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最終章 新人類しょくにん 第一話 ロージー


第4章 新人類 -しょくにん-


最終章 第1話 ロージー


あたしがあの人、のぶながの事を危ういと感じたのは、

彼がしょくにんだけの国を作りたいと言い始めた時だった。


元々彼は後から活旗党に参加することになったが、

行く先々で家出したしょくにん達を引き入れた。


そんな姿を見た時、あたしの本当のやりたい事がわからなくなったんだ。


デルタが言い放った、

「人間の命をつなぐ輪の一部になりたい」

あたしの心にぽっかり空いた穴を埋めたのは。

このことかもしれない。


本心からそう思えた。

そして、彼はあたしが持っていない何かを埋めてくれる。

そう確信してからは彼しか見ていない。



「あたしロージーは、あなたが欲しいわ。デルタ」


ソファーでうたた寝する彼の姿を見つめる。

でも、「あなたの目にはあたしは映らないのよね」


一瞬でいい、写してもらいたい。

今日はサラもユキもいない。そんな一心から彼を盗み食いした。

ごめんね、サラ。でもあなただけずるいもん。


こんな事してしまった。あとから罪悪感がこみ上げる。

ごめんね、デルタ。


「さてと、今日はあたしが当番だ」

そして皆の分の夜ご飯を作ることにした。



「ねえサラ、あたしは本当にここにいていいの?」

胸の内を明けることにした。


「今さらどうしたのよ?らしくないわ」

「らしく…あたしらしさってなに?」


勢いで施設から出て、勢いで外しょくになって、

勢いで活旗党に入って、勢いで居座りついてしまった。


「本当にあたしは勝手だなって…」

「確かにそうかも知れないけど、

今はちゃんと社会人としてやっているじゃない


再び外しょくにいれてもらって、奉仕活動に参加することにった。

私は彼が言った、与える幸福感、これを初めて感じた。

いや、認知したんだ。


「あたし邪魔だよね…」

そう、サラとデルタからしたら邪魔者でも何者でもない。


「そんなことないわ、

私もまたあなたと暮らせて本当に嬉しいし毎日楽しいわ。それに」


彼女の一言で救われた。それは間違いない。

「デルタは理解者が増えて嬉しいと喜んでるじゃない」


でも…とあたしは下を向く。

「あたし、何をすべきかわからないの」

「ロージー、その答えがわかるまでここにいていいわよ」


彼女は人差し指を立てた。

「でもね、一つ条件があって、ちゃんと自分の意思でやることを決めて頂戴」


「うん、まだしばらく一緒にいさせてもらうと思う」

よしよしと、あたしの頭を撫でて、サラは夕飯を片付けた。


ただ漠然と一緒にいるだけで、なにがしたい。これがしたい。

というのは正直なかった。


「そうよね、あたしのやりたいこと…」

今はデルタの考えを知りたい。

一番最初に浮かんできたことはこれだ。


明日はデルタに色んな話を聞いてみようと思い床に入った。



「おはよデルタ」

食事当番の彼の肩をポンと叩いた。


「ロージー、いつもより早いな」

まあね、ワクワクして寝れなかったのよ。なんて悟らせないわ。


「今日は土曜日だけどどこかいくの?」

「今日はな、招待されているんだ。演奏会に」


演奏会?そんなこと言っていたかしら。


「お前も来るか?ロージー」

当たり前でしょと返事をして、今日着ていく服と、つけるコサージュを選んだ。



そしてデルタに連れて行かれるがままたどり着いた先は。

「え、地下公園でやるの?演奏会」


「そうだ。公園の演奏会だ。ほら、来たぞ」

歩いてきたのは二人。小学生の双子の姉妹、スズとネネだ。


「え、後援会ってあの二人の?」

「そうだ、一生懸命練習したそうだ、俺も生演奏なんて初めてだ」


あの二人は同じエリアに住む佐々木さん家の一卵性双子の姉妹だ。

今日は真っ赤な服と黒いスカート姿だ。二人とも。


「お、スズはリコーダーで、ネネは鍵盤ハーモニカなのね」


二人はお辞儀をしてジャングルジムの一番下に腰を掛け、

演奏を始めた。


コード進行で曲をしっかり形作る鍵盤ハーモニカ。

そしてリードで世界観を広げるリコーダー。


たくさん練習したんだろう。お見事だ!


