最終章 第六話 のぶなが-2
6話 のぶなが 2
重たい、実に重たいな、面と言う奴は。
「どうだ、のぶなが、剣道の面は」
俺たちは防具を作るため、目を付けたのが剣道の面だった。
「すげーなこりゃ、14本のこれ、
邪魔かと思ったけど、意外と視野は悪くねぇ」
もうこのまんまでいいんじゃないか?
「じゃあ叩いていいか?」
カレーラは竹刀を手に持つ。
「後ろからやってくれ、優しくな」
何か起きてからでは遅い。
ゴンッという音がした。ヒリヒリと痛みが走る。
「ん~このまんまってわけにはいかないな。
だが材質を変えて後ろを伸ばせば実用的だな」
さっそくメーカに問い合わせて特注で作れるかどうか聞いてみた。キジが。
しょくにん用の防具、ぜひやってみたいですよ帰ってきた。
「なあこれさ、もし安全が確立されれば少し世界が変わるな」
「しょくにん大運動会とかできるかもな」
とクモは笑った。
防具の開発は着々と進んだ。費用は30万ほどで受け持ってもらえた。
そして出来上がった試作品、もちろん俺が被る。
「どうだ、これならかなり耐えられそうだ」
カーボン製と強化プラスチックの二つのパターンを作った。
強めに手で叩いても全然大丈夫そうだ。
「さすがに銃弾は防げないな…だが丸腰よりよほどいい」
俺はカレーラに竹刀を渡した。
「いいのかのぶなが、加減しないぜ?」
「ああ、やってくれ」
歯を食いしばる。目をつむる。するとバチーンという音と衝撃が来た。
「いってぇぇぇ!」
硬い分衝撃が分散されないらしい。
「だ、だがこれならかなり頭部を守れる。銃が相手じゃない限り問題ない」
面は傷もついてなければ割れてもいない。これは大成功だ。
「キジ、両方とも包丁と斧で強度実験してくれ」
キジは奥の部屋に二つを持って行った。
戻ってきたとき、キジの手に持っている面はボロボロだった。
「のぶながさん、流石に斧は無理でしたが、かなり実用的な強度ですね」
他にもいろいろやってくれたようだ。
俺は右手で持っているほうを指す。
「キジ、さっそく量産の連絡をしてくれ、金が無いって伝えてくれよ」
「了解です。強化プラのほうにしておきますね」
そして2年の歳月を経て俺たちの手元には40個の防具が揃った。
揃ったのはそれだけではない。
「なあのぶなが…これって本物か?」
クモが意外と重そうなリアクションを取り手に持つ。
「ああ、グロックだ。1丁だけ手に入れた」
活旗党で得た情報が役に立つとは思わなかった。
「じゃ、じゃあ本当に持つんだな?武器を」
カレーラは周りを確認した。
「ああ、だがそれには1丁だけでは足りない。もっとたくさん必要だ」
強襲用の防具はある。あとは武器だけだ。
息をのむ4人。キジが口に出した。
「のぶながさん、何か勝算があるんですか?」
ついに聞かれてしまった。
この質問が俺の強行回路をショートさせ、静止機能を殺した。
「ある。だがこれには非常にリスクが付きまとう」
俺が考えたプランを話す。
「新宿の外しょく本部の武器弾薬庫から盗む」
「おいおい正気かよ」
クモは驚く。
「そりゃやべーってのぶなが」
カレーラは俺の肩をゆする。
「これも法律に頼ることにはなるが、初犯だ。
また、人間は手が出せないはずだ」
なんとも無謀な作戦だとはわかっている。
だが引けない。引けなくなってしまった。
「足りないんだ。圧倒的に資金が」
かなり奮発した。みんなのお金を使ってしまった。
それでようやく買える1丁。
「俺もカレーラもクモも外しょくに顔が割れている。
外から来た奴に頼む必要がある」
恐ろしいな、こんな時だけ頭が回る。
だがそれでも思考は進み、口が先行する。
「でも、のぶながさん、具体的な作戦はあるんですか」
キジは止めるわけではなく勝算があるのか知りたいらしい。
「ある。それにはまずこのグロックと、これ、昔ロージーが使っていた外しょくのバッチ、
これがあれば比較的怪しまれずに近づける」
外しょくに制服が無いのが幸いだ。
バッチをつけていれば誰も怪しまない。
ましてはしょくにんとわかれば警戒心が緩むだろう。
