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原初からの呪い

白の陣に走った亀裂が、音を立てて広がっていく。


パキ……パキッパキッ


氷がヒビ割れるのと同時に、低い咆哮のような声が聞こえた。


アルヴェインが叫ぶ


「全員、下がってください!」


出てきた呪いはまるで“生き物”のようにこちらに向いた。


レイの灯している光が黒に侵食されていく。


空気が薄くなったように息苦しい


レイとルシナス、アルヴェインは各自、身体の表面を薄い魔力で覆う。


リアは中にいるユースティアに守られていた。


騎士たちは魔力を持たない、騎士の一人が膝をついた。


「っ……!」


汗が流れ落ち、呼吸が荒くなる。


別の騎士も顔を歪めた。


「頭が痛い、イライラしてくる……」


ルシアンが舌打ちする。


「これ、精神に直接来るのかよ」


アルヴェインは冷静に分析する。


「恐らく……呪いそのものです、人の負の感情を増幅させている」


呪いが水がグラスから溢れるように流れだしていく。


騎士の一人が、突然隣の騎士の胸ぐらを掴み怒鳴りはじめた。


「お前、さっきから偉そうなんだよ!」


「何……!?お前なんかずっとリア様を見てるだけで何もしてないじゃ無いか!」


「ええ……」


リアは急に名前を出され戸惑う。


騎士達が互いに罵り合い険悪な空気になったのを、レイが一喝する。


「やめろ!」


騎士たちの動きが止まった。


呪いの中心が笑うかのように小刻みに揺れると、リアは胸の中がざわついた。


気持ちを落ち着かせようと、目を閉じ息を吸いゆっくりと吐き出すが、淀んだ空気が身体の中に入り少し気分が悪くなる。


真っ直ぐと呪いを見つめると、その奥に“誰か”がいる気がした。


その“誰か”からは、怒り、支配、執着、強烈な渇望を感じた。


リアは、無意識に呟いた。


「……苦しいの?」


全員がリアを見る。


ルシナスが眉をひそめ不信な顔をする。


「は?」


呪いの動きがぴたりと止まった。


リアは続ける。


「怒ってるんじゃなくて、終わりが分からなくなっていたんだね…」


アルヴェインが、静かに目を見開く。


「まさか…呪いの元が……?」


流れ出していた呪いがゆっくりと集まり、次第に人型へとなっていく。


黒く長い影


王冠のような輪郭


誰かが息を呑み言った。


「……王?」


影は、リアの方を向いた。


目の部分は窪んでいるように見えるが顔は曖昧だった。


低く、空間を震わせるような響きわたる声。


『――何故、王が民を捨てる』


レイの表情が変わる。


『何故、国より一人を選ぼうとする』


黒い影が、レイを見た。


『王は国そのもの』


『王が揺らげば、国が滅ぶ』


リアは、その言葉を理解した。


この呪いは、ただの災厄じゃない。


国を乱す可能性を、排除しようとしている。


愛や感情は全て王を弱くするものと判断して。


レイが一歩前へ出て問う。


「……だから、国を壊してでも止めるのか?」


黒い影が揺れる。


『民を守るのが王、常に正しく非ねばならない』


『王が間違えたら国を一から正さねば』


その瞬間、リアの中でユースティアの感情が強く反応する。


そんな一方的な考えで、愛した人と永遠に離れ離れになってしまったという様々な感情が溢れだす。


「違う!!」


リアは、怒りや悲しみ、寂しさが一気に押し寄せ気づけば叫んでいた。


「そんなやり方、間違ってる!」


「国を守る為に、人を苦しめていいわけない!」


白いさらさらとした雪が、リアの周囲に舞いおちる。


ユースティアとリアの感情、力が一つに混ざり合っていく。


黒い影がわずかに動揺した。


そして、リアの脳裏に痛みと同時に一つの映像が走る。


千二百年前


闇へ手を伸ばす初代の王


血に染まった王座


国を、一つに支配する為に


リアは頭を押さえた。


「……っ!」


アルヴェインが即座に気づき聞こえをかけてきた。


「如何しました?」


リアは震える声で呟いた。


「最初の王が…自ら呪いに手を……」


一同その場に凍りついた。

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