最終章 第五話 のぶなが-1
5話 のぶなが-1
あいつは今元気にやっているだろうか。
しょくにん開放隊なる組織を結成して早3年。
あいつと別れて早1年、あいつはもう答えにたどり着いたころだろうか。
「のぶながさん、
しょくにんを雇ってくれそうなところが2か所も増えました」
仕事が早いな、キジは。
「ありがとうキジ。今度俺も視察に行く」
しょくにんを積極的に雇ってくれる企業は少ない。
しょくにんだけの国を作るなんて言って、
結局人間の世話になっている。
「では、私は地下コンビニのレジ打ちの仕事に行ってきます」
キジは出ていった。
開放隊のシフトを組むクモに話しかけた。
「なあクモ、この生活、お前はどう思う?」
クモはタイピングを止め振り向く。
「間違いなく言えるのは、
外しょくで保護されていた時よりは、
人間として生きている実感がある」
彼はただ と言い席を立つ。
「主に経済面で思い知った。打開する策がわからない」
俺たちは人間に比べれば少食だ。
施設で育ったから大人数で暮らすことには何一つ抵抗が無い。
ただ、それでも豊かにはなれない。
「なあのぶなが」
カレーラは俺の横に座る。
「最近施設に帰りたいと言うしょくにんも出てきた。
外しょくに行くものもいる、
だがお前の夢を待ち望んでいる者もいるんだ」
カレーラの言葉が重くのしかかる。
「そうだな…いつまでもこの生活は成り立たないことぐらいわかっているさ」
じりじりと資産が減る。
雇ってくれても安月給であり結局は人間に依存していることになる。
「デルタが前に言っていたっけ、
ユートピアはすでにあるんだって」
ユートピア…俺の行動が正しいのかわからなくなってきた。
「クモ、カレーラ、防衛力が足りないと思わないか?」
二人は顔を見合わせて、防衛力?と言う。
「ちょっと耳を貸せ」
二人は耳を押さえる。
「い、いやそういうことじゃねえ」
俺は二人に小さな声で話す。
一応説得するだけの材料は何個かそろえた。
「人間はしょくにんを殺せない。施設の人間ともなると猶更だ。
だが、人間は俺たちの弱点をみんな知っている」
クモとカレーラは息をのんだ。
それでと言う。
「無知、無力、だから人間に舐められ、安い金でこき使われる」
みんな理解していることだろう。
カレーラが口を開く。
「それはわかった。一矢報いる方法なんかあるのか?」
あると俺は言う。
「まずは頭部を守る防具を作ろう。こっちは何とかなると思う」
クモは、「それだけじゃ防衛にはならない」と言う。
守りが強くても、数で圧されたら無理だ。
「武器も持つ、そうなれば簡単には攻めてくることはないだろう」
クモはうーんとゆっくり頷いた。
「のぶなが、肝心の武器はなにを使うんだ」
俺は手で合図する。
入手ルートは当然知っているが、非常に高額だ。
「なあでもそれってリスク高くないか?」
カレーラは これはまずいだろと合図する。
こんな事を考えていいのか、そんなことはわかっている。
なりふり構ってられないんだ。
「まずはとにかく金が必要だ。今まで以上に色んな所に顔を出して、
まっとうな仕事と賃金をもらえるようにしないとな」
俺が作ったしょくにん開放隊、ただの吹き溜まりなんて言わせない。
デルタ、お前は今何をしてるんだ。お前の知恵が欲しい。
お前と一緒に世界を作りたい。
俺がこの3年でたどり着いた気持ちだ。
「ただ、あいつにだけは頼れない、頼めない。」
「カレーラ、クモ、今回のことをみんなを話す。纏めよう」
ほかの仲間も説得出きるよう伝え方を練った。
「みんな、聞いてくれ」
この大広間に40人ほどのしょくにんがあつまった。
「俺たちは、自ら人間として生きるためにここに集まったとおもう」
何人かがうなずく。
「俺たちの弱点ってなんだと思う?誰か答えてくれ」
一人のしょくにんが手を挙げた。
「頭部が弱点だ」
「その通り、物理的な弱点であることは間違いない。
開放隊は自己防衛力が弱い。
他にはあるか」
最後列にいるキジがそろりと手を上げる。
「のぶながさん、知識…でしょうか」
「ああその通りだキジ。
人間と比べると限定的な知識しかない。他には」
集まった者同士ひそひそと話をするが、
困った顔をしている。
潮時だ。
「答えだ。立場が弱い。圧倒的に」
キジは「立場?」と口を開いた。
「防衛力、知識、その他一般常識、俺たちはこの社会で暮らすには圧倒的に弱い立場だ。
それを法の制度が守ってくれている。なんとも悔しいが事実だ」
場のしょくにん達が俺の話を聞く姿がよく見える。
この光景に鼓舞される。
「だが無力ではない。補うだけの計画を思いついた。
ここまで垂れ流した時間を考えると、皆にはほんと申し訳ない」
カレーラは「気にするな」となだめてくれた。
「まず一つ、これは企業からたくさん仕事をもらって、
トライアンドエラーで学ぶしかない」
集団生活を送っている分、
これは現実的に培われていくだろう。
「そして二つ目、知識の面では一応当てがある。
デルタからここを紹介してもらった人はいるか?」
10人ほど手を挙げた。
「未完成だが、あいつから資料を貰った者がいる。
これを読み解けば俺たちの貴重な知識源になる」
こればっかりはあいつの頼みになってしまうが、
手に入れてしまったものは活用させてもらうぜ。
「そして三つ目の防衛力。
これには物理的行使が必要だ。具体的にわかるものは」
キジが手を挙げた。
「頭部を守る防具の開発購入費用、
圧倒的に資金が不足していますね」
キジ、お前は本当に優秀だ。
「さすが我が作戦参謀、お前にはぜひ会わせたい奴がいる。
そのためにも労働だ」
キジとは愛知で出会った。
デルタにも劣らない非常に秀才な人材だ。
「のぶながさん」と慕ってくれている。
隊をもっと大きくしたら、
愛知のほうはこいつに任せたい。
「目的を集約させると、俺たちが今すべきことは労働だ。
民間企業に雇ってもらいどんどん組織を大きくする必要がある」
他の地方で一緒に活動した仲間にも、
一度手伝ってもらう必要がある。
まずはここで俺たちの役割を確立させる。
時間はかかりそうだ。
「というわけですまないが、
防具を買うためにみんな働いてくれ!解散!」
俺ももっと仕事をもらいに行かないとな。
「キジ、ちょっといいか」
俺はこいつには計画の裏まで話すことにした。
「なるほど、表では開放隊を大きく強固にしつつ、
防衛力を飛躍的に高めると…」
キジには否定されるだろう。
だが、キジの頭脳が欲しい。
「そうなると銃火器は必須ですね…莫大な資金が必要だ。
のぶながさん、これは一歩間違えば危うい」
改めて言われて血の気が引く。だが、
「わかっている。だが、あれは俺たちにとってあまりにも都合がいい」
「のぶながさん、判断するのは早いです。
でも当面は資金調達に注力しましょう」
「ああ、すまない。よろしく頼む、頑張ろう」
俺たちは働き口を増やしながら、
資金をためていく日々を繰り返した。




