「うん。おいしいよ。特にトマトがおいしい。礼音も食べる?」

「いや……俺はいいよ」

「こんなにおいしいのに……」

 俺がなぜトマトが嫌いかと言うと昔、可憐に無理やり毎日のように、トマトを食べさせられてその反動で、トマトが嫌いになってしまったからだ。可憐も初めて作ったのがミニトマトでそのおいしさを俺に知ってもらいたかったようで、会うたびにミニトマトを持ってきた。俺もせっかく可憐が作ったトマトを捨てる訳には行かず、短い期間で一生分のミニトマトを食べた。もう俺はトマトを見るだけで拒否反応を起こしてしまう、体になってしまっていた。

「海渡はおかゆかよ。味気ないな」

「僕としては点滴よりはましだと思います」

「そりゃそうだが。本当に病人みたいだな」

「それに僕には『ごはんかもしれませんよ?』がありますし」

 海渡は俺に海苔の佃煮を見せて、ニッコリとした。『ごはんかもしれません?』は海渡が唯一、口にいれられるもので一番の好物だ。

「あんただってあいかわらず。肉ばっかりね」

「トッピング全部乗せ弁当だ。どうだ。食うか?」

「見ているだけで気持ち悪い。なんなのそれ。やめてよ。引くわー」

「気持ち悪いとは失礼だな」

 俺は肉が好きなのでお金がある時は、ベーコン、チキンかつ、トンカツ、ヒレかつ、豚しゃぶ、ハンバーグ、チキン南蛮、すき焼き、からあげ、ウィンナー、トッピング全部のせ弁当を持ってきている。どうやって弁当に詰めているかは企業秘密だ。

「せっかくだからおかず交換しようよ。私のご飯と礼音のからあげもらい」

「こら。なんでご飯とからあげを交換しなければならないんだ。おい。食うな」

「仕方がありませんね。私の『ごはんかもしれませんよ?』を差し上げましょう。それではベーコンをいただきます」

「私はお肉、食べられないから、トマトあげるね。代わりにハンバーグの付け合せのキャベツをもらうね」

「いらん。トマトはいらんぞ」

「恵梨はうちで作った自家製のメンマをあげますよ。代わりにすき焼きもらいますね。わーお。すき焼きラーメンになりましたよ」

 みんな勝手に俺のおかずを持っていく。おかげで俺の全部乗せ弁当の迫力が減退してしまった。


 午後の授業中、可憐が体調を悪くした。可憐は昔から定期的に体調が悪くなる。俺は保健室まで付き添ってベッドに寝かせた。俺のじいさんに聞いた話では可憐は放っておくと魔力が停滞するそうで、定期的に魔力を発散させないと可憐の体を蝕でいくらしい。俺はじいさんが処方した魔力を拡散させる薬を可憐に飲ませることにした。

「ごめんね。礼音……いつも迷惑かけて」

「いいから気にするなって。これ飲めば落ち着くから」

 可憐に薬を飲ませた。これで落ち着くかと思ったら可憐が急に苦しみだした。

「うっうう。私を乗っ取らないで……」

「可憐。どうした! 可憐!」

「忌まわしき血の持ち主め。去れ」

 急に可憐の赤い瞳が輝きだすと、俺は何かの力によって弾き飛ばされて、壁に吹き飛ばされた。

「私を縛るものよ。ただではおかない。覚悟しておけ……うっううう」

俺はその言葉を失いそうな意識の狭間で聞いた。それを最後に俺は記憶を失った。


 起きると俺は保健室の床に寝ていた。すっかりあたりは暗くなっていた。いつの間にかに放課後になっていたらしい。

「俺。どうしたんだっけ。確か吹き飛ばされて……気絶したのか」

 可憐を見ると、可憐はベッドで気持よさそうに寝ていた。俺は起こすのも悪いのでおぶって家まで帰った。可憐はその日からしばらく学校を休んだ。


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