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第三章 第十四話 完


第14話


俺とのぶながが言い合いになってしまい、

他のしょくにん達も、ユキも沈黙してしまった。


一矢報いたのは、最年長者であるサラだ。


「ま、皆、とりあえずご飯食べましょうか」


「おいデルタ、なんだかんだ一番図太いのはあいつだな」

「それは間違いない」


ひそひそと俺たちが喋る中、

サラが振り返り、鋭い目つきで睨まれた。


「なんか言った?」

「い、いえなにも」



そんななかロージーは手を上げ発言する。

「のぶなが、ちょっといいかしら!」


「どうした、ロージー」

のぶながは質問権を譲った。


「あのね、のぶなが、あたし…今回の件やっぱり抜けさせてもらうわ…」


「えっ!なんでだよロージー!ここまで一緒に仲間を集めてきたじゃないか!」

のぶながが手を広げてロージーをなだめようとしている。


だが、そんなロージーはなぜか俺のほうを見つめた。


「あたし、デルタの話を聞いて、少し考え方が変わったの」


「おおおロージー、君のような意見を待っていた!」

そんなことをしょくにんから言われたのは初めてだ。


「あのね?デルタってあたしに持っていない物をたくさん持っていて、

それでその…」


彼女は急にもじもじし始めた。


「なんだ?トイレなら奥だぞ」

彼女は俺に近づく。


「あなたのそういうデリカシーの無い所も…好き」

好き?


「あたし、デルタと一緒に住みたい…な」


「は?はぁぁぁぁぁぁ?」


部屋から漏れた5色のその声は、100m先までこだましたという。



皆でサラが振舞った料理を食べながら、団欒をつづけた。


「そういえばのぶなが、お前が持って行った赤い本あっただろ?」


口からチキンがはみ出したのぶながは

「え?あ、あれか」


「ちゃんと読み終えたら返しに来いってマナミさんが言っていた」

「会ったのか?わざわざあの鬼に」


お前にだけ鬼なんだ、と言ってやりたいところだ。


「お前の罪を俺が謝っておいた。

感想文書いて戻しに来なさいと言っていた」


のぶながは口の中の物を飲み込んだ。


「ほかになんか言っていなかったか?」

「とある約束したんだよ、今度はお前も連れていくって。

当分果たせそうにないなこれは」


約束が果たせる日は来るのだろうか。



お腹が満足したら次は脳が刺激を求める。

久々にのぶなが、お前の攻めの手を受けたい。


「そうだ、俺とも一局打つか?」

「い~や止めておく。おめーのあんなおっかない顔見たくね~し」


それにと、小さい声でのぶながはつづけた。


「あれを見抜く時点で、お前には勝ち目がないよ。

実際詰めるかわからなかった展開だ」



さっきから隣から押し寄せてくるのはロージーだ。

「ねね、ところでデルタ」


「なんだロージー」

「私も一緒に暮らしてもいいのかな?」


家主は俺じゃない。住人も俺だけじゃない。


「ロージー、それは、俺だけじゃなく、ユキ。そしてサラに聞いてくれ。

俺に決定権は無いからな」


そう言うとロージーはサラの隣に行った。


「のぶなが、ロージーってあんなキャラだった?」

「さあ俺も見た頃は無いが、苦労するな、デルタ」


なんだかこの先が思いやられる。


「そういえばのぶなが、実際にどうやってしょくにんたちの国を作るんだ」

プランを聞いてみたい。


「正直まだプランはできてねぇ。

だが全国回って仲間は30人ほどになった」


それはすごい。


「だがさっきも言ったように、すでに理想の里は存在している。それは肝に銘じておけ。

だが、なにか外しょくとして手伝えることがあれば当然手伝う」


俺がのぶながの計画に手伝えること…

知恵か?