演奏が終わるとあたしたちは拍手で練習の成果を評価した。

「二人とも、上手くなったな。感動したよ」


「デルーすごいっしょ私たちの演奏!」/「ロージーねえもびっくりっしょ!」


いつも二人は息がぴったり。

「あたしは練習していたのも知らなかったわ!よかったよ!」


そのあとも数曲のお披露目をしてもらった。



「ロージー、不思議だよなあの二人」

二人が帰った後もあたし達はベンチに座って休んでいた。


「不思議って?」

何かそう思うところがあったかしら?


「あの二人いつも同じ服を着ているだろ?あれは偶然なんだって。

着る服が被るらしい」

「二人とも着たい服が同じということね」


生命の誕生を知った時も驚いたけど、

双子という物が存在するなんてもっとびっくりだった。


「でも、音楽に関しては違うんだ。あの二人」

違う?と聞く。


「ネネは、強く歪む鍵盤ハーモニカの音色が好きだという」

「でもスズは、リコーダーの柔らかい音色が好きなんだって」


ふ~ん、同じ遺伝子を持ち、

同じ物を見て食べているのになんで違うのだろうか。


「デルタとのぶながみたいね?」

同じ部屋に住み別々の道を歩んだ二人のようだ。


「あいつ今頃どこで何をしているのかしらね」

どうやってしょくにんの国を作るのか、

具体的な事を聞く前に話から降りてしまった。


横のほうでぶつぶつと

「ハーモニカがネネで、リコーダーがスズで…」

「ってちょっとデルタ!聞いている?」

「え、あぁすまない。考え事していた。なんだっけ?」


全く、でもこんな所も好き。それはホントだ。


「そういえばロージー、前のバッチはどうしたんだ?」

再び外しょくになったときには別のバッチが渡された。


「あれ?どうしたんだっけ?」

活旗党の時に…そうだたしか。


「あ、そういえばのぶなががつけてみたい。と言っていたから、

その時渡してそのまま忘れちゃっていた」

それから返してもらっていない。間違いない思い出した。


「まあもうあれはいいわ。帰ってお昼ご飯食べましょ?」

あたしはさりげなくデルタの手を引っ張ると。


「ロージー、午後一緒に図書館行かないか?」


デルタは立ち上がるなり言った。

これはデートのお誘い…なのかしら。


「今度の休み、あたしの買い物付き合ってね?」

「ああ、買いすぎないでくれよ」


こうして午後もデルタを独占してしまう一日を過ごした。

そして、また独占する約束をした。



この3年、3人は特に何も無いように見えて、確実に道を歩んでいる。


「私の夢?夢を追う歳でもないわよ」


サラに関してはすでに決まった道を進んでいるだけだ。

たくさんの人を陰ながら救っている。私を救ってくれたように。

きっと彼女は倒れるその日まで献身的に外しょくの仕事に身をささげるのだろう。



「私はね、今はとりあえず大学を目標にしているよ」


ユキは一番変わった。

助けてもらった恩もあり研究員を目指しているらしい。

将来は施設で働いて、しょくにんと人間を支えていきたいという。



「俺はもちろん、幸福論の完成と実現だ」


そしてデルタは、しょくにん幸福論なる研究に没頭している。

といっても自分の体験をまとめてあたしや、保護中のしょくにんに教えを説いている。



彼は家出したしょくにん達に必ずいう事がある。

「施設に帰るか、俺達と一緒に外しょくで働くか、のぶながの開放隊にいくか、

まずは3択から選べ」


不思議なことに、彼から学ぶしょくにんは二極化する。

絶対に施設に戻りたくないというしょくにんと、

施設に戻ってしまうしょくにんだ。


保護されたままでいるしょくにんは一人もいない。



「君は気が付いているか?ユートピアはすでに完成している。

人間はしょくにんに対して尊い気持ちを持っているんだ」


これがデルタの教えの冒頭だ。

施設はすでにしょくにんの事を考え尽くされて運営されている。


「ロージー、人間はしょくにんに対して、生きることに絶望させないために、

いろんな事を考えているんだ」


閉鎖的な空間や知識がその証拠だという。


「施設はすでにしょくにんの世界で構築されている。

外の世界という知識の実を食べなければ幸せなんだ」


あたしもデルタの意見に賛成できるが、

なぜ二極化してしまうかは未だにわからない。彼も同じだ。


だが今は彼の考えを吸収して、彼を真に理解してあげたい。

これがあたしのやりたい事…なのかもしれない。




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