「なるほど…その適役が僕ってわけですね、のぶながさん」
キジはいつにもなく真剣な顔をしている。
「いや、そんなつもりはないんだが、よくよく考えればお前にしか頼めない」
俺はなんて最低な選択を取ってしまったんだ。俺が行けば全て解決なのに。
「いいですよのぶながさん、一回だけなら。僕にしかできないと思います」
「すまないキジ、本当はお前には愛知のほうの活動をやってもらいたいんだ」
こんな阿漕な手段ばかり活旗党で、だがもう取り返しがつかない。
「僕が愛知の仲間を統治する?」
「そうだ、お前に任せようと思っていた。だからこの作戦が終ったらあっちに帰るといい」
ずるいタイミングだ。そんなのはわかっている。
「わかりました…愛知に帰るかはあとで考えるとして、ぼくがやりましょう」
「いいかキジ、失敗しても俺に脅された。ただそれを貫け」
こんな時にかけてあげられる言葉はこれしかない。
「そうさせていただきます。捕まったら恨みますからね。将軍」
お前のその表情を見て俺は安堵した。
なんてことない、いつものやり取りだ。
俺は散々しょくにんであることを否定した。
散々デルタの誘いを断って、施設からも外しょくからも遠のいた。
だが、最後に頼るのがこれとは、情けない。
「なあデルタ、お前ならどうする」
「ど、どうしたんですかのぶながさん?」
「あ、いやすまん。考え事をしていた。
キジ、ここまでついてきてくれてありがとう」
キジは一言だけと俺に声を掛けた。
「のぶながさん、どうしたんですか?何か焦っていますよ。
疲れてるんじゃないですか?」
すぐに否定した。
「いや、そんなことは無い。大丈夫だ」
深呼吸する。
「カレーラ、クモ、キジ、そこに座って聞いてくれ」
4人でテーブルに座る。
「作戦決行は外しょくの棚卸だ。
棚卸に来たと言えば入れる可能性が高い」
棚卸の日程はカレーラが教えてくれた。
「なるほど、棚卸を狙うのか。デルタから色々な話を聞いておいてよかった」
クモはカレンダーを見る。
「キジは棚卸を装い倉庫に近づけ、
そしてポケットにトランシーバーを忍ばせろ」
俺はトランシーバーを渡す。
電波の送受信強度はかなり強力だ。
「結構可能なら何もせずに、無理だと判断したら無言で押せ」
「将軍、わかりました」
「何か異変が起きたら即中止、俺が喋る。いいか即中止だ」
静かにうなずくキジ。
「では検討を祈る。それまでは普段通り過ごしてくれ」
俺はキジにロージーのバッチを渡した。
すまないなロージー、君に返すのはもう少し後になりそうだ。
キジ
作戦決行日、私は冷静だった。
のぶながさんは近くで待機している。
「あれが武器・弾薬庫か」
鉄の扉で施錠された部屋を前にした。
横にいる警備員に「棚卸です」と伝えた。
「ああ、二人でって言ってたな、先に一人だけ来ているぞ」
警備員が扉を開ける。
これは中止すべきか…
いや入ってから決めてもいい。
私は何事もなく部屋に入ると扉が閉じた。
心臓の音が聞こえる。高揚している。
僕は今、悪いことをしている。
「たしか左の部屋が武器で、右の部屋が弾薬だったな」
僕は恐る恐る扉を開けた。
誰もいなかった。
これはチャンスだ。
「弾薬のことを考えると10丁が限界だ」
リュックに手を伸ばしグロックとベレッタを詰めた。
さて、ここまでは怖いほど順調だ。
僕は弾薬庫の前で立ち止まった。
1,2,3 と声が聞こえる。
この先に人がいる。
この銃を使うことが無いように祈る。
腹に仕込ませた銃をなでる。
僕は扉を開けた。
「おお、助っ人か、ようやく来たか」
大丈夫怪しまれていない。
「こっちはまだかかりそうだ、
先に武器のほうを頼む」
男が振り返る。
「ん?君はしょくにんか」
怪しまれたかもしれない。
男が近づいてくる。
「あれ?それ、どこでみたっけ…
あ、昔のロージーの持っていたバッチと同じだ…」
ロージーを知っている!?
「おい、お前誰だ?」
一瞬無線が鳴った。
心臓の鼓動ですでに目の前の男の声が聞こえない。
心拍を落ち着かせようと僕はそっとお腹をさすった。