「おまえさ、あんな事件があってまだ外しょくにいるつもりか?」

のぶながはポテトを食べる。


「あれは職員の問題だ。サラがそんなことするわけ…ないよな?」


たしかにうちも貧しい。お金の話が出れば俺は売られてしまうのだろうか。


「ただ、今俺はこの仕事に誇りを持っている。たくさんの人を救いながら、

たくさんの人に食べてもらい、生命の循環の輪に入るんだ」


「ふ~んそうか…」

なんとも興味のなさそうな相槌だ。


「俺たちしょくにんは一人では生きていけない。

人間無しでは生きていけない。これは事実だ。

助け合いながら生きていかなければならない」


合理的なはずだ。

なのにこの男は納得しない。


「ま、もう俺も無理にお前を誘わない。むなしくなるだけだ。ただ、死ぬなよ?」

「お前こそ、過激な事ばっかり足を突っ込むな。支援が欲しければすぐに言うんだ」


そして俺は冷蔵庫かた銀色の缶の飲み物を出した。


「おま、それ酒だろ!?」


このリアクション、のぶながもまだ飲んだこと無いようだ。

「大丈夫だ、害はない。ってマナミさんが言っていた」


「ほんとかよ…」

「死ぬときは一緒だ。友よ」



俺たちは生まれて初めて酒という物を飲んだ。

苦い こんな苦い物を飲むのか人間は。

全く理解できない。



そんな苦みは夜更けとともに消えて、

朝に残ったのはぼんやりとした何かだけだった。



「それじゃ、俺たちはいくよ。しばらく東京近辺にいるから、何かあったら言ってくれ」

クモもカレーラものぶながについていき、しばらくは活旗党の手伝いをするようだ。


「のぶのぶ、寂しくなったらいつでも帰ってきてね!」

ユキは笑顔で見送った。


「のぶなが、今度は俺の活躍を見ておけ、施設に革命を起こす」

「楽しみにしている。サラからの課題がわかったら教えてくれ」


俺は最後に一言だけくぎを刺す。

「焦るな、早まるな、よく考えるんだぞ。のぶなが」

「お前は俺のお母さんかよ、お前もお前の信じる道を見失うなよ」




あそこまで衝突したのに、なんでだろうか。

あいつへの執着は無い。


なんてことない、いつもの俺達だった。


俺はあいつを素直に応援することができた。

悪だとかひどいことを言ってごめんな、デルタ。




「じゃ、皆いなくなったし、

デルタの事、たくさん教えてもらわなくちゃ」


教える…か…

「ロージー、君も施設で育ったんだろ?何にも変わらないさ」


サラはロージーの居住を許すしかなかった。

無職となり、なににも属していない彼女は保護法に触れるからだ。


「ま、いっか」

サラはそんな事を漏らして部屋に入った。



こうして、この部屋の居住人数は再び4人となった。

顔ぶれは変わった物の、共に過ごす家族だという事は変わらない。


ロージーはユキの部屋を二人で使うことになった。

毎晩毎晩きゃっきゃうふふと二人は騒いでいる。



そして、数カ月が経過し、ユキはランドセルを卒業した。


「あ~デルくん?明日お弁当なの、よろしくね!」

「お~いユキ、前もって言ってくれ、

今日は夜更かし確定じゃないか」


夕食を食べながら、明日のお弁当のおかずを考えた。


俺は食器を洗い、ロージーはさらに収穫されている。

そんなときに、ユキの声が部屋中に響いた。



「た、大変!!!テレビ!テレビ見て!!!」



三人とも大慌てでリビングに集まる。


「みんな見て、この人!」


テレビに映っていたのは。


「の、のぶながじゃないか!」


テレビに映る彼は、

毎日目にしていた彼の姿と変わらなかった。


だが、それでも、どこか遠い世界の存在のように感じたのが本音だ。



・今回、二人の逮捕に至るまで大活躍されたとか。

「あ~いやそうなんですよ。前々から渡辺は妖しいなぁと思ってたんですけどね」


・闇市場摘発へ大きな前進となりました。そのことについてはどうお考えですか?

「少し前の事件で大バッシングされた外しょく。

彼らの救いになればいいと俺は思ってますね」


・ほう?なぜですか。

「実は大切な家族が外しょくにいるんだ」


・ご家族のためなんて、泣ける話ですね。

「実はそいつがたまたま、武田と渡辺の密会の現場を目撃したことを教えてくれたんだ。

あいつが居なければ今回、逮捕まで持っていけなかった」

「あ、ちょっとお姉さんマイクかして」


のぶながの顔が近づいてくる。


「デルタ!お前は胸を張ってお前が思うお前の仕事をしろ!

俺は俺が思う仕事をする。そして答えがわかったとき、また会おうぜ」


・ちょ、いったん止めましょう。


中継映像は途切れた。



「武田ってあれよね?」

「あれだ」


「ロージー、渡辺ってあれよね?」

「ええ、あれよ」


「つまり…どういうこと?」


裏でのぶながが働いていたなんて知らなかった。


のちに調べて分かったことだが、

民声党の武田と、活旗党の渡辺が手を組み、

渡辺はしょくにんたちから、保護中のしょくにんたちの情報を得、

武田に情報を渡した。


武田は闇市のブローカーをやっており、

各ハンターに保護中のしょくにんの情報を流したりしたそうだ。


被害にあったしょくにんは調査中だとのことだ。


「のぶながが660の無念を晴らした」


「それにしても、あいつ、俺の話ちゃんと聞いていたんだな」

「え?どういうこと?」


「あ、いや、こっちの話だ」


しかも2つも聞いてくれていた。



しょくにんから人間に生まれ変わったのぶなが

しょくにんから真のしょくにんへ覚醒したデルタ


二人は互いにゆるぎない信念を認め合い、

第二の道を歩き始めた。



そしてさらに3年の月日が流れた。


食物人間 第三章 悪と正義 完


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